この記事でリコリスと彼岸花の違いについてみていきます。2つとも「線香花火のような花を咲かせる植物」というイメージがあるよな。じつは彼岸花はリコリスの一種。ほかにもリコリスと呼ばれる植物があるみたいです。そしてリコリスのなかでも、日本の彼岸花は特殊なんだそう。今回はそんな「リコリス」の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事ではヒガンバナ属(Lycoris)の植物である、リコリスと彼岸花の違いについてわかりやすく解説していく。

リコリスと彼岸花を大まかに比較

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まずはリコリスと彼岸花の生物学的分類について徹底解説。以下を読めば、両者の基本的な生態がわかります。まずは「リコリス」と呼ばれるグループが、どのような特徴をもつのかみていきましょう!

リコリスは属名

「リコリス」は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される複数の植物。属名「Lycoris」にちなんだ総称です。種類ごとに花の見た目が異なり、赤やオレンジ、ピンクなど色とりどりの花を咲かせます。

ですがどのリコリスでも、基本的な生態は一緒。ヒガンバナ属の植物はすべて、地中に球根をもつ多年草なのです。夏から秋にかけて、葉とは別に花のついた茎を出す点でも共通しています。

彼岸花はリコリスの一種

「彼岸花」はヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物で、先述のリコリスの一種。「Lycoris radiata」という学名をもちます。その名の通り、9月ごろ(お彼岸の時期)に赤い花を咲かせるのが特徴です。日本各地に自生している彼岸花の原産地は中国。有史以前、人為的に持ち込まれたと考えられています。

この記事では、彼岸花と他のリコリスとを比較。その具体的な違いについて解説していきます。じつはリコリスの中でも、日本の彼岸花だけは異質。以下を読めば、縁起が悪いと敬遠されがちな彼岸花の生態について詳しくなれますよ!

\次のページで「日本の彼岸花と他のリコリスの具体的な違い」を解説!/

日本の彼岸花と他のリコリスの具体的な違い

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リコリスの一種である日本の彼岸花は、その中でも異質。他のリコリスと比較したときに、3つの違いが見られるのです。以下「彼岸花」のルーツについて徹底解説。「黄色い彼岸花」や「白い彼岸花」の正体についてもみていきましょう!

違い1.花の色と形

彼岸花を含むリコリスの花は「散形花序」というつき方をしています。具体的には茎の先端から、複数の花が放射状に開いているのです。ただリコリスの中には、彼岸花と少し形が違う花も存在。日本の彼岸花は、反り返った長い花びらをもちます。対してリコリスの一種、キツネノカミソリやナツズイセンは、反りが少ない短い花びらからなる「ユリ」のような花を咲かせるのです。

日本の彼岸花では、炎のような赤い花が特徴的。対してリコリスの花の色は多岐に渡ります。例えばリコリスの一種・ショウキズイセンは、黄色い彼岸花。花の形は彼岸花そっくりですが、色は似ても似つきません。ほかには「白い彼岸花」と呼ばれているシロバナマンジュシャゲも、本来の彼岸花と異なる種のリコリスなのです。

違い2.種子を作る能力

日本の彼岸花は、自分の力で種子が残せません。これは染色体の数の違いによるもの。中国生まれの原種「コヒガンバナ/L.radiata var. Pumila」が2対1セットの染色体をもつ2倍体であるのに対し、その変種の「彼岸花/L.radiata var. radiata」は3倍体だからです。種子を残す必要がない彼岸花は、原種よりも大型の花が咲かせられます。

一方他のリコリスには、種子が残せる品種も多数存在。そのため異なる種同士を掛け合わせた品種が存在します。先述の「シロバナマンジュシャゲ」は雑種の一例。黄色い花の「ショウキズイセン」と彼岸花の原種「コヒガンバナ」から生まれた雑種であると考えられています。突然変異で白くなった日本の彼岸花ではありません。こちらは3倍体なので、花の色を決める遺伝子が3つも変異しないと白化しないのです。

違い3.生えている場所

彼岸花は関東以南に広く分布。あぜ道や墓地に自生しているようにみえます。ですが実際のところ、種子が残せない彼岸花は人為的に植えられたもの。日本の彼岸花は球根で増える植物で、同じ地域のものは開花時期と花の形と草丈が均一な「クローン」なのです。

対して花の色形が豊富な、他のリコリスは園芸植物。「死人花」や「墓花」など縁起の悪い異名をもつ彼岸花と違って、親しまれています。

彼岸花以外のリコリスは?

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ここでは彼岸花以外の「リコリス」について、より詳しく解説。花の見た目や開花時期、その他の生態を掘り下げていきます。彼岸花とはまた違った花を咲かせる、リコリスの魅力をみていきましょう!

\次のページで「彼岸花に似た形の「ショウキズイセン」」を解説!/

彼岸花に似た形の「ショウキズイセン」

ショウキズイセン(Lycoris aurea)は、別名「オーレア」とも呼ばれるリコリスの一種。9・10月に彼岸花に似た形の「黄色い花」をつけるのが特徴です。見た目こそ日本の彼岸花に似ているショウキズイセンでは、種子を残す能力が残っています。そのため花が終わると、丸い緑色の実を結ぶのです。

葉は水仙、花はユリに似た「ナツズイセン」

ナツズイセン(Lycoris squamigera)は、スイセン属の「水仙」に似た葉と球根をもつリコリスの一種。その名の通り、真夏(8月)に花をつけます。ナツズイセンの花は1個1個の見た目が「ユリ」そっくり。薄ピンクの花びらは短く、反り返りません。

日本の山野草「キツネノカミソリ」

キツネノカミソリ(Lycoris sanguinea)は、本州・四国・九州の林に自生する日本原産のリコリス。ユリに似たオレンジ色の花を咲かせます。似た花をつける別種で、ムラサキキツネノカミソリ(Lycoris Sprengeri)というリコリスも存在。こちらは8月に薄紫色の花をつける点で、キツネノカミソリとは違います。

リコリスの一種「彼岸花」は球根で増える赤い花

日本の彼岸花は「リコリス」こと、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物です。数あるリコリスの中で彼岸花を特徴づけるのは、反り返った赤い花びら。他のリコリスは黄色や白色の花を付けたりや、ユリに似た花を付けたりするのです。さらに彼岸花は増え方も独特。自分で種子を作ることができないため、球根から「クローン」を作ります。各地の彼岸花は、人の手で株分けされ、持ち込まれた球根に由来するのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!リコリスと彼岸花の違いとは?彼岸花はリコリスの一種?農学専攻ライターが詳しく解説

この記事でリコリスと彼岸花の違いについてみていきます。2つとも「線香花火のような花を咲かせる植物」というイメージがあるよな。じつは彼岸花はリコリスの一種。ほかにもリコリスと呼ばれる植物があるみたいです。そしてリコリスのなかでも、日本の彼岸花は特殊なんだそう。今回はそんな「リコリス」の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事ではヒガンバナ属(Lycoris)の植物である、リコリスと彼岸花の違いについてわかりやすく解説していく。

リコリスと彼岸花を大まかに比較

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まずはリコリスと彼岸花の生物学的分類について徹底解説。以下を読めば、両者の基本的な生態がわかります。まずは「リコリス」と呼ばれるグループが、どのような特徴をもつのかみていきましょう!

リコリスは属名

「リコリス」は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される複数の植物。属名「Lycoris」にちなんだ総称です。種類ごとに花の見た目が異なり、赤やオレンジ、ピンクなど色とりどりの花を咲かせます。

ですがどのリコリスでも、基本的な生態は一緒。ヒガンバナ属の植物はすべて、地中に球根をもつ多年草なのです。夏から秋にかけて、葉とは別に花のついた茎を出す点でも共通しています。

彼岸花はリコリスの一種

「彼岸花」はヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物で、先述のリコリスの一種。「Lycoris radiata」という学名をもちます。その名の通り、9月ごろ(お彼岸の時期)に赤い花を咲かせるのが特徴です。日本各地に自生している彼岸花の原産地は中国。有史以前、人為的に持ち込まれたと考えられています。

この記事では、彼岸花と他のリコリスとを比較。その具体的な違いについて解説していきます。じつはリコリスの中でも、日本の彼岸花だけは異質。以下を読めば、縁起が悪いと敬遠されがちな彼岸花の生態について詳しくなれますよ!

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