この記事では紛争と戦争の違いについてみていきます。どちらも対立している勢力同士の争いには違いないが、例えば、日清紛争とか日露紛争のように、戦争の代わりに紛争という言葉は使えないよな。違いはずばり規模のようですが、詳しく調べるともっと明確な違いがあるようです。
今回は紛争と戦争の違いを、定義から確認するとともに、対義語や内戦との違いについても、時事問題に精通する現役教員ライター源シタゴウと一緒に解説していきます。

ライター/源シタゴウ

子どもの時からNHKのニュースを視聴することを日課とし、大学生の頃より現在に至るまで、CNNやBBCなどの海外のニュースも合わせて視聴している。愛読書は『現代用語の基礎知識』。

紛争と戦争の違いとは?

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まずは、紛争と戦争についての定義から確認しておきましょう。

[紛争](スル)事がもつれて争うこと。もめごと。「領土問題で―する」

出典:デジタル大辞泉

[戦争]軍隊と軍隊とが兵器を用いて争うこと。特に、国家が他国に対し、自己の目的を達するために武力を行使する闘争状態。国際法上は、宣戦布告により発生、当事国間に戦時国際法が適用される。いくさ。「―が勃発する」「隣国と―する」

出典:デジタル大辞泉

紛争は「もめごと」とされていますので、比較的小規模なものを指すことがわかりますね。それに対して、戦争は主権国家同士が武力を用いて争っている状態であり、宣戦布告を持って始まりと見なされるとともに、戦争中は戦時国際法が適用されることになります。

紛争とは?

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紛争は先ほど示した辞書の定義からわかるように、基本的にはもめごとを指します。必ずしも武力を用いた争いを指すわけではありません。しかし、国際的に紛争というと、領土問題に端を発する「北アイルランド紛争」や「フォークランド紛争」、そして民族紛争である「アフガニスタン紛争」などが有名です。

つまり紛争のイメージとしては武力を用いる場合を指すことが多いと言えます。しかし、戦争に比べて、小規模な争いであることは確かです。

紛争は武力を用いないこともある

紛争の定義が武力行使を要件に含めない以上、武力を用いない紛争もあり得ることを述べてきました。しかし、イメージとしての紛争は武力行使をともなう場合が多いことも説明してきましたね。では、武力を用いない紛争としてどのような例があるでしょうか。私たちに身近な問題を例とすれば「竹島問題」が挙げられます。

日本政府は、竹島の領有をめぐり韓国との間で紛争が存在することを公式に認めているのですしかし、日本政府が竹島に派兵したこともなければ、韓国に武力行使をしたこともありません。

紛争と内戦はどう違う?

戦争と紛争の違いのほかに、内戦という言葉もしばしば使用されますね。相違点は、内戦も広義には紛争に含まれますが、国内で同じ国民同士が対立勢力となり、争うことを特に内戦と言うのです。例えば、アメリカの「南北戦争」や日本の明治初期の「戊辰戦争」、ルワンダの「ルワンダ内戦」などが挙げられます。どちらも争いには違いないのですが、内戦は同じ国民同士の争いなのです。

戦争とは?

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戦争は主権国家同士の大規模な闘争を指すと解説してきました。基本的な要件としては「宣戦布告」と「戦時国際法の適用でしたね。しかし、1939年のナチスドイツによるポーランド侵攻が宣戦布告なしに行われた電撃戦であったように、必ずしも宣戦布告が戦争当事国によってなされる保証はありません。

そういう意味では紛争から戦争に推移するケースも十分考慮すべきでしょう。

戦争は国家同士の大規模な武力衝突

戦争は定義上は宣戦布告を要件とするものの、戦争当事国によって必ず遵守されるものではないことを見てきました。だとすればやはり国家間の大規模な闘争であることが戦争のもっともわかりやすい指標と言えます。

2022年2月にロシアはウクライナ領内へ侵攻しましたが、ロシアはウクライナへ宣戦布告しておらず、戦争という呼称も使用していません。しかし、両国の闘争が大規模であることを考慮すれば、戦争と定義できる事例です。

\次のページで「戦争の対義語とは?」を解説!/

戦争の対義語とは?

国家の間で戦争となるには当然、それなりの原因があることは言うまでもありません。例えば領土問題、安全保障問題、民族問題、宗教問題などです。原因となるそれらの問題を解決する手段として、戦争が行われています。そういう意味からは、戦争以外の手段で解決できるわけですよね。

そこに戦争の対義語が絡んできます。実は戦争の対義語が平和とされる場合もあるのですが、問題を解決する手段としての戦争の対義語は「対話」、「交渉」と言えるでしょう。

戦争は主権国家同士の武力衝突、紛争は対立勢力同士の小規模な争い

戦争とは主権国家つまり国と国同士の大規模な闘争を指し、紛争は対立勢力(国家間の場合もある)間の比較的小規模な争いを意味することを解説してきました。また内戦も紛争に含まれるものの、同じ国民同士の争いである場合に限定されることや、戦争の対義語が対話や交渉であることも見てきました。

今後、戦争や紛争が完全になくなることはないかもしれませんが、原因となっている問題を解決する手段として、問題当事国やグループ同士が対話や交渉を粘り強く継続することで、戦争や紛争をなくす努力を行ってもらいたいですね。 

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雑学

3分でわかる!紛争と戦争の違いとは?内戦との違いや対義語も現役教員ライターがわかりやすく解説

この記事では紛争と戦争の違いについてみていきます。どちらも対立している勢力同士の争いには違いないが、例えば、日清紛争とか日露紛争のように、戦争の代わりに紛争という言葉は使えないよな。違いはずばり規模のようですが、詳しく調べるともっと明確な違いがあるようです。
今回は紛争と戦争の違いを、定義から確認するとともに、対義語や内戦との違いについても、時事問題に精通する現役教員ライター源シタゴウと一緒に解説していきます。

ライター/源シタゴウ

子どもの時からNHKのニュースを視聴することを日課とし、大学生の頃より現在に至るまで、CNNやBBCなどの海外のニュースも合わせて視聴している。愛読書は『現代用語の基礎知識』。

紛争と戦争の違いとは?

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まずは、紛争と戦争についての定義から確認しておきましょう。

[紛争](スル)事がもつれて争うこと。もめごと。「領土問題で―する」

出典:デジタル大辞泉

[戦争]軍隊と軍隊とが兵器を用いて争うこと。特に、国家が他国に対し、自己の目的を達するために武力を行使する闘争状態。国際法上は、宣戦布告により発生、当事国間に戦時国際法が適用される。いくさ。「―が勃発する」「隣国と―する」

出典:デジタル大辞泉

紛争は「もめごと」とされていますので、比較的小規模なものを指すことがわかりますね。それに対して、戦争は主権国家同士が武力を用いて争っている状態であり、宣戦布告を持って始まりと見なされるとともに、戦争中は戦時国際法が適用されることになります。

紛争とは?

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紛争は先ほど示した辞書の定義からわかるように、基本的にはもめごとを指します。必ずしも武力を用いた争いを指すわけではありません。しかし、国際的に紛争というと、領土問題に端を発する「北アイルランド紛争」や「フォークランド紛争」、そして民族紛争である「アフガニスタン紛争」などが有名です。

つまり紛争のイメージとしては武力を用いる場合を指すことが多いと言えます。しかし、戦争に比べて、小規模な争いであることは確かです。

紛争は武力を用いないこともある

紛争の定義が武力行使を要件に含めない以上、武力を用いない紛争もあり得ることを述べてきました。しかし、イメージとしての紛争は武力行使をともなう場合が多いことも説明してきましたね。では、武力を用いない紛争としてどのような例があるでしょうか。私たちに身近な問題を例とすれば「竹島問題」が挙げられます。

日本政府は、竹島の領有をめぐり韓国との間で紛争が存在することを公式に認めているのですしかし、日本政府が竹島に派兵したこともなければ、韓国に武力行使をしたこともありません。

紛争と内戦はどう違う?

戦争と紛争の違いのほかに、内戦という言葉もしばしば使用されますね。相違点は、内戦も広義には紛争に含まれますが、国内で同じ国民同士が対立勢力となり、争うことを特に内戦と言うのです。例えば、アメリカの「南北戦争」や日本の明治初期の「戊辰戦争」、ルワンダの「ルワンダ内戦」などが挙げられます。どちらも争いには違いないのですが、内戦は同じ国民同士の争いなのです。

戦争とは?

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戦争は主権国家同士の大規模な闘争を指すと解説してきました。基本的な要件としては「宣戦布告」と「戦時国際法の適用でしたね。しかし、1939年のナチスドイツによるポーランド侵攻が宣戦布告なしに行われた電撃戦であったように、必ずしも宣戦布告が戦争当事国によってなされる保証はありません。

そういう意味では紛争から戦争に推移するケースも十分考慮すべきでしょう。

戦争は国家同士の大規模な武力衝突

戦争は定義上は宣戦布告を要件とするものの、戦争当事国によって必ず遵守されるものではないことを見てきました。だとすればやはり国家間の大規模な闘争であることが戦争のもっともわかりやすい指標と言えます。

2022年2月にロシアはウクライナ領内へ侵攻しましたが、ロシアはウクライナへ宣戦布告しておらず、戦争という呼称も使用していません。しかし、両国の闘争が大規模であることを考慮すれば、戦争と定義できる事例です。

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