この記事では「音読」と「朗読」の違いについてみていきます。それぞれの意味はなんとなく知っていても、いざその違いは何か聞かれると説明に困るこれらの言葉。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

音読と朗読のざっくりした違い

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まずは音読と朗読のおおまかな違いを説明しましょう。それは、「音読」単に文章を声に出して読むこと全般を意味するのに対し、「朗読」人に聞かせたり伝えたりするために文章を声に出して読むことを意味する点です。それでは、これからよりくわしい説明をしていきたいと思います。

文科省が定義する音読と朗読

まずは日本の教育や学術を管轄している文部科学省は「音読」「朗読」をどのように定義しているのでしょうか。まずはそれを説明しましょう。

文科省が定める音読

まず「音読」については

「音読」は、黙読の対語(たいご)だから、声に出して読むことは広く「音読」である。
「音読」は、正確・明晰・流暢(正しく・はっきり・すらすら)を目標とする。

(出典:文部科学省)

としています。つまり文科省の定義としても、単に文章を声に出して読むこと「音読」ということです。

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文科省が定める朗読

「朗読」については、「音読」の意味に加えて、文科省が掲げた「正確・明晰・流暢」という目標に

ア 作品の価値を音声で表現すること
イ 作品の特性を音声で表現すること
 (読者の受け止めた作者の意図・作品の意味・場面の雰囲気・登場人物の性格や心情を)

(出典:文部科学省)

を加えることだと定義しています。ですので、文部省が定義する「朗読」も、単に声に出して読むことだけを意味した「音読」に対し、そこに「作品の価値や特性を声で表現しようという意図」を加えたもの、つまり他人に伝えるために読むこと「朗読」だということです。

音読と朗読を漢字で説明

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ここからは音読朗読の違いについてより理解を深めるために、それぞれの漢字について着目していきたいと思います。

音に出して読むから「音読」!

「音読」については、読んで字のごとく「音に出して読む」ことを意味します。

ちなみに、「音」という漢字はもともと、「言」という漢字の原型となった字の「口」の部分に横棒を入れたもので、それがやがて変化して現在使われている「音」という字になりました。この「口」は漢字の口が意味する顔にある「くち」ではなく、「神様への誓いの文書を入れる器」をあらわし、そこに引いた横棒は「神様からの答え」を意味すると考えられています。

よく通るように読むのが「朗読」!

次に「朗読」について説明しましょう。「朗」の字の左側は漢字の「良」と同じ意味で、もともとは「穀物を量るための道具」を意味していたのが、そこから「良い穀物を選びとる」意味から、ものの良し悪しを表す意味の「良」になったと考えられています。右側の「月」は文字通り夜空に浮かぶ「月」のことです。

ですので「朗」という字は、もともと「曇りがなく澄んでいて明るい月」のことを意味していました。そこから、「曇りがなく澄んでいて明るい」「よく通る」といった意味をあらわす「ほがらか」という言葉の漢字として使われるようになったのでしょう。よって、自分だけでなく他人に対しても意味だけでなく作品の内容や性質まで「よく通る」ような音読のことを「朗読」と言うのです。

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音読の効果とは?

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声に出して読み、同時にその音を耳から聞くことになる「音読」は、非常に多くの感覚を同時に働かせるため、さまざまなメリットがあると考えられています。「朗読」も効果はあるのですが、この場合他人に伝えるというよりも、目で見た文章を声に出して読むこと自体が重要なため「音読」で十分です。それでは音読が持つメリットをご紹介しましょう。

1.読解力の向上

まず、目で字を追う黙読と違い、一字一字を読み上げなくてはならないので、自然と細かいところまでよく読む精読をすることになります。また、読みあげた声を自分の耳で聞くことにもなりますよね?よって、文章を理解したり、読解力を向上させるのに非常に効果的だと考えられているのです。

2.脳の活性化

音読をするときには脳の前頭前野を活発に使うと言われています。この前頭前野は、ものを考えたり、記憶したり、感情をコントロールしたりと、非常に多くの役割があるため、音読でこの前頭前野を刺激することでそういった記憶力・暗記力・感情を制御する力などさまざまな脳の機能を向上させることができると考えられているのです。

3.ストレス解消

音読が脳の前頭前野を刺激することは説明しましたが、脳を活性化するだけでなく、イライラをおさえ気分を落ち着かせるセロトニンという物質を分泌させます。

このセロトニンという物質は、深呼吸など腹式呼吸の際にも分泌されるのですが、長く声に出して文章を読むことは腹式呼吸に似た行動であるため、より分泌をうながすと考えられているのです。ですので、音読はストレス解消にも効果的だと言われています。

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他人に伝えるために読むのが朗読

「音読」単に文章を声に出して読むことを意味するのに対して「朗読」他人に伝えるために声に出して読む行為だということや、「音読」という声に出して文章を読む行為自体にさまざまなメリットがあることをご理解いただけたかと思います。一日数分からでも十分な効果はありますので、ご自身のために「音読」をする習慣をはじめてみてはいかがでしょうか?

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雑学

簡単でわかりやすい!音読と朗読の違いとは?漢字の意味からその効果まで現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「音読」と「朗読」の違いについてみていきます。それぞれの意味はなんとなく知っていても、いざその違いは何か聞かれると説明に困るこれらの言葉。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

音読と朗読のざっくりした違い

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まずは音読と朗読のおおまかな違いを説明しましょう。それは、「音読」単に文章を声に出して読むこと全般を意味するのに対し、「朗読」人に聞かせたり伝えたりするために文章を声に出して読むことを意味する点です。それでは、これからよりくわしい説明をしていきたいと思います。

文科省が定義する音読と朗読

まずは日本の教育や学術を管轄している文部科学省は「音読」「朗読」をどのように定義しているのでしょうか。まずはそれを説明しましょう。

文科省が定める音読

まず「音読」については

「音読」は、黙読の対語(たいご)だから、声に出して読むことは広く「音読」である。
「音読」は、正確・明晰・流暢(正しく・はっきり・すらすら)を目標とする。

(出典:文部科学省)

としています。つまり文科省の定義としても、単に文章を声に出して読むこと「音読」ということです。

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