今日国語の先生と一緒にテスト問題の補足説明をしていた時にある生徒から質問を受けたんです。「ずつ」と「づつ」はどっちが正しいのか…ってな。これはなかなか素晴らしい質問です。

みんなはどう思う?そして普段どっちを使っているかな?実は「ずつ」と「づつ」には…

今回はそんな「ずつ」と「づつ」の違いについて、日本語や言葉について豊富な知識を持つ院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「ずつ」と「づつ」の意味は同じ!

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最初に「ずつ」「づつ」の辞書での意味を確認していきましょう。ただ、辞書には「ずつ」のみが掲載されている場合が多いです。なぜでしょうか。それは「ずつ」と「づつ」が基本的に同じ意味だからです。

同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる

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国語辞典に掲載されている「ずつ」の意味はどのようなものでしょうか。見てみましょう。国語辞典には「ずつ」は次のような意味が掲載されています。

《数量や程度を表す語に付いて》同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる意を表す。
「各自一つずつ取っ下さい」「三人ずつ組みを作る」「朝夕に二錠ずつ飲む」「費用は半分ずつ出し合おう」「少しずつ覚えよう」

「宛」とも。現代仮名遣いでは「づつ」も許容。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ずつ  ヅツ」

辞書によると「ずつ」は、「同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる」という意味の表現です。たとえば、5人参加者がいるとしましょう。参加者1人1人に対してカードを3枚配るとします。これは「5人にカードを3枚ずつ配る(3×5)」というわけです。簡潔にまとめれば同じ量や回数をそれぞれに割り当てる…という意味ですね。

そして辞書にも書かれている通り、「づつ」を使っても間違いではありません(つまり「ずつ」と「づつ」の意味は同じです)。ただ、「ずつ」の方がより一般的に使われていますね。また、漢字では「宛」と書きますが、普通は平仮名で書きます。

では、以下の例文で実際にどのように「ずつ」または「づつ」が使われている確認していきましょう。

1.私が働いている会社の社内食堂では、デザートとしてリンゴとミカン1つずつが無料でサービスされる。
2.夏は仕事帰りに毎日友達とビアガーデンに行って、生ビールを2本ずつ注文するのが日課となっている。
3.3人の孫に対し絵本と図鑑を1冊づつプレゼントした。
4.代表メンバーに対しては、ホーム用とアウェー用のユニフォームが3枚ずつ支給される。

例文1では、社内食堂ではリンゴ1個とミカン1個がサービスでついてくるという文脈で「リンゴとミカン1つずつ」という表現が使われています。例文2では、私は生ビール2本、友達も生ビール2本を注文するという文脈で「生ビールを2本ずつ」が使用されていますね。

例文3では、3人の孫全員に対し1人につき絵本1冊と図鑑1冊をプレゼントしたという文脈で、「絵本と図鑑を1冊づつ」が使用されています。例文4では、代表メンバー1人に対しホーム用3枚とアウェー用3枚のユニフォームが支給されることを、「ホーム用とアウェー用のユニフォームが3枚ずつ」と表現していますね。

公式には「ずつ」が正しいが、「づつ」も間違いではない?

ここまで解説を読んで、なぜ「ずつ」と「づつ」の2つがあるんだろう…と思った方もいらっしゃるかもしれません。ここではなぜこのように2つが存在するのか、どちらが本当は正しいのかを解説していきます。

1986年の内閣訓令で「ずつ」が基本に!

「ずつ」「づつ」が「ずつ」に統一される大きなきっかけとなったのが、昭和61年(1986年)に出された内閣訓令です。その訓令では、日本語にある「ぢ」「づ」を使った表現について、「じ」「ず」を使って書くことを基本にするといったことが述べられました。一方で「ぢ」や「づ」を使用しても問題ないことも同時に述べられています

テレビ放送や新聞記事、公文書や各種試験などはこの訓令に従うことが求められるため、「ずつ」の表記が訓令以降に速いスピードで浸透していきました。

私的なやり取りでは「づつ」を使用しても問題ありませんが、試験や会社の業務上のメールなどの公的なシーンにおいては「ずつ」を使用したほうが無難でしょう。

「づつ」は歴史的仮名遣い!

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では「づつ」はなぜ存在しているのでしょうか。この「づつ」は歴史的仮名遣いで、実はかつては「づつ」の方が一般的に使用されていました。その名残ですね。古文のテキストがある人は確認してみると良いかもしれません。おそらく、ほとんどの場合で「づつ」と表記されているでしょう。

かつて日本語には「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」には明確な発音の違いがあったと考えられています。ただ、時代が下るにつれて一部の方言を除き発音の違いがなくなり、文字を区別する必要がなくなりました。よって「じ」「ぢ」や「ず」「づ」の表記について混乱が見られたため、内閣訓令で統一を図ったのだと考えられます。

\次のページで「「ずつ」と「づつ」は同じ意味で仮名遣いが違う」を解説!/

「ずつ」と「づつ」は同じ意味で仮名遣いが違う

今回は「ずつ」と「づつ」の違いについて解説しました。「ずつ」と「づつ」は意味は同じですが、現在では「ずつ」を使うのが一般的です。そして「ずつ」と「づつ」の違いは、現代仮名遣いと歴史的仮名遣いの違いによるものでしたね。私的な目的や場面では「づつ」を使用しても問題ありませんが、ビジネス場面や公的な場面では「ずつ」を使用することをおすすめします。

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雑学

簡単に分かる「ずつ」と「づつ」の違い!どっちが正しい?院卒日本語教師が分かりやすく解説

今日国語の先生と一緒にテスト問題の補足説明をしていた時にある生徒から質問を受けたんです。「ずつ」と「づつ」はどっちが正しいのか…ってな。これはなかなか素晴らしい質問です。

みんなはどう思う?そして普段どっちを使っているかな?実は「ずつ」と「づつ」には…

今回はそんな「ずつ」と「づつ」の違いについて、日本語や言葉について豊富な知識を持つ院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「ずつ」と「づつ」の意味は同じ!

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最初に「ずつ」「づつ」の辞書での意味を確認していきましょう。ただ、辞書には「ずつ」のみが掲載されている場合が多いです。なぜでしょうか。それは「ずつ」と「づつ」が基本的に同じ意味だからです。

同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる

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国語辞典に掲載されている「ずつ」の意味はどのようなものでしょうか。見てみましょう。国語辞典には「ずつ」は次のような意味が掲載されています。

《数量や程度を表す語に付いて》同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる意を表す。
「各自一つずつ取っ下さい」「三人ずつ組みを作る」「朝夕に二錠ずつ飲む」「費用は半分ずつ出し合おう」「少しずつ覚えよう」

「宛」とも。現代仮名遣いでは「づつ」も許容。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ずつ  ヅツ」

辞書によると「ずつ」は、「同じ量の物事をいくつか、または何回かに割り当てる」という意味の表現です。たとえば、5人参加者がいるとしましょう。参加者1人1人に対してカードを3枚配るとします。これは「5人にカードを3枚ずつ配る(3×5)」というわけです。簡潔にまとめれば同じ量や回数をそれぞれに割り当てる…という意味ですね。

そして辞書にも書かれている通り、「づつ」を使っても間違いではありません(つまり「ずつ」と「づつ」の意味は同じです)。ただ、「ずつ」の方がより一般的に使われていますね。また、漢字では「宛」と書きますが、普通は平仮名で書きます。

では、以下の例文で実際にどのように「ずつ」または「づつ」が使われている確認していきましょう。

1.私が働いている会社の社内食堂では、デザートとしてリンゴとミカン1つずつが無料でサービスされる。
2.夏は仕事帰りに毎日友達とビアガーデンに行って、生ビールを2本ずつ注文するのが日課となっている。
3.3人の孫に対し絵本と図鑑を1冊づつプレゼントした。
4.代表メンバーに対しては、ホーム用とアウェー用のユニフォームが3枚ずつ支給される。

例文1では、社内食堂ではリンゴ1個とミカン1個がサービスでついてくるという文脈で「リンゴとミカン1つずつ」という表現が使われています。例文2では、私は生ビール2本、友達も生ビール2本を注文するという文脈で「生ビールを2本ずつ」が使用されていますね。

例文3では、3人の孫全員に対し1人につき絵本1冊と図鑑1冊をプレゼントしたという文脈で、「絵本と図鑑を1冊づつ」が使用されています。例文4では、代表メンバー1人に対しホーム用3枚とアウェー用3枚のユニフォームが支給されることを、「ホーム用とアウェー用のユニフォームが3枚ずつ」と表現していますね。

公式には「ずつ」が正しいが、「づつ」も間違いではない?

ここまで解説を読んで、なぜ「ずつ」と「づつ」の2つがあるんだろう…と思った方もいらっしゃるかもしれません。ここではなぜこのように2つが存在するのか、どちらが本当は正しいのかを解説していきます。

1986年の内閣訓令で「ずつ」が基本に!

「ずつ」「づつ」が「ずつ」に統一される大きなきっかけとなったのが、昭和61年(1986年)に出された内閣訓令です。その訓令では、日本語にある「ぢ」「づ」を使った表現について、「じ」「ず」を使って書くことを基本にするといったことが述べられました。一方で「ぢ」や「づ」を使用しても問題ないことも同時に述べられています

テレビ放送や新聞記事、公文書や各種試験などはこの訓令に従うことが求められるため、「ずつ」の表記が訓令以降に速いスピードで浸透していきました。

私的なやり取りでは「づつ」を使用しても問題ありませんが、試験や会社の業務上のメールなどの公的なシーンにおいては「ずつ」を使用したほうが無難でしょう。

「づつ」は歴史的仮名遣い!

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では「づつ」はなぜ存在しているのでしょうか。この「づつ」は歴史的仮名遣いで、実はかつては「づつ」の方が一般的に使用されていました。その名残ですね。古文のテキストがある人は確認してみると良いかもしれません。おそらく、ほとんどの場合で「づつ」と表記されているでしょう。

かつて日本語には「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」には明確な発音の違いがあったと考えられています。ただ、時代が下るにつれて一部の方言を除き発音の違いがなくなり、文字を区別する必要がなくなりました。よって「じ」「ぢ」や「ず」「づ」の表記について混乱が見られたため、内閣訓令で統一を図ったのだと考えられます。

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