この記事では銅と青銅の違いを掘り下げていきます。日本語ではどちらも「銅」と表しがちですが、英語では銅はcopper、青銅はbronzeとしっかり区別している。また、それぞれの特徴や用途にも明確な違いがあるようです。また、青銅以外の銅合金についても、大学で金属工学を学んだライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。金属工学で学んだ知識を生かし、銅と青銅の違いについて詳しく解説していく。

銅(純銅)とは

古来より人類の暮らしに深くかかわってきた金属・。現代でもあらゆる分野で使われ、鉄、アルミニウムに次いで世界で3番目に多く消費されている金属です。まずは何も混ざっていない純金属である銅(純銅)に着目していきます。

銅(純銅)の特徴

英語でcopper金属元素Cuのみでできている純金属で、ベースメタルの1つです。赤色の光沢から「あかがね」とも呼ばれます。金属の中でも電気伝導性(導電性)と熱伝導性が格段に優れており、また延ばして細くしたり薄くしたりできる軟らかさも大きな特徴です。

そのほかの特徴として、微生物の成長や増殖を抑制する静生物性(バイオスタティック)があり、細菌やウイルスの増殖をも抑える高い抗菌効果を有します。

また、銅の表面に生じる青緑色のさび・緑青(ろくしょう)は、素地内部の腐食を防ぐ保護皮膜の役割を果たし、銅の優れた耐食性の理由となるものです。かつては毒があると思われていましたが、現在では無害であることが証明されています。

ベースメタル(またはコモンメタル、メジャーメタル)は、埋蔵量・産出量が多い上に精錬が容易なため、さまざまな分野で大量に使われている金属のことです。銅以外のベースメタルとして、鉄Fe・亜鉛Zn・スズSn・アルミニウムAlなどが挙げられます。

銅(純銅)の用途

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銀Agに次ぐ高い電気伝導性を有する上、価格の安さや加工性の良さもあって、電気・電子関連では欠かせない金属材料となっています。また純銅製の鍋やフライパンは、優れた熱伝導性により食材に素早く均一に熱を加えることができるとプロの料理人から好評です。排水口周りや三角コーナーなどに抗菌作用の高い純銅製品を使うと、雑菌の増殖を防ぎ、ぬめりや臭いを抑えることができます。

ほかにも、銅とほかの金属(もしくは非金属)を混ぜ合わせた銅合金がさまざまな分野で使われていますが、これについては次から解説しましょう。

青銅とは

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青銅は銅を主成分とするスズSnとの合金です。まずは合金とはどういうものか、そして青銅にはどういう特徴があるのか詳しく解説していきます。

\次のページで「合金とは」を解説!/

合金とは

2種類以上の金属元素、あるいは金属元素と非金属元素を混ぜ合わせた金属材料を合金といいます。その目的は「ベースの金属の長所を伸ばす」「ベースの金属の短所を補い、さらに新しい特性を生み出す」で、古くから数多くの合金が作られてきました。

青銅の特徴

英語でbronze名前の由来は前述の緑青ですが、本来は光沢がある金属です

スズの割合を増やすにつれ、銅本来の色からだんだんと黄色みを帯びて金色になり、そしてある一定量以上の添加で白銀色になります。19世紀ごろまで大砲の砲身に使われていたため、砲金(ほうきん、gunmetal)の別名も。

純銅より硬さがある上、適度な展延性があり、研磨や圧延などの加工が可能です。また融点1084 ℃の銅に融点232 °Cのスズを添加することで融点が低くなり、容易に溶かして形作ることができます。そのため古代より武器や農具などに広く用いられ、鉄が普及するまで最も利用されていた金属でした(青銅器時代)。

青銅の用途

優れた鋳造性と耐食性から、そのほとんどが工業材料として用いられますが、美術工芸品装飾品家具などにも使われています。一番身近な青銅は10円硬貨で、銅95%に対しスズ1~2%を添加したものです(残りは3~4%は亜鉛)。銅メダルは英語でbronze medalで、実際に青銅製であることが多いですが、青銅以外の銅合金や純銅の場合もあり、例えば2021年東京オリンピックの銅メダルは銅95%亜鉛5%の丹銅でした。

青銅の各種性質を向上させるために他の元素を微量添加したものを特殊青銅といい、リン青銅鉛青銅シリコン青銅などがあります。

そのほかの銅合金

やみくもに金属を混ぜても合金はできません。材料にも相性があり、組み合わせによっては水と油のごとく全く混じり合わないことがあるからです。その点、銅は多くの金属と合金を作りやすい性質を持っています

前述の通り銅には優れた性質が多くありますが、金属としては軟らかく強度がないのが欠点で、これを補うために古来よりさまざまな銅合金が作られてきました。

黄銅:金管楽器の材料

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銅と亜鉛Znの合金で、特に亜鉛が20%以上のものを指します(亜鉛5~20%未満は丹銅)。加工しやすい上にさびにくく、水にも強いのが長所です。英語でbrass。金管楽器の楽団をbrass bandと呼ぶのは、金管楽器の主材料が黄銅であることに由来します。別名は真鍮(しんちゅう)です。

亜鉛の割合が増えるにつれ銅色から金色に変化し、硬度も増しますが、同時にもろくもなり、亜鉛が45%を超えると実用に耐えない代物になります。一般的な割合銅65%・亜鉛35%です。

一番身近な黄銅は5円硬貨で、そのほか前述の金管楽器、時計など精密機器の部品、水回りの配管などに使われます。

\次のページで「白銅:銀の代用品」を解説!/

銅を60%以上含む銅合金であれば抗菌効果を期待できるため、手すりやドアノブなど人の手が多く触れるところに黄銅などの銅合金を用いることが近年増加しています

白銅:銀の代用品

銅とニッケルNiの合金で、特にニッケル10~30%のものを指します。英語でcupronickelニッケルの量が多くなると銀白色になるため、銀の代用品として貨幣などに使われます。かつて日本の100円硬貨は銀貨でしたが、銀の高騰を受け1967年より白銅貨になりました。

現行の50円・100円硬貨および初代500円硬貨は、銅75%ニッケル25%の白銅です。

洋白:高級カトラリーの材料

銅と亜鉛とニッケルの合金で、ニッケル黄銅とも。割合は用途によって異なりますが、銅の含有率は50%を超えます。英語でGerman silverまたはnickel silver。主に装飾品や洋食器、フルートなどの楽器に使われますが、電気・電子部品に用いられることもあります。

銀メッキを施した洋白製のカトラリーは純銀製に次いで高級とされ、”German silver”や”nickel silver”、”E.P.N.S”(Electric Plated Nickel Silver)の刻印が目印です。また、2代目500円硬貨、3代目500円硬貨の外縁部分にも用いられています。

銅は純金属、青銅は銅とスズの合金

青銅は銅とスズの合金であること、また純金属としての銅やほかの銅合金について説明しました。

英語では銅製はcopper青銅製はbronzeと表してしっかり区別していますが、日本語では「銅メダル」のように、銅も青銅もひっくるめて「銅」と表現することが多く銅と青銅が混同される要因となっています。ちなみに「銅鍋」「銅線」「銅像」「銅鏡」の英訳は、それぞれcopper pot、copper wire、bronze statue、bronze mirrorです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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3分で簡単にわかる「銅」と「青銅」の違い!英語では何という?それぞれの特徴や用途も工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では銅と青銅の違いを掘り下げていきます。日本語ではどちらも「銅」と表しがちですが、英語では銅はcopper、青銅はbronzeとしっかり区別している。また、それぞれの特徴や用途にも明確な違いがあるようです。また、青銅以外の銅合金についても、大学で金属工学を学んだライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。金属工学で学んだ知識を生かし、銅と青銅の違いについて詳しく解説していく。

銅(純銅)とは

古来より人類の暮らしに深くかかわってきた金属・。現代でもあらゆる分野で使われ、鉄、アルミニウムに次いで世界で3番目に多く消費されている金属です。まずは何も混ざっていない純金属である銅(純銅)に着目していきます。

銅(純銅)の特徴

英語でcopper金属元素Cuのみでできている純金属で、ベースメタルの1つです。赤色の光沢から「あかがね」とも呼ばれます。金属の中でも電気伝導性(導電性)と熱伝導性が格段に優れており、また延ばして細くしたり薄くしたりできる軟らかさも大きな特徴です。

そのほかの特徴として、微生物の成長や増殖を抑制する静生物性(バイオスタティック)があり、細菌やウイルスの増殖をも抑える高い抗菌効果を有します。

また、銅の表面に生じる青緑色のさび・緑青(ろくしょう)は、素地内部の腐食を防ぐ保護皮膜の役割を果たし、銅の優れた耐食性の理由となるものです。かつては毒があると思われていましたが、現在では無害であることが証明されています。

ベースメタル(またはコモンメタル、メジャーメタル)は、埋蔵量・産出量が多い上に精錬が容易なため、さまざまな分野で大量に使われている金属のことです。銅以外のベースメタルとして、鉄Fe・亜鉛Zn・スズSn・アルミニウムAlなどが挙げられます。

銅(純銅)の用途

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銀Agに次ぐ高い電気伝導性を有する上、価格の安さや加工性の良さもあって、電気・電子関連では欠かせない金属材料となっています。また純銅製の鍋やフライパンは、優れた熱伝導性により食材に素早く均一に熱を加えることができるとプロの料理人から好評です。排水口周りや三角コーナーなどに抗菌作用の高い純銅製品を使うと、雑菌の増殖を防ぎ、ぬめりや臭いを抑えることができます。

ほかにも、銅とほかの金属(もしくは非金属)を混ぜ合わせた銅合金がさまざまな分野で使われていますが、これについては次から解説しましょう。

青銅とは

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青銅は銅を主成分とするスズSnとの合金です。まずは合金とはどういうものか、そして青銅にはどういう特徴があるのか詳しく解説していきます。

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