今回のテーマはマグネシウムです。

マグネシウムMgは原子番号12の原子です。元素について学んでいる人なら名前くらいは知っているでしょう。マグネシウムは必須元素のひとつである。つまり生物に欠かせない元素という事です。また金属の中ではリチウム、ナトリウムに次ぐ比重の軽さで、ノートパソコンの本体などに使われている。その一方で、豆腐作りにも使われている。

今回はマグネシウムの性質について学ぶ。解説は、化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校、大学で化学漬けの日々を送っていリケジョ。職場大好き、実験大好き、研究大好きの化学系科学館職員。周期表が好きでインテリアに取り入れている。

周期表から見る”マグネシウム”

周期表から見る”マグネシウム”

image by Study-Z編集部

第2族に属するマグネシウム。まずはマグネシウムがどんな元素か、確認していきましょう。

元素記号:Mg
原子番号:12
原子量:24.30
密度:1.738g/cm3
融点:650℃
沸点:1091℃
比重:1.74
形状:銀白色の金属
語源:マグネシニア
   ギリシャの地名でマグネシウムの産地

マグネシウムの特徴のひとつはその軽さ。マグネシウムは軽金属に分類されています。リチウム、ナトリウムに次ぐ軽さで比重は1.74。実用的な金属の中で最も軽いのがこのマグネシウムなのです。持ち運びに便利なノート型パソコンに使われているのも納得ですね。

マグネシウムの性質

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マグネシウムは酸化しやすく、空気中で加熱すると強い光を発しながら燃焼します。マグネシウムはイオン化傾向は比較的大きい元素です。そのため、熱水や薄い酸と反応して水素を発生します。以下の化学式を確認しておきましょう。

2H2O + Mg → Mg(OH)2 + H2

水素はとても燃えやすく、少量でも燃えれば爆発が起こります。そのため、マグネシウム火災の消火に水は厳禁。消火には乾燥砂を使って窒息消火します。マグネシウムについてはこちらの記事もどうぞ。

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第2族のマグネシウム、アルカリ土類金属ではない?

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周期表で縦に並んだ、同族の元素は似たような性質をしています。第17族のハロゲンや第18族の希ガスですね。マグネシウムは第2族の元素です。

第2族といえばアルカリ土類金属と呼ばれています。しかし、第2族のうちベリリウムとマグネシウムはアルカリ土類金属に属していません。 アルカリ土類金属に属しているのはカルシウムCaストロンチウムSrバリウムBaラジウムRaの4つの元素です。

なぜベリリウムとマグネシウムはアルカリ土類金属ではないのか。これは金属元素でありながら共有結合しやすい炎色反応を示さない常温の水と反応しないなどとカルシウム以降の2族の元素とは異なった性質を持っているからです。ただし近年では第2族の元素全てをアルカリ土類金属とする動きがあるので、教科書や先生の話を確認してくださいね。

アルカリ土類金属、その由来は?

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ところで2族の元素をなぜ「アルカリ土類金属」というのでしょうか。アルカリ土類金属は熱に強く水に溶けづらいという性質がを持つ元素です。この酸化物は鉱物などの形で自然界に存在し、水に溶けてアルカリ性を示します。このことからアルカリ土類金属と呼ばれるようになったようです。

マグネシウムの歴史

マグネシウムは酸化しやすく、酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物として多く自然界に存在しています。そのため、アントワーヌ・ラボアジエは酸化マグネシウムが元素だと考えていました。それが1808年、ハンフリー・デービーが酸化マグネシウムの電気分解に成功し、マグネシウムが元素であると証明されたのです。

近代化学の父、アントワーヌ・ラボアジエ

David - Portrait of Monsieur Lavoisier (cropped).jpg
ジャック=ルイ・ダヴィッド - このファイルは次の画像から切り抜かれたものです, パブリック・ドメイン, リンクによる

ここで化学を語るうえで欠かせない、ラボアジエについてご紹介します。

\次のページで「ラボアジエって誰?」を解説!/

ラボアジエって誰?

アントワーヌ・ラボアジエ(1743-1794)は、質量保存の法則の発見や酸素の命名をしたことで知られるフランスの化学者です。質量保存の法則とは、化学反応の前後で物質の質量は変わらないという法則で、中学校の理科で習ったことを覚えている人もいるでしょう。

100年に1度の頭脳を持つ男、実は化学者ではない?

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Georg Heinrich Sieveking - http://www.uncp.edu/home/rwb/louis16_execution.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

近代科学の父と呼ばれるラボアジエ。しかしその職業は徴税請負人で、税婚を集める仕事をしていました。化学実験はあくまで趣味だったのです。大学も法学部の出身でした。ただ、そのころにはすでに自然科学に興味があり、化学の講座なども受講していたそうです。

そして徴税請負人となったラボアジエは市民から税金を取り立てながら、自分は高い給料をもらっていたとして、市民から恨みを買う事となりました。ただし、ラボアジエは徴税請負人としてはひどい徴税は行っていなかったと言われています。

そしてフランス革命後、市民から多額の税と手数料を集めたとしてラボアジエ達徴税請負人は逮捕されることとなりました。そしてラボアジエは死刑の判決が下されたのです。ラボアジエの死は「彼の頭を切り落とすのは一瞬だが、彼と同じ頭脳を持つものが現れるには100年かかるだろう」と惜しまれました。

金属素材としての活用

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マグネシウムを主成分とした合金をマグネシウム合金といます。マグネシウム合金のメリットは軽量であり、さらに天然資源が豊富でリサイクルしやすいということです。そのため、航空機自動車自転車ノートパソコンなどにも使われています。

マグネシウム合金のデメリット

とても魅力的な資源であるマグネシウムですが、もちろんデメリットもあります。マグネシウムのデメリットは水や酸と反応しやすく耐腐食性が低いこと。また加工の際に発生した粉塵が燃えやすいといった危険性があげられます。

植物とマグネシウム

Chlorophyll a.svg
David Richfield - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, リンクによる

植物は光合成によってデンプンを作ります。この光合成を行うのは、葉緑体です。この葉緑体の中にあるクロロフィル(葉緑素)という分子が、光エネルギーを吸収しています。このクロロフィルの中心に、マグネシウムがあるのです。葉緑体についてはこちらの記事でどうぞ。

\次のページで「豆腐作りにマグネシウム?」を解説!/

豆腐作りにマグネシウム?

image by PIXTA / 92551601

豆腐作りに使われる凝固剤が塩化マグネシウム(MgCl2、いわゆるにがりです。にがりは海水から塩化ナトリウム(NaCl)を除いて蒸発させて作ります。スーパーでも売っているので、見たことがある人もいるでしょう。

豆乳を温め、にがりを加えることで簡単に豆腐を作ることができます。なぜでしょうか。それは豆乳に含まれるグリニシンというタンパク質が水の中でマイナスの電荷に帯びているためです。このマイナスの電荷を、にがりの中に含まれたプラスに電荷したマグネシウムイオンが中和してくれます。そしてこのマグネシウムイオンを仲介にグリニシンが集まるため豆乳が固まって豆腐となるのです。

医薬品としての活用

image by PIXTA / 56679231

酸化マグネシウムは制酸薬(胃酸を中和する医薬品)として使われています。胃炎や胸やけを防ぐために有効ですが、以下の点に注意が必要です。

・牛乳やカルシウム製剤と一緒に飲まない(血液がアルカリ性に傾いてしまうから)
・細菌性食中毒のリスクが上がる(胃酸による殺菌効果がなくなるから)

ノートパソコンから豆腐まで、マグネシウムは大活躍

軽金属の中でも特に軽いマグネシウム。航空機にまで使われているマグネシウムが胃腸薬や豆腐になると思うと面白いですね。また、光合成にも欠かせません。周期表をみると第2族に属するマグネシウムですが、その挙動はカルシウム以降の元素と比べると異なることも多く、アルカリ土類金属とするかはまだ議論の余地があるようです。

" /> 簡単でわかりやすい!マグネシウムとはどんな元素?性質や歴史・活用例も化学系科学館職員が詳しく解説 – Study-Z
化学理科

簡単でわかりやすい!マグネシウムとはどんな元素?性質や歴史・活用例も化学系科学館職員が詳しく解説

今回のテーマはマグネシウムです。

マグネシウムMgは原子番号12の原子です。元素について学んでいる人なら名前くらいは知っているでしょう。マグネシウムは必須元素のひとつである。つまり生物に欠かせない元素という事です。また金属の中ではリチウム、ナトリウムに次ぐ比重の軽さで、ノートパソコンの本体などに使われている。その一方で、豆腐作りにも使われている。

今回はマグネシウムの性質について学ぶ。解説は、化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校、大学で化学漬けの日々を送っていリケジョ。職場大好き、実験大好き、研究大好きの化学系科学館職員。周期表が好きでインテリアに取り入れている。

周期表から見る”マグネシウム”

周期表から見る”マグネシウム”

image by Study-Z編集部

第2族に属するマグネシウム。まずはマグネシウムがどんな元素か、確認していきましょう。

元素記号:Mg
原子番号:12
原子量:24.30
密度:1.738g/cm3
融点:650℃
沸点:1091℃
比重:1.74
形状:銀白色の金属
語源:マグネシニア
   ギリシャの地名でマグネシウムの産地

マグネシウムの特徴のひとつはその軽さ。マグネシウムは軽金属に分類されています。リチウム、ナトリウムに次ぐ軽さで比重は1.74。実用的な金属の中で最も軽いのがこのマグネシウムなのです。持ち運びに便利なノート型パソコンに使われているのも納得ですね。

マグネシウムの性質

image by PIXTA / 70230086

マグネシウムは酸化しやすく、空気中で加熱すると強い光を発しながら燃焼します。マグネシウムはイオン化傾向は比較的大きい元素です。そのため、熱水や薄い酸と反応して水素を発生します。以下の化学式を確認しておきましょう。

2H2O + Mg → Mg(OH)2 + H2

水素はとても燃えやすく、少量でも燃えれば爆発が起こります。そのため、マグネシウム火災の消火に水は厳禁。消火には乾燥砂を使って窒息消火します。マグネシウムについてはこちらの記事もどうぞ。

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