この記事ではフヨウとムクゲの違いについてみていきます。2つとも人気の庭木で、よく似た花をつける。じつはフヨウもムクゲも「ハイビスカス」の一種なんです。ですが両者では、花以外の見た目が大きく異なり、簡単に見分けられるみたいです。今回はそんな似た花を咲かせる樹木の違いを、「ハイビスカス」の定義や見分け方を含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ハイビスカス」の仲間である、フヨウとムクゲの違いについてわかりやすく解説していく。

フヨウとムクゲの大まかな特徴

image by iStockphoto

まずはフヨウとムクゲが、どのような植物なのか紹介していきます。両者の図鑑における分類を、徹底解説。さらにフヨウとムクゲをよく見かける理由についても、みていきましょう!

どちらも「ハイビスカス」

フヨウとムクゲはどちらも、アオイ科フヨウ属の落葉樹。両者はともに「ハイビスカス」の仲間です。じつはフヨウ属は、学名で「ハイビスカス/Hibiscus」と表記。日本で「ハイビスカス」と呼ばれるブッソウゲは、その一種に過ぎません。フヨウ・ムクゲ・ブッソウゲのほかに、アメリカフヨウやモミジアオイなど、さまざまな「ハイビスカス」が存在するのです。

そんなフヨウとムクゲは、典型的な「ハイビスカス」の仲間。両者はともに、夏に開花します。さらにフヨウとムクゲは、開花時期が長いのが特徴。朝開花して夕方にしぼむ「一日花」を、たくさん咲かせます。以下よく似たフヨウ・ムクゲの、大まかな特徴についてみていきましょう!

色が変わる「フヨウ」の花

花が美しいフヨウは、観賞用に人気の樹木。古くは室町時代から、栽培されてきました。そのため八重咲きなど、園芸品種が多いフヨウ。なかでも特筆すべき品種は、酔芙蓉(すいふよう)です。この酔芙蓉の花は、時間が経つにつれて、赤みが強くなるのが特徴。朝に咲いた酔芙蓉の花は、白色から桃色、紅色となって夕方にしぼみます。アントシアニンの増加にともない、フヨウの花の色あいが変わるのです。

また強い生命力をもつフヨウは、関東以南で街路樹とされます。「ハイビスカス」にしては寒さに強いフヨウ。冬になっても、果実と枝だけは残ります。「枯れフヨウ」と呼ばれる、冬の風物詩です。さらにフヨウは、劣悪な環境にも強い樹木。なんとアスファルトの隙間からも、芽吹くことができます。そのためフヨウは高速道路で、しばしば見かける街路樹なのです。

フヨウの基本情報
学名:Hibiscus mutabilis
原産地:中国
開花時期:7〜9月
花の色:白〜紅
花言葉:「繊細な美」「しとやかな恋人」

「ムクゲ」は韓国の国花

ムクゲは韓国の国花。韓国語で無窮花(ムグンファ)と呼ばれます。ムクゲは寒さに強い、ハイビスカス。平均気温が氷点下となる、冬の韓国でも枯れません。さらにムクゲは、開花時期が長いのも特徴。梅雨ごろから秋まで、粘り強く花を咲かせ続けます。

そんなムクゲは、日本でもよくみられる樹木。しばしば生垣に用いられます。ムクゲが生垣に向く一番の理由は、その生命力の強さ。寒さだけでなく、刈り込みや剪定にも耐えてくれます。加えてムクゲの品種は、八重咲きや半八重咲きなど多種多様。フヨウとともに、ムクゲは人気のフヨウ属植物なのです。以下この記事では、しばしば目にするフヨウ属、フヨウとムクゲの見分け方を紹介していきます。

\次のページで「フヨウとムクゲの見分け方3点」を解説!/

ムクゲの基本情報
学名:Hibiscus syriacus
原産地:中国
開花時期:6〜10月
花の色:白〜紅紫(中央は紅色)
花言葉:「デリケートな愛」「信念」

フヨウとムクゲの見分け方3点

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ともにフヨウ属のフヨウとムクゲは、似た花を咲かせます。ですが花をよく観察すると、両者は別物だとわかるはず。くわえてフヨウとムクゲは、花以外が大きく異なるのです。ここでは、フヨウ・ムクゲの見分け方について解説。以下の3つの違いを押さえておくだけで、両者を簡単に見分けることができます!

その1.花の「雌しべ」の向き

フヨウとムクゲは、どちらもフヨウ属で、よく似た花をつけます。そんな両者では、花の「雌しべ」の形に違いが存在。まずフヨウの雌しべは上向きに、大きくカーブしています。対してムクゲの雌しべは、まっすぐ伸びているのです。

ただフヨウとムクゲの、「八重咲き」の品種では話が別。八重咲きとは、雄しべ・雌しべが花びらに置き換わる変わり種のこと。八重咲きの場合、フヨウ・ムクゲの花は見分けがつきません。よって以下の、葉と樹全体の外観の違いが重要となるのです。

その2.葉の見た目

葉に注目すれば、フヨウとムクゲを一目で見分けられます。両者の葉は、形と色などが異なるのです。まずは、形の違いから。フヨウの葉は、先が3〜5つに分かれた、「手のひら」のような形をしています。一方ムクゲでは、葉脈のうち1本だけが長く伸長。葉の先端の枝分かれは目立ちません。そしてムクゲの葉は「鋸歯」といって、ふちの部分がギザギザしています。

つぎにフヨウの葉は、色が薄いのが特徴。ムクゲの葉は濃い緑色ですが、フヨウの葉は色あせて見えるのです。最後に両者の葉は、大きさも違います。フヨウの葉は、付け根から先端まで長さ10〜20cm。さらに横にも、10cm以上広がります。対してムクゲの葉身は、長さ10cm未満と圧倒的に小さいのです。

その3.樹そのものの形

フヨウとムクゲでは、樹の枝振りも違います。フヨウは横に広がった、壁のような樹形が特徴的。なぜならフヨウは、枝分かれが細かく、葉が大きいためです。一方ムクゲの樹は直立姿勢。分かれた枝は、一様に上向きに伸びていきます。さらに葉が小さいムクゲでは、枝の位置がわかりやすいのも特徴です。

\次のページで「個性的なフヨウ属の植物」を解説!/

個性的なフヨウ属の植物

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フヨウとムクゲ以外にも、さまざまなフヨウ属植物が存在します。日本では、南国の「ハイビスカス」こと、ブッソウゲがとくに有名。ほかにもフヨウ属には、食べられる種や、バイオ燃料の原材料となる種もあるのです。以下、個性豊かなフヨウ属植物について、みていきましょう!

ブッソウゲは鑑賞用に

日本で「ハイビスカス」と呼ばれる植物はおもに、フヨウ属のブッソウゲです。ブッソウゲは南国を代表する植物。アメリカのハワイでは、ブッソウゲが「州花」として愛されています。日本国内では、沖縄の生垣の花として有名。ブッソウゲは風に強く、防風林や生垣にうってつけなのです。

そんなブッソウゲは、熱帯アジア生まれの植物。寒さに弱く、路地植えできるのは南国だけです。一説によると、ブッソウゲの起源は中国南部。この説によりブッソウゲは、英語で”Chinese hibiscus”と区別されます。

ローゼルは食べられる

「食用ハイビスカス」は、ブッソウゲではありません。フヨウ属は「ローゼル」という、アフリカ原産の別種の植物です。ローゼルではおもに、花と果実が可食部。その花・果実は生食のほか、「ハイビスカスティー」と呼ばれるハーブティーに加工されます。そしてローゼルの葉は、ミャンマーではポピュラーな野菜。「チンバウン」と呼ばれ、炒め物・スープなどに用いられます。

フヨウ属の種子はバイオ燃料に

ローゼルやフヨウ、ケナフなどフヨウ属植物の種子は、「バイオディーゼル」の原料として注目を集めています。なぜならその種子は、油分を豊富に含んでいるから。具体的にフヨウ属の種子は、油分を17%以上含んでおり、大豆や菜種と同じく「油糧種子」に分類されるのです。

フヨウ属由来のバイオディーゼルは、他の植物由来のものよりも燃焼効率が高いのが長所。エンジンに堆積物を作りくい点でも優れています。これはフヨウ属の種子が不飽和脂肪酸を多く含んでいるため。将来ハイビスカスの油で、自動車を走らせる時代が来るかもしれませんね。

夏を知らせる大輪の花

フヨウとムクゲは「ハイビスカス」こと、フヨウ属の一種。両者は夏になると、よく似た大輪の花を咲かせます。そんなフヨウとムクゲで違う点は、葉の形と樹の枝振り。同じフヨウ属でも、シルエットは大きく異なるのです。ほかにもフヨウ属には、ブッソウゲやローゼルなど、熱帯生まれの種も存在。北から南まで、個性豊かな「ハイビスカス」が幅広く分布しているのですね。

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雑学

簡単でわかりやすい!フヨウとムクゲの違いとは?見分け方やその仲間について農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではフヨウとムクゲの違いについてみていきます。2つとも人気の庭木で、よく似た花をつける。じつはフヨウもムクゲも「ハイビスカス」の一種なんです。ですが両者では、花以外の見た目が大きく異なり、簡単に見分けられるみたいです。今回はそんな似た花を咲かせる樹木の違いを、「ハイビスカス」の定義や見分け方を含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ハイビスカス」の仲間である、フヨウとムクゲの違いについてわかりやすく解説していく。

フヨウとムクゲの大まかな特徴

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まずはフヨウとムクゲが、どのような植物なのか紹介していきます。両者の図鑑における分類を、徹底解説。さらにフヨウとムクゲをよく見かける理由についても、みていきましょう!

どちらも「ハイビスカス」

フヨウとムクゲはどちらも、アオイ科フヨウ属の落葉樹。両者はともに「ハイビスカス」の仲間です。じつはフヨウ属は、学名で「ハイビスカス/Hibiscus」と表記。日本で「ハイビスカス」と呼ばれるブッソウゲは、その一種に過ぎません。フヨウ・ムクゲ・ブッソウゲのほかに、アメリカフヨウやモミジアオイなど、さまざまな「ハイビスカス」が存在するのです。

そんなフヨウとムクゲは、典型的な「ハイビスカス」の仲間。両者はともに、夏に開花します。さらにフヨウとムクゲは、開花時期が長いのが特徴。朝開花して夕方にしぼむ「一日花」を、たくさん咲かせます。以下よく似たフヨウ・ムクゲの、大まかな特徴についてみていきましょう!

色が変わる「フヨウ」の花

花が美しいフヨウは、観賞用に人気の樹木。古くは室町時代から、栽培されてきました。そのため八重咲きなど、園芸品種が多いフヨウ。なかでも特筆すべき品種は、酔芙蓉(すいふよう)です。この酔芙蓉の花は、時間が経つにつれて、赤みが強くなるのが特徴。朝に咲いた酔芙蓉の花は、白色から桃色、紅色となって夕方にしぼみます。アントシアニンの増加にともない、フヨウの花の色あいが変わるのです。

また強い生命力をもつフヨウは、関東以南で街路樹とされます。「ハイビスカス」にしては寒さに強いフヨウ。冬になっても、果実と枝だけは残ります。「枯れフヨウ」と呼ばれる、冬の風物詩です。さらにフヨウは、劣悪な環境にも強い樹木。なんとアスファルトの隙間からも、芽吹くことができます。そのためフヨウは高速道路で、しばしば見かける街路樹なのです。

フヨウの基本情報
学名:Hibiscus mutabilis
原産地:中国
開花時期:7〜9月
花の色:白〜紅
花言葉:「繊細な美」「しとやかな恋人」

「ムクゲ」は韓国の国花

ムクゲは韓国の国花。韓国語で無窮花(ムグンファ)と呼ばれます。ムクゲは寒さに強い、ハイビスカス。平均気温が氷点下となる、冬の韓国でも枯れません。さらにムクゲは、開花時期が長いのも特徴。梅雨ごろから秋まで、粘り強く花を咲かせ続けます。

そんなムクゲは、日本でもよくみられる樹木。しばしば生垣に用いられます。ムクゲが生垣に向く一番の理由は、その生命力の強さ。寒さだけでなく、刈り込みや剪定にも耐えてくれます。加えてムクゲの品種は、八重咲きや半八重咲きなど多種多様。フヨウとともに、ムクゲは人気のフヨウ属植物なのです。以下この記事では、しばしば目にするフヨウ属、フヨウとムクゲの見分け方を紹介していきます。

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