この記事では「研削」と「研磨」の違いについてみていきます。どちらも金属加工の現場などで使われる言葉ですが、特に「研削」なんてなかなか馴染みのない言葉なだけに、読み方すらわからない人もいて当然でしょう。今回は、そんな「研削」と「研磨」の読み方から漢字まで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

研削は「けんさく」、研磨は「けんま」と読む!

image by iStockphoto

「研削」と「研磨」の違いを説明する前に、まずはそれぞれの漢字の読み方について説明しましょう。「研削」「けんさく」と読み、「研磨」「けんま」と読みます。

研削と研磨の違いをざっくり説明

つぎに、「研削」と「研磨」の違いについて説明しましょう。おおまかに言うと、「研削」金属などを決められたサイズや寸法に合わせるため、精密に削ることを意味するのに対し、「研磨」とは、金属などの表面を仕上げに奇麗にみがくことを意味するという違いがあります。

ただし、特に「研削」一般的とは言えない言葉であり、これらの言葉が使われる金属加工の現場でさえ、業者によっては定義や使い方が違ったりする場合があることに注意が必要です。

研削と研磨の漢字を説明

さきほど、「研削」金属などを決められたサイズや寸法に合わせるために削ることで、「研磨」表面をきれいに磨いて仕上げることだと説明しましたが、ここからは、それぞれの言葉の理解を深めるために、「研削」「研磨」に使われている漢字について説明していきたいと思います。

「研」は石を同じ高さに「とぐ」こと

image by iStockphoto

まずは両方に使われている「研」について説明しましょう。「研」という漢字といえばまず「研究」という単語が思い浮かぶ、という方も多いかと思いますが、「研」一字では「研ぐ(とぐ)」という意味で、「研究」とは、一つのことを研ぎ澄ますように突き詰めて究めることを言うのです。

「研」という字はもともとは「硏」という字だったのが簡略化されたもので、成り立ちとしては、右の「幵」は「二つのものの高さをそろえる」ということを表し、石へんが使われていることから、石を平らにとぐ様子、あるいは石で磨いてものの表面をきれいにする様子をあらわしているのではないかなどと考えられています。

\次のページで「「削」は肉を小さく「けずる」こと」を解説!/

「削」は肉を小さく「けずる」こと

image by iStockphoto

つぎに、「研削」「削」の字について説明しましょう。「削」は「削除」などの単語でつかわれるように、音読みでは「サク」、訓読みでは「削る(けずる)」などと読みます。

左側の「肖」には「月」が使われていますが、この月は夜空の月ではなく、肉を意味する「にくづき」の方であり、その上の「ツ」のような形をしているのは「小」が変形したもので、「肖」は「肉を小さくする」ところから生まれた字です。

そして、その右側に刀を意味する「りっとう」をつけた「削」という字は「肉を小さくするためにけずる」ことを意味しているのではないかと考えられています。また、さきほど説明したように、「研」という字は一字で「研ぐ」という意味でしたね。ですから、「研削」という言葉は、決められたサイズまで小さくするために削ったり、研いだりするというところから、これらの字を使って作られたのかもしれません。

「磨」は石を使って「みがく」こと

つぎは「研磨」「磨」について説明します。「磨」の字の上には「麻」が使われていますが、「麻」という字は「家の中で麻の繊維をはぎとっている様子」から作られたもので、その繊維をはぎとるために、手で麻をこすって細かくしていました。そこから、漢字のパーツとしての「麻(マ)」は「こする」というニュアンスも含むようになり、「麻」が使われている漢字には「摩擦」の「摩」のように、「こする」という意味を持つものも生まれたのです。

「磨」という字は、このようなニュアンスを持つ「麻」の下に「石」を組み合わせて作られていることから、石をみがくところを意味し、「みがく」という意味や読みをするようになったと考えられています。また、さきほど説明したように、「研」という字は一字で「研ぐ」という意味でしたね。ですから、「研磨」という言葉は、表面をきれいにするために研いで磨くところからこれらの字を使って作られたのでしょう。

研削は寸法重視で、研磨は見た目重視!

今回の説明で、「研削」が、金属などを決められたサイズや寸法に合わせるため、精密に削ることであるのに対し、「研磨」は、金属などの表面を仕上げに奇麗にみがくことを意味するという違いがあることや、それぞれの漢字の意味や成り立ちについ理解していただけたでしょうか。

ただし、さきほども説明したとおり、特に「研削」という言葉は一般的なものではなく、使う機会の多い金属加工業の業界でも、業者によっては定義や意味などが違う場合もありますし、わたしたち一般人としては使ってもせいぜい「研磨」の方くらいではないかと思うので、「研削」「研磨」の違いについてはそこまで神経質になる必要はないのではないかと思います。

" /> 簡単でわかりやすい!研削と研磨の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!研削と研磨の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「研削」と「研磨」の違いについてみていきます。どちらも金属加工の現場などで使われる言葉ですが、特に「研削」なんてなかなか馴染みのない言葉なだけに、読み方すらわからない人もいて当然でしょう。今回は、そんな「研削」と「研磨」の読み方から漢字まで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

研削は「けんさく」、研磨は「けんま」と読む!

image by iStockphoto

「研削」と「研磨」の違いを説明する前に、まずはそれぞれの漢字の読み方について説明しましょう。「研削」「けんさく」と読み、「研磨」「けんま」と読みます。

研削と研磨の違いをざっくり説明

つぎに、「研削」と「研磨」の違いについて説明しましょう。おおまかに言うと、「研削」金属などを決められたサイズや寸法に合わせるため、精密に削ることを意味するのに対し、「研磨」とは、金属などの表面を仕上げに奇麗にみがくことを意味するという違いがあります。

ただし、特に「研削」一般的とは言えない言葉であり、これらの言葉が使われる金属加工の現場でさえ、業者によっては定義や使い方が違ったりする場合があることに注意が必要です。

研削と研磨の漢字を説明

さきほど、「研削」金属などを決められたサイズや寸法に合わせるために削ることで、「研磨」表面をきれいに磨いて仕上げることだと説明しましたが、ここからは、それぞれの言葉の理解を深めるために、「研削」「研磨」に使われている漢字について説明していきたいと思います。

「研」は石を同じ高さに「とぐ」こと

image by iStockphoto

まずは両方に使われている「研」について説明しましょう。「研」という漢字といえばまず「研究」という単語が思い浮かぶ、という方も多いかと思いますが、「研」一字では「研ぐ(とぐ)」という意味で、「研究」とは、一つのことを研ぎ澄ますように突き詰めて究めることを言うのです。

「研」という字はもともとは「硏」という字だったのが簡略化されたもので、成り立ちとしては、右の「幵」は「二つのものの高さをそろえる」ということを表し、石へんが使われていることから、石を平らにとぐ様子、あるいは石で磨いてものの表面をきれいにする様子をあらわしているのではないかなどと考えられています。

\次のページで「「削」は肉を小さく「けずる」こと」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: