この記事では、読み方の音が似ているからか、混同されがちな「聖人君子」と「聖人君主」の違いについてみていきます。中には、「聖人君主」の方ははじめて聞いたという人も多いかもしれないが、今回はそれぞれに使われている言葉の意味や、意味が混同されがちな「清廉潔白」との違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

聖人君子と聖人君主の違い

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まずはじめに、「聖人君子」「聖人君主」の違い説明しましょう。その違いとはズバリ、「聖人君子」「品性や人がらが良く、知識や教養にも優れている理想的な人」のことを意味する四字熟語で、一方の「聖人君主」とは「聖人君主」のことを、「君主」と「君子」の音が似ているためか混同されてしまった、間違った言い方だということです。

両者の違いとしては以上ですが、せっかくの機会なので今回は両者につかわれている「聖人」「君子」「君主」といった言葉の意味や、「聖人君子」と意味が混同されがちな「清廉潔白」との違いについて説明していきたいと思います。

「聖人」「君子」「君主」のそれぞれの意味

「聖人君子」「人格・知識・教養などを備えた理想的とされる人物」のことで、「聖人君主」はその間違いでしたね。今後、そのような間違いをしないよう、ここからはより理解を深めるため、「聖人」「君子」「君主」という言葉それぞの意味について説明していきたいと思います。

「聖人」とは偉大で崇高で高貴な理想の人

「聖人」とは、もともとは人格や知性に優れていて、「偉大さ・崇高さ・高貴さ」の三つを兼ね備えた、政治において指導者としてふさわしい、理想的な人のことで、特に古代中国の王や「論語」で有名な孔子などのことを言いました。

今では、宗教において、その宗派に貢献して教会から公式に「聖人」に認定された人のことも「聖人」と呼びますが、「聖人君子」という言葉は中国で大昔に生まれた言葉であり、そのような宗教で公式に認められた人のみを指し示す言葉ではありません。

「君子」とは人格と知性に優れた人のこと

「君子」とは人格と、知識や教養といった知性をあわせ持つ、政治的な指導者としてふさわしいような人のことを指す言葉でした。さきほど、「聖人」も「政治において指導者としてふさわしい、理想的な人のこと」と説明しましたが、「聖人」もっとも位の高い呼び名で、それに次ぐのがこの「君子」という呼び名です。

ですから、「聖人」と「君子」をくみ合わせた「聖人君主」という言葉は、それだけ非の打ちどころがない、理想的な人物のことを指すようになったのでしょう。

「君主」とは世襲制国家の最高地位の人

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最後に「君主」について説明します。「君主」とは、世襲制(地位や財産などを子孫代々継いでいくこと)の国の王や皇帝、天皇など最高位につく人を指した言葉です。この「君主」も、さきほど説明した「君子」と同じく人々の上に立つ人を指す言葉なので、音だけでなく意味としても近いと言えるかもしれませんね。

さきほど説明したように、やはり古代中国に由来する慣用表現なので、「聖人君主」にしてしまわないように注意しましょう。ちなみに、「君」という漢字というと、現在では「きみ」や「〇〇君」という呼びかけの言葉というイメージが強いかもしれませんが、元々は命令で人々をまとめる「君主」を表す字でした。

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女性に対しては何と言う?

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さきほど、「聖人君子」とは古代の中国に由来する言葉だということを説明しましたが、その時代には聖人や君子という立場に女性はいませんでした。そのため、現在でも男性に対して使う言葉であり、基本的には女性に使わない言葉とされています。「聖人君子」と似た意味の女性に対して使う言葉としては「聖女」「淑女」などが挙げられます

「清廉潔白」との違いは?

まず「清廉潔白」の意味を説明しましょう。「清廉」の「廉」とは「いさぎよい」という意味の漢字で、そこから「清廉」とは心がきれいで態度やおこないが潔いことを意味します。「潔白」については「身の潔白を証明する」などと使ったりするので知ってる方も多いかと思いますが、「清廉」と同じように、心や行動が正しく、うしろ暗いところが無いさまのことです。

このような意味を持つ「清廉」と「潔白」を組み合わせた四字熟語なので、「清廉潔白」とは、それほど心がきれいで、欲ややましいところが無く、態度やふるまいが立派なさまのことを意味します。

ですので「聖人君子」との違いとしては、「清廉潔白」は知識や教養があるかどうかは問題ではないということが挙げられるでしょう。つまり、「清廉潔白」であることに加えて、知識や教養などがある人のことを「聖人君子」と呼ぶことになります。

聖人君子は理想的な人のことで聖人君主は間違い!

今回の説明で「聖人君子」「品性や人がらが良く、知識や教養にも優れている理想的な人」のことで、「聖人君主」間違った言い方だということや、女性に対しては使わないこと、「清廉潔白」との違いなどを知っていただけたかと思います。

「聖人君子」と「聖人君主」という言い方がややこしく、どうしても混同してしまうという人は「聖人君子」の2文字目と4文字目の「人」と「子」をとって、「聖人君子も人の子だ」などと、こじつけて覚えてしまうのはいかがでしょうか。

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雑学

簡単でわかりやすい!聖人君子と聖人君主の違いとは?女性にも使う?清廉潔白との違いも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では、読み方の音が似ているからか、混同されがちな「聖人君子」と「聖人君主」の違いについてみていきます。中には、「聖人君主」の方ははじめて聞いたという人も多いかもしれないが、今回はそれぞれに使われている言葉の意味や、意味が混同されがちな「清廉潔白」との違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

聖人君子と聖人君主の違い

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まずはじめに、「聖人君子」「聖人君主」の違い説明しましょう。その違いとはズバリ、「聖人君子」「品性や人がらが良く、知識や教養にも優れている理想的な人」のことを意味する四字熟語で、一方の「聖人君主」とは「聖人君主」のことを、「君主」と「君子」の音が似ているためか混同されてしまった、間違った言い方だということです。

両者の違いとしては以上ですが、せっかくの機会なので今回は両者につかわれている「聖人」「君子」「君主」といった言葉の意味や、「聖人君子」と意味が混同されがちな「清廉潔白」との違いについて説明していきたいと思います。

「聖人」「君子」「君主」のそれぞれの意味

「聖人君子」「人格・知識・教養などを備えた理想的とされる人物」のことで、「聖人君主」はその間違いでしたね。今後、そのような間違いをしないよう、ここからはより理解を深めるため、「聖人」「君子」「君主」という言葉それぞの意味について説明していきたいと思います。

「聖人」とは偉大で崇高で高貴な理想の人

「聖人」とは、もともとは人格や知性に優れていて、「偉大さ・崇高さ・高貴さ」の三つを兼ね備えた、政治において指導者としてふさわしい、理想的な人のことで、特に古代中国の王や「論語」で有名な孔子などのことを言いました。

今では、宗教において、その宗派に貢献して教会から公式に「聖人」に認定された人のことも「聖人」と呼びますが、「聖人君子」という言葉は中国で大昔に生まれた言葉であり、そのような宗教で公式に認められた人のみを指し示す言葉ではありません。

「君子」とは人格と知性に優れた人のこと

「君子」とは人格と、知識や教養といった知性をあわせ持つ、政治的な指導者としてふさわしいような人のことを指す言葉でした。さきほど、「聖人」も「政治において指導者としてふさわしい、理想的な人のこと」と説明しましたが、「聖人」もっとも位の高い呼び名で、それに次ぐのがこの「君子」という呼び名です。

ですから、「聖人」と「君子」をくみ合わせた「聖人君主」という言葉は、それだけ非の打ちどころがない、理想的な人物のことを指すようになったのでしょう。

「君主」とは世襲制国家の最高地位の人

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最後に「君主」について説明します。「君主」とは、世襲制(地位や財産などを子孫代々継いでいくこと)の国の王や皇帝、天皇など最高位につく人を指した言葉です。この「君主」も、さきほど説明した「君子」と同じく人々の上に立つ人を指す言葉なので、音だけでなく意味としても近いと言えるかもしれませんね。

さきほど説明したように、やはり古代中国に由来する慣用表現なので、「聖人君主」にしてしまわないように注意しましょう。ちなみに、「君」という漢字というと、現在では「きみ」や「〇〇君」という呼びかけの言葉というイメージが強いかもしれませんが、元々は命令で人々をまとめる「君主」を表す字でした。

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