今回は「赤味噌」と「八丁味噌」の違いについて解説していく。八丁味噌は徳川家康生誕の地、愛知県岡崎市で作られる伝統的な味噌です。どのような特徴があるか、料理好き主婦ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。八丁味噌が作られる愛知県岡崎市出身。子どもの頃から八丁味噌の味噌蔵には何度も遊びに行っている。

「赤味噌」と「八丁味噌」の違いは?

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今回は「八丁味噌」を中心に味噌の解説をしていきます。味噌の種類には赤味噌・白味噌・淡色味噌がありますが、その違いは何なのでしょうか?また、八丁味噌とはどのような味噌なのでしょうか?

「八丁味噌」は赤味噌の一種

「八丁味噌」は赤味噌に分類されます。そもそも「赤味噌」や「白味噌」は見た目の色で分類した呼び方であり、特定の種類の味噌を指しているわけではありません

味噌は作られる地方によって原材料や味が大きく違い、単に赤味噌や白味噌と呼ぶのではなく「江戸甘味噌」などのように地域名等を付けて呼ばれます。そして、「八丁味噌」は愛知県岡崎市の八丁村(現八丁町)で生まれた赤味噌です。

八丁味噌を深掘り

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「八丁味噌」は名前を聞いたことはあるけれど、口にしたことはない人が多いでしょう。どのような料理に使われるのか、どのように作られるのかみていきましょう。

特徴は?

八丁味噌の一番の特徴は大豆のみを使った「豆味噌」であること。他の産地の赤味噌は一般的に米(または麦)と大豆を一緒に使います。糖分が少ないため甘みが少なく、独特なコクと渋みがある味わいです。中には匂いが印象的という人もいるかもしれません。色が濃いため一見塩分が高そうですが、色は長い年月をかけ熟成することから生まれるもの。他の味噌の平均的な塩度濃度12%程に対して、八丁味噌の塩分濃度は約11%と控えめです。

原材料・製法などは国が細かく基準を定めており、基準を満たしていないものは「八丁味噌」を名乗ることができません。

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合う料理は?

八丁味噌は、味噌汁やサバの味噌などとよく合います。調理する上での特徴は、煮込んでも風味が飛びにくいことです。白味噌や合わせ味噌は煮立たせると風味が飛んでしまうため、火を消した後に味噌を入れなければいけません。しかし八丁味噌はコクと旨味が煮込むほど増し、渋みが減ります。

また、味が濃いので野菜や豆腐等水分の多い食材と相性ぴったり。同じ愛知県の名古屋グルメ、味噌カツ・味噌煮込みうどん、どて煮等の味噌料理にも欠かせない味噌です。

生まれは愛知県岡崎市の八丁村

次に八丁味噌の歴史をみていきましょう。八丁味噌は愛知県岡崎市にある岡崎城から八丁(約870m)離れた八丁村(現八丁町)で作られたのが名前の由来です。

八丁村は東海道と矢作川の交わる交通の要。矢作川からは舟を使って原材料である大豆と塩、出来上がった味噌の運搬を、東海道を行きかう旅人に味噌の販売をし、とても商売に適した場所だったのです。

一方、岡崎周辺は高温多湿の土地でもあります。食べ物が腐りやすく、保存性の高い味噌を作る必要がありました。試行錯誤の結果、仕込水を極限まで少なくし温度調整不要の製法に成功し、八丁村でしか生まれない固く濃い味ができ上ったのです。保存性の高さは、戦時中に兵士の食糧として使われていたほど。

伝統的な製造方法

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八丁味噌の伝統的な製造方法についてみていきましょう。大きな特徴と手順は3つです。1つめは大きな木桶を使うこと。直径2m程の巨大な桶に大豆と塩を仕込みます。木桶は何度も使われるため、伝統的な味の要である微生物の棲みかです。木桶仕込みの味噌は珍しく、味噌全体の生産量の1%以下と言われています。

2つめは木桶の上に職人の手で重石を積み上げること。数は400個~500個、重さは約3tの石を円錐状に積み上げます。積み上げられた石は地震などの揺れを吸収するので崩れることがありません。

3つめは長時間の熟成。八丁町の自然な風土の中で二夏二冬(2年以上)手を加えず天然醸造で熟成させ、八丁味噌の完成です。

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見逃せない「八丁味噌問題」とは?

近い将来、八丁味噌の中身がまったく違うものになるかもしれない…そんな問題が浮上していることをご存じですか?GI保護制度(Geographical Indication:地理的表示)に関する問題で、目的は以下の通りです。

「地理的表示保護制度」は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。

出典:農林水産省『地理的表示(GI)保護制度』

簡単に説明すると、名産品を保護したい団体が農林水産大臣に登録申請し、承認される仕組みになっています。

老舗の八丁味噌工場で構成された「八丁味噌協同組合」はGI申請しましたが受理されず、申請を取り下げた直後に「愛知県味噌溜醤油工業組合」の申請が受理・登録されました。現在八丁味噌を作る会社は「カクキュー」と「まるや」の2社のみですが、2社は愛知県の組合には参加していません。そのため2026年には「自社商品に『八丁味噌』の名称を使用できなくなる」という問題に直面しているのです。

また「愛知県味噌溜醤油工業組合」が申請した八丁味噌の作り方は伝統的な製造方法とまったく違うものでした。2017年に端を発したこの問題は現在も解決していません。

八丁味噌は愛知県岡崎市で生まれた赤味噌の一種

八丁味噌は赤味噌の一種であることがわかりました。保存性を求め、大豆と塩のみで長い時間熟成して作られています。味はコクがあり独特の渋みがあるのが特徴です。八丁味噌が直面するGI保護制度問題では、近い将来八丁味噌の名称が使えなくなる可能性をはらんでいます。伝統的な製造方法と味をなんとか守っていきたいものですね。

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雑学

3分で簡単にわかる!「赤味噌」と「八丁味噌」の違いとは?八丁味噌の歴史から赤味噌の種類まで料理好き主婦ライターがわかりやすく解説

今回は「赤味噌」と「八丁味噌」の違いについて解説していく。八丁味噌は徳川家康生誕の地、愛知県岡崎市で作られる伝統的な味噌です。どのような特徴があるか、料理好き主婦ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。八丁味噌が作られる愛知県岡崎市出身。子どもの頃から八丁味噌の味噌蔵には何度も遊びに行っている。

「赤味噌」と「八丁味噌」の違いは?

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今回は「八丁味噌」を中心に味噌の解説をしていきます。味噌の種類には赤味噌・白味噌・淡色味噌がありますが、その違いは何なのでしょうか?また、八丁味噌とはどのような味噌なのでしょうか?

「八丁味噌」は赤味噌の一種

「八丁味噌」は赤味噌に分類されます。そもそも「赤味噌」や「白味噌」は見た目の色で分類した呼び方であり、特定の種類の味噌を指しているわけではありません

味噌は作られる地方によって原材料や味が大きく違い、単に赤味噌や白味噌と呼ぶのではなく「江戸甘味噌」などのように地域名等を付けて呼ばれます。そして、「八丁味噌」は愛知県岡崎市の八丁村(現八丁町)で生まれた赤味噌です。

八丁味噌を深掘り

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「八丁味噌」は名前を聞いたことはあるけれど、口にしたことはない人が多いでしょう。どのような料理に使われるのか、どのように作られるのかみていきましょう。

特徴は?

八丁味噌の一番の特徴は大豆のみを使った「豆味噌」であること。他の産地の赤味噌は一般的に米(または麦)と大豆を一緒に使います。糖分が少ないため甘みが少なく、独特なコクと渋みがある味わいです。中には匂いが印象的という人もいるかもしれません。色が濃いため一見塩分が高そうですが、色は長い年月をかけ熟成することから生まれるもの。他の味噌の平均的な塩度濃度12%程に対して、八丁味噌の塩分濃度は約11%と控えめです。

原材料・製法などは国が細かく基準を定めており、基準を満たしていないものは「八丁味噌」を名乗ることができません。

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