今回のテーマは複雑骨折と開放骨折の違いです。骨自体は痛みを感じないが、その周囲に痛みを感じる受容器が存在するため、骨が折れるほどの大きな力がかかると周囲の神経によって強い痛みを感じるんです。その中でも複雑骨折や開放骨折の違いを、看護師の近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

看護師でWebライター。整形外科の勤務経験はないが、高齢者の圧迫骨折の症例はいくつも経験している。

開放骨折と複雑骨折の違いとは?

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交通事故やスポーツで起こりうる骨折は、骨にヒビが入る程度のものから完全に折れて皮膚から飛び出すものまであります。その中でも複雑骨折と開放骨折の違いを詳しくみていきましょう。

開放骨折:骨折と同時に皮膚も損傷し、骨が露出した状態

開放骨折は折れた骨が皮膚を突き破り、外界と交通している骨折です。傷があるので出血が多い傾向があります。骨はもともと無菌状態ですが、骨が露出してしまったために骨の中に細菌が入り込んでしまい、骨髄炎を起こす可能性が高いです。

皮膚壊死や癒合不全(骨折部がくっつかない、くっつく過程も停止した状態)などの合併症を起こすことが多く、治療が難しい骨折といわれています。

複雑骨折:開放骨折の通称

開放骨折のことで、複雑骨折は通称です。数カ所、骨が折れてバラバラになっているという印象を受けますが、先述した通り、折れた骨が皮膚を突き破って骨が見えている開放骨折をいいます。

粉砕骨折との違いとは?

粉砕骨折は骨が3つ以上に分かれる骨折をいいます。激しいスポーツや交通事故による強い衝撃を外部から受けたのが原因です。骨粗鬆症で骨強度(骨の強さ)が低下し、骨折しやすくなっていると転倒しただけでも起こる可能性があります。

開放骨折以外の骨折とは

折れ方や原因等によって、開放骨折、皮下骨折、完全骨折や不全骨折、疲労骨折、病的骨折、脆弱性骨折などがあります。

\次のページで「骨折の種類」を解説!/

骨折の種類

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開放骨折と違い、骨折部位の皮膚が破れていない場合は皮下骨折(単純骨折)といいます。程度による分類は、骨の連続性が完全に断たれた完全骨折骨にヒビが入った状態で、一部の骨の連続性は断たれているものの、骨全体の形状は保持されているのが不全骨折で、粉砕骨折は完全骨折です。

原因別には疲労骨折、病的骨折、脆弱性骨折があります。ケガによるもの、骨に何度も繰り返し負担がかかることによるのが疲労骨折骨の腫瘍やがんの骨への転移で骨の構造が壊され、通常では骨折しない程度の小さな力でも骨折を起こす病的骨折、骨粗鬆症による骨の構造がもろくなり、尻もちや重いものを持ち上げる動作で骨折するのが脆弱性骨折です。

高齢者の場合、手をついたり尻もちをついただけで骨折することも

高齢になると骨強度低下による骨粗鬆症、筋力低下などによる転倒のしやすさが誘因となり、転倒や手をついたり、尻もちをついただけでも骨折します。高齢者に多い骨折は大腿骨近部骨折(太腿の付け根の骨折)、脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)、上腕骨近位部骨折(腕の付け根の骨折)、橈骨遠位端骨折(手首の骨折)です。

特に背骨の骨折は骨がもろくなっているために、転倒や日常動作の範囲内でも骨が押しつぶされるように圧迫骨折してしまいます。いきなり痛みが出るとは限らず、寝返りなどで背中や腰に痛みを感じることが続いて気づくことがあるほどです。

命に関わる骨折

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骨盤骨折の死亡率は5〜10%とも5〜30%といわれています。骨盤には多くの血管が集まっており、消化管、泌尿器、子宮などの重要な臓器もあるため、骨折部やその周囲の血管損傷による大出血でショック状態になることもあるからです。他にも臓器や神経の損傷、感染症が死因になり得ます。

オーストラリアの研究によると、高齢者は体の中心に近い部分(大腿骨近位部、大腿骨、骨盤、脊椎、肋骨、鎖骨、上腕骨、下腿)を骨折した場合や、糖尿病などの基礎疾患がある場合は死亡リスクが高い調査結果があり、注意する必要があるでしょう。

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開放骨折は俗にいう複雑骨折のことで骨折と同時に皮膚も損傷し、骨が露出した状態

開放骨折とはいわゆる複雑骨折のことで、複雑骨折は通称です。折れた骨が皮膚を突き破り、外界と交通しているのが開放骨折であり、骨が露出してしまうと細菌が入り込んで骨髄炎を起こすことがあります。皮膚壊死や癒合不全なども起こしやすく、治療が難しい骨折です。

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雑学

簡単でわかりやすい!複雑骨折と開放骨折の違いとは?粉砕骨折との違いも看護師ライターが詳しく解説

今回のテーマは複雑骨折と開放骨折の違いです。骨自体は痛みを感じないが、その周囲に痛みを感じる受容器が存在するため、骨が折れるほどの大きな力がかかると周囲の神経によって強い痛みを感じるんです。その中でも複雑骨折や開放骨折の違いを、看護師の近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

看護師でWebライター。整形外科の勤務経験はないが、高齢者の圧迫骨折の症例はいくつも経験している。

開放骨折と複雑骨折の違いとは?

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交通事故やスポーツで起こりうる骨折は、骨にヒビが入る程度のものから完全に折れて皮膚から飛び出すものまであります。その中でも複雑骨折と開放骨折の違いを詳しくみていきましょう。

開放骨折:骨折と同時に皮膚も損傷し、骨が露出した状態

開放骨折は折れた骨が皮膚を突き破り、外界と交通している骨折です。傷があるので出血が多い傾向があります。骨はもともと無菌状態ですが、骨が露出してしまったために骨の中に細菌が入り込んでしまい、骨髄炎を起こす可能性が高いです。

皮膚壊死や癒合不全(骨折部がくっつかない、くっつく過程も停止した状態)などの合併症を起こすことが多く、治療が難しい骨折といわれています。

複雑骨折:開放骨折の通称

開放骨折のことで、複雑骨折は通称です。数カ所、骨が折れてバラバラになっているという印象を受けますが、先述した通り、折れた骨が皮膚を突き破って骨が見えている開放骨折をいいます。

粉砕骨折との違いとは?

粉砕骨折は骨が3つ以上に分かれる骨折をいいます。激しいスポーツや交通事故による強い衝撃を外部から受けたのが原因です。骨粗鬆症で骨強度(骨の強さ)が低下し、骨折しやすくなっていると転倒しただけでも起こる可能性があります。

開放骨折以外の骨折とは

折れ方や原因等によって、開放骨折、皮下骨折、完全骨折や不全骨折、疲労骨折、病的骨折、脆弱性骨折などがあります。

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