この記事では豹とチーターの違いについてみていきます。2つとも「まだら模様」をもつ大きなネコ科動物というイメージがあるよな。じつはチーターはネコ科にしては変わり者。「世界最速」で知られるチーターは、体のつくりが豹と違うみたいです。今回はそんな大型ネコ科動物の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「まだら模様」がそっくりな、豹とチーターの違いについてわかりやすく解説していく。

豹とチーターを大まかに比較

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豹(ヒョウ)とチーターはともに、大型のネコ科動物。ライオンやトラ同様、両者は英語で”Big cat”と総称されます。そんな豹とチーターは”Big cat“のなかでも、とくに似た組み合わせのひとつ。どちらもまだら模様の、美しい毛皮をまとっているのです。ですが分類上、両者はかけ離れた存在。以下豹とチーターの、大まかな違いをみていきましょう!

豹はライオンやトラの仲間

図鑑の分類では、豹はライオン・トラ・ジャガーと同じグループ。ネコ科はヒョウ属に分類されます。じつは豹は、世界中に広く生息する「普通」のネコ科動物。ライオンがいるアフリカ、トラがいるアジア、そして中近東に分布します。

そんな豹の強みは、高い適応力。熱帯はサバンナ・ジャングルから亜寒帯の針葉樹林まで、豹はあらゆる環境下で生きていけるのです。さらには都市部にも、「野良豹」が住み着いています。

豹の基本情報
体長:1〜2m
体重:70〜95kg
分布:アフリカ・中近東・アジア

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チーターはオンリーワン

豹に似ているチーターは、ヒョウ属ではありません。ネコ科はチーター属に分類される、唯一の動物です。

チーターは分類だけでなく特技も個性的。サラブレッドを差し置いて、チーターは「世界最速の哺乳類」として有名です。そんなチーターの生息地は、アフリカのサバンナ。瞬発力を武器に、彼らはガゼルなど草食動物を狩ります。後述しますがチーターは、ネコ科らしからぬ「変わり者」なのです。

チーターの基本情報
体長:1〜1.5m
体重:40〜65kg
分布:アフリカ・イラン中部

この記事では、豹とチーターの見分け方をいくつか紹介します。さらに両者の生態の違いについても徹底解説。この記事を読めば、豹とチーターの違いが具体的に理解できます。とくに「変わり者」チーターについて、詳しくみていきましょう!

豹とチーターの見分け方は4つ

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まずは豹とチーターの見分け方を、4点だけ紹介。以下を読めば、動物園にて両者を簡単に見分けることができますよ。豹とチーターの具体的な違いについて、みていきましょう!

その1.体のまだら模様

豹とチーターはともに、まだら模様の毛皮をもっています。そのうち「豹柄」こと、豹のまだら模様はより複雑です。豹柄1つ1つは、中心がオレンジ。さらに中心をふちどるようにして、小さな黒いまだらが点在するのです。その形状は「梅の花」にたとえられます。対してチーターのまだらは黒一色。チーターの毛皮には、黒い点が並んでいます。

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その2.目のまわりの模様

豹とは違い、チーターの顔には独特の模様があります。チーターの目頭と目じりには、黒い線状の模様が走っているのです。まるで涙の跡のようなその模様は、「ティアーズライン」とも呼ばれます。一説によればティアーズラインは、眩しさを抑えるためのもの。黒い模様は、サバンナの強い日ざしを吸収します。これはプロ野球選手が、目の下に黒いシールを貼るのと同じ原理です。

その3.体つき

豹とチーターとでは、筋肉のつき方が違います。筋肉質な豹に比べて、チーターは手足が華奢。その四肢はガゼルや鹿など、草食動物の足に似ています。具体的には四肢の付け根、胴体側に筋肉が集まっているのです。

その理由は「てこの原理」で説明可能。まず地面を蹴り上げる足先は作用点で、関節は支点です。両者から力点となる筋肉を遠ざけて、大きな動きを生み出していると考えられています。

その4.生態

豹とチーターは、そのライフスタイルが完全に違います。豹は木の上で暮らす、夜行性の動物です。彼らはなんと、食事・睡眠・子育てなど、生活全般を木の上で完結させてしまいます。一方チーターは、地上を駆け回る昼行性の動物なのです。

豹とチーターは特技が違う

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体つきや生態が違う、豹とチーターは特技も違います。ここでは「世界最速」と名高いチーターの、速さの秘訣をくわしく解説。まずは豹の特技から、みていきましょう!

豹は木登りの達人

豹の生活はほぼ、木の上で完結します。もちろん狩りも樹上で待ち伏せるスタイルです。まず豹は、木の上からレイヨウなど大きな獲物を襲撃。そして彼らはなんと、仕留めた獲物をくわえながら、木に登っていくのです。これはライオン・ハイエナから、横取りを防ぐための戦略だと考えられています。

そのため豹は、顎や四肢の筋力が発達。ときには自らと同じサイズの獲物を、高所に上げるのだから驚きです。さらに豹はなんと、2mもジャンプすることが可能。このように木登りに特化した豹は、ライオン・ハイエナ・トラなどライバルのいる地域でも繁栄できたのです。

\次のページで「走りに特化したチーター」を解説!/

走りに特化したチーター

チーターは地上生活に特化した変わり者。その体つきは、他のネコ科動物とは一線を画します。ネコの仲間なのにチーターは、自分の爪を引っ込めることができません。さらに関節の動きが限定されていることもあり、チーターは木登りが下手。

そのかわり彼らはなんと、時速100kmで走ることができます。以下チーターの、速さの秘訣についてみていきましょう。

チーターが走るときのフォームはダイナミックです。まず走るときは、胴体を大きく曲げ伸ばしします。さらにチーターは、足を後ろに大きく蹴り上げる「キックバック走法」の名手です。肘と肩とで関節の回転軸がそろっており、四肢がまっすぐ伸びます。その結果、飛ぶような加速が実現。さらに突き出た爪を立てることで、カーブにも対応できます。チーターは文字通り、走るために生まれてきたのです。

アメリカ大陸の大型ネコたち

アフリカ大陸/ユーラシア大陸から海で隔てられた、「新世界」こと南北アメリカ大陸。そこには「新世界ザル」のような独自の生き物が住んでいます。そんなアメリカ大陸では、大型のネコ科動物もみられるのです。新世界独自の”Big cat”について、以下みていきましょう!

ジャガーは新世界の豹

ジャガーはいわば、南アメリカ版の豹。豹同様ヒョウ属に分類され、こちらも「梅の花」のようなまだら模様が特徴的です。しばしば豹と混同されるジャガーの個性は、まだら模様と体つき。こちらのまだら模様の中心には、黒い点が入っています。そして豹と比べてジャガーでは、大きな頭と短い足が特徴的。ジャガーはいわば、「ずんぐりむっくり」な体型です。

ジャガーは、見た目だけでなく生態も豹そっくり。彼らは夜行性で、ジャングルの樹上で生活しています。豹と違う点は、ジャガーが泳ぎの名人であるということ。南米のアマゾン川を泳いで、カピバラやワニなどの獲物を狙うのです。ほかにもアルマジロやカメなど、硬い殻をもった獲物も難なく捕食。大顎を開けて、獲物を殻ごと噛み砕いてしまいます。ジャガーは南米で、豹とは違う進化を遂げてきたのです。

ピューマはアメリカ特有

南北アメリカ大陸に分布するピューマは、ネコ科ピューマ属の動物。「アメリカライオン」や「クーガー」の異名をもちます。ライオンと同じく、成体のピューマの毛皮には模様がありません。そんな彼らは、ヒョウ属とは無関係。じつはピューマ属は、チーター属に近いのです。実はピューマの赤ちゃんは、チーター同様、毛皮に黒いまだら模様をもっています。

チーターは走りを極めた変わり者

チーターは、ネコ科にしては異質な存在。豹に似ていますが、これは「他人の空似」です。チーターはネコ科なのに木登りが下手で、地上での暮らしに特化しています。たとえば彼らの筋肉・関節・爪は、他のネコ科動物のものとは似つきません。チーターの四肢はまるで、ガゼルのような形をしているのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!豹とチーターの違いとは?見分け方や生態、ジャガー・ピューマとの違いも生物学専攻ライターが詳しく解説

この記事では豹とチーターの違いについてみていきます。2つとも「まだら模様」をもつ大きなネコ科動物というイメージがあるよな。じつはチーターはネコ科にしては変わり者。「世界最速」で知られるチーターは、体のつくりが豹と違うみたいです。今回はそんな大型ネコ科動物の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「まだら模様」がそっくりな、豹とチーターの違いについてわかりやすく解説していく。

豹とチーターを大まかに比較

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豹(ヒョウ)とチーターはともに、大型のネコ科動物。ライオンやトラ同様、両者は英語で”Big cat”と総称されます。そんな豹とチーターは”Big cat“のなかでも、とくに似た組み合わせのひとつ。どちらもまだら模様の、美しい毛皮をまとっているのです。ですが分類上、両者はかけ離れた存在。以下豹とチーターの、大まかな違いをみていきましょう!

豹はライオンやトラの仲間

図鑑の分類では、豹はライオン・トラ・ジャガーと同じグループ。ネコ科はヒョウ属に分類されます。じつは豹は、世界中に広く生息する「普通」のネコ科動物。ライオンがいるアフリカ、トラがいるアジア、そして中近東に分布します。

そんな豹の強みは、高い適応力。熱帯はサバンナ・ジャングルから亜寒帯の針葉樹林まで、豹はあらゆる環境下で生きていけるのです。さらには都市部にも、「野良豹」が住み着いています。

豹の基本情報
体長:1〜2m
体重:70〜95kg
分布:アフリカ・中近東・アジア

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