この記事では「観点」と「視点」の違いについてみていきます。どちらも何かしらの見方に対して使われる言葉ですが、それぞれ何となくの意味は知っているつもりでも、その意味の違いは何かと聞かれると答えに困る人は少なくないでしょう。今回はこの「観点」と「視点」について、漢字から具体的な例文まで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

観点と視点のざっくりした違い

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まずは「観点」と「視点」のおおまかな違いについて説明しましょう。「観点」「視点」「ものの見方や考え方などにおける立場や立ち位置」という意味で使われますが、「観点」の方がより広い見方であり、「視点」の方はより絞られたり、狭い範囲の見方というニュアンスの違いがあります。

また、「観点」「ものの見方や考え方」という抽象的なものにしか使われないのに対し、「視点」はそのような抽象的なものだけではなく、実際に存在するものや具体的ものに対しても使われることも違いの一つです。この説明だけでは、今はまだはっきりとした違いはわからないかもしれませんが、今回はそれをていねいに説明していきましょう。

観点と視点の漢字をていねいに説明

「観点」より広い見方で、「視点」より絞られた狭い範囲の見方という違いがあることを説明しましたが、ここからはそれぞれの言葉に対する理解を深めるため、漢字について見ていきたいと思います。

「観」は見渡したり、見て考えること

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まずは「観点」「観」の字について見ていきましょう。字の成り立ちについては諸説ありますが、例えば「観」の左側は、口を開けたコウノトリ、あるいはミミズクなどの鳥が二羽並んでいる姿から生まれた形ではないかという説があります。右側には「見」があるように、「観」という字はその二羽の鳥などが並んでいるのを見たり見比べるところから生まれたのではないかとも考えられているのです。

そのため「観る(みる)」と言っても、単純に見るのとは違い、「見渡す」「物を見てその本質を考える」というニュアンスを含んだ「みる」という意味を持っていると考えられます。ですから、「観点」という言葉は「視点」にくらべて、より広い見方を意味し、「観」という字が単に見るだけではなく、見てその本質を考えるというニュアンスを持つことから「ものの見方や考え方」という抽象的なものに対して使われるようになったのでしょう。

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「視」は注意深く見ること

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続いて「視点」「視」について説明しましょう。「視」という字は「示(しめすへん)」に「見」と書きますが、この字の成り立ちについても諸説あります。特に「示」について解釈が分かれていて、そのうちの一つが「神様に捧げものをする台をあらわし、そこから神意(神様の考え)を読み取るためにじっと見ることを意味する」という説です。

他にも「捧げものの台という元々の意味はなく、単に『シ』という音だけを表し、まっすぐ見ることを意味する」という説などが言われています。成り立ちにこれらの由来があると考えられるので、「視」という字は、物をじっと注意深く見るというニュアンスの「みる」という意味をもっているのです。ですから「視点」という言葉は「観点」という言葉とくらべて、より絞られた狭い範囲の見方を意味するのではないでしょうか。

観点と視点を使った例文

ここまでの説明で、「観点」より広い見方で、「視点」より絞られた狭い範囲の見方であるという違いについてはだいぶ理解していただけたかと思います。ですから、ここからは「観点」「視点」の使い分けについて、具体的な例文を紹介しましょう。まずは「観点」の例文です。

1.彼は教師の経歴があるので、教育的観点からの意見が期待される。
2.環境保護の観点から、レジのビニール袋は有料化された。

これらの例文ではどちらも、「教育的」「環境保護」といった大きな枠組みの立場を表していますね。また、どちらも実在の物ではなく、抽象的なものからの見方というのもわかっていただけたのではないでしょうか。つぎは、「視点」の例文です。

1.これからの時代は、もっと子どもの視点に寄り添った考えが重要視される。
2.この球場には多くのカメラが設置されているので、打者視点の映像も見ることができる。

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「観点」の例文と比べると、1.の「子どもの視点」という言い回しはより具体的で絞られた見方だと実感していただけるのではないでしょうか。また、2.の例文は「打者」という実際に存在するものに使われていますね。「観点」「視点」という言葉は、それぞれこのような形で使われるのです。

観点は広く抽象的、視点は狭く具体的!

ここまでの説明で、「ものの見方や考え方などにおける立場や立ち位置」という意味で使われる「観点」「視点」という言葉が、「観点」より広い見方というニュアンスを含む一方、「視点」の方はより絞られた狭い範囲の見方のことを意味するということを理解していただけたのではないでしょうか。

また、「観点」抽象的なものに対して使われるのに対して「視点」より具体的だったり実在のものにも使われることも覚えておいてください。今回の解説が皆さんの言葉に対する理解に少しでも役立てたなら幸いです。

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雑学

簡単でわかりやすい!観点と視点の違いとは?漢字から例文まで現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「観点」と「視点」の違いについてみていきます。どちらも何かしらの見方に対して使われる言葉ですが、それぞれ何となくの意味は知っているつもりでも、その意味の違いは何かと聞かれると答えに困る人は少なくないでしょう。今回はこの「観点」と「視点」について、漢字から具体的な例文まで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

観点と視点のざっくりした違い

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まずは「観点」と「視点」のおおまかな違いについて説明しましょう。「観点」「視点」「ものの見方や考え方などにおける立場や立ち位置」という意味で使われますが、「観点」の方がより広い見方であり、「視点」の方はより絞られたり、狭い範囲の見方というニュアンスの違いがあります。

また、「観点」「ものの見方や考え方」という抽象的なものにしか使われないのに対し、「視点」はそのような抽象的なものだけではなく、実際に存在するものや具体的ものに対しても使われることも違いの一つです。この説明だけでは、今はまだはっきりとした違いはわからないかもしれませんが、今回はそれをていねいに説明していきましょう。

観点と視点の漢字をていねいに説明

「観点」より広い見方で、「視点」より絞られた狭い範囲の見方という違いがあることを説明しましたが、ここからはそれぞれの言葉に対する理解を深めるため、漢字について見ていきたいと思います。

「観」は見渡したり、見て考えること

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まずは「観点」「観」の字について見ていきましょう。字の成り立ちについては諸説ありますが、例えば「観」の左側は、口を開けたコウノトリ、あるいはミミズクなどの鳥が二羽並んでいる姿から生まれた形ではないかという説があります。右側には「見」があるように、「観」という字はその二羽の鳥などが並んでいるのを見たり見比べるところから生まれたのではないかとも考えられているのです。

そのため「観る(みる)」と言っても、単純に見るのとは違い、「見渡す」「物を見てその本質を考える」というニュアンスを含んだ「みる」という意味を持っていると考えられます。ですから、「観点」という言葉は「視点」にくらべて、より広い見方を意味し、「観」という字が単に見るだけではなく、見てその本質を考えるというニュアンスを持つことから「ものの見方や考え方」という抽象的なものに対して使われるようになったのでしょう。

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