この記事では夕顔と冬瓜の違いについてみていきます。この2つはどちらも、ウリ科の実野菜です。「冬瓜は知っていても、夕顔は知らない」という人は、多いはず。一部地域でポピュラーな夕顔は、冬瓜に似た実をつけるぞ。ですが夕顔は、ある加工品のほうが有名なんです。今回はそんな似ている実野菜の違いを、見分け方を含め、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事ではウリ科の野菜、夕顔と冬瓜の違いについてわかりやすく解説していく。

夕顔と冬瓜を大まかに比較

image by iStockphoto

夕顔と冬瓜はどちらも、ウリ科の実野菜。植物本体の特徴は、キュウリやゴーヤなど、ほかのウリ科植物と共通しています。夕顔・冬瓜はともに「つる」を伸ばし、真夏に実を結ぶのです。そんな両者はウリ科のなかでも、とくに似ている組み合わせ。まずは、夕顔と冬瓜の大まかな特徴についてみていきましょう!

夕顔は「かんぴょう」用のひょうたん

じつは「夕顔」と「ひょうたん」は、同じ植物。どちらもウリ科ユウガオ属は「ユウガオ」の変種なのです。アフリカ原産のユウガオは、長い歴史をもつ農作物。早くから世界中へ広まり、改良を受けてきました。そんなユウガオがアジアにやってきたのは、なんと8000年前。本記事で紹介する、日本の「夕顔」はその子孫です。日本の夕顔は分類上、区別して「フクベ」と呼ばれます。

夕顔の名の由来は、朝顔/昼顔/夜顔と同じく、その開花の時間帯。夕顔の花は夕暮れとともにひらき、翌朝しぼみます。そんな夕顔は7月から9月にかけて、緑色の大きな実を結ぶ夏野菜。その実は乾燥させると、「かんぴょう」となるのです。

冬瓜は「冬まで腐らない」夏野菜

冬瓜は分類上も同じ名前で、ウリ科トウガン属の「トウガン」です。冬瓜は、常夏の熱帯アジア原産。「冬」とは無縁の冬瓜の名前は、「冬まで腐らない」ことに由来します。収穫後の冬瓜の実は、皮が硬くなるため、長期保存が可能。切らずに日陰で保管すると、半年もの間腐らずにもつのです。しかし一度カットした冬瓜は、すぐに腐ります。冷蔵庫保管を心がけ、5日以内に食べてしまいましょう。

そんな冬瓜は、先述の夕顔としばしば混同されます。冬瓜は6月から9月にかけて、緑色の大きな実をつける夏野菜。夕顔とは、見た目・旬が近いのです。この記事では、似ている夕顔・冬瓜の基礎知識から見分け方までを網羅。さらにその食べ方についても紹介していきます。

\次のページで「夕顔と冬瓜の品種や名産地」を解説!/

夕顔と冬瓜の品種や名産地

image by iStockphoto

夕顔と冬瓜にはそれぞれ、形が異なる品種が存在します。さらに両者はそのおもな産地も違うのです。ここでは夕顔・冬瓜の、おさえておきたい基礎知識を解説。以下を読めば、両者の違いをイメージできます!

夕顔・かんぴょうは栃木の名物

日本の夕顔は実の形で、球形の「丸夕顔」と細長い「長夕顔」の2品種に分けられます。そのうち丸夕顔は「かんぴょう」の原材料で、よりポピュラー。皮をむいた丸夕顔は、中央の種・ワタを残して、果肉だけがカンナで削り取られます。削り出された紐状の果肉は、乾燥させると、かんぴょうとなるのです。

そんな夕顔・かんぴょうの、おもな生産地は栃木県。なんと国産かんぴょうの9割以上が、栃木から出荷されているのです。ほかにも新潟県では、長夕顔が「ゆうごう」として愛されています。夕顔と鯨肉を入れた味噌汁、「くじら汁」は新潟の郷土料理です。

冬瓜は沖縄・愛知の2トップ

冬瓜の品種も、丸い実と長い実の2つに分かれます。こちらは球形の「丸冬瓜」と、たわら型の「長冬瓜」の2品種。そのうち「長冬瓜」の仲間で、沖縄出身の「沖縄冬瓜」が主流です。この沖縄冬瓜の実には、冬瓜特有の「白い粉」が付きません。そんな沖縄冬瓜は、沖縄語で「シブイ」とも。冬瓜・豚肉を味噌で煮込んだ「シブインブシー」は、伝統的な家庭料理として受け継がれています。

いまも沖縄は日本有数の、冬瓜の名産地です。さらに夏場には、愛知県からの冬瓜の出荷が増えます。愛知には沖縄冬瓜のほかに、「早生とうがん」という伝統ある品種が存在。こちらは実の表面に「白い粉」が付きます。

夕顔と冬瓜の具体的な違い

image by iStockphoto

夕顔と冬瓜は、実の見た目がよく似ています。ですが両者の実では、細部に違いがあるのです。さらに夕顔・冬瓜は、花の見た目も違います。以下スーパーや農場での、夕顔と冬瓜の見分け方についてみていきましょう!

違い1.実の外観

夕顔と冬瓜のもっともわかりやすい違いは、実の皮こと「果皮」の見た目。夕顔の果皮が明るい黄緑色であるのに対し、主流の琉球冬瓜では暗い深緑色なのです。また他の冬瓜では夕顔と違って、果皮の表面に白い粉が付いています。さらに夕顔・冬瓜の果皮は、その厚さにも違いが存在。「冬まで腐らない」冬瓜は、夕顔に比べて厚い皮をもっているのです。

ちなみに夕顔・冬瓜ともに実の形には、品種ごとのバリエーションがあります。夕顔と冬瓜を、形だけで見分けるのは至難の技。両者はどちらも、丸い実や細長い実、またはその中間、たわら型の実をつけるのです。

違い2.実の内側

カット済みの夕顔と冬瓜は、その断面が異なります。まず夕顔と冬瓜とでは、実(果肉)の詰まり方に違いが存在。夕顔の実では種のまわりまで、果肉とワタが詰まっています。ですが冬瓜では、種のまわりに空洞ができているのです。さらに果肉の色も違って、夕顔が純白なのに対して、冬瓜は薄く黄色がかっています。

\次のページで「違い3.花の色」を解説!/

違い3.花の色

夕顔と冬瓜はともにウリ科の植物なので、花の形は同じ。どちらの花も、5枚に分かれた花びらをもっています。両者の花の違いは、その色にあるのです。実の皮も中身も「色白」な夕顔は、その花の色も真っ白。対して冬瓜は黄色の花を咲かせます。

夕顔と冬瓜の食べ方

ここでは夕顔・冬瓜の味や栄養、料理法について掘り下げていきます。じつはこの両者は、味がほぼ一緒。ローカルな食材である夕顔には、スーパーによく並ぶ冬瓜と同じ調理法が通用するのです。加えて海外での食べ方についても紹介します。以下みていきましょう!

味と栄養は、どちらも同じ

夕顔・冬瓜の、味と栄養はほぼ同じ。どちらも典型的なウリで、実の成分の9割は水分が占めています。よって夕顔と冬瓜はともに、あっさりとした味をもち、どんな味付けにも馴染むのです。さらに夕顔・冬瓜は水分以外に、カリウムと食物繊維を豊富に含みます。両者の水分とカリウムには、なんと体温を下げる働きが。そんな夕顔と冬瓜は、体が熱を帯びる真夏日にうってつけの野菜ですね。

料理法も同じ

夕顔と冬瓜は調理の前の、下ごしらえが大事。実(果肉)を切り分けて、種・ワタ・皮を除きましょう。さらに切り分けた夕顔・冬瓜の実を、7分ほど熱湯で下茹でします。一度下茹ですることで味が染みやすくなり、ウリ特有の苦味が抜けるのです。下ごしらえが済んだ夕顔・冬瓜の実は、スープや煮込み料理に最適。味の染みが良いため、味噌汁や中華スープ、コンソメなどあらゆる汁物に合いますよ。

夕顔と冬瓜は実だけでなく、種・ワタ・皮も食べられます。実から除いた種とワタは、味噌汁に入れてしまいましょう。その皮も、きんぴらやナムルにすれば美味しくいただけます。夕顔・冬瓜は丸ごと料理に使える、エコな食材なのです。

夕顔料理は海外でも人気

日本の夕顔(フクベ)以外にも海外には、さまざまなユウガオの変種が存在します。その見た目は多種多様。たとえばイタリア・シチリア島では「ククッツァ・ロンガ」、英訳して「ロングズッキーニ」という名をもつ、ユウガオの変種が栽培されています。このユウガオの実の長さはなんと、1mを超えるのです。そんなユウガオは南イタリアのスープ料理、ミネストローネの具材に用いられます。

このようにユウガオは、海外でも人気の実野菜。ミネストローネ以外だと、韓国のナムルや、南インドのフィッシュカレーなどにもユウガオが用いられるのです。そんな海外のユウガオ料理は、日本の夕顔・冬瓜でも実践できます。ぜひ一度、お試しください。

別物なのに「ウリふたつ」

夕顔・冬瓜はどちらも、ウリの仲間で、よく似た実を結びます。しかし両者は、ルーツが異なる別物。日本の夕顔(フクベ)のルーツは、アフリカ産のユウガオです。長い歴史をもつユウガオは、「ひょうたん」や「ククッツァ・ロンガ」など、世界中に多様な変種が存在します。一方日本の冬瓜は、アジア生まれの沖縄育ちなのです。

" /> 簡単でわかりやすい!夕顔と冬瓜の違いとは?見分け方や栄養について農学専攻ライターが詳しく解説 – ページ 2 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!夕顔と冬瓜の違いとは?見分け方や栄養について農学専攻ライターが詳しく解説

夕顔と冬瓜の品種や名産地

image by iStockphoto

夕顔と冬瓜にはそれぞれ、形が異なる品種が存在します。さらに両者はそのおもな産地も違うのです。ここでは夕顔・冬瓜の、おさえておきたい基礎知識を解説。以下を読めば、両者の違いをイメージできます!

夕顔・かんぴょうは栃木の名物

日本の夕顔は実の形で、球形の「丸夕顔」と細長い「長夕顔」の2品種に分けられます。そのうち丸夕顔は「かんぴょう」の原材料で、よりポピュラー。皮をむいた丸夕顔は、中央の種・ワタを残して、果肉だけがカンナで削り取られます。削り出された紐状の果肉は、乾燥させると、かんぴょうとなるのです。

そんな夕顔・かんぴょうの、おもな生産地は栃木県。なんと国産かんぴょうの9割以上が、栃木から出荷されているのです。ほかにも新潟県では、長夕顔が「ゆうごう」として愛されています。夕顔と鯨肉を入れた味噌汁、「くじら汁」は新潟の郷土料理です。

冬瓜は沖縄・愛知の2トップ

冬瓜の品種も、丸い実と長い実の2つに分かれます。こちらは球形の「丸冬瓜」と、たわら型の「長冬瓜」の2品種。そのうち「長冬瓜」の仲間で、沖縄出身の「沖縄冬瓜」が主流です。この沖縄冬瓜の実には、冬瓜特有の「白い粉」が付きません。そんな沖縄冬瓜は、沖縄語で「シブイ」とも。冬瓜・豚肉を味噌で煮込んだ「シブインブシー」は、伝統的な家庭料理として受け継がれています。

いまも沖縄は日本有数の、冬瓜の名産地です。さらに夏場には、愛知県からの冬瓜の出荷が増えます。愛知には沖縄冬瓜のほかに、「早生とうがん」という伝統ある品種が存在。こちらは実の表面に「白い粉」が付きます。

夕顔と冬瓜の具体的な違い

image by iStockphoto

夕顔と冬瓜は、実の見た目がよく似ています。ですが両者の実では、細部に違いがあるのです。さらに夕顔・冬瓜は、花の見た目も違います。以下スーパーや農場での、夕顔と冬瓜の見分け方についてみていきましょう!

違い1.実の外観

夕顔と冬瓜のもっともわかりやすい違いは、実の皮こと「果皮」の見た目。夕顔の果皮が明るい黄緑色であるのに対し、主流の琉球冬瓜では暗い深緑色なのです。また他の冬瓜では夕顔と違って、果皮の表面に白い粉が付いています。さらに夕顔・冬瓜の果皮は、その厚さにも違いが存在。「冬まで腐らない」冬瓜は、夕顔に比べて厚い皮をもっているのです。

ちなみに夕顔・冬瓜ともに実の形には、品種ごとのバリエーションがあります。夕顔と冬瓜を、形だけで見分けるのは至難の技。両者はどちらも、丸い実や細長い実、またはその中間、たわら型の実をつけるのです。

違い2.実の内側

カット済みの夕顔と冬瓜は、その断面が異なります。まず夕顔と冬瓜とでは、実(果肉)の詰まり方に違いが存在。夕顔の実では種のまわりまで、果肉とワタが詰まっています。ですが冬瓜では、種のまわりに空洞ができているのです。さらに果肉の色も違って、夕顔が純白なのに対して、冬瓜は薄く黄色がかっています。

\次のページで「違い3.花の色」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: