この記事ではプラトンとアリストテレスの違いについてみていきます。どちらも古代ギリシアの哲学者として有名ですね。違いはずばり物事の本質についての考え方のようですが、実は二人が師弟関係であったなど調べると哲学史上の関係が見えてくるみたいです。今回はそんな哲学史を語るうえで欠かせない二人の哲学者の違いについて、哲学修士ライターみっくんと一緒に解説していきます。

ライター/みっくん

哲学修士ライターとして、哲学研究の経験を活かして記事を執筆している。今回は哲学史の上で最重要といっても過言ではないプラトンとアリストレスの違いについて詳しく解説する。

プラトンとアリストテレスの違いとは?

Plato's Academy mosaic from Pompeii.jpg
不明 - http://www.departments.bucknell.edu/History/Carnegie/plato/academy.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

プラトンとアリストレスはともに古代ギリシアを代表する哲学者です。今回はそんな二人の違いを詳しく解説していきます。まずはそれぞれどのような人物であったのかを見ていきましょう。

プラトンってどんな人?

プラトンは紀元前427年アテナイの名家に生まれ、ソクラテスに師事していた哲学者です。若いころには政治で活躍することを目指していました。しかし、政治とは哲学の視点からこそ正しく行えると考え、そこから哲学の研究に専念しました。

プラトンはソクラテスの弟子として、ソクラテス対話篇を多く著し、今日まで読み継がれています。そしてアテナイのアカデメイアに学園をつくり、弟子たちとともに生涯哲学研究に打ち込みました。

アリストテレスってどんな人?

アリストテレスは紀元前384年にギリシアのマケドニアで生まれた哲学者です。プラトンの開いたアカデメイアの学園に入学し20年にわたって哲学研究をしていました。つまり、プラトンとアリストテレスは師弟関係にあります。

アリストテレスは「万学の祖」と呼ばれ、学問を大きく二つに分類しました。自然学に代表される理論学と、倫理学に代表される実践学です。

物事の本質はどこにあるの?

Raffael 058.jpg
ラファエロ・サンティ - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, リンクによる

プラトンとアリストテレスがどのような人物であったのかを見てきました。それでは二人の違いは具体的にはどのようなものなのでしょうか。それはずばり、物事の本質についての考えです。

プラトンは物事の本質はイデアにあると主張しました。対してアリストテレスは物事の本質は形相と質料にあると主張したのです。これらイデア論形相質料論について詳しく解説します。

\次のページで「1.イデア論」を解説!/

1.イデア論

プラトンが活躍していたアテナイでは当初、物事のとらえ方は人によって違うという相対主義が主流でした。そこに真っ向から対立して主張されたのがイデア論です。

たとえばいくつかの机をがあるというとき、机にはさまざまな形や色があります。しかし、形や色がばらばらにも関わらず、私たちはそれらを机と呼ぶことができるのです。なぜでしょうか。プラトンによれば、すべての机はすべての机に共通するような「原型」を持っているからだとしました。この「原型」こそが「イデア」です。

そこからプラトンは現実にさまざまな形を持って現れるものの中ではなく、物事の本質は外部のイデアにあると考えました。

2.形相質料論

アリストテレスはプラトンの弟子でありながらイデア論と対立し、物事の本質は形相と質料として内在していると主張しました。たとえば木の机があるといった時には、その机は机という形相と木という質料を持っていることになります。言い換えれば、形相とはものの形のことであり、質料とはものが何でできているのかという材料を意味しているのです。

アリストテレスは物事の本質はこの形相とは質料の二つがあって成り立っていると考えました。これはプラトンが物事の本質はイデアだけであるとしたイデア論と対立する考えです。

3.四原因説

アリストテレスは先ほどの形相質料論から発展して、物事はすべて四つの原因から成り立っているという四原因説を主張しました。それぞれ「形相因(どんな形か)」「質料因(何でできているのか)」「目的因(何の目的なのか)」「作用因(なぜ存在しているのか)」によって成り立ってるのです。

これを机の例で考えてみると次のようになります。天板に足がついているという机の形が「形相因」、木を材料にしているという「質料因」、勉強をするためという「目的因」、実際に誰かがその机を作ったという「作用因」の四つによって成り立っているのです。

アリストテレスは現実の個々のものがどのように成り立っているのかについて考えた哲学者ということができるでしょう。

アリストテレスのプラトン批判

image by iStockphoto

アリストテレスは師弟関係にあったプラトンと対立する考えを主張していました。その過程でイデア論に批判を行ったのです。それは第三の人間論として知られています。詳しく見ていきましょう。

第三の人間論

イデア論によれば、人間は人間のイデアを持っているから、人間だとわかるのです。これをわかりやすくするために類似ということで考えてみます。すべての人間は人間のイデアとの類似点を持っているということです。

すると一つの問題が起きます。ある人間Aさんが人間とわかるのなぜでしょうか。イデア論によれば、人間のイデアとAさんが類似しているからです。しかし、それはイデアとAさんを比較する土台、つまり「第三の人間」を必要とします。さらに、その第三の人間と比較する第四の人間が必要とされ、無限後退が起こってしまうのです。

しかし、現実にはAさんは人間であるとわかっているため、イデア論は間違っているのではないかという批判がありました。

\次のページで「プラトンとアリストテレスは物事の本質についての考えが違う」を解説!/

プラトンとアリストテレスは物事の本質についての考えが違う

プラトンとアリストテレスの違いは物事の本質についての考え方です。具体的にはプラトンのイデア論とアリストテレスの形相質料論を比較することで明らかになります。イデアという物事の外部に本質があるという考えと、形相と質料が合わさって個々の物事に本質が内在しているという考えです。

また、アリストテレスについては形相質料論から進めて、四原因説という考えがあります。さらにアリストテレスは第三の人間論をもってプラトンのイデア論を批判しました。そこからもプラトンとアリストテレスの考え方の違いが見て取れます。

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雑学

簡単でわかりやすいプラトンとアリストテレスの違い!物事の本質はどこ?イデア論や四原因説も哲学修士ライターが詳しく解説

この記事ではプラトンとアリストテレスの違いについてみていきます。どちらも古代ギリシアの哲学者として有名ですね。違いはずばり物事の本質についての考え方のようですが、実は二人が師弟関係であったなど調べると哲学史上の関係が見えてくるみたいです。今回はそんな哲学史を語るうえで欠かせない二人の哲学者の違いについて、哲学修士ライターみっくんと一緒に解説していきます。

ライター/みっくん

哲学修士ライターとして、哲学研究の経験を活かして記事を執筆している。今回は哲学史の上で最重要といっても過言ではないプラトンとアリストレスの違いについて詳しく解説する。

プラトンとアリストテレスの違いとは?

Plato's Academy mosaic from Pompeii.jpg
不明 – http://www.departments.bucknell.edu/History/Carnegie/plato/academy.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

プラトンとアリストレスはともに古代ギリシアを代表する哲学者です。今回はそんな二人の違いを詳しく解説していきます。まずはそれぞれどのような人物であったのかを見ていきましょう。

プラトンってどんな人?

プラトンは紀元前427年アテナイの名家に生まれ、ソクラテスに師事していた哲学者です。若いころには政治で活躍することを目指していました。しかし、政治とは哲学の視点からこそ正しく行えると考え、そこから哲学の研究に専念しました。

プラトンはソクラテスの弟子として、ソクラテス対話篇を多く著し、今日まで読み継がれています。そしてアテナイのアカデメイアに学園をつくり、弟子たちとともに生涯哲学研究に打ち込みました。

アリストテレスってどんな人?

アリストテレスは紀元前384年にギリシアのマケドニアで生まれた哲学者です。プラトンの開いたアカデメイアの学園に入学し20年にわたって哲学研究をしていました。つまり、プラトンとアリストテレスは師弟関係にあります。

アリストテレスは「万学の祖」と呼ばれ、学問を大きく二つに分類しました。自然学に代表される理論学と、倫理学に代表される実践学です。

物事の本質はどこにあるの?

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ラファエロ・サンティ – The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, リンクによる

プラトンとアリストテレスがどのような人物であったのかを見てきました。それでは二人の違いは具体的にはどのようなものなのでしょうか。それはずばり、物事の本質についての考えです。

プラトンは物事の本質はイデアにあると主張しました。対してアリストテレスは物事の本質は形相と質料にあると主張したのです。これらイデア論形相質料論について詳しく解説します。

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