3分でわかる翡翠と瑪瑙の違い!どちらが価値が高い?見分け方も工学系院卒ライターがわかりやすく解説!
翡翠はヒスイ輝石とネフライトの2種類、瑪瑙は石英の仲間
翡翠にはヒスイ輝石とネフライトの2種類があり、宝石として価値が高いのはヒスイ輝石であること、瑪瑙は石英の仲間で、玉髄の一種であることを説明しました。古来より世界中の人々に親しまれてきた翡翠と瑪瑙。歴史を彩ってきた石として考えると、市場価値とは違った別の魅力がありますね。
この記事では翡翠(ひすい)と瑪瑙(めのう)の違いについて掘り下げていきます。どちらも独特の色合いが美しい半透明の石ですが、鉱物としては全く異なる上、翡翠に至っては実は2種類あるようです。今回は、この2つの石の特徴や歴史について、大学で結晶学を学んだライターthrough-timeと一緒に解説していきます。
ライター/through-time
工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代に学んだ知識を生かし、翡翠と瑪瑙の違いについて詳しく解説していく。
翡翠(ひすい)は美しい緑色が特徴の、半透明な宝石です。名前の由来は、鮮やかな青や緑の羽を持つ鳥カワセミで、翡が雄、翠が雌を表しています。古くから世界中で珍重された宝石であり、特に古代中国では美しく価値のある石を意味する「玉(ぎょく)」と呼ばれていました。
翡翠は実は2種類あり、「硬玉」ヒスイ輝石と「軟玉」ネフライトに分類されます。化学組成が全く異なる2つの鉱物ですが、見た目では区別しにくいことから、19世紀中ごろまで同じ「翡翠」とみなされていました。翡翠の英語jadeも双方を指しており、区別する場合はヒスイ輝石をjadeite(ジェダイト)、ネフライトをnephriteと表します。
宝石として価値が高いのはヒスイ輝石です。半貴石のネフライトと区別するために、ヒスイ輝石を本翡翠と呼ぶことがあります。
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ヒスイ輝石は輝石と呼ばれるケイ酸塩鉱物の1つで、化学組成はNaAlSi2O6です。モース硬度6.5~7と比較的硬い上、針状や繊維状の微小な結晶が複雑に絡み合う構造により、優れた靭性(割れにくさ)も持ち合わせています。代表的な産地は日本の新潟県糸魚川地域やミャンマーのカチン州です。
本来のヒスイ輝石は白色ですが、含まれる微量元素によって色が変わり、微量の鉄やクロムで緑色、微量の鉄やチタンで紫色になります。コスモクロア輝石やオンファス輝石など、ほかの輝石が混じって色がつくことも多く、色のバリエーションは豊富です。
中でも琅玕(ろうかん)と呼ばれる鮮やかな緑のヒスイ輝石は、インペリアル・ジェードともいい、最高級品とされています。
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モース硬度は硬さの異なる10種類の標準鉱物に数字を振り、硬さ(傷のつきやすさ)の尺度としたもので、「最も傷がつきやすい」1が滑石(タルク)、「最も硬い」10がダイヤモンドです。19世紀初頭ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが考案しました。
ネフライトは、角閃石の仲間である緑閃石(アクチノライト)と透閃石(トレモライト)の微細結晶の集合体です。語源は古代ギリシア語で腎臓を意味する「nephros(ネフロス)」で、腎臓治療において薬効があるとされていました。主な産地は中国の新疆ウイグル自治区やアメリカのワイオミング州などです。
モース硬度6~6.5で、「硬玉」ヒスイ輝石より硬度がわずかに低いことから「軟玉」と呼ばれますが、靭性はこちらの方が優れており、精巧な彫刻工芸品に用いられます。
ヒスイ輝石と比べ脂っぽい光沢で、色も白から白みがかった緑色がほとんどです。しかし羊脂玉と呼ばれる白く透明感のあるものは、ヒスイ輝石よりも高値で取引されることがあります。
日本における翡翠文化は縄文時代中期に始まりました。縄文時代から古墳時代までの遺跡において、ヒスイ輝石で作られた勾玉や大珠などが多数出土しています。
ところが奈良時代になると、翡翠文化はなぜか歴史の表舞台から姿を消してしまい、1935年(1938年の説もあり)新潟県糸魚川市でヒスイ輝石の原石が再発見されるまで、「日本でヒスイ輝石は産出しない」「遺跡から出土したものは大陸伝来である」と考えられていました。また、その後の化学分析により、国内の遺跡から出土したヒスイ輝石すべてが糸魚川産であることが判明。糸魚川はヒスイ輝石の産地であると同時に、世界最古の翡翠文化発祥の地となったのです。
現在、糸魚川の産地のうち2か所が天然記念物に指定されており、また2016年には日本鉱物科学会が国を代表する石「国石」にヒスイ輝石を選定しています。
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古代中国の「玉」は翡翠以外の宝石も含まれており、瑪瑙(めのう)もその1つとされています。
瑪瑙は石英の変種である玉髄(ぎょくずい)の1つで、色や透明度が異なる層状の縞模様を持つ半透明の石です。石の断面が馬の脳に似ているためにその名がつきました。瑪瑙は英語でagate(アゲート)ですが、平行な縞模様があるものは特にonyx(オニキス)と呼ばれます。
石英と玉髄について簡単に説明しましょう。石英(クオーツ)は、二酸化ケイ素SiO2の共有結合結晶で、地球上の多くの岩石を構成する造岩鉱物です。石英の中でも、六角柱状に大きく成長し、かつ透明度の高いものは水晶と呼ばれます。
石英の種類の1つが玉髄(カルセドニー)です。微細な粒状もしくは繊維状の石英が緻密に固まった鉱物で、色や模様によって紅玉髄(カーネリアン)や碧玉(ジャスパー)など、さまざまな名前がつけられています。美しいものは宝飾品として扱われますが、世界各地で産出されるため希少性はありません。
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瑪瑙は火成岩あるいは堆積岩の空洞内に、熱水と呼ばれる高温の地下水が侵入してできるものです。熱水に溶け込んでいたケイ酸分が、微細結晶となって層状に沈殿することで形成されます。その際、周囲の環境や熱水に溶け込んだ成分濃度の変化により、層の色に違いが生じるのです。モース硬度6.5~7。
瑪瑙自体も非常にありふれた鉱物で、世界各地で産するため希少価値は低いですが、翡翠同様に世界中で珍重されています。三種の神器の1つ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は瑪瑙製です。
装飾品のほか、工芸の彫刻材料としても重宝されており、たとえば浮き彫り細工のカメオは、層の色の違いをうまく利用して図柄を浮かび上がらせています。
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ヒスイ輝石に似た石を、俗に「キツネ石」といいます。いくつか紹介しましょう。
砂金石(アベンチュリン)は石英の中に雲母などの微粒子の結晶を包有し、キラキラとした輝きを放つ鉱物です。特に緑系のものはヒスイ輝石によく似ており、インド翡翠の名で売られていることがあります。また、緑玉髄(クリソプレーズ)もオーストラリア翡翠の名がついていることがあるので、注意が必要です。そのほか、緑瑪瑙(グリーンメノウ、グリーンアゲート)や蛇紋石(サーペンナイト)、ロディン岩(ロディンジャイト)などがキツネ石に挙げられます。
微細結晶の集合体であるヒスイ輝石は光を透過します。また、光を当てながらルーペで拡大すると、針状や繊維状の結晶や内包物(インクルージョン)が見えたり、色の濃淡を確認できたりすることも。逆に「色むらがなく均一」「全く内包物がない」「気泡がある」などの特徴が見られる場合は、模造品の可能性が高いです。
ヒスイ輝石と同じような微細構造を持つネフライトや、瑪瑙や玉髄などとの見分けは難しいですが、天然と模造の違いは分かるかもしれません。
ヒスイ輝石同士を軽くぶつけると、「キンキン」と澄んだ音がします。ヒスイ輝石の内部構造が非常に緻密なためで、本物のヒスイ輝石2個が手元にある場合は、調べたい石とぶつけてみると、音の違いで判別できることも。
ヒスイ輝石の比重は約3.2、ネフライトは約3.1で、一方の瑪瑙や玉髄は約2.6、石英は約2.7です。そのため、石を真上に軽く放り投げ手の平に落としてみると、ヒスイ輝石やネフライトはほかの石よりずっしりと重く感じられます。
ガラスを高硬度のヒスイ輝石でひっかくとガラスに傷がつき、ネフライトでひっかくと逆にネフライトの方が傷つきます。ただし瑪瑙や玉髄は硬度が高いため、この方法では区別できません。
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翡翠にはヒスイ輝石とネフライトの2種類があり、宝石として価値が高いのはヒスイ輝石であること、瑪瑙は石英の仲間で、玉髄の一種であることを説明しました。古来より世界中の人々に親しまれてきた翡翠と瑪瑙。歴史を彩ってきた石として考えると、市場価値とは違った別の魅力がありますね。
翡翠にはヒスイ輝石とネフライトの2種類があり、宝石として価値が高いのはヒスイ輝石であること、瑪瑙は石英の仲間で、玉髄の一種であることを説明しました。古来より世界中の人々に親しまれてきた翡翠と瑪瑙。歴史を彩ってきた石として考えると、市場価値とは違った別の魅力がありますね。