この記事ではユスリカと蚊の違いについてみていきます。2つとも「同じ見た目の羽虫」というイメージがあるよな。じつは血を吸うのは蚊だけなんです。ユスリカは基本的に無害で、生態系に欠かせない存在です。今回はそんなそっくりな虫の違いを、その見分け方を含めて、大学で昆虫を研究していたライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「見た目の似た羽虫」である、ユスリカと蚊の違いについてわかりやすく解説していく。

ユスリカと蚊を大まかに比較

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まずはユスリカと蚊の、生物学上の分類について比較していきます。彼らの見た目で共通している部分についても軽く紹介。蚊と比べて馴染みの薄いユスリカについて、基礎知識をお伝えします。まずは共通点からみていきましょう!

どちらもハエ目カ亜目カ下目の昆虫

「長い足をもつ」など見た目に類似点の多いユスリカと蚊はどちらも、ハエ目カ亜目カ下目に分類される昆虫。2対4枚の羽をもつ多くの昆虫とは違って、羽を1対2枚しかもちません。ハエ目の昆虫では、後ろ側の2枚の羽が退化。棒状の「平均棍」となっているのです。分類の近いユスリカと蚊では、ライフサイクルも酷似。ともに卵・幼虫・蛹の時期を、水の中で過ごします。

ユスリカと蚊では科が違う

ユスリカと蚊とでは、より細かい分類「科」が違います。具体的にユスリカは「ユスリカ科」に、蚊は「カ科」に分類されるのです。そんな両者では、成虫の生態に大きな違いがいくつか存在。たとえばユスリカは見た目の似ている蚊と違って、動物の血を吸わないのです。

以下この記事では、ユスリカと蚊の具体的な違いを紹介。血を吸う蚊と、血を吸わないユスリカの見分け方についてみていきましょう!

ユスリカと蚊で具体的な違いは4つ

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以下ではユスリカと蚊の、見た目や生態における違いを4つに分けて紹介。血を吸うのはどちらか、蚊柱を作るのはどちらかなど、気になるポイントについても徹底的に解説していきます。まずは成虫のエサについて、みていきましょう!

\次のページで「違い1.食べるもの」を解説!/

違い1.食べるもの

一見すると蚊に似ているユスリカは、全く血を吸いません。それどころか、ユスリカ科の大半の種の成虫では口や消化器が退化。血を吸うメスの蚊や、草の汁を吸うオスの蚊のような、針状の「口吻」がユスリカの成虫ではみられません。血を吸う蚊とは違って、ユスリカは病原体を媒介しないので安心。彼らは何も食べずに、体に蓄えた脂肪だけで生涯を全うする大人しい昆虫なのです。

違い2.発生する時期と場所

そもそもユスリカと蚊とでは、ライフサイクルが完全に別物。同じ時期に同じ場所で両者を見かけることはありません。 まず蚊の成虫は夏の風物詩で、6月から9月にかけて現れます。対してユスリカは年2回発生。4月から5月と9月から10月にその成虫が見られるのです。さらに両者の成虫では寿命も違います。寿命はユスリカのほうがより短く、4、5日程度しかありません。対して蚊の成虫は1〜2ヶ月も生存します。

さらにユスリカと蚊は「湧いてくる」場所にも違いが存在。両者の卵・幼虫・さなぎは、ともに水中で過ごします。ですがユスリカと蚊とでは、好む水域が異なるのです。 ユスリカが河川や水路などの「流水域」を好むのに対し、蚊は雨水マスや排水路、水たまりなど「停滞水域」を好みます。

違い3.飛び方

群れをなして飛行して「蚊柱」を作るのは、蚊ではなくユスリカです。蚊柱はオス成虫がメス成虫に対して取る求愛のサイン。繁殖期にはたった数匹のメスをめぐり、なんと数百匹規模のオスが団結して自らの存在を主張するのです。そんな蚊柱は高く目立つ物体の上に作られます。もし自分の頭上に蚊柱ができた場合、それよりも高いものの近くを通れば群れをそちらに移せますよ。

ユスリカと蚊とでは、飛行時の細かな動きも違います。おなじみの蚊では、高い羽音を立てて素早く飛ぶのが特徴。対してユスリカの成虫は、弱々しくゆっくりと飛行します。両者が集まるものにも違いが。光に対して正の走性をもつ(光に寄ってくる)ユスリカは、コンビニや民家の光に集まってきます。対して血を吸うメスの蚊は、動物が吐く二酸化炭素に対して正の走性をもつのです。

違い4.見た目

一見似ているユスリカと蚊は、意外にも見た目に大きな違いが存在します。それは足の長さ。ユスリカでは前足が長く、体の前方に伸びています。対して蚊の足のうち一番長いのは後ろ足。そして蚊の後ろ足では、上向きに反り返った形が特徴的です。 くわえて手で潰すと「黒い粉」がつくのは蚊だけ。その正体は体の表面についた鱗粉なのです。

ユスリカについてもっと詳しく

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血を吸い病気を媒介する蚊とは、生態が大きく異なるユスリカ。彼らは血を吸わないのにもかかわらず、「害虫」として扱われています。その反面、生態系に欠かせない「益虫」としての顔も。以下では蚊と比べて存在感の薄い「ユスリカ」について、より詳しく解説していきます。

\次のページで「民家の光に集まる「不快害虫」」を解説!/

民家の光に集まる「不快害虫」

大群で飛行するユスリカは、コンビニや民家の外灯、自販機の明かりに集まる不快害虫。とくに野外に干した洗濯物や布団に「蚊柱」が衝突した場合、その体液が付着してしまいます。またユスリカは、蛾やダニと同じ種類のアレルゲンを保有。その死骸が砕けてできた粉末は、アレルギー体質の人にとって喘息(ユスリカ喘息)の原因となりうるのです。

「びわこ虫」ことオオユスリカは滋賀県・琵琶湖で大量発生する害虫。彼らは名前どおり、体長1cm程度とユスリカ科のなかでは最大級の種です。繁殖期には、なんと2,000個ほどの卵を産み落とします。大量発生したオオユスリカが壁一面にびっしりと張り付く光景は、滋賀県で春・秋にみられる「不快」な風物詩です。

水質を改善する「益虫」の側面ももつ

ユスリカには、川をきれいにしてくれる「益虫」としての顔も。その幼虫は河川の富栄養化の原因となる「栄養塩類」を食べて成長、成虫になると水辺を離れます。結果として川から栄養塩類が取り除かれ、富栄養化が食い止められるのです。先述のオオユスリカにも、琵琶湖の水質を守るという立派な働きがあります。

さらにオオユスリカやアカムシユスリカの幼虫は、魚の飼育に欠かせない存在。ともに「赤虫」として、エサに利用されています。人にとって「不快な虫」であるユスリカは、生態系の大事な構成員でもあるのです。

ネムリユスリカは放射線・乾燥・熱に耐性をもつ

アフリカの乾燥地に生息するネムリユスリカの幼虫は「不死身」です。乾燥状態になると「アンヒドロビオシス」という休眠状態に入ります。休眠状態に入ったネムリユスリカの幼虫は、なんと17年も干からびたまま放置された後でも、水を吸えば息を吹き返すのです。

ほかにも休眠中の幼虫は200度で5分加熱したり、エタノールにつけたりしても死にません。さらに放射線を照射しても、水で戻せば再び動きだします。

アンヒドロビオシスには3つの仕掛けが。それはLEAタンパク質・トレハロース・タンパク質修復酵素です。まずネムリユスリカ幼虫の各細胞は乾燥にさらされると、ほかのタンパク質を包んで保護するLEAタンパク質を合成。さらに血糖のトレハロースを細胞内に蓄積することで、自らをガラス状に変化させて休眠に入ります。水分を吸うと、休眠は解除。タンパク質修復酵素によって受けたダメージから回復します。

見た目だけは似ているユスリカと蚊

ハエ目はカ亜目カ下目のユスリカと蚊は、ともに1対2枚の羽をもつ小さな昆虫。見た目が似ているため、しばしば混同されます。ですがユスリカと蚊の生態は完全に別物。両者の特徴をまとめると、群れで「蚊柱」を作るのがユスリカ、血や草の汁を吸うのが蚊です。お馴染みの「衛生害虫」蚊同様、ユスリカも害虫。大量発生して家の街灯に集まる「不快害虫」なのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!ユスリカと蚊の違いとは?害虫の見分け方も生物学専攻ライターが詳しく解説

民家の光に集まる「不快害虫」

大群で飛行するユスリカは、コンビニや民家の外灯、自販機の明かりに集まる不快害虫。とくに野外に干した洗濯物や布団に「蚊柱」が衝突した場合、その体液が付着してしまいます。またユスリカは、蛾やダニと同じ種類のアレルゲンを保有。その死骸が砕けてできた粉末は、アレルギー体質の人にとって喘息(ユスリカ喘息)の原因となりうるのです。

「びわこ虫」ことオオユスリカは滋賀県・琵琶湖で大量発生する害虫。彼らは名前どおり、体長1cm程度とユスリカ科のなかでは最大級の種です。繁殖期には、なんと2,000個ほどの卵を産み落とします。大量発生したオオユスリカが壁一面にびっしりと張り付く光景は、滋賀県で春・秋にみられる「不快」な風物詩です。

水質を改善する「益虫」の側面ももつ

ユスリカには、川をきれいにしてくれる「益虫」としての顔も。その幼虫は河川の富栄養化の原因となる「栄養塩類」を食べて成長、成虫になると水辺を離れます。結果として川から栄養塩類が取り除かれ、富栄養化が食い止められるのです。先述のオオユスリカにも、琵琶湖の水質を守るという立派な働きがあります。

さらにオオユスリカやアカムシユスリカの幼虫は、魚の飼育に欠かせない存在。ともに「赤虫」として、エサに利用されています。人にとって「不快な虫」であるユスリカは、生態系の大事な構成員でもあるのです。

ネムリユスリカは放射線・乾燥・熱に耐性をもつ

アフリカの乾燥地に生息するネムリユスリカの幼虫は「不死身」です。乾燥状態になると「アンヒドロビオシス」という休眠状態に入ります。休眠状態に入ったネムリユスリカの幼虫は、なんと17年も干からびたまま放置された後でも、水を吸えば息を吹き返すのです。

ほかにも休眠中の幼虫は200度で5分加熱したり、エタノールにつけたりしても死にません。さらに放射線を照射しても、水で戻せば再び動きだします。

アンヒドロビオシスには3つの仕掛けが。それはLEAタンパク質・トレハロース・タンパク質修復酵素です。まずネムリユスリカ幼虫の各細胞は乾燥にさらされると、ほかのタンパク質を包んで保護するLEAタンパク質を合成。さらに血糖のトレハロースを細胞内に蓄積することで、自らをガラス状に変化させて休眠に入ります。水分を吸うと、休眠は解除。タンパク質修復酵素によって受けたダメージから回復します。

見た目だけは似ているユスリカと蚊

ハエ目はカ亜目カ下目のユスリカと蚊は、ともに1対2枚の羽をもつ小さな昆虫。見た目が似ているため、しばしば混同されます。ですがユスリカと蚊の生態は完全に別物。両者の特徴をまとめると、群れで「蚊柱」を作るのがユスリカ、血や草の汁を吸うのが蚊です。お馴染みの「衛生害虫」蚊同様、ユスリカも害虫。大量発生して家の街灯に集まる「不快害虫」なのです。

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