この記事では「崩壊」と「壊滅」の違いについてみていきます。どちらも災害で建物などに被害がでた時などによく使われる言葉ですが、どちらも似たニュアンスの漢字が使われているだけに、その意味の違いは何かを聞かれると答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

崩壊と壊滅のざっくりした違い

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まずは崩壊と壊滅の大まかな意味の違いについて説明しましょう。「崩壊」「物などが崩れたり、つぶれたりして壊れてしまうこと」を意味するのに対し、「壊滅」「物などが、元の姿をとどめないほどの被害を受け、壊れてダメになってしまうこと」を意味します。

崩壊と壊滅を漢字から説明

「崩壊」「崩れたり、つぶれたりして壊れてしまうこと」という意味で、「壊滅」「元の姿をとどめないほど壊れてダメになってしまうこと」だということは説明しましたが、どちらも「壊れる」ニュアンスを持っているので、まだハッキリした違いがわからない方も多いでしょう。

そこで、ここからは「崩壊」と「壊滅」、それぞれに使われている漢字に着目し、説明していきたいと思います。

「崩」は山が崩れる

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まずは「崩壊」の「崩」について説明しましょう。「崩」は訓読みで、「まとまったり、整っていたものが壊れたり、状態が乱れる」という意味の「崩(くず)れる」という読みをしますが、漢字の生まれた中国では、「くずれる」ことを「ホウ」と言いました。

そこで山がくずれる様子から、「山(やまかんむり)」に「ホウ」と発音する「朋」という字にをつけ、「くずれる」という意味の「崩」という漢字が成り立ったようです。

「壊」はダムが壊れる?

つづいて「壊」について説明しましょう。「壊」という字は、「物が被害を受けて役に立たなくなったり、ダメになる」意味で使われる「こわれる」の漢字ですが、はっきりした成り立ちはわかっていません。そこで、いくつかある考えのうちの一つを紹介しましょう。

「壊」の右側は、「衣」と死んだ人を想って流す「涙」を組み合わせて作られたとされている形ですが、ここでは元の意味ではなく「こわれる」という意味だと考えられます。そして「壊」は、土へんが使われていることや、右側に「涙」を意味する形が使われていることから、堤(小規模なダムのようなもの)に穴が開き、そこから大量の水が流出して壊れる様子を字にしたのが「壊」ではいかと考えられるのです。だからでしょうか?常用外の読み方ではありますが、「壊れる」の読み方には「こわれる」だけではなく、「やぶれる」もあります。

\次のページで「「滅」は水で火をほろぼす」を解説!/

「滅」は水で火をほろぼす

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今度は「滅」について説明しましょう。「滅」という字の右側は「戉(ほこ)」と「火」の形を組み合わせたもので、「ほこ等の刃物で火だねを斬る」というところから「火を消す」ことを表しているのです。そして、「滅」はさんずいを使った漢字であることから、水をかけて火を完全に消すことを意味します。

ですので、「滅」「被害を受けて完全に消え去る、根絶やしにされる」などといった意味の「ほろびる」という言葉の漢字として使われているのです。

「壊滅」は被害の程度もあらわす

ここまでの説明で、「崩壊」とは「まとまったり、整っていたものが壊れたり、状態が乱れる」という意味の「崩れる」と「物が被害を受けて役に立たなくなったり、ダメになる」という意味を持つ「壊れる」を組み合わせた言葉で、「壊滅」「壊れる」と「被害を受けて完全に消える、根絶やしにされる」などの意味の「滅びる」を組み合わせた言葉だということを知っていただけたかと思います。

ここで注意したいのが、「壊滅」「滅」「完全に」という、被害の程度もあらわしている点です。「崩壊」も「崩」の字が「山がくずれる」ことに由来することもあり、当然被害が大きいニュアンスを含んではいますが、「壊滅」は物などが被害を受け、壊れる様子を伝えるとともに、その被害が元の姿をとどめないほどのものだという程度をより明確にあらわします。ですから、ニュースなどで被害の大きさを伝える表現として、

1.その災害でこの地域は壊滅的な被害を受けた。
2.その災害でこの地域は崩壊的な被害を受けた。

1.のように「壊滅的」という表現は使われますが、2.のような「崩壊的」という言い回しは不自然であり、使われることもありません。

崩壊や壊滅は物以外にも使われる

「崩壊」「壊滅」は物などが壊れるときに使われる言葉だと説明しましたが、実際に物として存在するもの以外にも使われることがあります。例えば、

\次のページで「崩壊は大きいものが崩れ、壊滅は被害が大きい」を解説!/

1.昨日の試合に負けたことで、彼の不敗神話崩壊した。
2.警察の捜査がはいったことで、その組織壊滅においやられた。

などといった文を読めば、「不敗神話」「組織」といった「物ではないもの」に対しても使えるということを理解していただけるかと思います。

崩壊は大きいものが崩れ、壊滅は被害が大きい

今回の説明で、「崩壊」の意味は「物などが崩れたり、つぶれたりして壊れてしまうこと」で、「壊滅」「物などが、元の姿をとどめないほどの被害を受け、壊れてダメになってしまうこと」だということをわかっていただけたでしょうか。

ニュアンスとしてはどちらも近い言葉ですが、「崩壊」は、「崩」が「山がくずれる」ことに由来することから大きいものが崩れて壊れていくイメージを持ち、「壊滅」は壊れる様子だけでなく、その被害の程度が大きいことをより伝えることができるということを意識していただけば使い分けやすいかと思います。

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簡単でわかりやすい!崩壊と壊滅の違いとは?漢字の意味から例文まで現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「崩壊」と「壊滅」の違いについてみていきます。どちらも災害で建物などに被害がでた時などによく使われる言葉ですが、どちらも似たニュアンスの漢字が使われているだけに、その意味の違いは何かを聞かれると答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

崩壊と壊滅のざっくりした違い

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まずは崩壊と壊滅の大まかな意味の違いについて説明しましょう。「崩壊」「物などが崩れたり、つぶれたりして壊れてしまうこと」を意味するのに対し、「壊滅」「物などが、元の姿をとどめないほどの被害を受け、壊れてダメになってしまうこと」を意味します。

崩壊と壊滅を漢字から説明

「崩壊」「崩れたり、つぶれたりして壊れてしまうこと」という意味で、「壊滅」「元の姿をとどめないほど壊れてダメになってしまうこと」だということは説明しましたが、どちらも「壊れる」ニュアンスを持っているので、まだハッキリした違いがわからない方も多いでしょう。

そこで、ここからは「崩壊」と「壊滅」、それぞれに使われている漢字に着目し、説明していきたいと思います。

「崩」は山が崩れる

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まずは「崩壊」の「崩」について説明しましょう。「崩」は訓読みで、「まとまったり、整っていたものが壊れたり、状態が乱れる」という意味の「崩(くず)れる」という読みをしますが、漢字の生まれた中国では、「くずれる」ことを「ホウ」と言いました。

そこで山がくずれる様子から、「山(やまかんむり)」に「ホウ」と発音する「朋」という字にをつけ、「くずれる」という意味の「崩」という漢字が成り立ったようです。

「壊」はダムが壊れる?

つづいて「壊」について説明しましょう。「壊」という字は、「物が被害を受けて役に立たなくなったり、ダメになる」意味で使われる「こわれる」の漢字ですが、はっきりした成り立ちはわかっていません。そこで、いくつかある考えのうちの一つを紹介しましょう。

「壊」の右側は、「衣」と死んだ人を想って流す「涙」を組み合わせて作られたとされている形ですが、ここでは元の意味ではなく「こわれる」という意味だと考えられます。そして「壊」は、土へんが使われていることや、右側に「涙」を意味する形が使われていることから、堤(小規模なダムのようなもの)に穴が開き、そこから大量の水が流出して壊れる様子を字にしたのが「壊」ではいかと考えられるのです。だからでしょうか?常用外の読み方ではありますが、「壊れる」の読み方には「こわれる」だけではなく、「やぶれる」もあります。

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