簡単でわかりやすい!ユスリカと蚊の違いとは?害虫の見分け方も生物学専攻ライターが詳しく解説
違い1.食べるもの
一見すると蚊に似ているユスリカは、全く血を吸いません。それどころか、ユスリカ科の大半の種の成虫では口や消化器が退化。血を吸うメスの蚊や、草の汁を吸うオスの蚊のような、針状の「口吻」がユスリカの成虫ではみられません。血を吸う蚊とは違って、ユスリカは病原体を媒介しないので安心。彼らは何も食べずに、体に蓄えた脂肪だけで生涯を全うする大人しい昆虫なのです。
違い2.発生する時期と場所
そもそもユスリカと蚊とでは、ライフサイクルが完全に別物。同じ時期に同じ場所で両者を見かけることはありません。 まず蚊の成虫は夏の風物詩で、6月から9月にかけて現れます。対してユスリカは年2回発生。4月から5月と9月から10月にその成虫が見られるのです。さらに両者の成虫では寿命も違います。寿命はユスリカのほうがより短く、4、5日程度しかありません。対して蚊の成虫は1〜2ヶ月も生存します。
さらにユスリカと蚊は「湧いてくる」場所にも違いが存在。両者の卵・幼虫・さなぎは、ともに水中で過ごします。ですがユスリカと蚊とでは、好む水域が異なるのです。 ユスリカが河川や水路などの「流水域」を好むのに対し、蚊は雨水マスや排水路、水たまりなど「停滞水域」を好みます。
違い3.飛び方
群れをなして飛行して「蚊柱」を作るのは、蚊ではなくユスリカです。蚊柱はオス成虫がメス成虫に対して取る求愛のサイン。繁殖期にはたった数匹のメスをめぐり、なんと数百匹規模のオスが団結して自らの存在を主張するのです。そんな蚊柱は高く目立つ物体の上に作られます。もし自分の頭上に蚊柱ができた場合、それよりも高いものの近くを通れば群れをそちらに移せますよ。
ユスリカと蚊とでは、飛行時の細かな動きも違います。おなじみの蚊では、高い羽音を立てて素早く飛ぶのが特徴。対してユスリカの成虫は、弱々しくゆっくりと飛行します。両者が集まるものにも違いが。光に対して正の走性をもつ(光に寄ってくる)ユスリカは、コンビニや民家の光に集まってきます。対して血を吸うメスの蚊は、動物が吐く二酸化炭素に対して正の走性をもつのです。
こちらの記事もおすすめ
魚類や昆虫などに見られる「走性」とは?5つの種類・代表的な動物を現役理系学生が分かりやすくわかりやすく解説
違い4.見た目
一見似ているユスリカと蚊は、意外にも見た目に大きな違いが存在します。それは足の長さ。ユスリカでは前足が長く、体の前方に伸びています。対して蚊の足のうち一番長いのは後ろ足。そして蚊の後ろ足では、上向きに反り返った形が特徴的です。 くわえて手で潰すと「黒い粉」がつくのは蚊だけ。その正体は体の表面についた鱗粉なのです。
ユスリカについてもっと詳しく
image by iStockphoto
血を吸い病気を媒介する蚊とは、生態が大きく異なるユスリカ。彼らは血を吸わないのにもかかわらず、「害虫」として扱われています。その反面、生態系に欠かせない「益虫」としての顔も。以下では蚊と比べて存在感の薄い「ユスリカ」について、より詳しく解説していきます。
\次のページで「民家の光に集まる「不快害虫」」を解説!/