この記事では「ふきのとう」と「ふき」の違いについてみていきます。2つとも「ふき」という言葉が入っていますね。その通り「ふきのとう」と「ふき」は同じ植物のフキに由来しますが、部位が違うぞ。とくに「ふき」は茎ではなく、植物の一部分に過ぎない。その本体は別にあるんです。今回はそんな植物のフキから採れる野菜の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では春の味覚である、ふきのとうとふきの違いについてわかりやすく解説していく。

ふきのとう/ふきの大まかな定義

image by iStockphoto

まずは「ふきのとう」と「ふき」が、どのような野菜なのかを大まかに解説します。両者はなぜ、見た目が違うのか気になりますよね。そんな「ふきのとう」と「ふき」の由来について、詳しくみていきましょう!

どちらも同じ植物に由来

見た目が違う「ふきのとう」と「ふき」は、全く同じ植物に由来。どちらもキク科フキ属の多年草「フキ」という植物の一部なのです。フキは、歴史ある日本の栽培植物。古くは平安時代から「野菜」として栽培されてきました。そんなフキは、野山に自生する「山菜」でもあります。日本全国の山間部では、道端から野原、川辺まで広くフキが採れるのです。

両者は部位が違う

同じフキに由来する野菜、「ふきのとう」と「ふき」は部位が完全に異なります。「ふきのとう」はフキのつぼみで、「ふき」はフキの葉の付け根の部分。とくに「ふき」は、茎ではなく「葉柄」として区別されます。なぜならフキ本来の茎は、地面の下にある(地下茎)からです。この地下茎こそが「ふきのとう」や「ふき」の本体。植物のフキは葉が枯れたあとも、地下茎だけで冬を越すのです。

そして「ふきのとう」が成長して「ふき」になることはありません。両者は別々に、地面から出てくるのです。この記事では「ふきのとう」と「ふき」とで違う箇所にフォーカス。まずは山菜採りや調理の前に、押さえておきたい事前知識について解説していきます。

\次のページで「ふきのとう/ふきの具体的な違い」を解説!/

ふきのとう/ふきの具体的な違い

image by iStockphoto

「ふきのとう」と「ふき」には、大きく違う点が3つあります。とくに3つ目の「採るときの注意点」が重要。命に関わる知識ですので、山菜採りへ出かける前にご一読ください。

違い1.旬など食べ頃

「ふきのとう」と「ふき」はそれぞれ、異なる時期が旬となります。まず天然物の「ふきのとう」の旬は2〜4月。開花する前の締まったつぼみを摘み取ります。つぼみが開いたものは、苦味が強いので避けましょう。続いて4〜6月に、葉柄こと「ふき」の部分の旬が到来。春先のまだ柔らかい「ふき」が食べ頃です。

違い2.向く料理

「ふきのとう」と「ふき」は食感が違うため、向く料理が変わってきます。「ふきのとう」は柔らかな食感と苦味が魅力。まるごと味噌汁の具や天ぷら、田楽にすると、ほくほくとした食感を楽しめます。ほかには「ふきのとう」と、ダシ汁でのばした味噌を炒めた「ふき味噌」もおすすめです。

対して「ふき」は繊維質で、シャキシャキとした食感が特徴的。こちらは炒め物や和え物、煮物に向きます。ほかには「ふき」を長時間煮込んだ佃煮である「きゃらぶき」も定番です。

違い3.採るときの注意点

「ふきのとう」には、覚えておきたい注意点があります。それは「ふきのとう」と、命に関わる毒草の見分け方。具体的に「ふきのとう」に似ている毒草は、ハシリドコロとフクジュソウの2種です。とくに誤食のおそれがあるのは、毒草の新芽。まずハシリドコロを誤食すると、嘔吐やけいれん、呼吸停止の中毒症状が現れます。そして心臓毒をもつフクジュソウでは、心不全による死亡例が実際に確認されているのです。

2種の毒草が無臭であるのに対し、「ふきのとう」は強い芳香をもちます。さらに白い綿毛に覆われているのは「ふきのとう」だけ。そして「ふきのとう」とハシリドコロ/フクジュソウの新芽は、中身も違います。「ふきのとう」の中には、つぼみが多数充填。対してハシリドコロの新芽には、葉だけが詰まっています。そしてフクジュソウの新芽では中に、数個のつぼみと葉が収まっているのです。

ふきのとう/ふきに含まれる成分

image by iStockphoto

「ふきのとう」と「ふき」は、さまざまな栄養を含んでいます。そして両者は、有害な成分からなるアクも含んでいるのです。以下ではとくに、両者の「アク抜き」ついて徹底解説。なぜアクが有害なのか、みていきましょう!

\次のページで「ふきのとう/ふきはアク抜きが必須」を解説!/

ふきのとう/ふきはアク抜きが必須

「ふきのとう」と「ふき」では、調理前のアク抜きが重要。植物のフキは全草に、ピロリジジンアルカロイドという毒素からなる、有害なアクをもっているのです。具体的にフキのアク成分は、肝臓に対して毒性を示し、肝臓がんのリスクを高めます。とくにフキでは地下茎に、このアルカロイドを蓄積。可食部の「ふきのとう」と「ふき」にも、微量ながら毒素が含まれているのです。

「ふきのとう」と「ふき」に含まれる毒素は水溶性。「ゆでこぼし」と「水さらし」を行うだけで、アク抜きが完了します。農林水産省によるとアク成分は、水さらしの時間が長くなるほど減少したとのこと。一方「ふきのとう」や「ふき」の毒素は、加熱だけでは減らないことが判明しています。そのため「ふきのとう」をアク抜きせずに、天ぷらにするのはやめましょう。

ふきのとう/ふきの栄養は違う

「ふきのとう」と「ふき」は、食物繊維とカリウムが豊富な食材です。とくに「ふきのとう」は「ふき」よりも、多くの栄養を含んでいます。ビタミンE・葉酸・ビタミンKの3種を、しっかり摂れるのは「ふきのとう」だけです。

ビタミンEは「若返り」のビタミン。脂質の酸化を防いで、動脈硬化や高血圧を予防します。そして葉酸は血液、ビタミンKは骨を、それぞれ造る手助けをするのです。

「ふきのとう」と「ふき」の2つの顔

「ふきのとう」と「ふき」は、全く同じフキという植物の一部。両者は同じ株のなかでも、部位が違うのです。本体の地下茎から、別々に「ふきのとう」と「ふき」が出てきます。部位が異なる両者では、料理法や旬に違いが存在。とはいえ同じ植物の一部なので、アク抜きの方法に違いはありません。ゆでこぼしと水さらしを徹底して、「ふきのとう」と「ふき」をおいしく味わいましょう!

" /> 簡単でわかりやすい!ふきのとうとふきの違いとは?旬やアク抜き、似ている毒草について農学専攻ライターが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!ふきのとうとふきの違いとは?旬やアク抜き、似ている毒草について農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では「ふきのとう」と「ふき」の違いについてみていきます。2つとも「ふき」という言葉が入っていますね。その通り「ふきのとう」と「ふき」は同じ植物のフキに由来しますが、部位が違うぞ。とくに「ふき」は茎ではなく、植物の一部分に過ぎない。その本体は別にあるんです。今回はそんな植物のフキから採れる野菜の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では春の味覚である、ふきのとうとふきの違いについてわかりやすく解説していく。

ふきのとう/ふきの大まかな定義

image by iStockphoto

まずは「ふきのとう」と「ふき」が、どのような野菜なのかを大まかに解説します。両者はなぜ、見た目が違うのか気になりますよね。そんな「ふきのとう」と「ふき」の由来について、詳しくみていきましょう!

どちらも同じ植物に由来

見た目が違う「ふきのとう」と「ふき」は、全く同じ植物に由来。どちらもキク科フキ属の多年草「フキ」という植物の一部なのです。フキは、歴史ある日本の栽培植物。古くは平安時代から「野菜」として栽培されてきました。そんなフキは、野山に自生する「山菜」でもあります。日本全国の山間部では、道端から野原、川辺まで広くフキが採れるのです。

両者は部位が違う

同じフキに由来する野菜、「ふきのとう」と「ふき」は部位が完全に異なります。「ふきのとう」はフキのつぼみで、「ふき」はフキの葉の付け根の部分。とくに「ふき」は、茎ではなく「葉柄」として区別されます。なぜならフキ本来の茎は、地面の下にある(地下茎)からです。この地下茎こそが「ふきのとう」や「ふき」の本体。植物のフキは葉が枯れたあとも、地下茎だけで冬を越すのです。

そして「ふきのとう」が成長して「ふき」になることはありません。両者は別々に、地面から出てくるのです。この記事では「ふきのとう」と「ふき」とで違う箇所にフォーカス。まずは山菜採りや調理の前に、押さえておきたい事前知識について解説していきます。

\次のページで「ふきのとう/ふきの具体的な違い」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: