この記事ではルビーとガーネットの違いについて踏み込んでいきます。どちらも赤い宝石というイメージがありますが、鉱物としては全く異なる上、ガーネットの方は赤以外にもさまざまな色があるようです。今回はそんな2つの宝石について、学生時代、固体物理学を学んでいたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、ルビーとガーネットの違いについて分かりやすく解説していく。

ルビーとは

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鮮烈な赤が人々を魅了するルビー。同じく赤い宝石として、ガーネットがあります。両者の違いを明らかにするため、まずはルビーに着目していきましょう。

ルビー(ruby)は7月の誕生石で、透明感のある鮮やかな赤が特徴の宝石です。名前の由来も「」を意味するラテン語「ルベウス(rubeus)」 で、和名は紅玉(こうぎょく)

ルビーは産地が非常に限られ、その価値は色石の中では一番です。また同じ赤でも産地によって違いがあり、ミャンマー産の青みがかった濃い赤のものはピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれ、最高級品とされています。

ルビーの特徴

ルビーはコランダム(鋼玉)と呼ばれる、酸化アルミニウムAl2O3の結晶からなる鉱物の1つです。コランダム自体色はありませんが、不純物によって色が変わり、特にクロムCrが1%ほど混入したものは美しい赤色を呈します。ただしそれ以上クロム量が増えると黒っぽい色合いになり、宝石としての価値もどんどん下がることに。

ルビーと色味が異なるサファイアもコランダムの1つです。鉄Fe・チタンTiが混入したものが青色を示します。

また、コランダムはダイヤモンドに次に硬く、モース硬度9.0です。傷がつきにくいため、宝石としての価値が長く保たれます

モース硬度は19世紀初頭にフリードリッヒ・モースが考案したもので、硬さの異なる10種類の標準鉱物に数字を振り、硬さの尺度としています。1が「最も傷がつきやすい」滑石(タルク)10が「最も硬い」ダイヤモンドです。

ルビーとサファイアの違い

結論から言うと、コランダムのうち赤いものだけがルビーそれ以外の色は全てサファイアです。ピンクサファイア、イエローサファイア、グリーンサファイアなどがあり、特にオレンジとピンクの中間色は希少価値が高くパパラチアサファイアの名がついています。

なお、ルビーとピンクサファイアの間に明確な線引きはありません。そのため、チェリーピンクのような赤とピンクの中間色の場合、ベテランの鑑定士でもルビーかピンクサファイアか見解に違いが出ることがあります。

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宝石以外のルビーの用途

ルビーは高硬度と耐摩耗性を兼ね備え、かつ摩擦も小さいことから、腕時計などの小型精密機械の軸受やレコード針などに利用されています。

世界初のレーザーは合成ルビー結晶を用いたもので、1960年セオドア・メイマンが発明しました。このレーザーはルビーレーザーと呼ばれ、現在でもシミ消しなどの美容医療に用いられています。

また、現在は合成のものにとってかわられましたが、コランダムの中でも見た目の良くないものやほかの鉱物が混ざったものは、エメリーと呼ばれ工業用の研磨材になっていました。横断歩道などの道路表示用の塗料にはエメリーの粉末が入っており、車や人がスリップするのを防いでいます。

合成ルビーについて

世界初の合成宝石は合成ルビーです。その製造法は1902年フランスの化学者オーギュスト・ヴェルヌイユによって発明・発表され、ベルヌーイ法火炎溶融法)と呼ばれます。ほかにもさまざまな製造法が現在までに開発されており、合成ルビーをはじめとする合成宝石は、宝石としてだけでなく工業的にも広く利用されているのです。

研磨材や耐火物材料として使うようなコランダムは、酸化アルミニウムを含む鉱石ボーキサイトを原材料とし、低コストの方法で作られます。

合成宝石は天然宝石と同じ物質で作られ、物理的性質も天然のものと同じです。対して模造宝石は、ガラスやアクリル、より安価な宝石など代替材料で作られています。

ガーネットとは

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ガーネット(garnet)は1月の誕生石です。深い赤の宝石というイメージがありますが、実はさまざまな色があり、青以外の色は大体そろっています。ラテン語で「粒、種子」を意味する「グラナトゥス(granatus)」が語源で、和名は柘榴石(ざくろいし)です。

赤系のアルマンディンガーネットの産出量が多いため、比較的安価と思われていますが、ダイヤモンドのような強いきらめきを持つ緑系のデマントイドガーネットなど、希少価値が高いものも多数あります。

ガーネットの特徴

ガーネットは宝石の名称であるのと同時に、共通の化学組成を持ったケイ酸塩鉱物のグループ名でもあります。一般式はX3Y2(SiO4)3で、XはカルシウムCa・マグネシウムMn・鉄Fe(二価)・マンガンMn(二価)など、Yは鉄(三価)・アルミニウム・クロム(三価)・チタンなどです。2013年にはX3Y2(ZO4)3の組成もガーネットに定義され、Zにはヒ素As・バナジウムV・アルミニウム・鉄(三価)などが入ります。

モース硬度は種類によって異なり、6.5から7.5です。

\次のページで「ガーネットの種類」を解説!/

ガーネットの種類

ガーネットは化学組成により分類することができます。代表的な6種類を紹介しましょう。

アルマンディン:鉄礬(てつばん)柘榴石 Fe3Al2(SiO4)3
最も産出量が多く、ポピュラーなガーネットです。鉄により深い赤色を示します。
パイロープ:苦礬(くばん)柘榴石 Mg3Al2(SiO4)3
ギリシャ語で炎を意味する「ピロポス」から。明るい赤色です。
スペサルティン:満礬(まんばん)柘榴石 Mn3Al2(SiO4)3
マンガンによりオレンジ系の色味を持ちます。
グロッシュラー:灰礬(かいばん)柘榴石 Ca3Al2(SiO4)3
色の展開が多く、オレンジ、茶、黄色、緑、紫、ピンクなどがあります。
アンドラダイト:灰鉄(かいてつ)柘榴石 Ca3Fe2(SiO4)3
緑系。デマントイドなどが属します。
ウバロバイト:灰クロム柘榴石 Ca3Cr2(SiO4)3
緑系。結晶が大変小さいため、宝石というより鉱物標本として扱われます。

ガーネットは互いに混じり合うことが多く、例えば赤紫色のロードライトガーネットはアルマンディンとパイロープが混ざっています。アレキサンドライトのように色が変わるカラーチェンジガーネットは、パイロープとスペサルティンの中間です。

宝石以外のガーネットの用途

ガーネットも比較的高い硬度を持つため、ルビー(コランダム)同様に研磨材として使われます。代表的なものが木工などで使う紙やすりで、現在は合成の材料になっていますが、かつては砕いた天然ガーネットが用いられていました。

ルビー、ガーネットによく似た宝石

ルビーやガーネットのほかにも、赤色の宝石があります。特に間違えられやすい2つを紹介しましょう。

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スピネル:18世紀までルビーと混同

スピネル(spinel)もガーネットと同じ、同じ結晶構造を持つ鉱物グループの総称です。中でも宝石として扱われるのが苦土スピネルで、化学組成は MgAl2O4で表されます。ラテン語で「とげ」を意味する「スピーナ(spina)」が名前の由来で、和名は尖晶石(せんしょうせき)

スピネルは色のバリエーションが豊富で、最も知られているのはレッドスピネルです。ルビー同様、少量のクロムにより赤く発色します。

レッドスピネルはルビーと同じ産地で採れることが多く、長らくルビーと混同されてきました。両者が異なるものだと分かったのは18世紀後半で、有名なルビーのいくつかはスピネルであることが明らかになっています。

ルベライト:語源がルビーと酷似

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宝石として扱われるトルマリン(電気石)のうち、ルビーのような鮮やかな赤や濃いピンクのものをルベライト(rubellite)といいます。赤色は不純物のマンガンによるもので、名前の由来はラテン語で「赤味を帯びた」を意味する「ルベリウス(rubellus)」です。和名は紅電気石

ルビーは赤のみ、ガーネットは赤以外にも豊富な色展開

ルビーとガーネットは鉱物的に全く異なること、ルビーは赤のコランダムのみと定義されていますが、ガーネットは様々な種類があり、色のバリエーションが豊富であることを説明しました。

同じように見えて実は異なるものだったり、異なるように見えて実は同じものだったりと、宝石は美しさだけでなく鉱物としての魅力にもあふれています。自分の誕生石など、興味のある宝石について詳しく調べてみると、新たな発見があるかもしれませんね。

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3分で簡単にわかるルビーとガーネットの違い!色や価値、スピネルとの違いも工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事ではルビーとガーネットの違いについて踏み込んでいきます。どちらも赤い宝石というイメージがありますが、鉱物としては全く異なる上、ガーネットの方は赤以外にもさまざまな色があるようです。今回はそんな2つの宝石について、学生時代、固体物理学を学んでいたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、ルビーとガーネットの違いについて分かりやすく解説していく。

ルビーとは

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鮮烈な赤が人々を魅了するルビー。同じく赤い宝石として、ガーネットがあります。両者の違いを明らかにするため、まずはルビーに着目していきましょう。

ルビー(ruby)は7月の誕生石で、透明感のある鮮やかな赤が特徴の宝石です。名前の由来も「」を意味するラテン語「ルベウス(rubeus)」 で、和名は紅玉(こうぎょく)

ルビーは産地が非常に限られ、その価値は色石の中では一番です。また同じ赤でも産地によって違いがあり、ミャンマー産の青みがかった濃い赤のものはピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれ、最高級品とされています。

ルビーの特徴

ルビーはコランダム(鋼玉)と呼ばれる、酸化アルミニウムAl2O3の結晶からなる鉱物の1つです。コランダム自体色はありませんが、不純物によって色が変わり、特にクロムCrが1%ほど混入したものは美しい赤色を呈します。ただしそれ以上クロム量が増えると黒っぽい色合いになり、宝石としての価値もどんどん下がることに。

ルビーと色味が異なるサファイアもコランダムの1つです。鉄Fe・チタンTiが混入したものが青色を示します。

また、コランダムはダイヤモンドに次に硬く、モース硬度9.0です。傷がつきにくいため、宝石としての価値が長く保たれます

モース硬度は19世紀初頭にフリードリッヒ・モースが考案したもので、硬さの異なる10種類の標準鉱物に数字を振り、硬さの尺度としています。1が「最も傷がつきやすい」滑石(タルク)10が「最も硬い」ダイヤモンドです。

ルビーとサファイアの違い

結論から言うと、コランダムのうち赤いものだけがルビーそれ以外の色は全てサファイアです。ピンクサファイア、イエローサファイア、グリーンサファイアなどがあり、特にオレンジとピンクの中間色は希少価値が高くパパラチアサファイアの名がついています。

なお、ルビーとピンクサファイアの間に明確な線引きはありません。そのため、チェリーピンクのような赤とピンクの中間色の場合、ベテランの鑑定士でもルビーかピンクサファイアか見解に違いが出ることがあります。

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