壊死は聞いたことがあるかもしれないが、壊疽は聞いたことがない人も多いのではないでしょうか?様々な理由で起こりうる現象です。この違いや治るかどうかなどを含めて看護師の近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

看護師とWebライターの二刀流を目指している。BMIが肥満の域に突入したのに運動をサボってしまいがち。

壊死と壊疽の違いとは

壊死と壊疽(えそ)には違いがあり、原因は様々です。まず壊死が起こり壊疽へと変化する場合があります。その違いを詳しくみていきましょう。

壊死とは細胞の一部が死滅すること

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derivative work: Chaldor (talk) Rowland_recluse_bite.jpg: Jeffrey Rowland from Easthampton, MA, USA - Rowland_recluse_bite.jpg, CC 表示 2.0, リンクによる

壊死とは、様々な原因により細胞が虚血状態(血液量が不足すること)に陥って血液が細胞に届かなくなり、細胞の一部が死に至ることです。虚血状態になる原因は、酸欠、栄養の欠乏、痛風(高尿酸血症)、熱傷、事故、血管が狭くなったり詰まったり圧迫されたことによる血流量低下、化学物質の影響や蛇などに咬まれた、などがあります。

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壊疽とは体に付着したまま壊死した組織に起こる変化

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James Heilman, MD - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

体に付着したまま壊死した組織に起こる次の変化が壊疽です。壊疽には、そのまま水分が蒸発し乾燥してミイラ化する乾性壊疽と、壊死組織を栄養源として細菌が増殖し、周囲の正常な組織に感染を起こす湿性壊疽の2種類があります。

壊死・壊疽部分はデブリードマンを行う

壊死した組織はデブリードマンを行います。デブリードマンとは死滅した細胞や感染をともなう場合など、その部分を除去する治療行為です。壊死部分だけでなく、壊疽部分にも実施します。壊死・壊疽を起こした部分をそのままにしていても治ることはありません。

デブリードマンには5つの方法があり、ハイドロコロイド 材などを用いた閉鎖性ドレッシング、高圧洗浄などの機械的方法、ブロメライン軟膏などを使用した蛋白分解酵素による方法外科的方法、ウジなどによる生物学的方法です。

糖尿病で足を失う可能性がある?

糖尿病合併症によって腎不全や失明のほかに足切断を余儀なくされるケースがあります。その始まりは小さなケガややけど、通常なら重症化しないタコや水虫なのです。その理由を詳しく解説していきます。

糖尿病の怖い合併症

糖尿病の合併症には糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があり、高血糖状態が続くと血管が脆くなり血流量が低下します。この状態が網膜に起こると視力低下や視野狭窄、最悪失明に至るのが糖尿病網膜症です。厄介なことに末期になるまで自覚症状がほとんどありません。

また高血糖状態は動脈硬化を進行させ、腎臓の糸球体の毛細血管が壊れたり詰まったりさせる原因になります。その結果、老廃物を濾過ができなくなるほか、腎臓の働きである電解質のバランスを保つことや血圧調節などの機能が低下し、最終的に腎不全に至るのが糖尿病腎障害です。腎不全状態になると、専用の機械で腎臓の代わりをする透析療法をしなければならなくなります。

最も多い合併症が糖尿病神経症です。高血糖により末梢神経の正常な代謝が障害され、神経に栄養を送る血管の血流低下を起こすことが原因といわれています。

軽視してはいけない神経障害

神経障害では末梢神経が侵されます。末梢神経は熱い・冷たい・痛いなどを感じる感覚神経、手足や顔などの動きなどを司る運動神経、内臓の働きや血圧などを調整する自律神経があり、これらが障害された場合の症状は発汗異常・排尿障害・こむら返り(足がつる)・下痢・便秘・しびれや痛み・感覚が鈍るなどです。

神経障害は足から症状が出やすく、足の先が痺れたような不快な感じがする・睡眠中など安静時に足がつる等の症状が出現します。通常であれば完治するような小さな傷でも感覚が鈍っているために痛みを感じず、重症化してから気づくのです。糖尿病による高血糖状態は血流低下・白血球の機能低下をも起こし、神経障害と相まって潰瘍から壊疽に至る危険性があります。

糖尿病の有無で比べたところ、足の切断率が糖尿病ではない人に比べ、糖尿病患者は約10倍になるという調査結果があるほど、水虫や足の裏にできるタコですら油断できないのです。

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切断から足を守るには

image by iStockphoto

足を切断する事態を防ぐには、毎日足の観察をし、清潔を保ちましょう。見えない部分は鏡を使ったり、家族に見てもらったりして隅々まで見るだけでなく、触ってよく観察してください。

清潔を保つには、石鹸をよく泡立てて優しく洗いましょう。指の間もしっかり洗い、水気は残さず拭き取ります。ゴシゴシこすらず、押さえるように拭くのがコツです。皮膚の乾燥がある場合は、保湿クリームを塗りましょう。適度に爪切りを行い、爪の伸びすぎによるケガの防止に努めます。深爪しないように気をつけながら、爪の白い部分が1ミリ程度残るよう、また爪がまっすぐなるように数回に分けて切りましょう。

壊死とは細胞の一部が死滅すること、壊疽とは体に付着したまま壊死した組織に起こる変化

壊死とは、酸欠や栄養の欠乏、痛風、熱傷、事故などの様々な原因により細胞が虚血状態に陥って血液が細胞に届かなくなり、細胞の一部が死に至ることです。壊疽とは、体に付着したまま壊死したした組織に起こる次の変化で、乾燥してミイラ化する乾性壊疽と壊死組織を栄養源として細菌が増殖し、周囲の正常な組織に感染を起こす湿性壊疽の2種類あります。

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雑学

簡単でわかりやすい!壊死と壊疽の違いとは?糖尿病で足を失うって本当?看護師ライターが詳しく解説

壊死は聞いたことがあるかもしれないが、壊疽は聞いたことがない人も多いのではないでしょうか?様々な理由で起こりうる現象です。この違いや治るかどうかなどを含めて看護師の近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

看護師とWebライターの二刀流を目指している。BMIが肥満の域に突入したのに運動をサボってしまいがち。

壊死と壊疽の違いとは

壊死と壊疽(えそ)には違いがあり、原因は様々です。まず壊死が起こり壊疽へと変化する場合があります。その違いを詳しくみていきましょう。

壊死とは細胞の一部が死滅すること

Necrotic leg wound.png
derivative work: Chaldor (talk) Rowland_recluse_bite.jpg: Jeffrey Rowland from Easthampton, MA, USA – Rowland_recluse_bite.jpg, CC 表示 2.0, リンクによる

壊死とは、様々な原因により細胞が虚血状態(血液量が不足すること)に陥って血液が細胞に届かなくなり、細胞の一部が死に至ることです。虚血状態になる原因は、酸欠、栄養の欠乏、痛風(高尿酸血症)、熱傷、事故、血管が狭くなったり詰まったり圧迫されたことによる血流量低下、化学物質の影響や蛇などに咬まれた、などがあります。

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