この記事では「自殺」と「縊死」の違いについてみていきます。どちらも文字通り「死」にまつわ言葉ですが、とくに「縊死」は字が難しいこともあって、読み方すらわからない人もいて当然でしょう。今回はその読み方から「自殺」と「縊死」の違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

「縊死」は「いし」と読む!

image by iStockphoto

まず、「縊死」「自殺」の違いについて説明する前に、「縊死」の読み方はご存じでしょうか?難しい字ですし、稀にニュースや報道でも使われることがあるものの、日常的に使われる機会の多い字ではないので、今回初めて目にしたという方も多いかと思いますが、「縊死」という字は「いし」と読みます。

「自殺」と「縊死」のざっくりした違い

それでは「自殺」「縊死」のおおまかな違いについて説明しましょう。「自殺」については、多くの方もご存じかと思いますが、自らの手で自分の命を絶つことを言い、「縊死」とは高いところから下げたヒモなどに首を吊って死ぬことです。「縊死」の多くは自殺によるものですが、自殺だけでなく他殺や事故によるものも「縊死」と呼びます。

「自殺」と「縊死」の漢字を説明

ここまで、「自殺」「縊死」について、「自殺」自らの手で自分の命を絶つことで、「縊死」首吊りによって死ぬことだと説明しましたね。ここからはそれらの意味について、より理解が深まるよう、それぞれの漢字について見ていきたいと思います。

「自」は鼻を意味し、「殺」は矛で殺すこと

image by iStockphoto

まずは「自」という字を説明しましょう。「自」はもともと顔のパーツである「はな」を意味する字でしたが、今日の私たちが、誰かに呼ばれたときにする動作と同じように、自分のことを示すときには鼻に指をさす動作をしていました。そこから「自」という字は「おのれ」「自分」の意味を持つようになり、代わりに顔の「はな」を意味するための漢字として、後から「鼻」という字が作られたのです。

「殺」という字については、左側の形がイノシシなどのケモノをあらわしていて、右側に「殳(ほこづくり)」があることから、ケモノを矛(ほこ)で殴り殺す様子から「殺す」になったという説や、左側がヒエやアワ、イネなどの穀物を刈ることを意味し、それと右側の「殳」で、穀物の実を道具でそぐことから転じて「殺す」になったのではないかという説などがあります。

\次のページで「「縊」はヒモの様子か詰まること?」を解説!/

「縊」はヒモの様子か詰まること?

今度は「縊」という字について説明しましょう。「縊」は音読みでは「イ」、訓読みでは「くくる」「くびれる」、首をしめて殺すという意味の「くびる」です。「くくる」や「くびれる」についても、首をしめるというニュアンスがあり、「荷物をくくる」や、「身体のラインがくびれている」という場合には「括る」「括れる」のように「括」の字を使います。

その成り立ちは、例えば「縊」の右側は「益」という字ですが、「益」の成り立ちに関する説の一つに、二またに分かれた糸の両端をくくりとめた形ではないかというものがあるので、そこから「糸」「益」「くくる」になったのではないかという説が生まれました。

他には「益」という字の音読みの「エキ」という音が、何かが塞がったり詰まったりする音を意味するので、これに「糸」で、首を「くくる」意味の「縊」という字になったのではないかという説などもあります。

「死」んでいるのは本人?

つぎは「死」という字の成り立ちについて説明しましょう。「死」の左がわにある「歹(かばねへん)」は白骨を意味していると考えられています。

右側の「ヒ」については、ひざまずいている人をあらわしているのですが、この「ヒ」が死んで骨になっていくことから「死」となったという説や、あるいは、死んで骨になった「歹」を「ヒ」がひざまずいて弔(とむら)っているところから「死」になったなどという説など、この字に関しても成り立ちは諸説ありますが、ここをどう解釈するかが大きく分かれるのです。

「自殺」と「縊死」が混同されるのはなぜ?

image by iStockphoto

「自殺」は自らの手で自分の命を絶つことで、「縊死」は首吊りによって死ぬことという違いがあるのでしたね。しかし、これらの違う意味の言葉が混同されることがあるのはなぜでしょうか?それはおそらく自殺として「縊死」によるものが多いからではないでしょうか。

厚生労働省の調査によると1965年以降から自殺の手段「縊死」によるものが多く、1980年以降になると男女の自殺者ともにその過半数が「縊死」によるものです。このように、「自殺」において「縊死」が最も多くとられる手段であることから、「自殺」と「縊死」を混同してしまう人もでてきたのかもしれません。

「縊死」は首をくくって死ぬこと!

「自殺」が、自らの手で自分の命を絶つことで、「縊死」単に首を吊って死ぬことだということや、これらが混同される原因について説明してきました。今回は、ずいぶん不吉というか、重いテーマを扱ってきましたが、みなさんも悩みがあるときは、信頼できる友人や大人に相談したり、身近に話せる人がいない場合も「こころの健康相談統一ダイヤル」に電話するなど、一人で抱えこまないようにしてくださいね。

" /> 簡単でわかりやすい!自殺と縊死の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!自殺と縊死の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「自殺」と「縊死」の違いについてみていきます。どちらも文字通り「死」にまつわ言葉ですが、とくに「縊死」は字が難しいこともあって、読み方すらわからない人もいて当然でしょう。今回はその読み方から「自殺」と「縊死」の違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

「縊死」は「いし」と読む!

image by iStockphoto

まず、「縊死」「自殺」の違いについて説明する前に、「縊死」の読み方はご存じでしょうか?難しい字ですし、稀にニュースや報道でも使われることがあるものの、日常的に使われる機会の多い字ではないので、今回初めて目にしたという方も多いかと思いますが、「縊死」という字は「いし」と読みます。

「自殺」と「縊死」のざっくりした違い

それでは「自殺」「縊死」のおおまかな違いについて説明しましょう。「自殺」については、多くの方もご存じかと思いますが、自らの手で自分の命を絶つことを言い、「縊死」とは高いところから下げたヒモなどに首を吊って死ぬことです。「縊死」の多くは自殺によるものですが、自殺だけでなく他殺や事故によるものも「縊死」と呼びます。

「自殺」と「縊死」の漢字を説明

ここまで、「自殺」「縊死」について、「自殺」自らの手で自分の命を絶つことで、「縊死」首吊りによって死ぬことだと説明しましたね。ここからはそれらの意味について、より理解が深まるよう、それぞれの漢字について見ていきたいと思います。

「自」は鼻を意味し、「殺」は矛で殺すこと

image by iStockphoto

まずは「自」という字を説明しましょう。「自」はもともと顔のパーツである「はな」を意味する字でしたが、今日の私たちが、誰かに呼ばれたときにする動作と同じように、自分のことを示すときには鼻に指をさす動作をしていました。そこから「自」という字は「おのれ」「自分」の意味を持つようになり、代わりに顔の「はな」を意味するための漢字として、後から「鼻」という字が作られたのです。

「殺」という字については、左側の形がイノシシなどのケモノをあらわしていて、右側に「殳(ほこづくり)」があることから、ケモノを矛(ほこ)で殴り殺す様子から「殺す」になったという説や、左側がヒエやアワ、イネなどの穀物を刈ることを意味し、それと右側の「殳」で、穀物の実を道具でそぐことから転じて「殺す」になったのではないかという説などがあります。

\次のページで「「縊」はヒモの様子か詰まること?」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: