今回のテーマは「溶解度」と「再結晶」。言葉だけ聞くと難しそうですが、実は身近な現象です。

みんなはコーヒーは好きか。たかはしふみかはコーヒーが大好きです。コーヒーに砂糖を入れる人も多いでしょう。コーヒーに砂糖を溶かす、これは溶解という現象になる。では砂糖は何杯入れても全部溶けきるのでしょうか?また一度溶けた砂糖は溶けたままなのでしょうか?

というわけで今回は溶解度と再結晶について解説する。担当は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

自分で実験しないと気が済まない化学系科学館職員。一度のめり込むと止まらない。暴走を止めてくれる同僚に感謝の日々。

辞書から見る!「溶解度」と「再結晶」

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今回のテーマは「溶解度」と「再結晶」。言葉からなんとなくイメージはつくけれど実際はどんなものかわからない、という人もいるでしょう。そこで、まずはコトバンクで定義を確認してみましょう。

ある物質(溶質)が他の物質(溶媒)に溶解する限度.飽和溶液中における溶質の濃度で表される.
(出典:コトバンク「溶解度」)
溶解度の差を利用して結晶性の物質の純度を上げる方法の1つ。適当な条件で溶媒に物質を溶かし,温度を下げたり,溶媒を蒸発させたりして,目的とする物質の飽和濃度以上にすると初めの結晶よりも純度の高い結晶が析出する場合がある。
(出典:コトバンク「再結晶」)

そもそも溶解ってなんだ?

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そもそも溶解とは何でしょうか。溶解とは溶質(溶けている成分)が溶媒(溶質を溶かす液体)に溶けて均一に分散する現象のことです。わかりやすく食塩水で考えてみましょう。

食塩水
 溶質→食塩
 溶媒→水

水に食塩を入れて混ぜると、やがて均一に分散し食塩水になります。溶解度とは簡単に言うと「溶解をするときの溶けやすさ」という事になるのです。また溶解度は溶解できる限界量のことで、この限界まで溶解した溶液のことを飽和水溶液と言います。反対にまだ溶解する余地がある溶液のことは不飽和溶液と言うのです。

飽和溶液では溶解するスピードと、溶液中の粒子が結晶になるスピードが同じになります。このように見かけ上溶解が停止した状態のことを、溶解平衡と言うのです。

\次のページで「固体と気体で違う?溶解度の謎」を解説!/

固体と気体で違う?溶解度の謎

固体と気体では溶解度に、大きな違いがあります。それは「固体は温度が高いほどよく溶ける(温度が高いと溶解度が高い)、気体は温度が低いほどよく溶ける(温度が低いと溶解度が高い)」という事です。

固体の溶解度

固体の溶解度は、溶媒100gに溶ける溶質をg単位で表したものです。この溶解度は温度によって変化し、多くの物質では温度が高くなるほど溶解度が大きくなります。これは再結晶の重要なポイントです。主な固体の溶解度は、次のようになっています。

水100gに対する溶解度(g)
塩化カリウム    0℃:28.1    20℃:34.2 g      40℃:40.1g
塩化アンモニウム  0℃:29.4g  20℃:37.2g  40℃:45.8g
塩化ナトリウム   0℃:35.7g  20℃:35.8g  40℃:36.3g
水酸化カルシウム  0℃:0.14g  20℃:0.13g  40℃:0.11g

塩化カリウムや塩化アンモニウムは温めるほどどんどん溶けやすくなります。これらに比べると、塩化ナトリウムの溶解度はあまり変化しません。一方、水酸化カルシウムは温めるほど溶けにくくなっています。

気体の溶解度

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冷たいコーラとぬるいコーラ、どちらが泡が出やすいでしょうか。答えはぬるい方です。ところで、炭酸水はどうやって作られているのでしょうか。炭酸の素は二酸化炭素(CO2)です。水に二酸化炭素を溶かすと、炭酸( H2CO3)という酸が発生します。

CO2+H2O→ H2CO3

冷えていると炭酸がよく溶けますが、ぬるくなると溶解度が小さくなって炭酸が抜けてしまいます。これは多くの固体と逆で、気体は冷たいほどよく溶けるからです。水を温めるとブクブクと泡が出てきますね。これは水が温まると溶解度が下がり、水に溶けていた空気が飛び出しているからです。

1mlの水に対する期待の溶解度(ml) ※1atmの時
二酸化炭素  0℃:1.72  20℃:0.94  40℃:0.61
アンモニア  0℃:447   20℃:342   40℃:236
塩化水素   0℃:517   20℃:442   40℃:386

気体の溶解度は温度だけでなく、圧力も影響しています。温度が一定の時、圧力が大きいほど溶解度が大きくなるのです。これをヘンリーの法則と言います。そのため同じ温度のコーラなら、圧力が低い方が炭酸が抜けやすいのです。

一定温度のもとで液体に溶解する気体の量(質量)は,その液体と平衡状態にあるその気体の分圧に比例するという法則。
(出典:コトバンク「ヘンリーの法則」)

ヘンリーの法則についてはこちらの記事を参考にしてくださいね。

溶解度と再結晶

先ほどの表を見ると、塩化カリウムや塩化アンモニウムは温度によって溶解度が大きく異なっていますね。温めると溶ける量が増える、では温めてたくさんの溶質を溶解させた溶液を冷やすとどうなるのでしょうか。今度は硝酸カリウムの溶解度から解説していきます。

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169gの硝酸カリウムを水に加え、100℃に温めて水溶液を作ったとします。100℃の水に硝酸カリウムは245g溶けることができるので、まだまだ溶かすことができますね。この溶液を80度まで冷却すると飽和水溶液となります。さらに冷やすと、硝酸カリウムが析出するのです。

もともと溶けていた硝酸カリウムは169gでしたね。それを60℃まで冷やすと溶解度は109、つまり60g析出します。さらに冷却して40℃になると溶解度は63.9、105.1g析出するのです。

結晶の精製

飽和水溶液を冷やすと、結晶が析出(溶液から結晶を分離させること)してきます。溶けきれない溶質が結晶に戻るのです。このように結晶として溶質を得ることを再結晶と言います。そして再結晶を行うことで精製する方法を、再結晶法というのです。これは研究所や工場などでも行われている手法で、再結晶法として、以下のような手法があげられます。

\次のページで「こんなところで再結晶」を解説!/

・高温で飽和溶液を作り、冷却して結晶を析出させる
・溶媒を蒸発させて結晶を析出させる
・飽和溶液に別の溶媒を加え、結晶を析出させる

こんなところで再結晶

実験室で行われる再結晶についてはわかりましたね。では身近なところで再結晶はどのように役立っているのでしょうか。

塩づくりと再結晶~海水から塩を取り出す

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しょっぱい海水には塩、塩化ナトリウムが溶けています。2Lの海水から50gほどの塩を取ることができるのです。

1.海水をろ過してごみを取り除く
2.10分の1になるまで煮詰める
3.もう一度ろ過して、不純物を取り除く
4.再び煮詰め、結晶が出てきたら水切りをする

また自然の力で海水からし塩を作る方法として、塩田があります。海水を塩田に広げ、太陽と風で水分を飛ばして塩を作るのです。この塩は天日塩(てんぴじお)と呼ばれています。

自由研究になる!お家で簡単再結晶

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再結晶の実験として定番なのがミョウバンの再結晶です。ミョウバンとは硫酸カリウムアルミニウムのことで、食品添加物として膨張剤や漬物の色止め剤などに使われています。また、玉ねぎ染めなど染物の媒洗剤としても使える優れものです。

ミョウバンは100gの水に対し20℃の時に5.9g、90℃の時に109g溶けます。そのため、90℃で作った飽和ミョウバン水溶液を20℃まで冷やすと、溶けきれなくなったミョウバンが再結晶するのです。放置するだけでも再結晶しますが。うまくいかないときは再結晶の核となるように結晶を糸に結び付けて飽和水溶液に入れると、周りに結晶ができます。

再結晶するのは温度によって溶解度が違うから!

固体の溶解度は多くの場合、温度が高いほど多くなります。そのため、冷やすと溶けきれない溶質が結晶として析出するのです。これが再結晶で、化学実験で目的物を得るために行われています。気体は逆に温度が低いほどよく溶けるのです。そのため、炭酸水はぬるくなると炭酸が抜けてしまいます。

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化学理科

再結晶と溶解度の関係は?わかると楽しい化学を化学系科学館職員が簡単にわかりやすく解説

今回のテーマは「溶解度」と「再結晶」。言葉だけ聞くと難しそうですが、実は身近な現象です。

みんなはコーヒーは好きか。たかはしふみかはコーヒーが大好きです。コーヒーに砂糖を入れる人も多いでしょう。コーヒーに砂糖を溶かす、これは溶解という現象になる。では砂糖は何杯入れても全部溶けきるのでしょうか?また一度溶けた砂糖は溶けたままなのでしょうか?

というわけで今回は溶解度と再結晶について解説する。担当は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

自分で実験しないと気が済まない化学系科学館職員。一度のめり込むと止まらない。暴走を止めてくれる同僚に感謝の日々。

辞書から見る!「溶解度」と「再結晶」

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今回のテーマは「溶解度」と「再結晶」。言葉からなんとなくイメージはつくけれど実際はどんなものかわからない、という人もいるでしょう。そこで、まずはコトバンクで定義を確認してみましょう。

ある物質(溶質)が他の物質(溶媒)に溶解する限度.飽和溶液中における溶質の濃度で表される.
(出典:コトバンク「溶解度」)
溶解度の差を利用して結晶性の物質の純度を上げる方法の1つ。適当な条件で溶媒に物質を溶かし,温度を下げたり,溶媒を蒸発させたりして,目的とする物質の飽和濃度以上にすると初めの結晶よりも純度の高い結晶が析出する場合がある。
(出典:コトバンク「再結晶」)

そもそも溶解ってなんだ?

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そもそも溶解とは何でしょうか。溶解とは溶質(溶けている成分)が溶媒(溶質を溶かす液体)に溶けて均一に分散する現象のことです。わかりやすく食塩水で考えてみましょう。

食塩水
 溶質→食塩
 溶媒→水

水に食塩を入れて混ぜると、やがて均一に分散し食塩水になります。溶解度とは簡単に言うと「溶解をするときの溶けやすさ」という事になるのです。また溶解度は溶解できる限界量のことで、この限界まで溶解した溶液のことを飽和水溶液と言います。反対にまだ溶解する余地がある溶液のことは不飽和溶液と言うのです。

飽和溶液では溶解するスピードと、溶液中の粒子が結晶になるスピードが同じになります。このように見かけ上溶解が停止した状態のことを、溶解平衡と言うのです。

\次のページで「固体と気体で違う?溶解度の謎」を解説!/

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