仏教の宗派である「日蓮宗」と「浄土真宗」。
仏教について詳しくない人からすれば、両者の違いは見当もつかないでしょう。
今回は「浄土真宗」と「日蓮宗」の違いについて、寺社めぐりが趣味のライターおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。寺社めぐりが趣味で日本全国のお寺を訪れている。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

信仰の対象が違う

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「日蓮宗」と「浄土真宗」はどちらも仏教の宗派ですが、具体的な違いを知っているでしょうか。なんとなくお経を唱えているイメージがある人もいるかもしれません。実は「日蓮宗」と「浄土真宗」は信仰の対象が違うのです。ここでは両者の信仰がどのようなものか解説していきます。

日蓮宗:法華経を信仰

「日蓮宗」は鎌倉時代に日蓮という僧侶が開いた宗派です。宗祖の名前を冠している唯一の宗派でもあります。日蓮は比叡山、園城寺(三井寺)、高野山など名だたる名刹で修業した後に、法華経(ほっけきょう)という経典こそ仏教の真実であり唯一の拠り所であることを確信し立教。

法華経は仏教の経典の一つで非常に難解なことで知られています。この経典を独自の解釈で説くことで日蓮はカリスマ的な人気を得ていき、「日蓮宗」は一大宗派となるのです。

浄土真宗:阿弥陀如来を信仰

「浄土真宗」は同じく鎌倉時代に親鸞という僧侶が開いた宗派で、現在日本一の信者数をほこる宗派です。

僧侶が妻子を持つことがありえないという価値観だった当時、親鸞は「非僧非俗(ひそうひぞく:僧侶でも一般人でもないこと)」をポリシーとしており妻子もいました。妻子への情を断つことができなかった自分でも阿弥陀如来(あみだにょらい)という仏であれば救ってくれると考えたのです。修業などをせず阿弥陀如来の力だけで救われようとするので「他力本願」とも言われます。

\次のページで「お祈りの言葉が違う」を解説!/

お祈りの言葉が違う

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「日蓮宗」と「浄土真宗」は信仰する対象が違うので、当然ながらお祈りの際に唱える言葉も違います。お祈りの言葉を「日蓮宗」では「お題目(だいもく)」と呼び、「浄土真宗」では「名号(みょうごう)」と呼んでいます。では具体的に両者はどう違うのでしょうか。

お題目:南無妙法蓮華経

「日蓮宗」における「お題目」とは「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」という文句のことを言います。「南無」とは帰依(きえ)する、「妙法蓮華経」とは法華経の正式名称のこと。つまりは「法華経に帰依します」という意味になります。

帰依とは「絶対的な信頼をもって拠り所とすること」を意味する言葉で、サンスクリット語の「ナモ」という言葉の音写(おんしゃ:おとを漢字にしたもの)です。

名号:南無阿弥陀仏

浄土真宗における「名号」とは「南無阿弥陀仏」の六文字です。「南無」と「阿弥陀仏」なので「阿弥陀仏に帰依する」という意味になります。

「阿弥陀仏」とは阿弥陀如来のことで、西方にあるという極楽浄土の救い主。阿弥陀如来はすべての人々を救う誓いを立てたことで悟りを開いた仏ですので、その仏にすがろうという「他力本願」の信仰が現れています。ちなみに「名号」は親鸞の師匠である法然が開いた「浄土宗」でも共通です。

葬儀の考え方が違う

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「日蓮宗」と「浄土真宗」では信仰の対象もやり方も違うので、当然ながら葬儀に対する考え方も異なります。ここでは「日蓮宗」と「浄土真宗」の「葬儀」における違いを解説していきます。

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日蓮宗:故人を霊山浄土へ送る壮行式

「日蓮宗」では「お題目」唱え一心に法華経を信じれば、必ず霊山浄土(りょうぜんじょうど:お釈迦様が説法をしたという山)に向かうことができるという前提があります。そのため「日蓮宗」にとって葬儀とは「お題目」を唱え、個人が無事に霊山浄土へ辿り着くことを祈念する壮行式のような儀式です。

浄土真宗:阿弥陀如来へ感謝を告げる式

「浄土真宗」は「日蓮宗」と異なり、故人の死後の幸福のために葬儀をするわけではありません。なぜなら「阿弥陀如来」により死後の幸福は約束されているので、ことさら祈念する必要がないからです。むしろ救いを与えてくれる阿弥陀如来に感謝を告げるための儀式と言えます。

派によりますが、基本的に死者に死に装束を着せることもなければ塩で清めることもありません。あくまでありのままの故人で旅立てるという考えがあるのです。

日蓮宗と浄土真宗は信仰の対象、お祈りの言葉、葬儀が違う

ここまで「日蓮宗」と「浄土真宗」の違いを解説してきました。信仰の対象、お祈りの言葉、葬儀の考え方といったすべてがまったく異なる宗派であることがおわかりいただけたと思います。

実は仏教に関して、日本は独自の発展を遂げてきた国です。他にも個性的な宗派はたくさんあります。日本人はいろいろな宗教を取り込んできましたが、お墓についてはどこかのお寺に檀家として所属している家庭がほとんど。まずは自分の家庭の宗派を知ると、一族のバックボーンなどが見えてきて面白いですよ。

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文化・歴史雑学

3分で簡単にわかる日蓮宗と浄土真宗の違い!お題目って何?葬儀における違いも雑学好きライターがわかりやすく解説

仏教の宗派である「日蓮宗」と「浄土真宗」。
仏教について詳しくない人からすれば、両者の違いは見当もつかないでしょう。
今回は「浄土真宗」と「日蓮宗」の違いについて、寺社めぐりが趣味のライターおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。寺社めぐりが趣味で日本全国のお寺を訪れている。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

信仰の対象が違う

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「日蓮宗」と「浄土真宗」はどちらも仏教の宗派ですが、具体的な違いを知っているでしょうか。なんとなくお経を唱えているイメージがある人もいるかもしれません。実は「日蓮宗」と「浄土真宗」は信仰の対象が違うのです。ここでは両者の信仰がどのようなものか解説していきます。

日蓮宗:法華経を信仰

「日蓮宗」は鎌倉時代に日蓮という僧侶が開いた宗派です。宗祖の名前を冠している唯一の宗派でもあります。日蓮は比叡山、園城寺(三井寺)、高野山など名だたる名刹で修業した後に、法華経(ほっけきょう)という経典こそ仏教の真実であり唯一の拠り所であることを確信し立教。

法華経は仏教の経典の一つで非常に難解なことで知られています。この経典を独自の解釈で説くことで日蓮はカリスマ的な人気を得ていき、「日蓮宗」は一大宗派となるのです。

浄土真宗:阿弥陀如来を信仰

「浄土真宗」は同じく鎌倉時代に親鸞という僧侶が開いた宗派で、現在日本一の信者数をほこる宗派です。

僧侶が妻子を持つことがありえないという価値観だった当時、親鸞は「非僧非俗(ひそうひぞく:僧侶でも一般人でもないこと)」をポリシーとしており妻子もいました。妻子への情を断つことができなかった自分でも阿弥陀如来(あみだにょらい)という仏であれば救ってくれると考えたのです。修業などをせず阿弥陀如来の力だけで救われようとするので「他力本願」とも言われます。

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