今回のテーマは家でもできる簡単アイスクリーム作りの科学です。

アイスクリームはみんなが知っているように生クリームや砂糖を混ぜて凍らせて作る冷たいお菓子です。家でアイスクリームを作るとき、冷凍庫に入れなくても室内で冷やして作ることができる。使うものは氷と塩です。これがあれば室内でも冷たいアイスを作ることができる。これは一体どんなメカニズムなのか。

というわけで、自由研究にもピッタリな家でもできるアイスクリーム作りを化学的に解説していく。解説するのは化学系科学館のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

アイスクリームはバニラよりチョコレート派の科学館職員。新たな実験を求め、本とネット、ブログから勉強する日々。一度実験をしようと思うと納得いくまで止まらない。

おうちで簡単、アイスクリームのつくりかた

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今回のメインテーマは「塩水はどうして0℃以下になるのか」です。このメカニズムを解説する前にまず、この現象を使ったアイスクリーム作りを紹介します。簡単なのでぜひ、お家でお子さんとやってみてくださいね。

なお、今回は株式会社明治が公表しているレシピ(塩と氷でアイスクリームができる!? 冷凍庫を使わずにアイスクリームを作ろう!|わくわく!おうちでふしぎ実験をしよう!|明治の食育|株式会社 明治 - Meiji Co., Ltd.)の記事を参考にしています。

お家でアイスクリーム、準備

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アイスクリーム作りには以下のものを用意します。

【材料】2人分
・卵黄     1個
・グラニュー糖 30g
・牛乳     大さじ3
・生クリーム  100ml
・バニラエッセンス 少々

【使うもの】
・塩      300g
・氷      1㎏
・ボウル大小  各1個
・泡だて器、木べら 各1個

お家でアイスクリーム、作り方

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作り方は以下の手順となります。

1.卵黄、グラニュー糖を小さなボウルでざらざらしなくなるまで泡だて器で混ぜる
2.白っぽくなったら牛乳を少しずつ加える
3.大きい方のボウルに氷:塩=3:1となるように入れる
4.ボウルを重ね、2にクリームとバニラエッセンスを加えて混ぜる
5.固まってきて泡だて器が重たくなってきたら、木べらに持ち替えて全体的に混ぜる
6.氷が融けてきたら塩と一緒に追加する

ちなみに同じ方法でジュースを凍らせると、シャーベットが出来上がります。

\次のページで「なぜ塩と氷でアイスは冷えるの?」を解説!/

なぜ塩と氷でアイスは冷えるの?

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上記で紹介したレシピは、ジッパーやタッパーに入れて冷凍庫に入れてももちろんアイスクリームが完成します。ということは、室温の部屋の中でも氷と塩が入った大きいボウルは冷凍庫並みの低温にすることができる、という事になりますね。この氷と塩が入ったボウルが冷えるキーワードは『融解熱』『溶解熱』『凝固点降下』です。

氷が水になるにはエネルギーが必要?

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融解とは「固体が融けて液体になること」。氷で考えると水になることです。熱があるときに氷嚢を使うと、おでこは冷えるけれど氷は水になりますね。これは以下のようなプロセスになります。

・氷が周囲から熱を奪って冷やす
・その熱によって氷は水になる

この氷が水になる時に必要な熱が融解熱です。溶解熱は固体の温度が融点に達したときから完全な液体になるまでの間、外部から吸収されます。氷の融解熱は333.6kJ/kg。これは0℃の氷1gを水にするのに必要な熱量のことです。

おさらい!状態変化とは?

おさらい!状態変化とは?

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融解という言葉が出てきたところで、状態変化のおさらいです。状態変化とは、物質の状態が変化すること。ここでいう物質の状態とは固体・液体・気体のことです。水でいうと氷・水・水蒸気という事ですね。

常圧の場合、氷は0℃で溶けて水になり、そして100℃で水蒸気になります。これは皆さん知っていますね。ちなみにドライアイスのような固体→気体となる状態変化を昇華といいます。ドライアイスは二酸化炭素の固体です。

\次のページで「塩を水に溶かすと冷たくなる?溶解熱とは?」を解説!/

塩を水に溶かすと冷たくなる?溶解熱とは?

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溶解とは溶質が溶媒(液体)に溶ける事です。食塩水で考えると以下のようになります。

・溶液 食塩水(塩化ナトリウム水溶液)
・溶質 食塩(塩化ナトリウム)
・溶媒 水

溶解熱には「発熱」と「吸熱」がある!

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1molの溶質が溶媒に溶けるときに発生する熱を溶解熱といいます。塩化ナトリウムの溶解熱は-3.88kJ/mol。熱にマイナスが付くのは変な感じがしますね。実はこの溶解熱は熱を発生するものだけではありません。溶解には周囲に熱を与える発熱反応と、周囲の熱を吸収して冷やす吸熱反応があるのです。ちなみに燃焼や中和反応は常に発熱反応となります。

水への溶解熱
【発熱】
硫酸(H2SO4) 95.3kJ/mol
塩化水素(HCl:気体) 74.9kJ/mol
水酸化ナトリウム(NaOH) 44.5kJ/mol
【吸熱】
塩化ナトリウム(NaCl) -3.88kJ/mol
硝酸カリウム(KNO3) -34.9kJ/mol

塩基の代表、水酸化ナトリウム。上記の表では発生する熱量は小さい方ですが、それでも水に溶かすとビーカーのガラス越しでも熱くなっているのがわかるほどの発熱が起きるのです。一方、硝酸アンモニウム(NH4NO3は溶解すると周囲の熱を奪って冷たくなります。この性質を利用しているのが冷却剤です。反応熱や溶解熱についてはこちらの記事がおすすめ。

\次のページで「凝固点降下とは?」を解説!/

凝固点降下とは?

凝固点とは凝固、液体が固体になる温度のことです。純物質の場合、凝固点=融点となります。氷が0℃で解け、0℃で凍るという事ですね。凝固点降下とは固体になる温度、凝固点が下がることなのです。

塩が溶けた水、食塩水は凝固点降下が起こり0℃以下まで冷やすことができます。飽和食塩水ならなんと-21.3℃まで凝固点を下げることができるのです。冷凍庫の適正温度は-18℃。凝固点降下が起きた食塩水を冷やせば、冷凍庫よりも低い温度でアイスを冷やすことができるのですね。

なぜ凝固点降下が起きるの?

なぜ凝固点降下が起きるのでしょうか。簡単に説明すると、「溶質が溶媒の凝固を邪魔するから」です。食塩水に含まれる食塩は、水分子が規則正しく並んで結晶となる邪魔をします。そのため、溶質の濃度が高くなるほど、邪魔者が増えて凝固しづらくなるのです。

凝固点降下の例としては塩化ナトリウムの他に、ナフタレンC10H8)などがあります。ナフタレンは衣類の防虫剤として使われていますね

食塩水でアイスクリームができるメカニズムまとめ

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氷と食塩水でアイスクリームが作れるのは、以下の現象によってアイスクリームが冷やされるからです。

氷が溶ける時に周囲の熱を奪う(融解熱
塩が水に溶ける時に熱を奪う(溶解熱
食塩水は凍りづらいから、アイスクリームを十分な低温で冷やすことができる(凝固点降下

部屋の中でも冷凍庫並みに冷やすことができる!必要なのは食塩水と氷だけ?

氷が融けるのに融解熱、水に食塩を加えることで溶解熱、と身近な現象でも熱のやり取りが行われています。また、食塩は水が凍るという最も基本的な現象を阻害し、そのため水を0℃以下まで冷やすことができるのです。飽和食塩水なら-20℃以下まで冷やすことができます。

氷が融ける、水にものが溶ける。こうやって見てみると、生活のいたるところで化学的な現象が起きていることがよくわかりますね。化学は意外と身近な学問なのです。

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化学理科

氷に塩を入れると冷凍庫なしでもアイスができる?身近ななぜの原理を科学館職員が簡単にわかりやすく解説

今回のテーマは家でもできる簡単アイスクリーム作りの科学です。

アイスクリームはみんなが知っているように生クリームや砂糖を混ぜて凍らせて作る冷たいお菓子です。家でアイスクリームを作るとき、冷凍庫に入れなくても室内で冷やして作ることができる。使うものは氷と塩です。これがあれば室内でも冷たいアイスを作ることができる。これは一体どんなメカニズムなのか。

というわけで、自由研究にもピッタリな家でもできるアイスクリーム作りを化学的に解説していく。解説するのは化学系科学館のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

アイスクリームはバニラよりチョコレート派の科学館職員。新たな実験を求め、本とネット、ブログから勉強する日々。一度実験をしようと思うと納得いくまで止まらない。

おうちで簡単、アイスクリームのつくりかた

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今回のメインテーマは「塩水はどうして0℃以下になるのか」です。このメカニズムを解説する前にまず、この現象を使ったアイスクリーム作りを紹介します。簡単なのでぜひ、お家でお子さんとやってみてくださいね。

なお、今回は株式会社明治が公表しているレシピ(塩と氷でアイスクリームができる!? 冷凍庫を使わずにアイスクリームを作ろう!|わくわく!おうちでふしぎ実験をしよう!|明治の食育|株式会社 明治 – Meiji Co., Ltd.)の記事を参考にしています。

お家でアイスクリーム、準備

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アイスクリーム作りには以下のものを用意します。

【材料】2人分
・卵黄     1個
・グラニュー糖 30g
・牛乳     大さじ3
・生クリーム  100ml
・バニラエッセンス 少々

【使うもの】
・塩      300g
・氷      1㎏
・ボウル大小  各1個
・泡だて器、木べら 各1個

お家でアイスクリーム、作り方

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作り方は以下の手順となります。

1.卵黄、グラニュー糖を小さなボウルでざらざらしなくなるまで泡だて器で混ぜる
2.白っぽくなったら牛乳を少しずつ加える
3.大きい方のボウルに氷:塩=3:1となるように入れる
4.ボウルを重ね、2にクリームとバニラエッセンスを加えて混ぜる
5.固まってきて泡だて器が重たくなってきたら、木べらに持ち替えて全体的に混ぜる
6.氷が融けてきたら塩と一緒に追加する

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