みんなは「イラン」と「アラブ諸国」の違いと聞いて何が思い浮かぶ? ん?「イラン」って「アラブ諸国」じゃないの?…だって!? オイオイ。イラン人やアラブ人が聞いたら怒られるかもしれないぞ。

最初に大前提として言っておくが、「イラン」と「アラブ諸国」は違う国々です。では何が違うのか、答えられるか?

今回はそんな「イラン」と「アラブ諸国」の違いを、海外在住で国際情勢に詳しい院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。立場上世界情勢には敏感で常に情報を収集している。今回の記事ではその経験を活かしていく。

「イラン」と「アラブ諸国」はどんな国々?

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「「イラン」は「アラブ諸国」ではない」という事実を聞いて、「え?」と驚いた方もいるかもしれませんね。はい、違う国々です。まずは、「イラン」と「アラブ諸国」がどのような国なのか、概要を確認していきましょう。

「イラン」:西南アジアに位置するイスラム教国

「イラン」は「イラン=イスラーム共和国」が正式名称の、西南アジアに位置するイスラム教を国教とする共和国です。国土のほとんどがイラン高原の上にある「砂漠と高原の国」ですね。

「イラン」の歴史は古く、かつては「ペルシャ」という名前で紀元前から高度な文明を持つ国が存在していました。7世紀にアラブ人に征服されたことでイスラム教を受容し、16世紀にサファビー朝が誕生したことでイラン人によるイラン人の国が再び誕生します。サファビー朝以降いくつかの王朝がイランを支配しましたが、1979年のイラン革命以降は、イスラム教を基にした政治が行われる共和国として存在を続けていますね。

「アラブ諸国」:アラビア半島や北アフリカの国々

「アラブ諸国」はアラブ人が国の中で多数派として暮らす国々のことをいい「アラブ連盟」というアラブ人による国際地域機構に加盟している国々を指す言葉です。「アラブ諸国」は中東~北アフリカに存在します。

具体的な国の名称は、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、イエメン、イラク、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、スーダン、チュニジア、パレスチナ、バーレーン、モーリタニア、モロッコ、ヨルダン、リビア、レバノンです。

上記の国々の主要民族はアラブ人であり、イスラム教が主要な宗教となっています。

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「イラン」と「アラブ諸国」の大きな違い2点!

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「イラン」と「アラブ諸国」の共通点は、どちらもイスラム教が主要な宗教であることでしょう。ただ、そのイスラム教についてもこの2つの間では大きな違いがありますし、さらにもっと大きな違いがあります。ここでその大きな違い2点を確認していきましょう。

1.民族:ペルシア人とアラブ人

「イラン」と「アラブ諸国」の大きな違いは、民族の違いです。「イラン」の主要民族はペルシア語を話す「ペルシア人」と呼ばれるイラン系民族。現代のイランの人口の50~70%を占めると考えられています。一方の「アラブ諸国」の主要民族はアラブ語を話す「アラブ人」です。

どちらもイスラム教を信じる民族という点では共通していますが、言語が異なります。ペルシア語の表記は、アラビア語のアラビア文字を基にしたペルシア文字を使用しており、見た目は似ていますが文法や語彙は全く異なるのです。以上から、1つ目の大きな違いは民族と言葉の違いといえるでしょう。

2.宗教:シーア派とスンニ派

「イラン」の主要民族のペルシア人も、「アラブ諸国」の主要民族であるアラブ人もイスラム教を信仰していますが、その宗派が異なります。「イラン」ではシーア派を信仰する人が大半であり、「イラク」を除く「アラブ諸国」ではスンニ派を信仰する人が大半です。(「イラク」は「アラブ諸国」の中でも例外で、シーア派が多数派ですね。)

このシーア派とスンニ派は古くから互いに対立することが多く、両者の対立が戦争の原因になることも多々ありました。「イラン」と「アラブ諸国」で対立する別の宗派をそれぞれ信仰していることが、大きな違いの2つ目と言えるでしょう。

「中東」「イスラム世界」…これらとの違いは?

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「アラブ諸国」と似たような意味として使われている言葉に、「中東」や「イスラム世界」があります。実はこの2つの言葉は、それぞれ「アラブ諸国」とは異なる範囲を指す別の意味の言葉なのです。ここではそれぞれの指す範囲や意味について確認していきましょう。

「中東」:「アラブ諸国」よりさらに広い概念?

「中東」という言葉は、ヨーロッパから見て近くにあるアジアやアフリカの地域を指す言葉です。現在この「中東」に含まれる国々は、「アラブ諸国」の他にイスラエル、トルコ、イラン、アフガニスタン、パキスタン、キプロス、西サハラ、ジブチ、ソマリアがあります。つまり、「アラブ諸国」よりもさらに広い範囲の国々を指す言葉と言えるでしょう。

ただ、日本語で「中東」という場合は、上記の国々からアフリカに位置する国やアフガニスタン、パキスタン、キプロスを除く場合も多いですね。

「イスラム諸国」「イスラム世界」:「中東」よりもさらに広い

「イスラム諸国」「イスラム世界」は、イスラム教を信仰する人が多い国々を指して用いられる言葉です。今回この記事で紹介した「アラブ諸国」や「中東」の国々の大半は、イスラエルなどの例外を除きこの「イスラム世界」に含まれます

しかし、大半の「アラブ諸国」や「中東」の国だけが「イスラム諸国」「イスラム世界」ではありません。ウズベキスタンやトルクメニスタンといった中央アジアの国々、インドネシアやマレーシアといった東南アジアの一部の国、さらにはアフリカ中部の一部の国々も、「イスラム諸国」「イスラム世界」に含まれます。つまり、「アラブ諸国」や「中東」よりもさらに広い概念と言えるでしょう。

混同されやすい「イラン」と「アラブ諸国」

今回は混同されやすい「イラン」と「アラブ諸国」について解説しました。この2つの大きな違いは民族と宗教ですね。「イラン」はペルシア人が主要民族の国であり、「アラブ諸国」はアラブ人が主要民族の国々です。そして、ペルシア人が主に信仰しているのはイスラム教のシーア派、アラブ人が主に信仰しているのはイスラム教のスンニ派ですね。このような違いが存在する両者を、混同しないようにしましょう。

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雑学

簡単に分かる「イラン」と「アラブ諸国」の違い!実は全然違う?「中東」との違いも海外在住日本語教師が分かりやすく解説

みんなは「イラン」と「アラブ諸国」の違いと聞いて何が思い浮かぶ? ん?「イラン」って「アラブ諸国」じゃないの?…だって!? オイオイ。イラン人やアラブ人が聞いたら怒られるかもしれないぞ。

最初に大前提として言っておくが、「イラン」と「アラブ諸国」は違う国々です。では何が違うのか、答えられるか?

今回はそんな「イラン」と「アラブ諸国」の違いを、海外在住で国際情勢に詳しい院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。立場上世界情勢には敏感で常に情報を収集している。今回の記事ではその経験を活かしていく。

「イラン」と「アラブ諸国」はどんな国々?

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「「イラン」は「アラブ諸国」ではない」という事実を聞いて、「え?」と驚いた方もいるかもしれませんね。はい、違う国々です。まずは、「イラン」と「アラブ諸国」がどのような国なのか、概要を確認していきましょう。

「イラン」:西南アジアに位置するイスラム教国

「イラン」は「イラン=イスラーム共和国」が正式名称の、西南アジアに位置するイスラム教を国教とする共和国です。国土のほとんどがイラン高原の上にある「砂漠と高原の国」ですね。

「イラン」の歴史は古く、かつては「ペルシャ」という名前で紀元前から高度な文明を持つ国が存在していました。7世紀にアラブ人に征服されたことでイスラム教を受容し、16世紀にサファビー朝が誕生したことでイラン人によるイラン人の国が再び誕生します。サファビー朝以降いくつかの王朝がイランを支配しましたが、1979年のイラン革命以降は、イスラム教を基にした政治が行われる共和国として存在を続けていますね。

「アラブ諸国」:アラビア半島や北アフリカの国々

「アラブ諸国」はアラブ人が国の中で多数派として暮らす国々のことをいい「アラブ連盟」というアラブ人による国際地域機構に加盟している国々を指す言葉です。「アラブ諸国」は中東~北アフリカに存在します。

具体的な国の名称は、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、イエメン、イラク、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、スーダン、チュニジア、パレスチナ、バーレーン、モーリタニア、モロッコ、ヨルダン、リビア、レバノンです。

上記の国々の主要民族はアラブ人であり、イスラム教が主要な宗教となっています。

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