病気になって医療機関を受診するときや保険に加入するとき、「既往症」や「持病」について聞かれるよな。「既往症」や「持病」はどちらもかかった病気に関する言葉ですが、厳密な意味は違うみたいです。
今回はこの違いについて、言葉の使い方にこだわるビジネス文書熟練者の西風と一緒に解説していきます。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「既往症」と「持病」の違いとは?

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「既往症」と「持病」は、共に自身の病気に関する情報です。しかし、「既往症」と「持病」は意味が似ているため、「正確な違いがわからない」「適切に使い分けができない」という人も多いのではないでしょうか。

本記事を読めば、2つの違いを理解でき、適切な場面で「既往症」と「持病」を使い分けられるようになるでしょう。ぜひ最後まで読んで、通院時や保険加入時に聞かれたときの参考にしてください。

「既往症」は過去にかかっていた病気

「既」はすでに・もうという意味を持つ漢字です。「往」という漢字は、過去に行ったり過去のある時期に向かったりするという意味を持ちます。そして「症」は病気または病気の症状という意味を持つ漢字です。これら3つの漢字が合わさり成り立つ「既往症」という言葉は、過去にすでにかかったことがあり、現在では治癒している病気、または病気の症状を表しています。

「持病」は現在かかっている病気

「持」は所有する・抱えるという意味を持つ漢字です。「病」という漢字は、病気や病気の状態という意味を持ちます。この2つの漢字が合わさり成り立つ「持病」は、現在抱えている病気を表す言葉です。

「既往症」の意味と具体例

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ここから「既往症」と「持病」の違いに着目してくわしく見ていきましょう。

「既往症」の意味

「既往症」を辞書でくわしく調べてみると、以下のような意味だとわかります。

これまでにかかったことのある病気で、現在は治癒しているもの。既往歴。

引用:デジタル大辞泉

\次のページで「「既往症」の具体例」を解説!/

「既往症」を構成する漢字が表すとおり、すでにかかったことのある病気を表しています。ポイントは、現在は治癒しているという点です。

「既往症」の具体例

過去にかかっていて現在は治癒している病気を表す「既往症」の具体例は以下のとおりです。

・過去に高血圧と診断され治療していたが、生活習慣の改善により血圧が改善し、治療が終了したもの
・薬や食べ物によるアレルギー反応でかゆみがでたため通院治療していたが、現在はかゆみがでていないため通院治療が終了したもの
・出産のため産婦人科に通院していたが、子供が生まれ通院を終了したもの

「既往症」は、過去に病院に定期的に通院したり、ある程度の期間続けて治療を受けていたりした病気または症状と捉えるとよいでしょう。具体例として上げた1つ目は病気に関する「既往症」ですが、2つ目と3つ目は病気ではありません。しかし、通院・治療を受けているため、広義の意味では「既往症」に含まれます。

「持病」の意味と具体例

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ここまで「既往症」について解説しました。ここからは「既往症」との違いに着目しながら、「持病」についてくわしく見ていきましょう。

「持病」の意味

「持病」を辞書でくわしく調べてみると、以下のような意味だとわかります。

1.なかなか治らず、常に、または時々起こる病気。宿痾(しゅくあ)。痼疾(こしつ)。「―の神経痛に苦しむ」
2.身について直らない悪い癖。「―の癇癪(かんしゃく)が出る」

引用:デジタル大辞泉

\次のページで「「持病」の具体例」を解説!/

本記事で取り扱っている「持病」には1の意味が該当します。「持病」は現在も通院・治療を継続している病気です。「既往症」はすでに通院・治療が終了しているのに対し、「持病」は現在も継続している点が異なります。

「持病」の具体例

現在も通院・治療を継続している「持病」の具体例は以下のとおりです。

・通院して食事指導や運動治療、薬物治療をおこなっている高血圧症や糖尿病などの生活習慣病
・通院して放射線治療や薬物治療をおこなっているがん
・週3回通院して血液透析をおこなっている腎不全

上記事例はすべて現在通院・治療を継続しているものです。これらが治療により完治し、通院・治療が不要な状態になれば「既往症」にかわります。

「既往歴」との違い

他にも似たような言葉が存在している「既往症」と「持病」。その1つである「既往歴」の意味を辞書で調べると、以下のように掲載されています。

⇒既往症

引用:デジタル大辞泉

\次のページで「「病歴」の意味」を解説!/

つまり、「既往歴」は「既往症」と意味は同じです。「既往歴」に含まれる「歴」という漢字は、経てきた跡という意味を持っています。「既往歴」には病気や症状を表す漢字は含まれていませんが、過去にかかっていた病気を表す意味は同じです。

「病歴」の意味

「既往歴」の他にも、似た言葉としてよく聞くのが「病歴」です。「病歴」を辞書でくわしく調べてみると、以下のような意味だとわかります。

患者の既往症・現症・経過・検査所見・治療などの記録。カルテに記載される。

引用:デジタル大辞泉

辞書の内容からもわかるとおり、「病歴」には「既往症」や「持病(=現症)」が含まれています。「既往症」や「持病」の他にも、現在に至る経過や各種検査所見、実施した治療などカルテに記載されるものを包括して表しているのが「病歴」です。

なお、「病歴」という言葉が「現病歴」と変化したものは、「持病」である病気や症状だけでなく、「持病」が現在に至った経過などの履歴も含めたものを意味しています。

どちらも自身がかかった病気だが、時間軸が異なると認識しよう

「既往症」と「持病」の違いについてくわしく見てきました。2つとも自身がかかった病気を表すという意味では同じですが、「既往症」は過去にかかった病気で現在治癒しているものを、「持病」は現在も治療が継続している病気を表す点で時間軸が異なります。また、「既往症」や「持病」と似た言葉である「既往歴」は「既往症」と同じ意味であり、「病歴」は「既往症」や「持病」を包括した大きな意味を持つ言葉だということもわかりました。同じような意味の言葉でもそれぞれ詳細は異なる…くわしく調べるほどに日本語の面白さを感じずにはいられませんね。

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3分で簡単にわかる「既往症」と「持病」の違い!意味や具体例・「既往歴」「病歴」との違いもビジネス文書熟練者が解説!

病気になって医療機関を受診するときや保険に加入するとき、「既往症」や「持病」について聞かれるよな。「既往症」や「持病」はどちらもかかった病気に関する言葉ですが、厳密な意味は違うみたいです。
今回はこの違いについて、言葉の使い方にこだわるビジネス文書熟練者の西風と一緒に解説していきます。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「既往症」と「持病」の違いとは?

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「既往症」と「持病」は、共に自身の病気に関する情報です。しかし、「既往症」と「持病」は意味が似ているため、「正確な違いがわからない」「適切に使い分けができない」という人も多いのではないでしょうか。

本記事を読めば、2つの違いを理解でき、適切な場面で「既往症」と「持病」を使い分けられるようになるでしょう。ぜひ最後まで読んで、通院時や保険加入時に聞かれたときの参考にしてください。

「既往症」は過去にかかっていた病気

「既」はすでに・もうという意味を持つ漢字です。「往」という漢字は、過去に行ったり過去のある時期に向かったりするという意味を持ちます。そして「症」は病気または病気の症状という意味を持つ漢字です。これら3つの漢字が合わさり成り立つ「既往症」という言葉は、過去にすでにかかったことがあり、現在では治癒している病気、または病気の症状を表しています。

「持病」は現在かかっている病気

「持」は所有する・抱えるという意味を持つ漢字です。「病」という漢字は、病気や病気の状態という意味を持ちます。この2つの漢字が合わさり成り立つ「持病」は、現在抱えている病気を表す言葉です。

「既往症」の意味と具体例

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ここから「既往症」と「持病」の違いに着目してくわしく見ていきましょう。

「既往症」の意味

「既往症」を辞書でくわしく調べてみると、以下のような意味だとわかります。

これまでにかかったことのある病気で、現在は治癒しているもの。既往歴。

引用:デジタル大辞泉

\次のページで「「既往症」の具体例」を解説!/

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