今回は「番茶」と「ほうじ茶」の違いを見ていきます。どちらも日常的に飲まれるお茶で身近な存在にも関わらず、どんなお茶が番茶で、どんなお茶がほうじ茶なのか、そのイメージは人によって違うことが多い。それは番茶と呼ばれるお茶が地域によって異なるためです。呼び名が同じでも異なるお茶を指すとは驚きです。この先はグルメ好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

食べることが大好きな主婦ライター。週に2回は外食を楽しみ、近隣のお店を開拓している。高級料理よりも庶民派の手軽なものが好み。

番茶とほうじ茶の違いは焙(ほう)じてあるかどうか

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番茶とほうじ茶の最大の違いは、焙じてあるかどうかです。「焙じる」とは、水分が飛んでカラカラになるまで火であぶって熱すること。緑の番茶を焙じると茶褐色のほうじ茶になります。

ただし、番茶という言葉が指すお茶の種類には地域差があるため、人によってイメージが異なるのが実のところ。北海道・東北・北陸・京都では番茶といえばほうじ茶のことを意味し、それ以外の地域での番茶は緑色のお茶が連想されます。このイメージの違いが、番茶とほうじ茶の認識に混乱を生む原因になっています。

お茶の分類

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番茶とほうじ茶の違いを知るうえで、お茶の分類を理解することはとても大切。お茶全体の中で番茶・ほうじ茶がどのような位置にあるかを確認していきましょう。ここでいうお茶とは「チャノキ」と呼ばれるツバキ科ツバキ属の植物の葉からできるもの。そのため、昆布茶やドクダミ茶などの違う原料からできるお茶は除きます。

日本茶は「不発酵茶」の一種

日本茶は、お茶の中でも「不発酵茶」と呼ばれる分類の一種です。「チャノキ」から作られるお茶の分類は大きく分けて「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」の3つがあり、不発酵茶はいわゆる緑茶。半発酵茶の代表格がウーロン茶。発酵茶は紅茶を指します。

不発酵茶(緑茶)には日本式と中国式の製造方法があり、日本式で作られたものが日本茶です。番茶とほうじ茶は日本茶の一種で、言い換えれば緑茶の一種ということになります。

日本茶の種類

日本茶には番茶・ほうじ茶を含めてさまざまな種類が存在しますので、ここでは収穫前のチャノキに日光を当てない種類と当てる種類に分けて解説しましょう。

収穫前のチャノキに日光を当てない茶畑を覆下園(おおいしたえん)と呼び、この覆下園から収穫された茶葉は抹茶・玉露(ぎょくろ)・かぶせ茶になります。一方、収穫まで日光に当てる茶畑から収穫された茶葉からできるのが煎茶・番茶です。そして、番茶に炒った玄米を混ぜたものが玄米茶、番茶を焙じたものがほうじ茶となります。

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番茶とは?

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番茶とは収穫前まで日光を当てて収穫された茶葉の中で、三番茶・四番茶などを使って作られるお茶のことです。淹れたときの色合いは薄い緑色。味わいはさっぱりとしており、少しの苦みがアクセントです。カフェインが他の日本茶に比べて少なく、体に優しいお茶ともいわれます。

番茶の原料

番茶の原料には、先ほどもご紹介した三番茶や四番茶のほか、茶畑の枝を整えた際に一緒に切った茶葉や秋に収穫した茶葉、煎茶の製造時に規格外となった茶葉も使用されます。

三番茶・四番茶とは、3回目・4回目に摘み取られる茶葉のこと。茶葉を摘み取ると、およそ1か月半おきに新しい芽が生えます。最初に摘み取る新芽を一番茶とよび、2回目に摘み取る茶葉は二番茶、3回目は三番茶です。番茶は一番茶・二番茶を使用するお茶よりも格下と捉えられることが多く、頻繁に飲む日常使いのお茶として定着しています。

番茶の製造方法

番茶の一般的な製造方法は煎茶と同じです。まず収穫した茶葉を蒸して加熱。加熱することで茶葉の中の酵素の働きが抑えられ、発酵を防ぎます。日本茶が不発酵茶であるのは、最初に加熱の工程が入るからです。

次に、冷ました茶葉を揉みます。合間に乾燥工程を入れながら数種類の揉み方を行うと艶のある茶葉に。そして再度乾燥させ、火入れを行って保存性のアップと味の凝縮を行います。最後に茶葉の大きさや形を整えるためにふるいにかけるなどして完成です。

地域の番茶

番茶は古くから庶民のお茶として過程で製造されていたため、地域によってさまざまな種類があり、製造方法も異なります。ここでは代表的な2つの番茶をご紹介しましょう。

1つ目は「美作番茶」。岡山県の美作市に伝わるお茶で、夏に枝ごと収穫した茶葉を鉄窯で煮たあと、その煮汁をかけながら天日干しをします。2つ目は岡山県勝山市の「陰干し番茶」。秋に枝ごと刈り取り、軒先につるして干し、飲む前に軽く炒ってから淹れるお茶です。

ほうじ茶とは?

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ほうじ茶とは番茶を焙じたお茶です。近年では高級品として原料にこだわったものも出ていますが、一般的には番茶と同じように普段使いのお茶として親しまれています。独特の香ばしさに加え、苦みや渋みがなく飲みやすいのが特徴。これは焙じることで苦み成分のタンニンが壊れて、苦み・渋が抑えられるためです。番茶と同様、カフェインが少なめのお茶でもあります。

\次のページで「ほうじ茶の原料」を解説!/

ほうじ茶の原料

ほうじ茶は基本的に番茶を焙じたものですから、原料は番茶と同様に三番茶・四番茶や茶畑の枝を整えたときに一緒に刈った茶葉、秋に収穫した茶葉などです。このほか、煎茶や茎茶(茶葉の茎をお茶にしたもの)を使用して作られる場合もあります。

ほうじ茶の製造方法

ほうじ茶の製造方法は、途中までは煎茶・番茶と同じ。違いが出るのは最後の工程です。独特の香ばしさを出すため、「際焙烙」と呼ばれる専用の焙煎機で約200℃の熱をかけ、褐色になるまで焙煎します。ほうじ茶は家庭でも作ることができ、その場合はフライパンに煎茶や番茶を広げて焦げないように炒り、お好みの色になったら完成です。

地域のほうじ茶

ほうじ茶には全国的に知名度の高い種類も存在します。特に名の知られた2つをご紹介しましょう。

1つ目は「京番茶」です。「番茶」と付きますがほうじ茶の一種で、主に京都部の南部で生産されている日常使いのお茶。茶葉を揉まずに作るため葉の形が崩れずに落ち葉のような見た目をしており、独特のスモーキーな香りが特徴です。2つ目は石川県の「加賀棒茶」で、茎茶を焙じたお茶。味わいはまろやかで優しい甘みがあり、上品な香りが人気の種類です。焙煎を短時間で浅く行うことでふくよかな甘みが生まれます。

番茶・ほうじ茶の淹れ方

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お茶には種類によって最適な淹れ方がありますが、番茶・ほうじ茶はどちらも同じ方法です。1人分(100ml)あたり茶葉は2~3g、お湯は100℃に近い熱湯を使用します。茶葉はおよそ4倍の水分を吸収するため、お湯の量は人数分よりも多めに用意しておくのがおすすめです。

人数分の茶葉とお湯を急須に入れて、30秒ほど浸します。その後、湯のみに何往復かに分けて少しずつ注ぎますが、その際には濃さが均一になるように、最初に少しずつ注いだら次は逆の順番で注ぎましょう。最後の1滴まで注ぎ切ります。

気分やシーンにあわせてお茶を選んでみよう

緑色の番茶はさっぱりとした味わいで少しの苦みが特徴、ほうじ茶は香ばしさと苦みのない飲みやすさが特徴ということが分かりましたね。日本茶は種類によって味わいが異なり、色みや香り、カフェインの量もさまざまです。スッキリしたいときは苦みのあるお茶、寝る前はカフェインの少ないお茶など、気分や時間帯によって選び分けるのも楽しいですよ。

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簡単でわかりやすい!番茶とほうじ茶の違いとは?製造方法やおいしい淹れ方もグルメ好きライターが詳しく解説

今回は「番茶」と「ほうじ茶」の違いを見ていきます。どちらも日常的に飲まれるお茶で身近な存在にも関わらず、どんなお茶が番茶で、どんなお茶がほうじ茶なのか、そのイメージは人によって違うことが多い。それは番茶と呼ばれるお茶が地域によって異なるためです。呼び名が同じでも異なるお茶を指すとは驚きです。この先はグルメ好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

食べることが大好きな主婦ライター。週に2回は外食を楽しみ、近隣のお店を開拓している。高級料理よりも庶民派の手軽なものが好み。

番茶とほうじ茶の違いは焙(ほう)じてあるかどうか

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番茶とほうじ茶の最大の違いは、焙じてあるかどうかです。「焙じる」とは、水分が飛んでカラカラになるまで火であぶって熱すること。緑の番茶を焙じると茶褐色のほうじ茶になります。

ただし、番茶という言葉が指すお茶の種類には地域差があるため、人によってイメージが異なるのが実のところ。北海道・東北・北陸・京都では番茶といえばほうじ茶のことを意味し、それ以外の地域での番茶は緑色のお茶が連想されます。このイメージの違いが、番茶とほうじ茶の認識に混乱を生む原因になっています。

お茶の分類

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番茶とほうじ茶の違いを知るうえで、お茶の分類を理解することはとても大切。お茶全体の中で番茶・ほうじ茶がどのような位置にあるかを確認していきましょう。ここでいうお茶とは「チャノキ」と呼ばれるツバキ科ツバキ属の植物の葉からできるもの。そのため、昆布茶やドクダミ茶などの違う原料からできるお茶は除きます。

日本茶は「不発酵茶」の一種

日本茶は、お茶の中でも「不発酵茶」と呼ばれる分類の一種です。「チャノキ」から作られるお茶の分類は大きく分けて「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」の3つがあり、不発酵茶はいわゆる緑茶。半発酵茶の代表格がウーロン茶。発酵茶は紅茶を指します。

不発酵茶(緑茶)には日本式と中国式の製造方法があり、日本式で作られたものが日本茶です。番茶とほうじ茶は日本茶の一種で、言い換えれば緑茶の一種ということになります。

日本茶の種類

日本茶には番茶・ほうじ茶を含めてさまざまな種類が存在しますので、ここでは収穫前のチャノキに日光を当てない種類と当てる種類に分けて解説しましょう。

収穫前のチャノキに日光を当てない茶畑を覆下園(おおいしたえん)と呼び、この覆下園から収穫された茶葉は抹茶・玉露(ぎょくろ)・かぶせ茶になります。一方、収穫まで日光に当てる茶畑から収穫された茶葉からできるのが煎茶・番茶です。そして、番茶に炒った玄米を混ぜたものが玄米茶、番茶を焙じたものがほうじ茶となります。

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