政治についてのニュースを見ていると「副総理」や「副総裁」っていう言葉がたまに出てくるよな。「副」がついているから2番目に偉い立場なのは間違いないでしょう。与党が自民党の時は「自民党総裁」が「総理」だから、「副総理」と「副総裁」は同じ…だと思うか?

フフフ。実はこれが少しややこしいんですね。

今回はそんな「副総理」と「副総裁」の違いを、言葉や政治に詳しい院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「副総理」と「副総裁」は全く違う役職!

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日本の政治のニュースでたまに耳にする「副総理」と「副総裁」。「2番目に偉いのは同じだし、結局名前が違うだけで同じ役職なんでしょ」…と思っていませんか?実は全く違う役職なのです。まずは「副総理」と「副総裁」がどのような役職なのか見ていきましょう。

なお、ここでの「副総裁」は「自由民主党副総裁」のことです。それ以外の場合での「副総裁」や「総裁」については、この記事の後ろの方で解説します。

「副総理」:日本のナンバーツー!

「副総理」は、内閣総理大臣(日本国首相)に万が一のことがあった場合に、臨時でその職務を代行するように指定された国務大臣の通称です。「国務大臣」は「外務大臣」や「法務大臣」などの内閣で「○○大臣」や「○○相」と呼ばれる人たちを指します。

つまり、総理大臣が事故に遭ったり急死したりしてその職務が果たせなくなった場合に、総理大臣の役職を臨時で代行する「○○大臣」が「副総理」なのです。日本のナンバーツーと言ってもいいでしょう

ちなみにこの「副総理」には正式名称が存在しないため、通称である「副総理」が公的にもそのまま使用されています。また、必ず置かなければならない役職ではないため、「副総理」が存在しない時期もあります

「副総裁」:自民党のナンバーツー!

日本の政治における「副総裁」は、多くの場合は自由民主党(自民党)の「副総裁」を指します。簡単に言えば、自由民主党の中で2番目に偉い人…ということですね。ただ実際の自民党内では「副総裁」よりも「幹事長」の方が権限が強く、実質的なナンバーツーは「幹事長」だと言えます

2023年3月現在日本の政権与党は自民党ですが、自民党の「副総裁」が自動的に日本の「副総理」になるわけではありません。「副総裁」と「副総理」を兼任している場合もありますが、「副総裁」と「副総理」を別々の人が務めている場合もあります。

簡単にまとめると…日本のナンバーツーで、総理大臣にもしものことがあった場合にその職務を代行するのが「副総理」です。一方、日本の政党である自由民主党のナンバーツーであるのが「副総裁」ですね。国の2番目が「副総理」、自民党の2番目が「副総裁」だと覚えると良いでしょう。そして、自民党の「副総裁」が自動的に日本の「副総理」になるわけではありません

\次のページで「歴代の「副総理」や「副総裁」はどんな人たち?」を解説!/

歴代の「副総理」や「副総裁」はどんな人たち?

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続いて、歴代の「副総理」と「副総裁」にはどのような人がいるかを見ていきましょう。日本のナンバーツーである「副総理」、日本で長期間政権与党の座にある「自由民主党」の「副総裁」ということで、なかなか有名な人たちが名を連ねていますよ。

歴代副総理

まずは歴代の「副総理」を見ていきましょう。ここでは現在の内閣の制度が確立された戦後の日本国憲法制定以降の「副総理」を見ていきます。太字は総理大臣経験者、名前の右は在任期間です。有名な政治家や、教科書で名前を見たことがあるような人も多いのではないでしょうか。(2023年3月13日現在)

1.幣原喜重郎 1947年5月3日~1947年5月24日
2.芦田均 1947年6月1日~1948年3月10日
3.西尾末広 1948年3月10日~1948年7月6日
4.林譲治 1948年10月19日~1951年3月13日
5.緒方竹虎 1952年11月18日~1954年12月10日
6.重光葵 1954年12月10日~1956年12月23日
7.石井光次郎 1957年5月20日~1958年6月12日
8.益谷秀次 1959年6月18日~1960年7月19日
9.河野一郎 1964年7月18日~1965年6月3日
10.三木武夫 1972年8月29日~1974年7月12日
11.福田赳夫 1974年12月19日~1976年11月6日
12.伊東正義 1980年6月11日~1980年7月17日
13.金丸信 1986年7月22日~1987年11月6日
14.宮澤喜一 1987年11月6日~1988年12月9日
15.渡辺美智雄 1991年11月5日~1993年4月7日
16.後藤田正晴 1993年4月8日~1993年8月9日
17.羽田孜 1993年8月9日~1994年4月28日
18.河野洋平 1994年6月30日~1995年2月10日
19.橋本龍太郎 1995年10月2日~1996年1月11日
20.久保亘 1996年1月11日~1996年11月7日
21.菅直人 2009年9月16日~2010年6月8日
22.岡田克也 2012年1月13日~2012年12月26日
23.麻生太郎 2012年12月26日~2021年10月4日

歴代(自民党)副総裁

次に自民党の歴代「副総裁」を見ていきましょう。こちらも有名な政治家が多いですね。ただ、総理大臣経験者は「副総理」よりも少ない印象です。「副総裁」も必ず置かなければならない役職ではないため、存在しない期間もあります。太字は総理大臣経験者、名前の右側は就任月と退任月です。(2023年3月13日現在)

\次のページで「「副総裁」「総裁」がいるのは自民党だけではない!」を解説!/

1.大野伴睦 1957年7月~1960年7月
2.大野伴睦 1961年7月~1964年5月
3.川島正次郎 1964年7月~1966年12月
4.川島正次郎 1967年11月~1970年11月
5.椎名悦三郎 1972年8月~1976年12月
6.船田中 1977年11月~1978年12月
7.西村英一 1979年1月~1980年11月
8.二階堂進 1984年4月~1986年7月
9.金丸信 1992年1月~1992年8月
10.小渕恵三 1994年7月~1995年10月
11.山崎拓 2003年9月~2003年11月
12.大島理森 2010年9月~2012年9月
13.高村正彦 2012年9月~2018年10月
14.麻生太郎 2021年10月~

「副総裁」「総裁」がいるのは自民党だけではない!

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ここまで「副総理」と「副総裁」の違いについて解説してきました。ただ「総裁」や「副総裁」といった言葉が、自民党の「総裁」や「副総裁」以外でも使われている場合があるのをご存じですか?どのような場合に使われているか見ていきましょう。

特殊法人・特殊会社のトップ2、そして皇族の名誉職でも…

「総裁」や「副総裁」は現在、公的な性質を帯びた特殊法人や特殊会社のトップ、ナンバーツーの役職名であることが多いです。特に有名なのは、日本銀行の「総裁」「副総裁」ではないでしょうか。まさに日本経済の行く末を握るトップ2ですよね。

その他には、皇族が名誉職として機関のトップやナンバーツーに就任する場合に「総裁」「副総裁」が使われます。たとえば上皇后の美智子さまは日本赤十字社名誉「総裁」です。(2023年3月13日現在)

「副総理」と「副総裁」では背負っているものが違う!

今回は「副総理」と「副総裁」の違いについて解説しました。「副総理」は総理大臣に万が一のことがあった場合にその職務を代行する日本のナンバーツーです。一方の「副総裁」は、多くの場合は自由民主党のナンバーツーである「副総裁」を指します。「副総理」は国を背負っていますが、「副総裁」が背負っているのは自民党です。背負っている物の大きさが違いますよね。

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雑学

簡単に分かる「副総理」と「副総裁」の違い!実は違う役職?院卒日本語教師が分かりやすく解説

政治についてのニュースを見ていると「副総理」や「副総裁」っていう言葉がたまに出てくるよな。「副」がついているから2番目に偉い立場なのは間違いないでしょう。与党が自民党の時は「自民党総裁」が「総理」だから、「副総理」と「副総裁」は同じ…だと思うか?

フフフ。実はこれが少しややこしいんですね。

今回はそんな「副総理」と「副総裁」の違いを、言葉や政治に詳しい院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「副総理」と「副総裁」は全く違う役職!

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日本の政治のニュースでたまに耳にする「副総理」と「副総裁」。「2番目に偉いのは同じだし、結局名前が違うだけで同じ役職なんでしょ」…と思っていませんか?実は全く違う役職なのです。まずは「副総理」と「副総裁」がどのような役職なのか見ていきましょう。

なお、ここでの「副総裁」は「自由民主党副総裁」のことです。それ以外の場合での「副総裁」や「総裁」については、この記事の後ろの方で解説します。

「副総理」:日本のナンバーツー!

「副総理」は、内閣総理大臣(日本国首相)に万が一のことがあった場合に、臨時でその職務を代行するように指定された国務大臣の通称です。「国務大臣」は「外務大臣」や「法務大臣」などの内閣で「○○大臣」や「○○相」と呼ばれる人たちを指します。

つまり、総理大臣が事故に遭ったり急死したりしてその職務が果たせなくなった場合に、総理大臣の役職を臨時で代行する「○○大臣」が「副総理」なのです。日本のナンバーツーと言ってもいいでしょう

ちなみにこの「副総理」には正式名称が存在しないため、通称である「副総理」が公的にもそのまま使用されています。また、必ず置かなければならない役職ではないため、「副総理」が存在しない時期もあります

「副総裁」:自民党のナンバーツー!

日本の政治における「副総裁」は、多くの場合は自由民主党(自民党)の「副総裁」を指します。簡単に言えば、自由民主党の中で2番目に偉い人…ということですね。ただ実際の自民党内では「副総裁」よりも「幹事長」の方が権限が強く、実質的なナンバーツーは「幹事長」だと言えます

2023年3月現在日本の政権与党は自民党ですが、自民党の「副総裁」が自動的に日本の「副総理」になるわけではありません。「副総裁」と「副総理」を兼任している場合もありますが、「副総裁」と「副総理」を別々の人が務めている場合もあります。

簡単にまとめると…日本のナンバーツーで、総理大臣にもしものことがあった場合にその職務を代行するのが「副総理」です。一方、日本の政党である自由民主党のナンバーツーであるのが「副総裁」ですね。国の2番目が「副総理」、自民党の2番目が「副総裁」だと覚えると良いでしょう。そして、自民党の「副総裁」が自動的に日本の「副総理」になるわけではありません

\次のページで「歴代の「副総理」や「副総裁」はどんな人たち?」を解説!/

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