金属水銀の毒性
体温計などに使われているのが、金属水銀です。金属水銀そのものを摂取しても、消化器官からは吸収されずそのまま排出されるためそこまで人体に影響はないと言われています。しかし水銀は気化しやすく蒸気を吸ってしまった場合、呼吸器や神経系に影響が与えられてしまうのです。
そのため、もし温度計などを割って水銀を漏らしてしまった場合は、速やかに適切な処置をする必要があります。
最も毒性の強い有機水銀化合物
水銀の中で最も毒性が強いのが有機水銀。その中でもさらに毒性が強いのがメチル水銀で、水俣病・新潟水俣病の原因となった物質です。ちなみにメチル水銀という物質があるわけではなく、水銀原子とメチル基が結びついた化合物の総称で、塩化メチル水銀、臭化メチル水銀などがあります。
水俣病は熊本県水俣湾周辺で発生した水銀による公害病です。1945年頃からメチル水銀を含む工場排水が水俣湾に排水されました。そして水銀が海水からプランクトン、プランクトンを食べた魚や貝へと食物連鎖によって濃縮され、その魚や貝を人間が食べたことで水俣病が発生したのです。2021年6月までに水俣病患者と認められたのは約2300人でした。水俣病発生の経緯は以下のようになります。
1945年頃
メチル水銀を含む排水が水俣湾へ排出されるようになる
1949年頃
水俣湾で海産物が採れなくなる
1954年
水俣湾の魚を食べた猫が死ぬという報道が流れる
その後12人が水俣病の症状を発生し、5人が亡くなる
1956年
原因不明の病気として水俣病が保健所から発表される
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鳥居の色にもなった無機水銀化合物
無機水銀化合物として硫化水銀(HgS)、酸化水銀(HgO)、塩化水銀(HgCl2)などがあげられます。硫化水銀は赤色の色素として使われ、神社の鳥居着力にも使われていました。自然界に存在する水銀のほとんどはこの硫化水銀として存在しています。
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