この記事ではすっぽんと亀の違いについてみていきます。2つとも「甲羅を背負った生き物」というイメージがあるよな。じつは「すっぽん」は個性的な進化を遂げた「亀の一種」です。甲羅・手足・顔つきが他の亀より個性的なんだそう。今回はそんな「亀の仲間」の違いを、見分け方を含めて、大学で生物学を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では、独自の進化を遂げた亀の一種「すっぽん」と他の亀との違いについてわかりやすく解説していく。

すっぽんと亀を大まかに比較

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まずは「すっぽん」と「亀」が、それぞれどのような生き物であるのか大まかに解説します。甲羅をもつことによって繁栄してきた、亀の仲間たち。まずは、彼らの甲羅の秘密から解き明かしていきましょう!

亀は甲羅を発達させた爬虫類

亀は「甲羅をもった爬虫類」で、爬虫綱カメ目に分類される生物の総称です。爬虫綱カメ目では背中側の脊椎と、腹側の肋骨・胸骨とが変形。それぞれ背甲板と腹甲板となり、甲羅を形成しています。亀の甲羅の正体は「骨」なのです。一部の亀は、甲羅をより進化させています。例えば折り曲がる腹甲板をもつ「ハコガメ」では、甲羅を密閉することが可能です。

防御に特化した亀の仲間は、地球上至るところで繁栄。池で見かける淡水棲の亀の他に、陸上で暮らす「リクガメ」や海洋で暮らす「ウミガメ」などが存在します。幅広い環境に適応した結果、その餌も種によってバラバラ。草食性の種から雑食性・肉食性の種まで、多種多様な亀がいるのです。

すっぽんは淡水棲の亀の一種

すっぽんは、爬虫綱カメ目の「スッポン科」に分類される亀の仲間です。彼らは淡水に生息。生涯のほとんどを、流れの緩やかな池や川の中で過ごします。泳ぎが上手で臆病なすっぽんは、なかなか陸に上がりません。彼らが陸に上がるのは、日光浴や産卵のときだけなのです。すっぽんの食性は、肉食寄りの雑食。彼らは魚類と貝類を主食としています。

爬虫綱カメ目スッポン科のなかでも、日本には「キョクトウスッポン」という種が生息。日本のすっぽんは、古くから「まる」という別名で親しまれ、「すっぽん鍋/まる鍋」として食べられてきました。この記事では、すっぽんと他の亀との具体的な違いについて徹底解説。以下、分類が違う彼らの「見分け方」についてみていきましょう!

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すっぽんと他の亀との具体的な違いは4つ

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すっぽんと他の亀とでは分類が違います。そのため両者の間では、目視で確認できる違いが大きく4つ存在するのです。亀の仲間は、環境に応じて様々な形に進化してきました。以下では、そのなかでも異質な「すっぽん」に焦点を当てて、その違いをみていきましょう!

違い1.甲羅など骨格

すっぽんと他の亀とでは骨格、とくに甲羅のつくりが違います。まず英語で「ソフトシェル・タートル」と呼ばれるすっぽんの甲羅は柔軟。骨が変形した「骨甲板」とそれを覆う「皮膚」からなります。フチが軟骨化しており、イカの耳(エンペラ)に似た質感をもつのが特徴です。対して他の亀の甲羅では、「骨甲板」と皮膚が硬化した「角質甲板」が発達。その甲羅は、非常に頑丈なつくりになっています。

また一部の亀では、すっぽんと異なる構造の首が特徴的です。一部の原始的な亀は、首を横に曲げて格納する曲頸類。曲頸類では、首の半分が甲羅の外に露出してしまいます。対してすっぽんを含めて大多数の亀は、首を甲羅の中にまっすぐ縮こめられる潜頸類。進化の過程で、首をしっかり守れるようになったのです。

違い2.皮膚の質感

すっぽんの皮膚は一見するとなめらか。実際には小さなウロコで覆われています。これは水中での暮らしに適応している証拠。すっぽんは水中でも、皮膚呼吸ができるのです。対して陸棲の「リクガメ」や大型種「ゾウガメ」では、乾燥から皮膚を守るためにウロコが発達。また水棲の「ウミガメ」でも、塩分から皮膚を守るため、ウロコが発達しています。

違い3.手足の形状

すっぽんは、他の淡水棲の亀と異なる形の手足をもっています。すっぽんの手足では水掻きが発達。5本の指のうち、3本だけが爪として露出しています。対して「アカミミガメ」など他の淡水棲の亀では、手足に5本の爪が生え揃っているのです。亀の手足は、種によって多種多様に進化。ウミガメの「ヒレ状の手足」や、ゾウガメの「ひづめがついた手足」がその例です。

違い4.顔つき

すっぽんと他の亀とでは、顔つきが違います。亀の顔には、エナメル質の歯がなく、爪と同じ角質でできた「クチバシ」が存在。対して亀の一種・すっぽんの顔を観察してみても、クチバシは見当たりません。じつはすっぽんのクチバシは、肉で覆い隠されているのです。代わりに彼らの顔で目立つのは、細長く伸びた鼻先。水棲のすっぽんは、この鼻先を水面から出して肺呼吸を行います。

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すっぽんと亀についてもっと詳しく

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淡水棲の亀「すっぽん」は、古くからアジア地域で食用として親しまれてきました。以下ではすっぽんを筆頭とする亀の仲間が、どのようにして食べられているのか紹介。さらにその飼育方法についてもみていきましょう!

すっぽんも亀も食用になる

亀の中でも柔らかい甲羅をもつ「すっぽん」は、古くから食用とされてきました。包丁だけで解体ができ、可食部が多いのがすっぽんの長所です。すっぽんでは背甲板・爪・膀胱・胆嚢以外の部位がすべて、食用となります。すっぽんは、有名な鍋物や雑炊のほかに、煮凝りや唐揚げなどの料理に最適。さらに養殖物では「生き血」が堪能できますよ。

また他の亀も食用とされてきました。なかでも中国の「亀ゼリー」こと、亀苓膏(きれいこう)が有名でしょう。その原材料はミスジハコガメの甲羅と、土茯苓(どぶくりょう)や甘草など生薬。これらを煮出したスープを冷やして固めたものが「亀ゼリー」なのです。ちなみに現代の「亀ゼリー」には、希少なミスジハコガメの代わりに、すっぽんが用いられます。

すっぽんや亀の飼い方

すっぽんは、ミシシッピアカミミガメなど他の水棲の亀と同じように飼えます。水棲の亀の飼育に不可欠なのは、水を張って陸地を設けた大きな水槽。室内飼いの場合は、日光浴用の紫外線ライトが別途要ります。亀の仲間は日光浴でビタミンDを合成しないと、「くる病/骨軟化症」になってしまうのです。餌はカメ用の配合飼料でよいでしょう。

亀の飼育では、種ごとに細かい注意点が異なります。たとえば繊細なすっぽんの場合、水温を15度以上に保つ「ヒーター」と水を綺麗にする「ろ過装置」が別途必要です。また水棲の亀の飼育で気をつけたいのは感染症。とくにミシシッピアカミミガメは、高確率で食中毒の原因となる「サルモネラ菌」をもっています。亀の水槽の手入れをした後には、必ず手を洗いましょう。

「すっぽん」は柔らかい甲羅をもつ亀の一種

亀の一種「すっぽん」は、特徴的な見た目をしています。他の亀と違ってすっぽんでは、皮膚で覆われた柔らかい甲羅と長く伸びた鼻先が特徴的。包丁でも解体できる甲羅をもつすっぽんは、古くから食用とされてきました。日本では「すっぽん鍋」や「すっぽん雑炊」がポピュラー。このようにすっぽんは、亀の中でも異質な存在なのです。

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簡単でわかりやすい!すっぽんと亀の違いとは?亀も食用になる?見分け方や飼い方も生物学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではすっぽんと亀の違いについてみていきます。2つとも「甲羅を背負った生き物」というイメージがあるよな。じつは「すっぽん」は個性的な進化を遂げた「亀の一種」です。甲羅・手足・顔つきが他の亀より個性的なんだそう。今回はそんな「亀の仲間」の違いを、見分け方を含めて、大学で生物学を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では、独自の進化を遂げた亀の一種「すっぽん」と他の亀との違いについてわかりやすく解説していく。

すっぽんと亀を大まかに比較

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まずは「すっぽん」と「亀」が、それぞれどのような生き物であるのか大まかに解説します。甲羅をもつことによって繁栄してきた、亀の仲間たち。まずは、彼らの甲羅の秘密から解き明かしていきましょう!

亀は甲羅を発達させた爬虫類

亀は「甲羅をもった爬虫類」で、爬虫綱カメ目に分類される生物の総称です。爬虫綱カメ目では背中側の脊椎と、腹側の肋骨・胸骨とが変形。それぞれ背甲板と腹甲板となり、甲羅を形成しています。亀の甲羅の正体は「骨」なのです。一部の亀は、甲羅をより進化させています。例えば折り曲がる腹甲板をもつ「ハコガメ」では、甲羅を密閉することが可能です。

防御に特化した亀の仲間は、地球上至るところで繁栄。池で見かける淡水棲の亀の他に、陸上で暮らす「リクガメ」や海洋で暮らす「ウミガメ」などが存在します。幅広い環境に適応した結果、その餌も種によってバラバラ。草食性の種から雑食性・肉食性の種まで、多種多様な亀がいるのです。

すっぽんは淡水棲の亀の一種

すっぽんは、爬虫綱カメ目の「スッポン科」に分類される亀の仲間です。彼らは淡水に生息。生涯のほとんどを、流れの緩やかな池や川の中で過ごします。泳ぎが上手で臆病なすっぽんは、なかなか陸に上がりません。彼らが陸に上がるのは、日光浴や産卵のときだけなのです。すっぽんの食性は、肉食寄りの雑食。彼らは魚類と貝類を主食としています。

爬虫綱カメ目スッポン科のなかでも、日本には「キョクトウスッポン」という種が生息。日本のすっぽんは、古くから「まる」という別名で親しまれ、「すっぽん鍋/まる鍋」として食べられてきました。この記事では、すっぽんと他の亀との具体的な違いについて徹底解説。以下、分類が違う彼らの「見分け方」についてみていきましょう!

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