
簡単でわかりやすい!疾病と病気の違いとは?読み方から漢字の意味まで現役塾講師がわかりやすく解説


解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/空野きのこ
大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。
「疾病」の読みは「しっぺい」!

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はじめに疾病の読み方を教えましょう。疾病の読み方は「しっぺい」です。「病」を「ぺい」と読むのはあまり馴染みがないかもしれませんが、実は「病」には「へい」という音読みがあります。そして、「疾病」は「病」の前に「疾」という字が置かれているので、より読みやすいように「へい」を「ぺい」という半濁音に変えて読むようになったものです。
昔の小説などでは「病」を「へい」と読ませることもありましたが、最近ではそのような使い方を見かけることもなく、おそらく「病」を「へい」で読む言葉はせいぜいこの「疾病」くらいだと思われます。ですので、しっかり押さえておきましょう。
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「疾病」で「病(へい)」の読みが「ぺい」に変化しているように、日本語では前後に置かれた言葉の関係で、発音しやすいように本来の読みから濁音や半濁音などに変化することがあるんだ。
疾病と病気のざっくりした違い
つぎに、「疾病」と「病気」のざっくりした違いを説明しましょう。「疾病」と「病気」は意味が非常に似ていて大きな意味の違いはないのですが、最近では、「疾病」は身体の調子が悪いときに医師の診断を受け、その原因や治療法などがはっきりしているものに対して使い、「病気」は原因や治療法がはっきりしているかしていないかに関わらず、単に身体の調子が悪いときに使う、というような使い分けがされています。
疾病と病気の漢字を説明
さきほど、「疾病」と「病気」の違いは、身体の不調の原因や治療法が医師の診断によってはっきりしているかどうかにあることは説明しましたね。ここからは、言葉の理解を深めるために、それぞれに使われている漢字について説明したいと思います。
「疾」は矢で受けた怪我や病気?

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まずは「疾病」の「疾」という字について説明しましょう。「疾」は「はやい」の他に「やまい」、「にくむ」、「くるしむ」などといった意味を持つ漢字です。「疾風」などの単語から「はやい」という意味は知っているという方は多いでしょうが、この字が「やまい」や「にくむ」といった意味も持っていることを意外に思う人も少なくないでしょう。
次に、この字の成り立ちについては諸説あるのですが、「やまいだれ」は「やまい」で人が寝台にもたれたり、寝ている形がもとになっていると考えられています。そして、中にある「矢」は、「矢によって受けた傷や、それが原因で病気になったもの」や「病気の進行が矢のようにはやいことから矢が使われている」など解釈が分かれるところです。
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「病」は病気で寝台に寝る姿

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つづいて「疾病」と「病気」、その両方に使われている「病」の成り立ちについて説明しましょう。「やまいだれ」は「やまい」で人が寝台にもたれたり、寝ている形がもとになっていると考えられているのでしたね。そして、中の「丙」は「脚のついたベットのことではないか」というものや「両脚がピンと開いて硬直している姿ではないか」などといった解釈がされており、いずれにせよ「病」という字は寝台に横になって動けないほど身体が悪い状態をあらわしていると考えられています。
また、古代の中国では病気で軽いものに対しては「疾」を、重いものには「病」を使うといった使い分けがされていたようです。よって、「疾病」は軽い症状の「疾」と重い症状の「病」を組み合わせたものなので、さまざまな身体の不調を意味するのでしょう。
「気」は体内のエネルギー
つぎに、「気」という漢字を説明します。「気」の下の方の「メ」はもともと「米」と書いていました。そして、「气」は雲の流れを表していて、「気」とはごはんを炊く様子であり、その時に蒸気がふたをカタカタ動かすところから、目に見えない力を「気」と言うようになったようです。
また、東洋医学では、人の体は「気・血・水」の三つの要素から成り立っていて、そのうち「気」は体内を巡るエネルギーのことを指し、この「気」が乱れることで「病」になると考えられていました。「病気」という単語のはっきりした語源はわかりませんが、このように「気が乱れると病になる」という考えにルーツがあるのかもしれませんね。
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漢字やそれが生まれた中国の歴史は古く長いから、漢字の語源や成り立ちがはっきりせず、さまざまな説が生まれるのは珍しいことじゃないんだ。
疾病と病気はどうして使い分けられる?
「疾病」と「病気」は、身体の不調の原因や治療法が医師の診断によってはっきりしているかどうかで使いわけられていると説明しましたが、なぜこのような使い分けがされるようになったのでしょうか。
それは、「疾病」が意味する身体の不調の中には怪我や骨折なども含む一方、「病気」は言葉の定義が人や立場によってあいまいで、骨折や怪我などは「病気」の中に含まないイメージがあることや、英語で「病名や原因、治療法などがはっきりしている病気」を意味する「disease」という単語の日本語訳が「疾病」であり、医学書などで「病気」ではなく「疾病」が使われるところにあるようです。
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