簡単でわかりやすい!ユスリカと蚊の違いとは?害虫の見分け方も生物学専攻ライターが詳しく解説
民家の光に集まる「不快害虫」
大群で飛行するユスリカは、コンビニや民家の外灯、自販機の明かりに集まる不快害虫。とくに野外に干した洗濯物や布団に「蚊柱」が衝突した場合、その体液が付着してしまいます。またユスリカは、蛾やダニと同じ種類のアレルゲンを保有。その死骸が砕けてできた粉末は、アレルギー体質の人にとって喘息(ユスリカ喘息)の原因となりうるのです。
「びわこ虫」ことオオユスリカは滋賀県・琵琶湖で大量発生する害虫。彼らは名前どおり、体長1cm程度とユスリカ科のなかでは最大級の種です。繁殖期には、なんと2,000個ほどの卵を産み落とします。大量発生したオオユスリカが壁一面にびっしりと張り付く光景は、滋賀県で春・秋にみられる「不快」な風物詩です。
水質を改善する「益虫」の側面ももつ
ユスリカには、川をきれいにしてくれる「益虫」としての顔も。その幼虫は河川の富栄養化の原因となる「栄養塩類」を食べて成長、成虫になると水辺を離れます。結果として川から栄養塩類が取り除かれ、富栄養化が食い止められるのです。先述のオオユスリカにも、琵琶湖の水質を守るという立派な働きがあります。
さらにオオユスリカやアカムシユスリカの幼虫は、魚の飼育に欠かせない存在。ともに「赤虫」として、エサに利用されています。人にとって「不快な虫」であるユスリカは、生態系の大事な構成員でもあるのです。
ネムリユスリカは放射線・乾燥・熱に耐性をもつ
アフリカの乾燥地に生息するネムリユスリカの幼虫は「不死身」です。乾燥状態になると「アンヒドロビオシス」という休眠状態に入ります。休眠状態に入ったネムリユスリカの幼虫は、なんと17年も干からびたまま放置された後でも、水を吸えば息を吹き返すのです。
ほかにも休眠中の幼虫は200度で5分加熱したり、エタノールにつけたりしても死にません。さらに放射線を照射しても、水で戻せば再び動きだします。
アンヒドロビオシスには3つの仕掛けが。それはLEAタンパク質・トレハロース・タンパク質修復酵素です。まずネムリユスリカ幼虫の各細胞は乾燥にさらされると、ほかのタンパク質を包んで保護するLEAタンパク質を合成。さらに血糖のトレハロースを細胞内に蓄積することで、自らをガラス状に変化させて休眠に入ります。水分を吸うと、休眠は解除。タンパク質修復酵素によって受けたダメージから回復します。
見た目だけは似ているユスリカと蚊
ハエ目はカ亜目カ下目のユスリカと蚊は、ともに1対2枚の羽をもつ小さな昆虫。見た目が似ているため、しばしば混同されます。ですがユスリカと蚊の生態は完全に別物。両者の特徴をまとめると、群れで「蚊柱」を作るのがユスリカ、血や草の汁を吸うのが蚊です。お馴染みの「衛生害虫」蚊同様、ユスリカも害虫。大量発生して家の街灯に集まる「不快害虫」なのです。