この記事では「報復」と「復讐」の違いについてみていきます。どちらも何かしらの被害を受けた時にする仕返しに対して使われる言葉で、何となくの意味は知っているつもりでも、違いは何かと聞かれると答えに困る人は少なくないでしょう。今回は漢字から英語ではそれぞれなんと言うかまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

報復と復讐のざっくりした違い

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まずは「報復」「復讐」のおおまかな違いについて説明しましょう。どちらも何かしらの被害を受け、そのときに行われる仕返しに対して使われる言葉ですね。

その中で「報復」がどちらかと言えば仕返しの行為的な面に重きをおくのに対し、「復讐」精神的な面に対して重きをおくときに使われることの多い言葉だという点にわずかな違いがあります。と言われても、まだあまり違いがピンとこない方も多いかと思うので、今回はそれをていねいに説明していきましょう。

報復と復讐の漢字を説明

さきほど「報復」仕返しの行為的な側面「復讐」精神的、心理的な側面に重きをおいた言葉であることを説明しましたね。それでは、ここからはそれぞれの言葉に対して、より理解を深めるため、それぞれの漢字について説明していきたいと思います。

「復」は同じ道を何度も行き来すること

まずは「報復」「復讐」、その両方に使われている「復」という字について説明しましょう。「復」の右側は、計量につかう容器を逆さまにひっくり返す様子、あるいはふくれたり重なったりすることを表すなどと考えられ、くり返すことや元にもどすことを意味します。

また「ぎょうにんべん」であることから、同じ道を行ったり来たりすることを意味するところから成り立ったと考えられる漢字です。このようなパーツから構成されているので、「復」という字は「はじめにかえること」「もとへ戻ること」を意味するようになったのでしょう。

「報」は罪人に手かせをつけて罰すること

つぎに「報復」「報」の字について説明しましょう。「報」とは、自分がされたことに対し、相手にそれ相応のことをして返す「むくいる」という意味をもつ漢字です。

「報」の左側の「幸」は「幸せ」の字と同じ形ですが、そもそも「幸せ」というのは罪人にかけられた「手かせ」(木で作られた、今で言う手錠のこと)を原形として作られたとも考えられています。

ですから、この「幸」は「幸せ」という意味ではなく、「手かせ」というもの自体を表していて、右側は「反」という漢字に似ていますがそれとは関係なく、ひざまずいている人を手で押さえつける形が変形していき、この形になりました。このように、「報」という字はもともと罪人を捕まえ、手かせをつけてひざまずかせ、おかした罪にふさわしいだけの罰を与えることを表すので、「むくいる」という意味や読みで使われる漢字なのです。

\次のページで「「讐」は鳥を並べて言い合うこと」を解説!/

「讐」は鳥を並べて言い合うこと

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今度は「復讐」「讐」について説明しましょう。上にある二つの「隹」は「鳥」のことで、これを二つ並べることで「対等」や「平等」をあらわしていると考えられます。そして「讐」という字は、その下に「言」があることで、対等な立場で言い合うところから「あだ」「かたき」、あるいは「むくいる」「こたえる」などという意味や読み方をされるようになったのです。

報復と復讐の違いはどこから生まれる?

ここまで「報復」と「復讐」に使われているそれぞれの漢字について説明してきましたが、それでは「報復」「復讐」の違いはどこから生まれたのでしょう?

それは、「報」という字が相手の罪に対してふさわしい罰を与えることという意味を持つ点から、個人的な感情より、処罰的なイメージが強くなったり、「報復行為」という言葉もあることから「報復」=「行為的」という結びつきが強くなっているのかもしれません。

また、さきほど説明したように「讐」という字には「あだ」「かたき」という意味を持っているので、より個人的な感情という印象を持たせるのかもしれませんね。このように、それぞれの言葉に対してのイメージをふくらませることで、「報復」仕返しの行為的な側面「復讐」精神的、心理的な側面に重きをおいた言葉だという理解が深まったのではないでしょうか。

報復と復讐は英語では何と言う?

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ここまでは「報復」と「復讐」を日本語の視点から考えてきましたが、それでは「報復」と「復讐」は英語では何と言い、どのような違いがあるのでしょう?ずばり説明すると、「報復」は英語で「retaliation」「retribution」、復讐は「revange」などと訳されています。

「報復」に使われる「retaliation」は日本語と同じように、仕返しの行為的な側面に重きを置いた言葉で、「retribution」「tribute(割り当てるもの)」をイメージに含む言葉なので悪い行いに対する報いが返ってくるというニュアンスです。一方の「revange」も、日本語でいう「復讐」と同じく、仕返しにおいて心理的、精神的な側面に重きを置いた言葉で、「復讐心」の訳にも使われます。ただし、「報復」の英訳に「revange」が使われることなどもあり、これらの使い分けは必ずしも厳密には行われていません。

「retaliation」=行為的な側面に重きを置いた「仕返し」。
「retribution」=悪い行いに対する返ってくる報い。
「revange」=心理的、精神的な側面に重きを置いた「仕返し」。復讐心。

報復は行為的、復讐は精神、心理的!

今回、漢字の成り立ちや構成、そして英語ではどのような単語で訳されているかを学ぶことで、「報復」と「復讐」の違いが、「報復」がどちらかと言えば仕返しの行為的な面に重きをおくのに対し、「復讐」精神的な面に対して重きをおくときに使われることが多いことを知っていただけたのではないでしょうか。

とはいえ、英語の解説においても説明しましたが、「報復」と「復讐」は日本語においても必ずしも厳密に使い分けされているわけではありません。ですから、そこまで神経質になる必要はないでしょう。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
" /> 簡単でわかりやすい!報復と復讐の違いとは?漢字の意味や英語表現も現役塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!報復と復讐の違いとは?漢字の意味や英語表現も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「報復」と「復讐」の違いについてみていきます。どちらも何かしらの被害を受けた時にする仕返しに対して使われる言葉で、何となくの意味は知っているつもりでも、違いは何かと聞かれると答えに困る人は少なくないでしょう。今回は漢字から英語ではそれぞれなんと言うかまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

報復と復讐のざっくりした違い

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まずは「報復」「復讐」のおおまかな違いについて説明しましょう。どちらも何かしらの被害を受け、そのときに行われる仕返しに対して使われる言葉ですね。

その中で「報復」がどちらかと言えば仕返しの行為的な面に重きをおくのに対し、「復讐」精神的な面に対して重きをおくときに使われることの多い言葉だという点にわずかな違いがあります。と言われても、まだあまり違いがピンとこない方も多いかと思うので、今回はそれをていねいに説明していきましょう。

報復と復讐の漢字を説明

さきほど「報復」仕返しの行為的な側面「復讐」精神的、心理的な側面に重きをおいた言葉であることを説明しましたね。それでは、ここからはそれぞれの言葉に対して、より理解を深めるため、それぞれの漢字について説明していきたいと思います。

「復」は同じ道を何度も行き来すること

まずは「報復」「復讐」、その両方に使われている「復」という字について説明しましょう。「復」の右側は、計量につかう容器を逆さまにひっくり返す様子、あるいはふくれたり重なったりすることを表すなどと考えられ、くり返すことや元にもどすことを意味します。

また「ぎょうにんべん」であることから、同じ道を行ったり来たりすることを意味するところから成り立ったと考えられる漢字です。このようなパーツから構成されているので、「復」という字は「はじめにかえること」「もとへ戻ること」を意味するようになったのでしょう。

「報」は罪人に手かせをつけて罰すること

つぎに「報復」「報」の字について説明しましょう。「報」とは、自分がされたことに対し、相手にそれ相応のことをして返す「むくいる」という意味をもつ漢字です。

「報」の左側の「幸」は「幸せ」の字と同じ形ですが、そもそも「幸せ」というのは罪人にかけられた「手かせ」(木で作られた、今で言う手錠のこと)を原形として作られたとも考えられています。

ですから、この「幸」は「幸せ」という意味ではなく、「手かせ」というもの自体を表していて、右側は「反」という漢字に似ていますがそれとは関係なく、ひざまずいている人を手で押さえつける形が変形していき、この形になりました。このように、「報」という字はもともと罪人を捕まえ、手かせをつけてひざまずかせ、おかした罪にふさわしいだけの罰を与えることを表すので、「むくいる」という意味や読みで使われる漢字なのです。

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