今回は「日本ザリガニ」と「アメリカザリガニ」の違いを見ていきます。ザリガニと言えば用水路や田んぼにいる身近な生物で、子供の頃に捕まえた経験があるやつもいるでしょう。そのザリガニ、日本ザリガニかアメリカザリガニか、どちらだったか明確に答えられるか?まあ、大半はアメリカザリガニでしょうな。そう推測できる理由は生息地域です。この先は生き物好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

生き物が大好きな主婦ライター。猫2匹と一緒に暮らし、毎日癒されている。過去にはザリガニや金魚、めだかなども飼育経験あり。

日本に生息するザリガニは3種類

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日本には3種類のザリガニが生息しています。日本ザリガニ(ニホンザリガニ)、アメリカザリガニ、ウチダザリガニです。この中で、外見がよく似ていて間違われやすい日本ザリガニとアメリカザリガニの違いについて詳しく解説していきます。

日本ザリガニとアメリカザリガニの6つの違い

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日本ザリガニとアメリカザリガニには、大きく分けて以下の6つの違いがあります。よく似た外見の2種類のザリガニでも、これらを確認すると全く別の生き物だと感じるようになりますよ。

【日本ザリガニとアメリカザリガニの違い】
1.生物学上の分類
2.体の特徴
3.生息地域
4.生息環境
5.餌
6.在来種・外来種

1.生物学上の分類

1つ目の違いは生物学上の分類です。日本ザリガニが「十脚目・アジアザリガニ科・アジアザリガニ属」に属するのに対し、アメリカザリガニは「十脚目・アメリカザリガニ科・アメリカザリガニ属」に属します。同じ「十脚目」ではあるものの、それ以下の分類が異なりますね。

2.体の特徴

2つ目の違いは体の特徴です。日本ザリガニの体は茶褐色で、なめらかな表面をしています。体長は5~6cmほど。ハサミの先が丸みを帯びているのが特徴です。

一方のアメリカザリガニは赤色や褐色など、生息環境や餌などによって異なります。体長は8~12cmと日本ザリガニに比べて大型で、ハサミの先は尖り、表面に刺のような突起が多数あるのが特徴です。ただし、アメリカザリガニの子供は色や大きさが日本ザリガニと似ているため、混同されることも少なくありません。

\次のページで「3.生息地域」を解説!/

3.生息地域

3つ目の違いは生息地域です。日本ザリガニは、北海道、青森県、岩手県、秋田県に生息しています。かつては北日本で多く見られましたが、現在の生息地域は縮小してしまいました。また、人為的に移入させた歴史のある日光の大谷川流域にも生息が確認されています。

アメリカザリガニは、本州から沖縄にかけての至るところで生息し、北海道でも温かい水が入る水域では生息を確認。一部の離島や山中には、まだアメリカザリガニが入り込んでいない地域もあります。

4.生息環境

4つ目の違いは生息環境です。日本ザリガニは冷たくてきれいな水を好み、上流河川、山の中の湖など、20℃以下の水域で生息しています。一方のアメリカザリガニは汚れた水でも生息可能で、用水路やため池、水田などの流れが緩やかな環境がすみかです。

5.餌

5つ目の違いは餌です。日本ザリガニは雑食性で、川に落ちた広葉樹の腐った葉や、小魚・昆虫などの死体を食べます。一方のアメリカザリガニも雑食性ですが、獰猛かつ食欲旺盛で、落ち葉や水草、オタマジャクシ、水生昆虫、魚など様々なものを食べ、時には共食いをすることも

6.在来種・外来種

6つ目の違いは、在来種か外来種かの点です。日本ザリガニは日本固有の種類で、日本に生息する3種類のザリガニの中で唯一の在来種。近年は絶滅の危機が叫ばれ、環境省が「絶滅危惧種2類」に指定しました。

対するアメリカザリガニは、アメリカ合衆国南部を原産地とする外来種です。1927年、ウシガエルが食用として日本に持ち込まれた際、その餌にするためにアメリカザリガニも輸入されました。そのザリガニの一部が脱走し、繁殖を繰り返して全国に広がることに。当時輸入されたのは100匹でしたが、その多くは輸送中に死んでしまい、生きて日本に入ったのは20匹ほどと言われています。そのたった20匹が、現在日本各地に生息するアメリカザリガニの祖先です。

2003年には、影響が大きいため優先的に対策をすべき外来種として「日本の侵略的外来種ワースト100」に選出されています。

絶滅危惧種とは?

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日本ザリガニも指定されている「絶滅危惧種」について解説しておきましょう。絶滅危惧種とは、生物の絶滅の危険度を表す分類です。絶滅の危険がある野生生物の種の一覧を「レッドリスト」と呼び、絶滅の危険度に応じて7つの分類でまとめられています。「絶滅危惧種」は、その7分類の内の「絶滅危惧1類」と「絶滅危惧2類」を合わせたものです。

国際的なレッドリストは国際自然保護連合 (IUCN)が作成し、日本では環境省や地方公共団体などが作成しています。日本における最新のレッドリストは2020年に改訂され、絶滅危惧種は3,772種にも及ぶ結果となりました。

\次のページで「「絶滅危惧1類」の詳細」を解説!/

【レッドリストの分類・概要】
1.絶滅…我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
2.野生絶滅…飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
3.絶滅危惧1類…絶滅の危機に瀕している種
4.絶滅危惧2類…絶滅の危険が増大している種
5.準絶滅危惧…現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
6.情報不足…評価するだけの情報が不足している種
7.絶滅のおそれのある地域個体群…地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

「絶滅危惧1類」の詳細

「絶滅危惧1類」には、「絶滅危惧1A類」と「絶滅危惧1B類」というさらに細かい分類が存在します。耳にしたことがある種も対象になっていることに、驚く方もいるかもしれません。

【絶滅危惧1A類】
・概要…ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
・具体例…イリオモテヤマネコ、ラッコ、ジュゴン、トキなど

【絶滅危惧1B類】
・概要…1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
・具体例…ライチョウ、アカウミガメ、二ホンウナギ、エチゴモグラなど

「絶滅危惧2類」の詳細

日本ザリガニも分類されている「絶滅危惧2類」についても具体例を確認しておきましょう。ウズラ、アホウドリ、ハヤブサ、トウキョウトガリネズミ、アオウミガメ、オオサンショウウオなどで、皆さんがご存じであろう種も含まれています。

在来種の保全や外来種の影響について考えてみよう

在来種の減少や外来種による生態系の破壊は、たびたびニュースでも取りざたされています。アメリカザリガニは近くの川や田んぼで見かける身近な生物。子供たちがザリガニ釣りなどをして捕獲・飼育することもあるかもしれませんが、それをむやみに放流したり、別の地域に持ち込んだりすることはやめ、最後まで責任をもって管理したいですね。

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生き物・植物雑学

日本ザリガニとアメリカザリガニの違いは在来種か外来種か?絶滅危惧種についても生き物好きライターが簡単にわかりやすく解説

今回は「日本ザリガニ」と「アメリカザリガニ」の違いを見ていきます。ザリガニと言えば用水路や田んぼにいる身近な生物で、子供の頃に捕まえた経験があるやつもいるでしょう。そのザリガニ、日本ザリガニかアメリカザリガニか、どちらだったか明確に答えられるか?まあ、大半はアメリカザリガニでしょうな。そう推測できる理由は生息地域です。この先は生き物好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

生き物が大好きな主婦ライター。猫2匹と一緒に暮らし、毎日癒されている。過去にはザリガニや金魚、めだかなども飼育経験あり。

日本に生息するザリガニは3種類

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日本には3種類のザリガニが生息しています。日本ザリガニ(ニホンザリガニ)、アメリカザリガニ、ウチダザリガニです。この中で、外見がよく似ていて間違われやすい日本ザリガニとアメリカザリガニの違いについて詳しく解説していきます。

日本ザリガニとアメリカザリガニの6つの違い

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日本ザリガニとアメリカザリガニには、大きく分けて以下の6つの違いがあります。よく似た外見の2種類のザリガニでも、これらを確認すると全く別の生き物だと感じるようになりますよ。

【日本ザリガニとアメリカザリガニの違い】
1.生物学上の分類
2.体の特徴
3.生息地域
4.生息環境
5.餌
6.在来種・外来種

1.生物学上の分類

1つ目の違いは生物学上の分類です。日本ザリガニが「十脚目・アジアザリガニ科・アジアザリガニ属」に属するのに対し、アメリカザリガニは「十脚目・アメリカザリガニ科・アメリカザリガニ属」に属します。同じ「十脚目」ではあるものの、それ以下の分類が異なりますね。

2.体の特徴

2つ目の違いは体の特徴です。日本ザリガニの体は茶褐色で、なめらかな表面をしています。体長は5~6cmほど。ハサミの先が丸みを帯びているのが特徴です。

一方のアメリカザリガニは赤色や褐色など、生息環境や餌などによって異なります。体長は8~12cmと日本ザリガニに比べて大型で、ハサミの先は尖り、表面に刺のような突起が多数あるのが特徴です。ただし、アメリカザリガニの子供は色や大きさが日本ザリガニと似ているため、混同されることも少なくありません。

\次のページで「3.生息地域」を解説!/

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