この記事ではモルタルとセメントの違いについてみていきます。2つとも「水で固まる建築資材」というイメージがあるよな。じつはモルタルはセメントの一種から作られる。そしてわれわれが思い浮かべる灰色のセメント以外にも、広義のセメントが存在するみたいです。今回はそんな建築資材の違いを、高校・大学と理系一筋のライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では石灰石から作られる建築資材、モルタルとセメントの違いについてわかりやすく解説していく。

モルタルとセメントを大まかに比較

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まずは建築やDIYに欠かせないモルタルとセメントが、どのような資材であるか解説します。まずは私たちが、普段「セメント」と呼んでいるものの正体について、みていきましょう!

多種多様な「セメント」

「セメント」とは、水に混ぜると固まる性質(水硬性)を持った粉のこと。その種類は多岐に渡りますが、日本で販売されているものの70%を占める「ポルトランドセメント」を指して「セメント」と呼ぶことがほとんどです。

ポルトランドセメントは、固まると「灰色の石」のような見た目になります。風合いがイギリス・ポルトランド島の「ポルトランド石」に似ていたので、その名が付けられました。

「モルタル」は一部のセメントから作られる

先述の「ポルトランドセメント」から作られるのが「モルタル」です。モルタルは、きめ細かいセメントに粒の荒い砂を混ぜたもの。セメントの水硬性によって、モルタルは放置すると固まります。乾燥しても収縮しにくいため、物体に塗りつけやすいのがその長所。モルタルはおもに、コンクリートブロックやレンガ、タイルの接着に用いられる建築資材です。

以下この記事では、モルタルとセメントの具体的な違いを3つ紹介。さらに「変わり種のセメント」についてもみていきましょう!

モルタルとセメントの具体的な違い

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ここではモルタルとセメントの、具体的な違いを3つ紹介。 身近な建築資材について、詳しく掘り下げていきます。まずはセメントが具体的に、どのようにして作られているのかみていきましょう!

\次のページで「違い1.原材料」を解説!/

違い1.原材料

ポルトランドセメントは、複数の物質からなる「灰色の粉末」です。 主な原材料は「クリンカ」 と呼ばれる、石灰石と粘土を混ぜて焼いたかたまり。砕いたクリンカと石膏の粉末を混ぜると、一般的なセメントになります。「混合セメント」といって、製鉄所から出た酸化鉄(スラグ)や発電所から出た焼却灰(フライアッシュ)が混ぜられたものも。以上のセメントは、次のモルタルやコンクリートの原材料です。

上記のポルトランドセメントに、砂(細骨材)と水を混ぜると「モルタル」になります。「セメント:砂」の具体的な比率は、1:2から1:3。 「樹脂系モルタル」といって、アクリル樹脂やエポキシ樹脂が加えられることもあります。

違い2.性質

セメント最大の特徴は「水硬性」です。 炭酸カルシウムなど様々な物質が混じり合ったクリンカの性質により、セメントは水に混ざると固まります。この水硬性により、ものを接着させられるのです。強アルカリ性の水酸化カルシウムを豊富に含むため、固まる前のセメント粉末は粘膜や皮膚に対して刺激性を示します。また外気にさらして保管した粉末は、空気中の水分を吸着。なかなか固まりません。

モルタルはセメントゆずりの「柔軟性」をもちます。さらに振動に対する耐久性や耐火性もモルタルの強み。日本では関東大震災以降に、木造建築の防火素材として受け入れられた歴史があります。材料に樹脂を混ぜることで、モルタルの性能はさらに向上。乾燥収縮への耐性や防水性を獲得し、強度も一層高くなります。

違い3.用途

収縮の度合いが大きく、固まると亀裂が入りやすいセメントは単体では使えません。砂利や砂など「骨材」と「水」と一緒に混ぜる必要があるのです。セメントに、砂(細骨材)を混ぜたものがモルタル。そして砂のほかに砂利(粗骨材)を混ぜたものがコンクリートです。

モルタルは万能選手。コンクリートブロックやレンガ、タイルの接着剤としてだけでなく、建物の装飾に使うことも可能。仕上げ剤として、壁の表面にモルタルを塗布するのです。リシン仕上げやスタッコ仕上げのように塗り方次第で、外壁にさまざまな模様をつけることもできます。

奥が深いセメントの世界

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ここではモルタルの原材料である「セメント」について、より詳しく解説。普段私たちが目にする「ポルトランドセメント」以外のセメントについても、取り上げていきます。まずは、セメントの要「クリンカ」を構成するものについてみていきましょう!

セメントの原料「クリンカ」とは

セメントの水硬性を生み出すのは「クリンカ」です。クリンカ中の複数の物質は、水に溶けると異種の分子同士で結合。原材料のクリンカが各物質を緻密なバランスで含んでいるため、セメントは雨天下や海辺でも固まるのです。

さらにクリンカ中の物質のバランスを変えると、固化までの時間や固化後の硬さが変化。そんな各物質はエーライト・ビーライト・アルミネート相・フェライト相と呼び分けられています。

\次のページで「実は環境にやさしいセメント」を解説!/

実は環境にやさしいセメント

セメントに含まれる石灰石は、下処理「焼成」の工程で二酸化炭素を放出。地球温暖化の原因になっています。しかしセメントそのものは、サステナブルな素材。下水処理場の汚泥や石炭灰など「廃棄物」を混ぜてカサ増しできるのです。この「混合セメント」には、ポートランドセメントにない長所があります。

主流の混合セメントは以下の2種。まず最もメジャーなのは、製鉄所由来の酸化鉄(スラグ)を含む「高炉セメント」です。その特徴は、水にさらされ続けると硬くなるというもの。セメント中の水酸化カルシウムと酸化鉄が、徐々に水和・固化していきます。もうひとつは、発電所の石炭灰を含む「フライアッシュセメント」。灰に含まれる二酸化珪素により、緻密なセメントになるのが特徴です。

変わり種のセメント

ほかには「クリンカを使わないセメント」も存在します。最も代表的なものは、ボーキサイトと石灰石から作られる「アルミナセメント」です。このセメントの強みは、混ぜた後すぐに高強度を発揮すること。おもに緊急工事に用いられます。さらにアルミナセメントは耐火性・耐酸性にも優れており、化学工場や耐火物の建設にもうってつけです。

古代エジプトのピラミッドに用いられた「気硬性セメント」も、クリンカを使わないセメント。酸化亜鉛とリン酸が反応して固まる歯科用のセメントも広義のセメントです。ひとくちに「セメント」といっても、その種類は多岐にわたります。

「ポルトランドセメント」がモルタルの主な材料

代表的なセメントであるポルトランドセメントは、水と反応して固まります。 その主な原材料「クリンカ」中の、水酸化カルシウムとほかの様々な物質とが水和することで、「水硬性」を示すのです。そんなポルトランドセメントに砂を混ぜたものがモルタル。 ポルトランドセメントゆずりの水硬性により、レンガの接着剤や壁の装飾剤に向くのがモルタルの特徴です。

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雑学

簡単でわかりやすい!モルタルとセメントの違いとは?材料や性質、種類も理系ライターが詳しく解説

この記事ではモルタルとセメントの違いについてみていきます。2つとも「水で固まる建築資材」というイメージがあるよな。じつはモルタルはセメントの一種から作られる。そしてわれわれが思い浮かべる灰色のセメント以外にも、広義のセメントが存在するみたいです。今回はそんな建築資材の違いを、高校・大学と理系一筋のライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では石灰石から作られる建築資材、モルタルとセメントの違いについてわかりやすく解説していく。

モルタルとセメントを大まかに比較

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まずは建築やDIYに欠かせないモルタルとセメントが、どのような資材であるか解説します。まずは私たちが、普段「セメント」と呼んでいるものの正体について、みていきましょう!

多種多様な「セメント」

「セメント」とは、水に混ぜると固まる性質(水硬性)を持った粉のこと。その種類は多岐に渡りますが、日本で販売されているものの70%を占める「ポルトランドセメント」を指して「セメント」と呼ぶことがほとんどです。

ポルトランドセメントは、固まると「灰色の石」のような見た目になります。風合いがイギリス・ポルトランド島の「ポルトランド石」に似ていたので、その名が付けられました。

「モルタル」は一部のセメントから作られる

先述の「ポルトランドセメント」から作られるのが「モルタル」です。モルタルは、きめ細かいセメントに粒の荒い砂を混ぜたもの。セメントの水硬性によって、モルタルは放置すると固まります。乾燥しても収縮しにくいため、物体に塗りつけやすいのがその長所。モルタルはおもに、コンクリートブロックやレンガ、タイルの接着に用いられる建築資材です。

以下この記事では、モルタルとセメントの具体的な違いを3つ紹介。さらに「変わり種のセメント」についてもみていきましょう!

モルタルとセメントの具体的な違い

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ここではモルタルとセメントの、具体的な違いを3つ紹介。 身近な建築資材について、詳しく掘り下げていきます。まずはセメントが具体的に、どのようにして作られているのかみていきましょう!

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