この記事では「綜合」と「総合」の違いについてみていきます。どちらも「そうごう」と読み、意味もほとんど同じなだけに、これらの言葉の間にどんな違いがあるのかわからない人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

綜合と総合のざっくりした違い

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はじめに「綜合」と「総合」のおおまかな意味を説明しましょう。「綜合」「総合」はどちらも、いろいろな違ったものを一つに合わせたり、まとめ上げることに対して使われ、正直、「そうごう」と読む単語としては、意味の面では違いがありません。しかし、それぞれに使われている「綜」「総」という字には字の形以外にも微妙な違いがあるのです。今回はそれをていねいに説明していきたいと思います。

「綜」と「総」の漢字の違い

「綜」「総」という字はどちらも音読みで「ソウ」と読みますが、これらは別の字です。そこで、まずはそれぞれの漢字の由来や意味について見ていきたいと思います。

綜合の「綜」は織機の道具

綜合の「綜」は、元は「綜絖(そうこう)」とも呼ばれる機織りの器具を意味しました。これに縦糸を通しておくと、綜絖がはめられた枠(綜絖枠)さえ上下させれば、通した分の縦糸をまとめて動かせるので、横糸を通すスペースを作ることが出来ます。ですので、縦糸と横糸を手で一本一本織っていくのと比べて非常に効率的に織物を作ることが可能になったのです。綜絖枠の数は1つのはた織り機に2枚、4枚、6枚など機種によってさまざまで、この枠が多ければ多いほど複雑な模様も作ることが出来ます。

このように綜絖が縦糸をまとめて動かす様から、「綜」という字はいくつかのものをまとめる意味を持ち、「すべる」という読みも持つようになったのでしょう。また、さきほど言ったように綜絖枠は1つの織り機に複数あるため、縦糸などが複雑に入りまじった様子から「まじる」「入りまじる」といった意味も持っています。

総合の「総」は糸を一つにまとめること

「総」についてはパーツごとに見ていきたいと思います。まず、右上にある漢字の「公」に似たパーツは「窓」という字の元にもなった形で、換気用の窓を意味しました。そこから、「部屋の空気が一つにまとまる」という意味を持つようになったようです。そして、それに「心」がついた「忩」は「心の中でいろんなことを一つにまとめる」というような意味を持っています。

ですので、糸へんが使われていることからわかるように、「総」という字はたくさんの糸を一つにまとめるという意味を持つのです。

\次のページで「「綜」と「総」の使い分け」を解説!/

「綜」と「総」の使い分け

漢字の「綜」「総」には使い分けなくてはならない場面があります。ですので、ここまではそれぞれの漢字の意味について着目してきましたが、ここからは「綜」と「総」の使い分けについて説明しましょう。

入りまじるのは「綜」

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さきほど漢字の解説のときにも説明しましたが、「綜」という字には「まじる」「入りまじる」といった意味があります。しかし「総」という字にはそのような意味はありません。ですので、「まじる」や「入りまじる」といったニュアンスのある「錯綜(さくそう)」という単語などでは「綜」の字が使われますし、「総」の字を使うのは間違いです。

「ふさ」と読むのは「総」

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「総」の意味が糸を一つにまとめることである事については説明しましたが、たくさんの糸をまとめた飾りのことを「ふさ」と呼ぶことがありますよね。この「ふさ」を漢字で書きなさいと言われると、多くの人は「房」という字を書くかと思いますが、実は「総」という漢字にもその「ふさ」という意味と読みがあります。一方の「綜」にはこのような読みはありませんので、注意しましょう。

「そうごう」を漢字にするときはどっちがいいの?

「綜合」「総合」は、どちらも色々なものを一つに合わせたりまとめることを表し、意味の上では差がないことは説明しましたね。では皆さんが「そうごう」を漢字で書くときにはどちらを使っても問題ないのでしょうか?結論から言うと、「綜合」も間違いではないものの、「総合」を書いた方が無難と言えます。

なぜなら、「総」という漢字は、日常で使う漢字の目安となっている常用漢字に含まれていますが、「綜」という字はその常用外とされている字だからです。常用漢字というのは義務教育である中学校を卒業するまでに一通り習うため、「綜合」よりも「総合」の方がより多くの人に意味や読み方が伝わります。ですので、「そうごう」を漢字で書く時には「総合」の方を使うようにしましょう。

日常では「総合」を使った方が無難!

「綜合」「総合」は、いろいろなものを一つに合わせたり、まとめることに対して使われ、意味の上では違いがないものの、それぞれに使われている「綜」と「総」という字には細かい違いがあることを理解していただけたかと思います。また、「綜合」と「総合」はどちらを書いても間違いではありませんが、常用漢字なのは「総」の方なので、特別な理由でもない限り、「総合」の方を使うようにしましょう。

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雑学

簡単でわかりやすい!綜合と総合の違いとは?漢字の意味から使い分けまで現役塾講師がわかりやすく解説

「綜」と「総」の使い分け

漢字の「綜」「総」には使い分けなくてはならない場面があります。ですので、ここまではそれぞれの漢字の意味について着目してきましたが、ここからは「綜」と「総」の使い分けについて説明しましょう。

入りまじるのは「綜」

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さきほど漢字の解説のときにも説明しましたが、「綜」という字には「まじる」「入りまじる」といった意味があります。しかし「総」という字にはそのような意味はありません。ですので、「まじる」や「入りまじる」といったニュアンスのある「錯綜(さくそう)」という単語などでは「綜」の字が使われますし、「総」の字を使うのは間違いです。

「ふさ」と読むのは「総」

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「総」の意味が糸を一つにまとめることである事については説明しましたが、たくさんの糸をまとめた飾りのことを「ふさ」と呼ぶことがありますよね。この「ふさ」を漢字で書きなさいと言われると、多くの人は「房」という字を書くかと思いますが、実は「総」という漢字にもその「ふさ」という意味と読みがあります。一方の「綜」にはこのような読みはありませんので、注意しましょう。

「そうごう」を漢字にするときはどっちがいいの?

「綜合」「総合」は、どちらも色々なものを一つに合わせたりまとめることを表し、意味の上では差がないことは説明しましたね。では皆さんが「そうごう」を漢字で書くときにはどちらを使っても問題ないのでしょうか?結論から言うと、「綜合」も間違いではないものの、「総合」を書いた方が無難と言えます。

なぜなら、「総」という漢字は、日常で使う漢字の目安となっている常用漢字に含まれていますが、「綜」という字はその常用外とされている字だからです。常用漢字というのは義務教育である中学校を卒業するまでに一通り習うため、「綜合」よりも「総合」の方がより多くの人に意味や読み方が伝わります。ですので、「そうごう」を漢字で書く時には「総合」の方を使うようにしましょう。

日常では「総合」を使った方が無難!

「綜合」「総合」は、いろいろなものを一つに合わせたり、まとめることに対して使われ、意味の上では違いがないものの、それぞれに使われている「綜」と「総」という字には細かい違いがあることを理解していただけたかと思います。また、「綜合」と「総合」はどちらを書いても間違いではありませんが、常用漢字なのは「総」の方なので、特別な理由でもない限り、「総合」の方を使うようにしましょう。

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