この記事では、椎の実とどんぐりの違いについてみていきます。どんぐりは「渋くて食べられない」というイメージがあるよな。じつはどんぐりの仲間、椎の実にはアクがなく、そのまま食べられるんです。今回はそんな椎の実とどんぐりの違いを、見分け方や調理法も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「食べられるどんぐり」こと、椎の実の見分け方についてわかりやすく解説していく。

椎の実/どんぐりを大まかに比較

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まずは、椎の実とどんぐりの定義について触れていきます。どんぐりに似ている椎の実は、別名で「食べられるどんぐり」とも。そんな椎の実は、普通のどんぐりと何が違うのでしょうか?以下みていきましょう。

「どんぐり」はブナ科、とくにコナラ属の果実

広義の「どんぐり」とは、ブナ科の樹木に特徴的な果実の総称。硬い殻で覆われた果実、「堅果」の一種です。ひとくちに「どんぐり」といえど、その種類は多種多様。ブナ科の「どんぐりの木」は、国内に限っても20種以上に分けられるのです。その中には、食用でおなじみの栗の木も含まれています。

しかしみなさんが、真っ先に思い浮かべるどんぐりは、栗ではないはず。どんぐりといえば、「帽子をかぶった茶色の木の実」という印象が強いですよね?これはブナ科コナラ属に特有の堅果、狭義のどんぐりです。本記事では、このコナラの実を「どんぐり」として紹介していきます。

「椎の実」も広義のどんぐり

「椎の実」はブナ科シイ属、椎の木の堅果を指します。椎の実はブナ科なので、広義の「どんぐり」です。日本全国、どんぐりは数あれど、椎の実は一握り。国産のシイ属は「ツブラジイ」と「スダジイ」の2種類だけなのです。この2種の椎の実はなんと、生食できます。普通の「どんぐり」と「椎の実」は、何が違うのでしょうか?

椎の実にはアクがない

子供の頃、どんぐりを口に含んだ経験はありませんか?たいてい生のどんぐりを食べると、強い渋みを感じるはず。じつはコナラのどんぐりは、アクを含んでいるのです。どんぐりのアクは、柿の渋みと同じ「タンニン」からなります。このタンニンは、下痢止めに用いられる強烈な成分。そんなどんぐりは「アク抜き」をしないと、とても食べられないのです。

一方で椎の実には、アクがありません。よってアク抜きなど特別な処理が不要。採ってきた椎の実は、そのまま煎れば食用となるのです。この記事では、椎の実/どんぐりの見分け方について解説。さらに両者の下処理と食べ方を詳しく掘り下げていきます。

\次のページで「椎の実/どんぐりの見た目の違い」を解説!/

椎の実/どんぐりの見た目の違い

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椎の実とどんぐりは、ともに秋の風物詩。10月から11月にかけて椎の実/どんぐりは、樹上から地面へこぼれ落ちるのです。どちらも動物が近寄らない、整地された路面にてよく見られます。お寺や神社の境内を探してみると、すぐに見つかりますよ。以下そんな椎の実/どんぐりの具体的な見分け方を紹介。椎の実/どんぐりを、実際に採って食べたい方は必見です!

違い1.実の色

椎の実の表面は、ツヤのある黒褐色の殻。その内側には皮に包まれた、真っ白な中身が入っています。一方コナラ属のどんぐりは、明るい褐色の殻が特徴的。そして殻の中には「渋皮」に包まれた、緑色または褐色の中身が入っているのです。ただ実の色には、個体差があります。次の実の形もご覧ください。

違い2.実の形

椎の実はどんぐりと違って、「帽子」をかぶっていません。どんぐりの帽子は、正しくは殻斗(かくと)というもの。この殻斗は、ブナ科の果実特有の構造です。例えば、栗の「いが」も殻斗。そして同じくブナ科は椎の実にも、実をすっぽりと覆う殻斗がついています。椎の実は熟すと、殻斗が裂け、裸になって落ちてくるのです。

椎の実/どんぐりの下処理

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採ってきた椎の実/どんぐりは、食べる前の下処理が肝心。とくにどんぐりは、椎の実と違って、アク抜きしないと食べられません。以下、椎の実/どんぐりに共通の選別から、どんぐりのアク抜きまで徹底解説していきます。

まずは中身の確認から

椎の実/どんぐりには一部、虫食いや乾燥で、中身がスカスカになっているものがあります。そのため中身が詰まった椎の実/どんぐりだけを選別する必要があるのです。選別は簡単で、椎の実/どんぐりを入れたバケツに水を張るだけ。2日ほど待って、浮かんできた木の実は取り除きましょう。

\次のページで「ついでに虫の対策も」を解説!/

ついでに虫の対策も

椎の実/どんぐりにはしばしば、虫が寄生しています。どちらの堅果も、チョッキリやシギゾウムシなど、ゾウムシの幼虫の主食なのです。虫と遭遇したくない場合の対策を、ここで2つ紹介します。まず最も確実な方法は、椎の実/どんぐりを茹でること。実を5分ほど茹でれば、中の虫は死滅します。あとは3日ほど日陰で、椎の実/どんぐりを乾燥させれば対策完了です。

もうひとつは、一週間冷凍庫の中で、椎の実/どんぐりを保管するという方法。こちらはおすすめしません。なぜならゾウムシは越冬する昆虫で、寒さに強いから。論文によるとゾウムシの仲間はおおよそ、マイナス20度の寒さまで耐えるとされています。冷凍庫の内部はマイナス18度。ゾウムシを死滅させるには、一歩およびません。

どんぐりでは「アク抜き」が必要

椎の実とは違い、どんぐりにはアクが含まれています。よってどんぐりを食べるためには、「アク抜き」が必要不可欠。その方法は次の通り、手間がかかります。まずどんぐりの殻を割って、中身を取り出しましょう。そしてどんぐりの中身の渋皮、つまりはアクが強い皮を剥きます。あとは中身を2時間茹でて、水に晒せばアク抜き完了です。

さらにどんぐりを茹でる際、ミョウバンを加えると効果的にアク抜きできます。これは同ブナ科の栗で、しばしば用いられるテクニックです。どんぐりから溶け出したアク成分は、ミョウバンの金属イオンと結びつくと沈殿します。よってどんぐり表面に、アクが付きにくくなるのです。

椎の実/どんぐりの栄養と食べ方

ここでは椎の実/どんぐりの栄養と食べ方について徹底解説。椎の実/どんぐりを、普段から食べている人は少ないはず。そこで気をつけたい、椎の実/どんぐりのアレルギーについてもみていきましょう!

椎の実/どんぐりのアレルギーは栗と同じ

椎の実/どんぐりで注意したいのは、同ブナ科の栗と一緒で、ラテックスアレルギー。これは果実の中に含まれる、天然ゴムの成分に対するアレルギーです。天然ゴム・栗以外にも、キウイフルーツ・アボカド・バナナに対してアレルギーをもつ人は、お気をつけください。

椎の実/どんぐりの栄養

椎の実/どんぐりは、栄養豊富なナッツの仲間。その主な成分は炭水化物と脂肪です。さらにタンパク質やビタミン、ミネラルも含まれています。なかでも特筆すべきは椎の実のビタミンC。椎の実では100g中に、110mgものビタミンCが含まれているのです。これはなんと緑黄色野菜の、菜の花と同じ数値。ビタミンCが豊富な椎の実には、美肌効果が期待できますよ。

一方どんぐりではアク抜きによって、ビタミンCが流出してしまいます。ビタミンCは、水溶性のビタミンなのです。よって椎の実のほうが、より栄養豊富であるといえます。

椎の実/どんぐりの調理法

下処理を済ませた椎の実は生食可能。ですが加熱することで、甘みが増してより美味になります。椎の実の調理で一番簡単なのは、電子レンジを使った加熱。封筒に入れた椎の実を、500Wで2分ほど加熱しましょう。またガスコンロでも調理可能。蓋をしたフライパンにて、椎の実を弱火で温めましょう。どちらの調理法でも食べごろは、椎の実の殻が弾けるタイミングです。

一方どんぐりは、料理の引き立て役に向きます。アク抜きをしたどんぐりは、「どんぐり粉」に加工してしまいましょう。フードプロセッサーを用いれば、一瞬でどんぐりが粉末に。どんぐり粉はクッキーや団子、もちなど菓子に加えると、素朴な甘みが楽しめます。またコーヒーやお茶の材料にもうってつけです。

\次のページで「椎の実だけでなく、どんぐりも食べられる」を解説!/

椎の実だけでなく、どんぐりも食べられる

「椎の実」はアクのない堅果。しばしば「食べられるどんぐり」として、紹介されます。一方コナラ科の、狭義の「どんぐり」は、そのままでは食べられません。帽子を被ったコナラの「どんぐり」には、アクが含まれているのです。食用として人気なのは「椎の実」のほう。とはいえ「どんぐり」も工夫次第で、さまざまな料理に使えます。そんな秋の味覚を楽しんでみるのも一興ですね。

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簡単でわかりやすい!椎の実とどんぐりの違いとは?見分け方や食べ方も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では、椎の実とどんぐりの違いについてみていきます。どんぐりは「渋くて食べられない」というイメージがあるよな。じつはどんぐりの仲間、椎の実にはアクがなく、そのまま食べられるんです。今回はそんな椎の実とどんぐりの違いを、見分け方や調理法も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「食べられるどんぐり」こと、椎の実の見分け方についてわかりやすく解説していく。

椎の実/どんぐりを大まかに比較

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まずは、椎の実とどんぐりの定義について触れていきます。どんぐりに似ている椎の実は、別名で「食べられるどんぐり」とも。そんな椎の実は、普通のどんぐりと何が違うのでしょうか?以下みていきましょう。

「どんぐり」はブナ科、とくにコナラ属の果実

広義の「どんぐり」とは、ブナ科の樹木に特徴的な果実の総称。硬い殻で覆われた果実、「堅果」の一種です。ひとくちに「どんぐり」といえど、その種類は多種多様。ブナ科の「どんぐりの木」は、国内に限っても20種以上に分けられるのです。その中には、食用でおなじみの栗の木も含まれています。

しかしみなさんが、真っ先に思い浮かべるどんぐりは、栗ではないはず。どんぐりといえば、「帽子をかぶった茶色の木の実」という印象が強いですよね?これはブナ科コナラ属に特有の堅果、狭義のどんぐりです。本記事では、このコナラの実を「どんぐり」として紹介していきます。

「椎の実」も広義のどんぐり

「椎の実」はブナ科シイ属、椎の木の堅果を指します。椎の実はブナ科なので、広義の「どんぐり」です。日本全国、どんぐりは数あれど、椎の実は一握り。国産のシイ属は「ツブラジイ」と「スダジイ」の2種類だけなのです。この2種の椎の実はなんと、生食できます。普通の「どんぐり」と「椎の実」は、何が違うのでしょうか?

椎の実にはアクがない

子供の頃、どんぐりを口に含んだ経験はありませんか?たいてい生のどんぐりを食べると、強い渋みを感じるはず。じつはコナラのどんぐりは、アクを含んでいるのです。どんぐりのアクは、柿の渋みと同じ「タンニン」からなります。このタンニンは、下痢止めに用いられる強烈な成分。そんなどんぐりは「アク抜き」をしないと、とても食べられないのです。

一方で椎の実には、アクがありません。よってアク抜きなど特別な処理が不要。採ってきた椎の実は、そのまま煎れば食用となるのです。この記事では、椎の実/どんぐりの見分け方について解説。さらに両者の下処理と食べ方を詳しく掘り下げていきます。

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