この記事では密度と比重の違いについて掘り下げていきます。どちらも何かの密集度やものの軽重を表す言葉で、互いに密接な関係がありますが、実は意味合いが全く異なり、比重に至っては単位もない。そのほか、密度の単位や密度と比重の換算などについて、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。理系の知識を生かし、密度と比重の違いを分かりやすく解説していく。

密度とは

科学分野以外にも、日常的に使われることが多い密度」。似たような言葉に「比重」がありますが、両者には決定的な違いがあります。まずは密度について解説しましょう。

密度の定義

科学用語としての「密度」は、[物質の質量]÷[物質の体積]で求められる値、すなわち単位体積あたりの物質の質量を指す言葉です。体積密度ともいい、面積や長さで割る場合はそれぞれ面密度面積密度)、線密度となります。英語でdensity。ほかにも、電荷密度や磁束密度、状態密度など、さまざまな量に対応する密度があります。

一般的には密集の度合いを示すのに使われ、例えば人口密度その地域の単位面積当たりに居住する人の数です。また「密度の濃い時間」など、物事の充実度も表します。

アルキメデスと金の王冠

image by iStockphoto

密度については、古代ギリシアの数学者アルキメデスの逸話が有名でしょう。

ギリシアの都市シラクサの王ヒエロン2世は、金細工師に純金を渡して王冠を作らせました。しかし金細工師が金の一部を横領し、その分の質量をほかの金属を混ぜることでごまかした疑惑が生じ、ヒエロン2世は親族のアルキメデスに王冠を壊さずに調べるよう命じます。アルキメデスは困り果てますが、ある日風呂に入ったところ浴槽から湯があふれたことから、あふれた湯の体積と自身の体の体積が等しいと気付くのです。

アルキメデスは王冠と同じ質量の金塊を用意すると、金塊と王冠それぞれを、水を張った容器に入れました。結果、金塊を入れたときよりも王冠の方があふれる水の量が多く質量が同じなのに体積が大きい、すなわち密度が低いことが判明。王冠が純金ではないことを見抜いたのです。

密度の単位

密度の単位は、SI単位系(国産単位系)のkg/m3(キログラム毎立方メートル)です。kg/m3 では桁が大き過ぎるという場合は、g/cm3(グラム毎立方センチメートル)が使われます。なお、g/cm3を単位とする値は、水に対する比重とほぼ同じです。

液体の密度には、単位が違うだけでkg/m3と値が同じg/L(グラム毎リットル)も用いられますが、Lが非SI単位系のため、値が同じになるg/dm3(グラム毎立方デシメートル)を代わりにすることがあります。1dmは10cmに相当し、1dm3=1000cm3=1Lです。

換算式を下に示します。

1g/cm3=1000kg/m3
1kg/m3=0.001g/cm3=1g/L=1g/dm3

\次のページで「水と空気の密度」を解説!/

水と空気の密度

標準気圧において、水の密度は温度3.984 °Cのときに最大になります。その値は999.97495kg/m3(g/L)=0.99997495g/cm3です。また、空気の密度は標準気圧下で温度0 ℃で1.293kg/m3になります。標準気圧は大気圧の国際基準で、1atm(気圧)=1013.250hPaです。

比重とは

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比重は密度によく似ていますが、比較の値であるため単位がありません。どういうことか解説しましょう。

比重の定義と密度との関係

「比重」はある物質の密度と標準となる物質の密度の比で[物質の密度]÷[標準物質の密度]で求められます無次元量、無名数と呼ばれる量で、単位はありません。英語ではspecific gravity。端的に言えば、標準物質より重いか軽いかを表す値です。一般的には、ほかと比較して重点を置く度合いを意味します。

液体や固体においては、前述の標準気圧下3.984 °Cの水の密度を標準とするのが通常です。さらにg/cm3を単位とする場合、水の密度は0.99997495g/cm31g/cm3となるため、比重はg/cm3を単位とする密度とほぼ同じ値になります。気体においては、前述の空気の密度1.293kg/m3を標準に取ることが多いです。

下に主な金属の密度(比重)を示します。密度の場合の単位はg/cm3です。

オスミウムOs 22.59
イリジウムIr 22.56
白金Pt 21.45
金Au 19.32
水銀Hg 13.53
鉛Pb 11.34
銀Ag 10.49
銅Cu 8.96
カドミウムCd 8.65
鉄Fe 7.87
チタンTi 4.51
アルミニウムAl 2.70
マグネシウムMg 1.74
ナトリウムNa 0.97
カリウムK 0.89
リチウムLi 0.53

通常、比重 < 1の物質は水に浮き、> 1の物質は水に沈みます。

金属はおしなべて比重が1より大きいと思われがちですが、ナトリウムNaやカリウムK 、リチウムLiは1より小さく、理論上は水に浮きます。しかしこれらはアルカリ金属で水と激しく反応する上、NaやKに至っては水に入れた途端爆発するので、浮かぶかどうかを実際に確認するのは困難です。

重金属と軽金属

比重は金属の分類に使われます。比重が5程度より大きい金属重金属比重が5程度より小さい金属軽金属とされていますが、その基準は少々あいまいです。前述の比重の表を例にとると、鉄Feから上が重金属、アルミニウムAlより下が軽金属で、チタンTiは場合によって軽金属、重金属どちらにも分類されます。

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密度・比重と浮力の関係

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密度および比重は、浮力と密接な関係があります。物質の密度測定に使われるアルキメデスの原理は、この関係性を説明するものです。

アルキメデスの原理

「静止した流体(気体や液体)中にある物体は、物体の体積分の、流体の重量と等しい上向きの浮力を受ける」という物理法則がアルキメデスの原理です。

流体が水の場合、物体は体積分の水の重量と同じ浮力を受けます。なお、重量は物体に働く重力の大きさのことで、下向きに働く力です。[質量]×[重力加速度]で求められます。

密度0.92g/cm3(比重0.92)の氷を例に説明しましょう。体積1cm3の氷を水に入れるとすると、その質量は0.92gで、重量は0.92 ×[重力加速度]で表されます。対して1cm3の水の質量は1gなので、氷は1×[重力加速度]分の浮力を受け、重量 < 浮力となって水に浮かぶのです。

質量を持つすべての物体において、その間には常に引力が働きます。これを万有引力といい、地球の重力はこの引力と自転による遠心力を合成したものです。また、地表付近で物体を落とすと、その落下速度は重力によりどんどん増していきます。この加速度が重力加速度で、地球の重力加速度は約9.8m/s2(メートル毎秒毎秒)です。

アルキメデスと金の王冠(別バージョン)

前述のアルキメデスの逸話には、別の説もあります。

風呂に入った際、浴槽から湯があふれるのと同時に体が軽く感じたアルキメデスはあふれた湯の分だけ浮力を受けていることに気付きました。そこでアルキメデスは、王冠と同じ質量の金塊と王冠をてんびん棒に吊るし、つり合いが取れた状態のまま双方を水の中に入れたのです。

金塊と王冠どちらも純金で密度が同じであれば、すなわち体積が同じであれば、アルキメデスの原理により双方が受ける浮力も同じで、てんびん棒はつり合ったままになるはずでした。しかし実際は王冠の方が上がってしまい、王冠が受ける浮力が大きい、すなわち体積が大きく密度が低いことが判明したのです。

密度=質量÷体積、比重=密度÷標準物質の密度

密度物質の質量を体積で割った値比重物質の密度を標準となる物質の密度で割った値単位はないことを解説しました。

密度を求める、もしくは密度を使って体積や質量を求める問題は、何と何を掛けたり割ったりすればいいのか戸惑うことが多く、大人でも苦手意識を持つ人が少なくありません。例えば「〇の密度は△g/cm3」を「〇を角砂糖大のキューブに切り分けたときの、キューブ1個分の質量が△g」と見方を変えてみると、問題のイメージがつかみやすくなります。

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雑学

3分で簡単「密度」と「比重」の違い!単位や換算についても工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では密度と比重の違いについて掘り下げていきます。どちらも何かの密集度やものの軽重を表す言葉で、互いに密接な関係がありますが、実は意味合いが全く異なり、比重に至っては単位もない。そのほか、密度の単位や密度と比重の換算などについて、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。理系の知識を生かし、密度と比重の違いを分かりやすく解説していく。

密度とは

科学分野以外にも、日常的に使われることが多い密度」。似たような言葉に「比重」がありますが、両者には決定的な違いがあります。まずは密度について解説しましょう。

密度の定義

科学用語としての「密度」は、[物質の質量]÷[物質の体積]で求められる値、すなわち単位体積あたりの物質の質量を指す言葉です。体積密度ともいい、面積や長さで割る場合はそれぞれ面密度面積密度)、線密度となります。英語でdensity。ほかにも、電荷密度や磁束密度、状態密度など、さまざまな量に対応する密度があります。

一般的には密集の度合いを示すのに使われ、例えば人口密度その地域の単位面積当たりに居住する人の数です。また「密度の濃い時間」など、物事の充実度も表します。

アルキメデスと金の王冠

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密度については、古代ギリシアの数学者アルキメデスの逸話が有名でしょう。

ギリシアの都市シラクサの王ヒエロン2世は、金細工師に純金を渡して王冠を作らせました。しかし金細工師が金の一部を横領し、その分の質量をほかの金属を混ぜることでごまかした疑惑が生じ、ヒエロン2世は親族のアルキメデスに王冠を壊さずに調べるよう命じます。アルキメデスは困り果てますが、ある日風呂に入ったところ浴槽から湯があふれたことから、あふれた湯の体積と自身の体の体積が等しいと気付くのです。

アルキメデスは王冠と同じ質量の金塊を用意すると、金塊と王冠それぞれを、水を張った容器に入れました。結果、金塊を入れたときよりも王冠の方があふれる水の量が多く質量が同じなのに体積が大きい、すなわち密度が低いことが判明。王冠が純金ではないことを見抜いたのです。

密度の単位

密度の単位は、SI単位系(国産単位系)のkg/m3(キログラム毎立方メートル)です。kg/m3 では桁が大き過ぎるという場合は、g/cm3(グラム毎立方センチメートル)が使われます。なお、g/cm3を単位とする値は、水に対する比重とほぼ同じです。

液体の密度には、単位が違うだけでkg/m3と値が同じg/L(グラム毎リットル)も用いられますが、Lが非SI単位系のため、値が同じになるg/dm3(グラム毎立方デシメートル)を代わりにすることがあります。1dmは10cmに相当し、1dm3=1000cm3=1Lです。

換算式を下に示します。

1g/cm3=1000kg/m3
1kg/m3=0.001g/cm3=1g/L=1g/dm3

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