ITパスポートや基本情報技術者というものを聞いたことあるか。どちらも情報処理技術者試験という国家試験です。弁護士などと違い、この資格がないとIT関係の仕事ができないわけではないが、この資格を持つと国がある程度の知識を持つことを保証してくれるわけです。そんなITパスポートや基本情報技術者試験ですが、どう違うのか分かるか。もちろん、難易度が違うというのもある。ですが、根本的な違いがあるそうです。その違いや、どちらを、あるいは両方を目指すべきかについて、基本情報技術者や応用情報技術者の資格を持つプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。基本情報、応用情報他の資格取得済。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさん。

対象は誰?どういう内容?ITパスポートと基本情報技術者の違いとは

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2022年の小学生のなりたい職業ランキングでは、総合で4位、男子では2位にゲームクリエイターやプログラマーが入っているそうです。プログラマーになるには何か資格が必要なのでしょうか。例えば、情報処理技術者試験という国家試験があります。その中の試験のひとつがITパスポート試験や基本情報技術者試験です。

実際にはプログラマーになるのに資格は必須ではありません。ただ、取って損になるようなものでもありません。そんなITパスワード試験と基本情報技術者試験の違いや、どちらを取るべきなのか、あるいは取らなくてもよいのかを説明します。なお、2023年から基本情報技術者試験の内容が一部変更されたので、注意してください。

ITパスポート:IT技術者以外の人も知るべきIT基礎知識

どちらの試験も情報処理推進機構(IPA)という団体が実施しています。「法律に基づき経済産業省が情報処理技術者としての『知識・技能』が一定以上の水準であることを認定している国家試験」というのがIPAの説明です。また、IT技術者だけではなく、仕事でITを利用する人も含めたすべての人が対象になります。

特にITパスポート試験は「職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか、担当業務に対してITを活用していこうとする者」が対象です。まとめるとIT技術者だけでなく、ITを活用したいすべての人が対象の試験になります。

基本情報技術者:IT技術者となるためのIT基礎知識

ITパスポート試験がIT技術者以外の人も対象にしているのに対し、基本情報技術者試験はIT技術者が対象です。IPAでは「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」が対象と説明しています。

情報処理技術者試験はITパスポート試験と基本情報技術者試験だけではありません。他に応用情報技術者試験やその他の高度な知識・技能の試験もあります。これらの上位試験の基礎となる試験が基本情報技術者試験です。

情報処理技術者試験とは?試験内容から見る3つの違い

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ITパスポート試験も、基本情報技術者試験も、どちらも情報処理技術者試験の一部です。いくつかの試験がありますが、どちらも基礎、基本的なものになります。両者の違いはざっくり言えばITパスポート試験は一般向け、基本情報技術者試験はIT技術者向けです。この違いについて、試験範囲、難易度、試験日程の違いで説明します。

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ポイント1・試験範囲の違い

実はITパスポート試験と基本技術者試験、応用技術者試験の出題範囲はすべて同じです。ただし、内容が少し違います。ITパスポート試験は100問で選択式(4つの選択肢からひとつ選ぶ)です。そのうち、判定に使われるのは92問で、プログラミングとは直接関係ない会社経営に関する内容が3分の1もあります。

基本情報技術者試験は科目AとBの2つです。科目Aは選択式(四肢択一)60問、科目Bは選択式(複数選択あり)20問ITパスポート試験と比べると会社経営に関する内容の比率を下げて、プログラミングと関係深い内容の比率が高くなっています。

ポイント2・難易度の違い

ITパスポート試験と基本情報技術者試験では難易度が違います。問題傾向はITパスポート試験は広く浅く、基本情報技術者試験は比較的狭く深くです。そのため一概には言えませんが、一般的にはITパスポート試験よりは基本情報技術者試験の方が難しいと言われています。

実際の合格率を比較したものが以下です。年度によってばらつきがあります。しかし、基本情報技術者試験の合格率はITパスポート試験の半分程度です。それだけ難易度が高いと言えます。

2020〜2022年の合格率
ITパスポート試験:53〜59% (平均:55.3%)
基本情報技術者試験:29〜41%(平均:36.6%)

ポイント3・試験日程、方式の違い

ITパスポート試験と基本技術者試験では試験の日程、受験方法が違いましたITパスポート試験はコンピューターを使った試験(CBT)です。そのため、ITパスポート試験を受験できるCBT試験会場であれば、いつでも都合の良い時に受験することが可能。一方、基本情報技術者試験は4月と10月の年に2回決められた試験会場で紙での試験(ペーパー方式)でしたその日しか受験できないし、仕事のある人は勉強する時期と忙しい時期が重なりがち

「でした」なのは2023年度から試験方式が変わったため。2023年4月からはITパスポート試験と同様、コンピューターを利用した試験になります。ただし、身体の不自由などでCBT受験できない人のために、従来通り年2回のペーパー方式での受験も可能です。

どちらを取る?そもそも取らない?資格取得のメリットとは

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情報処理技術者試験は弁護士や医師などとは違い、これに合格しないとその仕事ができないというものではありません。また、IT技術者がITパスポート試験を、一般の人が基本情報技術者試験を受けることも可能です。そのため、取っても取らなくてもよい資格とも言えます。それでも必要なのか。それを考えるためにも取得した時のメリットについて説明します。

\次のページで「資格取得の優遇も!資格を持つことに損はない」を解説!/

資格取得の優遇も!資格を持つことに損はない

まず、IT技術者でない場合。ITパスポート試験も基本情報技術者試験も、合格したからといって直接のメリットはありません自分のスキルアップのために受験することになります。

IT技術者の場合はどうでしょう。まず、試験の出題範囲も同じITパスポートをわざわざ受験する必要性はあまりありません。この資格は一般向けですから、IT関係の会社への就職に有利になることもないと思ってください。ただ、IT関係の会社では、自社の従業員の情報処理技術者試験合格者数を公開していることもあります。また、公開していなくても社内で何人合格という目標を立てていることも。資格取得を応援する制度がある場合は、資格取得した方がよいことがあります。

スキルアップやキャリアアップ?本音はどうなのか

ではIT技術者の立場ではどう考えているでしょうか。実は現役IT技術者には情報処理技術者試験、特に基本情報技術者試験に否定的な人も多いです。なぜかと言えば、この試験はITの基礎的な内容なので、直接仕事の役に立つというものではないため。IT技術者は多くの技術が必要。また、技術の進歩が早いため新しい技術をすぐに取り入れる必要があります。そのため、仕事に直接関係ない知識を時間をかけて学ぶことに否定的な人も多いのです。

実際、これらの資格を持っていないIT技術者もいます。合格できなければ仕事ができないわけでもなく、多くの人がなくても特に困っていません。それなら勉強して取る意味が少なそうですよね。でも、本当にそうなのでしょうか。会社によっては資格の有無で給料が変わることもあります。ただ、常に違いが出るわけでもないので注意が必要です。

情報処理技術者試験無用論?それでも勉強すべき理由

現役IT技術者には否定的意見もある基本情報技術者試験ですが、本当に意味がないのでしょうか。よく考えてみてください。基本をおろそかにして応用ができるのでしょうか。ジャンボジェットやジェット戦闘機のパイロットも、最初は必ずプロペラ機からスタートします。これは基礎をしっかりと身につけることが大切だから。では、IT技術者は基礎をおろそかにしても構わないのでしょうか。

仕事に直接関係ないから学ばなくてよいというのもひとつの意見です。それでよいかどうかは自身で考えてみてください。若い頃は取って意味がある資格と思えなくても、その後考えが変わることもあります。ただ、社会人になってからでは浅く広い知識を求められるITパスポート試験や基本情報技術者試験の勉強が大変なのは確かです。可能であれば学生のうちに勉強しておくことをおすすめします。

ITパスポートは一般向け、IT技術者は基本情報技術者から

ITパスポート試験も基本情報技術者試験も、情報処理機構(IPA)が実施している国家試験です。ただし、資格がないと仕事ができないというものではありません。ただ、会社によっては給料や昇進に関わることもあります。

そういうメリットもありますが、本来はITに関する基礎的な知識を持っていることを証明するためのものです。ITパスポートはIT技術者に限らない広く一般向けの資格になります。一方、基本情報処理技術者はIT技術者が基礎的なことをきちんと学んでいることを証明するものです。必ずしも仕事に直結するわけではないですが、IT技術者であれば自分にとってのメリット、デメリットをよく考えて、受験を検討してみてください。

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IT・プログラミング雑学

簡単でわかりやすい!ITパスポートと基本情報技術者の違いとは?難易度や資格取得のメリットもプログラマーがわかりやすく解説

ITパスポートや基本情報技術者というものを聞いたことあるか。どちらも情報処理技術者試験という国家試験です。弁護士などと違い、この資格がないとIT関係の仕事ができないわけではないが、この資格を持つと国がある程度の知識を持つことを保証してくれるわけです。そんなITパスポートや基本情報技術者試験ですが、どう違うのか分かるか。もちろん、難易度が違うというのもある。ですが、根本的な違いがあるそうです。その違いや、どちらを、あるいは両方を目指すべきかについて、基本情報技術者や応用情報技術者の資格を持つプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。基本情報、応用情報他の資格取得済。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさん。

対象は誰?どういう内容?ITパスポートと基本情報技術者の違いとは

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2022年の小学生のなりたい職業ランキングでは、総合で4位、男子では2位にゲームクリエイターやプログラマーが入っているそうです。プログラマーになるには何か資格が必要なのでしょうか。例えば、情報処理技術者試験という国家試験があります。その中の試験のひとつがITパスポート試験や基本情報技術者試験です。

実際にはプログラマーになるのに資格は必須ではありません。ただ、取って損になるようなものでもありません。そんなITパスワード試験と基本情報技術者試験の違いや、どちらを取るべきなのか、あるいは取らなくてもよいのかを説明します。なお、2023年から基本情報技術者試験の内容が一部変更されたので、注意してください。

ITパスポート:IT技術者以外の人も知るべきIT基礎知識

どちらの試験も情報処理推進機構(IPA)という団体が実施しています。「法律に基づき経済産業省が情報処理技術者としての『知識・技能』が一定以上の水準であることを認定している国家試験」というのがIPAの説明です。また、IT技術者だけではなく、仕事でITを利用する人も含めたすべての人が対象になります。

特にITパスポート試験は「職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか、担当業務に対してITを活用していこうとする者」が対象です。まとめるとIT技術者だけでなく、ITを活用したいすべての人が対象の試験になります。

基本情報技術者:IT技術者となるためのIT基礎知識

ITパスポート試験がIT技術者以外の人も対象にしているのに対し、基本情報技術者試験はIT技術者が対象です。IPAでは「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」が対象と説明しています。

情報処理技術者試験はITパスポート試験と基本情報技術者試験だけではありません。他に応用情報技術者試験やその他の高度な知識・技能の試験もあります。これらの上位試験の基礎となる試験が基本情報技術者試験です。

情報処理技術者試験とは?試験内容から見る3つの違い

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ITパスポート試験も、基本情報技術者試験も、どちらも情報処理技術者試験の一部です。いくつかの試験がありますが、どちらも基礎、基本的なものになります。両者の違いはざっくり言えばITパスポート試験は一般向け、基本情報技術者試験はIT技術者向けです。この違いについて、試験範囲、難易度、試験日程の違いで説明します。

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