この記事では褫奪と剥奪の違いについてみていきます。両方とも対象者から「奪う」ことを表すのですが、違いはずばり使用できる範囲に差があるようです。とは言っても、想像しにくいかもしれませんね。それぞれの範囲や使い方について、用例を挙げていこうと思う。今回はそんな難しい熟語について、定義から確認しつつ言葉の違いが気になる文学部卒ライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

漢字の読み方が難しいけれども、どのような違いがあるのか気になった文学部卒ライター。

剥奪:地位や名誉、権利など全般を強制的に取り上げる

image by iStockphoto

「剥奪」(はくだつ)とは、国家や属する組織や団体などから、社会的な権威のあるものを強制的に取り上げられる力ずくで無理に取り剥がされることに使われます。具体的に取り上げられる対象となるのは、地位や名誉、権利、免許など実際に目では見えないけれども一定の効力が認められるものです。形のある物を奪われる、盗まれるといった意味では使いません。

1.「剥」の字義とは

剥奪の「剥」の字義には、はぎとるはぐむくはげおちるとるなど。「奪」はうばいとることです。剥ぎ取って奪うことをいい、自分から取り去るのではなく、相手に無理やり取られるようなイメージで使われます。

\次のページで「2.剥奪の使い方」を解説!/

2.剥奪の使い方

剥奪の使い方は以下の通りです。

・度重なる違反で、運転免許が剥奪された。
・独裁国家では一定の自由が剥奪される。
・犯罪を犯し、公民権剥奪となった。
・配下の者が不祥事を起こして、地位を剥奪される。

褫奪:勲章の取り上げに限定して使われる

image by iStockphoto

「褫奪」(ちだつ)については、現代では勲章や官位などを強制的に取り上げられるという意味合いで使われることがほとんど。剥奪は全般的に使えますが、褫奪の使われる範囲は限定的です。もし、「剥奪」と「褫奪」のうち、どちらを使って良いか迷うのであれば「剥奪」を選べば間違いはありません。

1.「褫」の字義とは?

「褫」の字義はうばう衣服をはぎ取るということです。ただ、現代では、実際に服を身ぐるみはがすということはほぼありません。「褫奪」でうばうという意味の漢字を2つ重ねることで意味を強めていると考えられるのではないでしょうか。

2.褫奪の使い方

褫奪という熟語はあまり見かけませんが、政令の名前に使われています。これは「勲章褫奪令」(くんしょうちだつれい)で、明治41年に施行された政令です。勲章を受けた人が栄誉を取り上げられ、着用を禁止する事例の詳細が明記されています。具体的には、死刑や執行猶予がされない3年以上の禁錮刑などの刑罰に処された人などが対象になるということです。

例文としては、「受勲した人が懲役刑となり、勲章を褫奪されたらしい」「勲章褫奪令は明治時代からある法令だ」といったような使い方をします。しかし、現代ではあまり使われません。

\次のページで「「剥奪」や「褫奪」の類語」を解説!/

「剥奪」や「褫奪」の類語

image by iStockphoto

「剥奪」や「褫奪」の類語にはどのような熟語があるのでしょうか。以下の3つについて紹介します。

1.簒奪:権力などを奪い取ること

「簒奪」(さんだつ)とは、奪い取ること。特に、王位や帝位など、相手の地位や政治上の権力や支配力を取り上げる時に使われます。クーデターを起こした者が為政者の力を削いで、自ら権力者になるのをイメージすると分かりやすいかもしれません。「簒」とは無理に取り上げたり、横取りしたりすることを表す漢字です。

「横暴な前王から地位を簒奪して、自ら王になった」「大臣に簒奪されて、王はこの国から追放された」といったように使います。

2.略取:人を無理に連れ去ることなど

「略取」(りゃくしゅ)とは、無理に奪い取ること。「略」は、うばいとる、かすめとる、「取」はつかみとる、手に入れるといった字義です。「敵の陣地を略取する」という使い方があります。

その他に暴力を振るったり脅したりして人を無理に連れ去る犯罪についていうことも。法律などで「略取誘拐罪」といった使い方がされます。これは、人を不法にそれまでの生活環境から切り離して、自分や第三者の支配下の環境に置く犯罪のことです。「未成年者を宿泊させて、略取誘拐罪に問われた」といった使い方をします。

3.強奪:相手の所有物を暴力で奪い取る

「強奪」(ごうだつ/きょうだつ)とは、所有物や金品を暴力や脅迫により無理に奪い取ることです。「強」には無理にさせるという字義。「銀行で現金を強奪する事件が起こった」「泥棒にダイヤの指輪を強奪された」という使い方をします。

剥奪は名誉や権利などを強制的に取り上げること・褫奪は勲章の取り上げに限定

剥奪は地位や権利、免許や資格など、主に目に見えない社会的な名誉などについて強制的に取り上げて奪うことをいいます。褫奪は、現代において勲章を取り上げる時に、限定的に使うことがほとんど。「勲章褫奪令」などの法令名にもなっています。

" /> 簡単で分かりやすい剥奪と褫奪の違い!範囲や使い方、類語も文学部卒ライターが詳しく解説! – Study-Z
雑学

簡単で分かりやすい剥奪と褫奪の違い!範囲や使い方、類語も文学部卒ライターが詳しく解説!

この記事では褫奪と剥奪の違いについてみていきます。両方とも対象者から「奪う」ことを表すのですが、違いはずばり使用できる範囲に差があるようです。とは言っても、想像しにくいかもしれませんね。それぞれの範囲や使い方について、用例を挙げていこうと思う。今回はそんな難しい熟語について、定義から確認しつつ言葉の違いが気になる文学部卒ライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

漢字の読み方が難しいけれども、どのような違いがあるのか気になった文学部卒ライター。

剥奪:地位や名誉、権利など全般を強制的に取り上げる

image by iStockphoto

「剥奪」(はくだつ)とは、国家や属する組織や団体などから、社会的な権威のあるものを強制的に取り上げられる力ずくで無理に取り剥がされることに使われます。具体的に取り上げられる対象となるのは、地位や名誉、権利、免許など実際に目では見えないけれども一定の効力が認められるものです。形のある物を奪われる、盗まれるといった意味では使いません。

1.「剥」の字義とは

剥奪の「剥」の字義には、はぎとるはぐむくはげおちるとるなど。「奪」はうばいとることです。剥ぎ取って奪うことをいい、自分から取り去るのではなく、相手に無理やり取られるようなイメージで使われます。

\次のページで「2.剥奪の使い方」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: