この記事では「嫡男」と「長男」の違いについてみていきます。歴史小説やドラマなんかで殿様の息子を「嫡男」って呼んでいるのを見たことあるよな。しかし、今俺たちは「嫡男」なんて言葉は使わないよな。時代が違うから言い方が違ってるのか。ほかに明確な違いがあるのか。読み方や定義も確認しつつ、歴史好きな元塾講師yêuthuquáと一緒に解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「嫡男」と「長男」の違いは?

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嫡男と長男の違いはご存じですか?「嫡男(ちゃくなん)」という言葉は、歴史小説や時代物のドラマなどで目にしたり耳にしたりしますよね?しかし「長男」と何が違うのでしょうか?時代が関係あるのか、ほかの理由があるのか、詳しく見ていきましょう。

「嫡男」:血縁関係が必須

「嫡男」とは正妻(正室)が生んだ最初の男の子のことです。なぜ「嫡」の字を使うのでしょうか。「嫡出(ちゃくしゅつ)」の「長男」で「嫡男」なのです。「嫡出」とは「婚姻関係にある夫婦から生まれること」。

みなさんよくご存じの織田信長は父・織田信秀とその正室・土田御前(どたごぜん)との間に産まれた最初の男の子でしたので、織田家の「嫡男」となるわけです。ポイントは婚姻関係にある正室が生んだ子ですので「血縁関係」があります

「長男」:血縁関係は不要

一方「長男」は一般的には夫婦の間に生まれた最初の男の子のことを指していますよね?間違っているわけではないですが、正確には家族の中で最年長の息子を長男と呼んでいます

例えば、両親がそれぞれ子連れで再婚していた場合、その中で最年長の息子が「長男」です。あなたが元の家族で長男だったとしても、親の再婚相手の息子が年上なら、あなたは長男ではなく弟に。新しいお兄ちゃんが長男となります。

「嫡男」と「長男」は何が変わる?

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「嫡男」は現在でも「~流」などの伝統芸能の世界で使われていますが、ここでは過去の歴史をもとに、「長男」は私たちの今の生活をもとにみていきましょう。

\次のページで「家督は誰が継ぐ?」を解説!/

家督は誰が継ぐ?

歴史小説などで目にした方も多いと思いますが、嫡男がその家をすべて継ぐのが一般的でした。その他の男子が家督を継ぐことはなく、それぞれ別の道を歩んでいたようです。長男も同じように家というより家名(つまり苗字)を継ぐことが多いようですが、結婚して奥さんの苗字に変わることもあり必ず家を継ぐとは限りません

財産は誰が相続する?

嫡男は家督を継ぐわけですから、もちろん家の財産をすべて相続するのが普通でした。今風に言えば嫡男のひとり勝ちでしょうか。しかし、単に家を継ぐだけではなく家臣などの部下、領地、領民のすべてが嫡男のものとなるので決して手放しで喜べたのかどうかはわかりません。

現在では民法に定められているように、子は男女関係なく財産は均等に相続することとなっていますので、長男のひとり勝ちとはいかないようです。

武家社会における「嫡男」

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嫡男は正妻(正室)が生んだ最初の男の子でしたよね?しかし、嫡男と呼ばれる人たちは本当に最初に生まれた男の子だったのでしょうか?歴史上、2番目、3番目の男子が嫡男となったケースも多く見られました。側室の子が嫡男となったケースも見られます。つまり、「嫡男」とは「跡継ぎ」を指す言葉と同じなのです。

年長でなくても「嫡男」?

いろいろな理由で次男、三男が嫡男となることがありました。病気や戦で死んだり、家督を継がせるには力が足りなかったり、最初の男の子を嫡男にすることができないケースがあったのです。そこで、男子の兄弟がいる家では次男や三男が嫡男となり家督を継いで家名を守ってきました。

側室の子でも「嫡男」?

正室に子ができない、正室が亡くなる、正室が好きではない(政略結婚が多かったせいでしょうね)などの理由で正室が男の子を生まなかった場合、家の存続にかかわる一大事ですので側室の子を嫡男とすることも多かったようです。

戦国時代を代表する大名・織田信長の正室・濃姫は子を授かることがありませんでしたので、側室が生んだ子・信忠を嫡男とし信長は家督を譲っています。

ちなみに、家督を継いだ信忠の幼名は「奇妙丸」。生まれたときの容姿が変わっていたからとの説があります。話はそれますが、信長のネーミングセンスもおもしろいですね。

次男以下はどうなるの?

家督を継がなかった男子はどのような道に進んだのでしょうか。嫡男の補佐役や部下となって家を支えたり、他家の養子となりその家督を継いだり、寺に入って僧となったりしていました。なかには、嫡男とうまくいかずお家騒動をおこした人もいます。

「嫡男」と「長男」の決定的な違いは血縁の有無

どちらも母親から生まれた最初の男子ではありますが、「嫡男」が必ず血縁関係があるのに対して「長男」は必ずしも血縁関係があるとは限りません。同じ長男であっても血縁関係の有無で呼び方が変わりました。また嫡男が家を継ぐのが慣例だったことから、家督を継ぐ男子を指して「嫡男」と呼ぶようになり、次男や三男であってもそれが側室の子であっても「嫡男」と呼ぶようになったのですね。

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簡単でわかりやすい「嫡男」と「長男」の違い!読み方や定義も歴史大好き元塾講師が詳しく解説!

この記事では「嫡男」と「長男」の違いについてみていきます。歴史小説やドラマなんかで殿様の息子を「嫡男」って呼んでいるのを見たことあるよな。しかし、今俺たちは「嫡男」なんて言葉は使わないよな。時代が違うから言い方が違ってるのか。ほかに明確な違いがあるのか。読み方や定義も確認しつつ、歴史好きな元塾講師yêuthuquáと一緒に解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「嫡男」と「長男」の違いは?

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嫡男と長男の違いはご存じですか?「嫡男(ちゃくなん)」という言葉は、歴史小説や時代物のドラマなどで目にしたり耳にしたりしますよね?しかし「長男」と何が違うのでしょうか?時代が関係あるのか、ほかの理由があるのか、詳しく見ていきましょう。

「嫡男」:血縁関係が必須

「嫡男」とは正妻(正室)が生んだ最初の男の子のことです。なぜ「嫡」の字を使うのでしょうか。「嫡出(ちゃくしゅつ)」の「長男」で「嫡男」なのです。「嫡出」とは「婚姻関係にある夫婦から生まれること」。

みなさんよくご存じの織田信長は父・織田信秀とその正室・土田御前(どたごぜん)との間に産まれた最初の男の子でしたので、織田家の「嫡男」となるわけです。ポイントは婚姻関係にある正室が生んだ子ですので「血縁関係」があります

「長男」:血縁関係は不要

一方「長男」は一般的には夫婦の間に生まれた最初の男の子のことを指していますよね?間違っているわけではないですが、正確には家族の中で最年長の息子を長男と呼んでいます

例えば、両親がそれぞれ子連れで再婚していた場合、その中で最年長の息子が「長男」です。あなたが元の家族で長男だったとしても、親の再婚相手の息子が年上なら、あなたは長男ではなく弟に。新しいお兄ちゃんが長男となります。

「嫡男」と「長男」は何が変わる?

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「嫡男」は現在でも「~流」などの伝統芸能の世界で使われていますが、ここでは過去の歴史をもとに、「長男」は私たちの今の生活をもとにみていきましょう。

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