この記事では「入札」と「見積り合わせ」の違いについてみていきます。どちらも仕事を得るための手段といったイメージがあるよな。違いはずばり公的機関から仕事を受注するときの請負金額の決め方にあるようですが、調べてみると「相見積り」や「談合」など混同しやすい状況もあるようです。今回はそんな仕事獲得までの工程や特徴について、言葉の定義から確認しつつ、工事会社勤務の現役OLライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

工事会社勤務9年目。入社から現在まで、現場踏査や設計業務など幅広く経験。地下埋設物には少々くわしい。専門用語が飛び交う職場で自分の言葉に置き換え、理解しなおす言語化作業に日々奮闘中の現役OLライター。

「入札」と「見積り合せ」の違いは請負金額の決め方

image by iStockphoto

「入札」とは、国や地方、官公庁などの公的機関が公共工事や業務委託の仕事を発注する業者を公正に選ぶための制度です。不特定多数の参加者を募り、より安い金額を提示した業者へ仕事を発注することが一般的ですね。

一方「見積り合せ」は発注機関が特定の企業を選定し直接契約を結ぶ方法。金額と質をあわせて仕事を発注することが目的になります。さらに詳しくみていきましょう。

公的機関の工事を請けるまでの流れ

国や地方の公的機関が仕事を発注する場合、公告を行い入札への参加業者を募り、不特定多数の業者に札入れをしてもらい、1番安い金額を提示した業者へ仕事を発注する「一般競争入札」制度を採用することが原則。「一般競争入札」は透明性、競争性、公正性、経済性が確保されている制度になります。

「一般競争入札」の例外の1つとして「随意契約(ずいいけいやく)」という制度があり、「随意契約」の過程で必要になってくる過程で「見積り合せ」が行われるんだそう。「随意契約」は少額案件に限り、発注者側が特定の企業に向けて仕事の進め方やコストを見積りを通して確認し、直接契約を結ぶ方法です。

入札:金額の低さで決定

「入札」とは、公的機関が民間の企業と契約を結ぶ際に採用させている制度のこと。国民の税金で行われる工事をはじめとするさまざまな案件について、基本的には最安値で請け負ってもらえる企業をみつけるために行われます。

「入札」は、まず発注者側が公告する契約金額の条件や案件詳細が記された「入札仕様書」を入札に参加する企業が検討し、「どれほどの費用であればこの仕事を請け負えるか」という金額を札入れという形で提示。不特定多数の企業から集めた入札書を発注者側で比較し、最も有利な条件を提示した企業と契約を結ぶという流れになりますね。

見積り合せ:金額と施工の方法などを確認した上で決定

「見積り合せ」は「入札」の例外である「随意契約」の制度のなかで発生してくる過程です。「随意契約」はすべての発注案件で採用できるわけではありません。主に発注予定価格が少額である場合や、入札を1度行っても落札まで至らなかった案件、特定の業者でなければ業務遂行が難しいと考えられる案件について選択される方法になるんだそう。

特に発注予定価格が少額である場合を「少額随契」といい、この場合に「見積り合せ」が行われます。「見積り合せ」は発注者が信頼できると判断した2~3業者に「見積り」の提出を依頼して、技術や提案内容も加味した上で判断し請負契約を結ぶ方法。「見積り」が「入札」で提出する入札書とは異なる点もポイントになりますね。

\次のページで「「入札」と「見積り合せ」のメリット・デメリットは?」を解説!/

「入札」と「見積り合せ」のメリット・デメリットは?

image by iStockphoto

「入札」と「見積り合せ」には、それぞれ特徴があるようにメリットとデメリットが考えられます。ここからは、両者の特徴を比較しながらメリットとデメリットを確認してきましょう。

入札のメリットとデメリット

「入札」のメリットとして、競争の自由や透明性、経済性、公平性、経済性を確保できる点があげられます。公的機関が発注する仕事は基本的に国民の税金をつかっておこなわれることになるので、無駄なコストをかけないよう請負業社の選定から注意する必要がありますね。また、発注者側が公告する要件には、契約の内容や参加資格が明記されており、条件を満たした業者は入札の実績に関わらず参加することできるんだそう。

デメリットとしては、不特定多数の業者が「入札」に参加するため競争率が高くなり、落札できる可能性が低くなってしまう点。また、提示金額の低い企業ほど採用されやすくなるため、利益率が低くなりやすいという点が挙げられるでしょう。

見積り合せのメリットとデメリット

「見積り合せ」では入札時に行われる事務的な作業や時間的な労力を削減することができるメリットがありますね。「一般競争入札」で、請負業者を選定する場合、入札を行うための周知や資料作成など、準備の段階で時間やお金といったコストがかかってしまうんだそう。この点を解消するために「随意契約」や「見積り合せ」は適切な制度になってきます。

また、デメリットとして考えられる点は「見積り合せ」の業者に選ばれなければ仕事を受注するチャンスを奪われてしまうこと。一見すると「競争の自由」から逸脱しているように見える「随意契約」ですが、会計法によって法的な正当性が明記されていました。

契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。

(出典:会計法(第29条の3第5項))

\次のページで「相見積りや談合との違いは?」を解説!/

随意契約が適用されるためには「少額である場合」という条件があります。ここでいう少額とは、自治体ごとにガイドラインが定められているので、参照してみるのもいいでしょう。

おおよその目安として、工事や製造業の請負については、県や政令指定都市で250万ほど、その他の市町村で130万円ほど。財産の買入れで、県や政令指定都市160万円、その他市町村80万円ほどになるんだそう。

相見積りや談合との違いは?

image by iStockphoto

「見積り合せ」は「相見積り」と混同されることもあるんだそう。ここからは、法的に違法だとされている「談合」とも比較しながら、さらに公的機関が発注する案件の請負契約について詳しくみていきましょう。

「見積り合せ」と混同しやすい「相見積り」とは?

「相見積り」とは、いくつかの業者の見積りを取り寄せ比較することをさします。官公庁など公的機関に限らず、一般企業でも商品の購入を行うときは、さまざまな業者に見積もりをとり、どの業者から購入するか検討することがありますね。民間の企業で「相見積り」をとること自体を問題視されることはありませんが、公的機関が工事の発注をするにあたり「相見積り」をとるという表現をすると、問題視される場合があるんだそう。

具体的には、公的機関がすでに発注する業者を決めた上で、その業者への発注の妥当性を証明するために発注先の業者に対して他社へ「相見積り」をとるよう依頼するような場合。このような場合は、受注を受ける業者は自らの提示金額よりも高い見積書を取り寄せるように働きますね。価格を調整した他者見積りをそろえることは談合になることがあるため注意が必要です。

談合は違法?デメリットについて

「談合」とは「入札」を行う際に、競争するはずの複数の業者が事前に話し合い「入札」前に入札金額を決定し、落札をする業者を取り決めておくことをいいます。入札に参加する業者同士が事前に価格調整を行うことで、入札のメリットであった競争性や公正性が害されることが予想されますね。

結託した業者ごとに持ち回りで落札したり、高い価格でも落札できるように根回ししたりと「入札」の透明性においても問題となってくる行為です。「談合」は法的にも違反であり、税金の無駄遣いにもつながる恐れがあると懸念されていますね。

仕事受注までの流れから、それぞれの契約内容について理解を深めよう

「入札」と「見積り合せ」両者とも、公的機関が仕事は発注する際に行われます。共通する目的は税金の無駄遣いにならないよう、コストパフォーマンスを高く請負業者を決定するという点にあるでしょう。そもそも、入札を行う案件にかかる予想価格が高額である場合は、その仕事に対して、できる限り金額を抑え品質的にも安全性の高い業者へ仕事を依頼したいと考えますよね。

また、そもそも予想価格が低い案件に対しては「入札」を行わず、随意契約による「見積り合せ」を実施した方が、請負業者を決める過程からコストダウンが図れますね。「入札」にかかる人的コストや時間的なコストとのバランスを考慮して、請負契約までの方法を選択することが税金の無駄遣いを防ぐという面でも重要になってくるでしょう。

" /> 簡単でわかりやすい!入札と見積り合わせの違いとは?相見積り・談合との違いや使い分けも工事会社勤務現役OLライターがくわしく解説 – Study-Z
暮らし社会言葉雑学

簡単でわかりやすい!入札と見積り合わせの違いとは?相見積り・談合との違いや使い分けも工事会社勤務現役OLライターがくわしく解説

この記事では「入札」と「見積り合わせ」の違いについてみていきます。どちらも仕事を得るための手段といったイメージがあるよな。違いはずばり公的機関から仕事を受注するときの請負金額の決め方にあるようですが、調べてみると「相見積り」や「談合」など混同しやすい状況もあるようです。今回はそんな仕事獲得までの工程や特徴について、言葉の定義から確認しつつ、工事会社勤務の現役OLライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

工事会社勤務9年目。入社から現在まで、現場踏査や設計業務など幅広く経験。地下埋設物には少々くわしい。専門用語が飛び交う職場で自分の言葉に置き換え、理解しなおす言語化作業に日々奮闘中の現役OLライター。

「入札」と「見積り合せ」の違いは請負金額の決め方

image by iStockphoto

「入札」とは、国や地方、官公庁などの公的機関が公共工事や業務委託の仕事を発注する業者を公正に選ぶための制度です。不特定多数の参加者を募り、より安い金額を提示した業者へ仕事を発注することが一般的ですね。

一方「見積り合せ」は発注機関が特定の企業を選定し直接契約を結ぶ方法。金額と質をあわせて仕事を発注することが目的になります。さらに詳しくみていきましょう。

公的機関の工事を請けるまでの流れ

国や地方の公的機関が仕事を発注する場合、公告を行い入札への参加業者を募り、不特定多数の業者に札入れをしてもらい、1番安い金額を提示した業者へ仕事を発注する「一般競争入札」制度を採用することが原則。「一般競争入札」は透明性、競争性、公正性、経済性が確保されている制度になります。

「一般競争入札」の例外の1つとして「随意契約(ずいいけいやく)」という制度があり、「随意契約」の過程で必要になってくる過程で「見積り合せ」が行われるんだそう。「随意契約」は少額案件に限り、発注者側が特定の企業に向けて仕事の進め方やコストを見積りを通して確認し、直接契約を結ぶ方法です。

入札:金額の低さで決定

「入札」とは、公的機関が民間の企業と契約を結ぶ際に採用させている制度のこと。国民の税金で行われる工事をはじめとするさまざまな案件について、基本的には最安値で請け負ってもらえる企業をみつけるために行われます。

「入札」は、まず発注者側が公告する契約金額の条件や案件詳細が記された「入札仕様書」を入札に参加する企業が検討し、「どれほどの費用であればこの仕事を請け負えるか」という金額を札入れという形で提示。不特定多数の企業から集めた入札書を発注者側で比較し、最も有利な条件を提示した企業と契約を結ぶという流れになりますね。

見積り合せ:金額と施工の方法などを確認した上で決定

「見積り合せ」は「入札」の例外である「随意契約」の制度のなかで発生してくる過程です。「随意契約」はすべての発注案件で採用できるわけではありません。主に発注予定価格が少額である場合や、入札を1度行っても落札まで至らなかった案件、特定の業者でなければ業務遂行が難しいと考えられる案件について選択される方法になるんだそう。

特に発注予定価格が少額である場合を「少額随契」といい、この場合に「見積り合せ」が行われます。「見積り合せ」は発注者が信頼できると判断した2~3業者に「見積り」の提出を依頼して、技術や提案内容も加味した上で判断し請負契約を結ぶ方法。「見積り」が「入札」で提出する入札書とは異なる点もポイントになりますね。

\次のページで「「入札」と「見積り合せ」のメリット・デメリットは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: