この記事ではささげと小豆の違いについてみていきます。2つとも「赤飯に入れる豆」というイメージがあるよな。じつは由緒正しいのは小豆のほう。ですが地域によってはささげがより、好まれるんです。これは武士の文化に関係するそうです。今回はそんな「赤い豆」の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「赤飯の豆」こと、ささげと小豆の違いについてわかりやすく解説していく。

ささげと小豆の特徴

image by iStockphoto

ささげと小豆はともに、マメ科ササゲ属に分類される豆の一種です。日本で流通しているささげは、見た目や用途が、小豆に似ています。そのため混同されやすいささげと小豆は、そのルーツが別。まずは両者の大まかな特徴についてみていきましょう!

「ささげ」は世界共通の豆

ささげはアフリカ原産の豆。今もキリマンジャロの山麓には、野生のささげが自生しています。アフリカ生まれのささげは、中国を経由して、日本に伝来しました。国内でささげが認知されたのは、9世紀末。東大寺の書物に「大角豆」として記録が残っています。そして平安時代にはすでに、日本でささげが栽培されていたのです。

「ささげ」は、世界中で食べられています。豆の見た目や用途は、国ごとに千差万別です。例えばアメリカ南部でポピュラーな「黒目豆」は、ささげの1品種。日本の赤いささげとは違い、黒目豆の色は白基調です。ほかにはさやごと食べられる、ささげの品種も存在。その見た目は「さやえんどう」に似ています。小豆そっくりなささげは、ほんの一握りなのです。

日本古来の「小豆」

小豆は東アジア原産。その祖先であるヤブツルアズキは、日本にも自生しています。極東生まれの小豆は、ささげよりも古くから日本で栽培されてきました。小豆はなんと、縄文時代の貝塚から出土。さらに日本最古の書物「古事記」にも、稲や麦とならんで、小豆の記録が残っています。ささげと違って、小豆は日本古来の豆なのです。

ルーツが違えど、ささげも小豆もササゲ属の豆。国産のささげは、小豆によく似た見た目をしています。さらに用途も似ていて、ささげも小豆も「赤飯」に入れる豆なのです。この記事では見た目・用途が似ている、ささげと小豆の違いについて徹底解説。その見分け方から調理法まで、掘り下げていきます。とくに赤飯にしたときの、「縁起」の良し悪しの違いは必見です。

\次のページで「ささげと小豆の大きな違いは3つ」を解説!/

ささげと小豆の大きな違いは3つ

image by iStockphoto

ここでは、ささげと小豆の大きな違いを3つ紹介。まずは見分けがつきにくい、国産のささげと小豆の見た目の違いからみていきましょう!

違い1.豆の見た目

ささげと小豆には、一目でわかる違いがあります。じつは両者は同じ「赤い豆」でも、形と色が少し異なるのです。まずささげと小豆は、豆の輪郭が違います。「大角豆」の異名をもつささげは、角ばった形状が特徴的。くわえて豆の「へそ」周りにくぼみがあります。一方小豆の輪郭は、全体的になだらかで左右対称です。

さらにささげと小豆とでは、色の深みが違います。日本のささげは、別名で「黒小豆」とも。そんなささげの皮は、小豆よりも黒みが強い赤色となっているのです。とりわけささげの「へそ」周りには、濃い黒の縁取りがついています。さらにささげ・小豆は皮の光沢にも違いが。つややかな小豆とは違って、ささげの皮には光沢がありません。ささげの皮は色艶ともに、小豆よりも暗いのです。

違い2.皮の性質

ささげと小豆の違いは、豆を煮込むとはっきり現れます。小豆は煮込むと、「胴割れ」といって皮が破けるのです。これは小豆の皮の性質が特殊だから。他の豆と比べて、小豆の皮はなかなか水を吸いません。一方ででんぷんが豊富な小豆の中身は、水をよく吸います。結果として小豆を茹でると、膨らんだ豆の中身が皮を破ってしまうのです。

その一方で、小豆よりも皮が丈夫なささげは、煮崩れしません。そしてささげの皮は、その食感も小豆の皮より硬め。この皮の性質の違いが、つぎの「赤飯」への向き不向きに関わってきます。

違い3.赤飯にしたときの縁起

関東では小豆よりも、ささげの赤飯が好まれます。なぜなら小豆の「胴割れ」が、切腹を想像させるから。武士が集まる江戸では、小豆の赤飯は縁起が悪いとされました。結果として東日本では、ささげの赤飯を食べる文化が根付いたのです。

その一方で、由緒正しいのは「古事記」に記された小豆。じつは小豆は稲・麦・栗・大豆とともに、日本古来の五穀なのです。さらに日本神話では、オオゲツヒメによって、小豆や稲がもたらされたとされています。

\次のページで「ささげと小豆の栄養」を解説!/

ささげと小豆の栄養

image by iStockphoto

豆の仲間はタンパク質など、栄養を豊富に含んでいます。そして数ある豆のなかでも、屈指の栄養価を誇るのがササゲ属の豆。この記事で紹介している、ささげと小豆なのです。以下ささげや小豆がもつ、特徴的な栄養について紹介。その効果まで、掘り下げていきます。

ささげはダイエットの味方

ささげは、でんぷんが豊富なのに、太りにくい食材です。その秘密はでんぷんの種類にあります。じつはささげは、難消化性のでんぷん「レジスタントスターチ」が豊富。このレジスタントスターチは、加熱調理によって増加します。ささげを加熱すると、消化されやすい普通のでんぷんが変化。豆の全でんぷんのうち、最大で6割がレジスタントスターチとなるのです。

ささげは他の栄養も豊富。豆の仲間だけあって、タンパク質・アミノ酸が多く含まれています。ささげに含まれるタンパク質の割合は平均にして25%ほど。これは、タンパク質を30%含む大豆に次ぎます。とくにささげでは、疲労回復に効果のある、アミノ酸のリジンが豊富。このように栄養豊富なささげは、大豆アレルゲンを含まないため、大豆アレルギーの人にもおすすめです。

小豆には強い抗酸化作用が

ささげ同様、小豆もレジスタントスターチを多く含んでいます。さらに小豆では、疲労に効くアミノ酸・リジンや、糖や脂質の代謝を促すビタミンB群が豊富。こちらも、ダイエットの心強い味方になってくれます。

さらに小豆は、アンチエイジングにも効き目が。小豆は、高い抗酸化作用をもつ成分を複数、含んでいます。具体的に小豆の有効成分は、ポリフェノール・多糖類・タンニン。とくにポリフェノールは、ごぼうの3倍も含まれているのです。これらの成分は、肌の老化やがんの原因となる活性酸素を壊してくれます。美容と健康のために、小豆を食べるほかありませんね。

お赤飯は「縁起」が肝心

ささげと小豆はともに、赤飯に入れられる「赤い豆」です。そっくりな両者は、縁起の良さやルーツが違います。日本古来の小豆は、ささげと違って「胴割れ」しやすいのが特徴。「切腹」を想起させることから、武士の多い関東では避けられてきました。縁起の良し悪しはあれど、ささげと小豆はどちらも栄養豊富。美容や健康のために、日々の食事に取り入れたいですね。

" /> 簡単でわかりやすい!ささげと小豆の違いとは?見分け方や赤飯での違い、栄養について農学専攻ライターが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!ささげと小豆の違いとは?見分け方や赤飯での違い、栄養について農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではささげと小豆の違いについてみていきます。2つとも「赤飯に入れる豆」というイメージがあるよな。じつは由緒正しいのは小豆のほう。ですが地域によってはささげがより、好まれるんです。これは武士の文化に関係するそうです。今回はそんな「赤い豆」の違いを、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「赤飯の豆」こと、ささげと小豆の違いについてわかりやすく解説していく。

ささげと小豆の特徴

image by iStockphoto

ささげと小豆はともに、マメ科ササゲ属に分類される豆の一種です。日本で流通しているささげは、見た目や用途が、小豆に似ています。そのため混同されやすいささげと小豆は、そのルーツが別。まずは両者の大まかな特徴についてみていきましょう!

「ささげ」は世界共通の豆

ささげはアフリカ原産の豆。今もキリマンジャロの山麓には、野生のささげが自生しています。アフリカ生まれのささげは、中国を経由して、日本に伝来しました。国内でささげが認知されたのは、9世紀末。東大寺の書物に「大角豆」として記録が残っています。そして平安時代にはすでに、日本でささげが栽培されていたのです。

「ささげ」は、世界中で食べられています。豆の見た目や用途は、国ごとに千差万別です。例えばアメリカ南部でポピュラーな「黒目豆」は、ささげの1品種。日本の赤いささげとは違い、黒目豆の色は白基調です。ほかにはさやごと食べられる、ささげの品種も存在。その見た目は「さやえんどう」に似ています。小豆そっくりなささげは、ほんの一握りなのです。

日本古来の「小豆」

小豆は東アジア原産。その祖先であるヤブツルアズキは、日本にも自生しています。極東生まれの小豆は、ささげよりも古くから日本で栽培されてきました。小豆はなんと、縄文時代の貝塚から出土。さらに日本最古の書物「古事記」にも、稲や麦とならんで、小豆の記録が残っています。ささげと違って、小豆は日本古来の豆なのです。

ルーツが違えど、ささげも小豆もササゲ属の豆。国産のささげは、小豆によく似た見た目をしています。さらに用途も似ていて、ささげも小豆も「赤飯」に入れる豆なのです。この記事では見た目・用途が似ている、ささげと小豆の違いについて徹底解説。その見分け方から調理法まで、掘り下げていきます。とくに赤飯にしたときの、「縁起」の良し悪しの違いは必見です。

\次のページで「ささげと小豆の大きな違いは3つ」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: