この記事では十二神将と干支の違いについてみていきます。この二つに共通しているのはどちらも十二という数字が関係しているということです。両者の違いを理解するには宗教や哲学が鍵となるようです。特に干支は我々にもなじみ深いが、調べてみると新しい発見がたくさんあったぞ。今日はそんな十二という数字にまつわる両者の違いを、歴史や文化に関する雑学にくわしいWEBライターのザツガクマナブと一緒に解説していきます。

ライター/ザツガクマナブ

干支や風水などの文化に関する雑学にくわしい元塾講師WEBライター。趣味は城めぐり。得意ジャンルは日本史・世界史・地理・英語。

十二神将と干支の簡単な違い

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まずは十二神将と干支の簡単な違いについてみていきましょう。大きな違いとしては二つの点が挙げられます。まずは十二神将とは十二体の戦士で人の形をしているのに対し、干支とは時間を区切ったもののとらえ方であるということがひとつ。もうひとつの違いは十二神将は仏教に関するものであり、干支は古代中国の思想がもとになっているということです。

十二神将は戦士、干支は時間のとらえ方

十二神将とは仏教の世界で薬師如来というお釈迦様を守る十二体の戦士のことです。十二体がそれぞれの方角を守っていて、人間の形をしています。

それに対して干支とは暦や時間を表すためのもので、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)を合わせたもののことです。十干とは10日間を一区切りにしたもので、十二支とは12年を周期として一年ごとに区切ったもので、そこに後に動物を当てはめるようになりました。

十二神将は仏教、干支は中国思想

十二神将は薬師如来というお釈迦様を護る12体の守護神のことであり、仏教に関するものです。十二神将は木の像として日本の様々なお寺で見ることができます。最も有名なのが奈良県奈良市にある新薬師寺の十二神将像で、日本最古で最大、国宝に指定されている見事な木像です。

それに対し干支は時間のとらえ方であり、古代中国で生まれ日本へと伝えられました。この考え方は中国の陰陽五行説がもとになっています。十二支の概念は中国から世界中に広がりました。そして十二支に対応する動物は国によって微妙な違いが見られます。

十二神将についてくわしく解説

The Twelve Divine Generals.jpg
不明 - Tokyo National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる

ここでは十二神将についてくわしく掘り下げて解説していきます。十二神将とは仏教において薬師如来を守護する12体の守護神です。薬師如来の十二の大願に応じてそれぞれが昼夜の十二の時、十二の日、または十二の方角を守ります。

薬師如来とは12の大願(偉大な願い)を立てて、人々を救い悟りに導くことを誓った仏のことで、12の大願を守るのが十二神将です。そして十二神将はそれぞれ七千の眷属夜叉という部下を従えています。次の章で十二神将の構成と名前について見ていきましょう。

\次のページで「十二神将の構成」を解説!/

十二神将の構成

十二神将の構成について見ていきましょう。十二神将のそれぞれの名前は以下の通りです。

1.宮毘羅(くびら)
2.伐折羅(ばさら)
3.迷企羅(めきら)
4.安底羅(あんちら)
5.あにら
6.珊底羅(さんちら)
7.因達羅(いんだら)
8.波夷羅(はいら)
9.摩虎羅(まこら)
10.真達羅(しんだら)
11.しょうとら
12.びから

十二神将と干支は対応している

十二神将はそれぞれが昼夜十二時・四季十二月・十二の方角を守っています。十二という数字から干支の十二支が対応させられるようになりました。十二神将に対応する方角や十二支は寺院によって違いがありますが、最も一般的なものでは以下のように対応しています。

1.宮毘羅(くびら)→亥
2.伐折羅(ばさら)→戌
3.迷企羅(めきら)→酉
4.安底羅(あんちら)→申
5.あにら→羊
6.珊底羅(さんちら)→午
7.因達羅(いんだら)→巳
8.波夷羅(はいら)→辰
9.摩虎羅(まこら)→卯
10.真達羅(しんだら)→寅
11.しょうとら→丑
12.びから→子

干支についてくわしく解説

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ベトナム語版ウィキペディアTrinhhoaさん - vi.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

今度は干支についてくわしく見ていきましょう。干支というと辰年や寅年などを思い浮かべる方が多いと思いますが、これは干支の中の十二支です。干支とは正しくは十干と十二支の組み合わせのことを言います

干支とは時間の性質のとらえ方で、古代中国で時間を区切って区別するために十干と十二支が用いられました。この考えは陰陽五行説という考えがもとになっており、春秋戦国時代にできた陰陽思想と五行思想が合わさってできたものです。

\次のページで「十干と十二支」を解説!/

十干と十二支

干支は十干と十二支の組み合わせです。十干は十年周期で区切ったもので、十二支は十二年周期で区切ったもので、十二支には後に動物が振り当てられるようになりました。

十干は甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)の10個です。

十二支は子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・羊(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)の12に分けられています。

干支とは10年周期の十干と12年周期の十二支の組み合わせです。その組み合わせは全部で60通りあります。つまり干支は60年周期で回っており、この60年の組み合わせが一周することが還暦です

十二支は時刻と方角を表す

十干と十二支の組み合わせが干支ですが、十二支は12年の年だけでなく時刻と方角も表すことができます。十二支に対応している方角と時刻は以下の通りです。

子→北→0時
丑→北北東→2時
寅→東北東→4時
卯→東→6時
辰→東南東→8時
巳→南南東→10時
午→南→12時
羊→南南西→14時
申→西南西→16時
酉→西→18時
戌→西北西→20時
亥→北北西→22時

風水との関係

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風水とは都市や住居を決めるときに、気の流れを物の位置や方角によってコントロールすることです。正しい気の流れをつくることにより繁栄をもたらすと古代中国で考えられ、今日まで受け継がれてきました。この風水の考えには干支の要素が大きく関係しています

風水において北東は鬼門と呼ばれ不吉なことがやってくる方角とされており、日本でも鬼の出入りする方角とされ忌み嫌われています。この鬼門は十二支に当てはめると丑と寅の間の艮(うしとら)と呼ばれる方角です。艮は十二か月では十二月と一月の変わり目ごろを指しています。この時期は不吉なことが起こりやすく注意が必要と考えられてきました。

恵方と陰陽道

恵方巻きでお馴染みの恵方ですが、恵方とは歳徳神という神様のいる場所のことです。歳徳神とはその年の福徳を司る神様のことで、古来より恵方に向かって様々なことをすると幸福が訪れるとされてきました。恵方の方角はその年によって変わり、日本の陰陽道という考えにもとづいて決定されます。

恵方の方角は四方位と決まっており、その年の十干との組み合わせによって決定されます2023年の恵方は丙で南南東です。

\次のページで「安倍晴明と十二天将」を解説!/

安倍晴明と十二天将

干支のもとになる中国の陰陽五行思想は日本に伝わり陰陽道として独自の発展を遂げました。古来日本では陰陽道によって祈祷・占術・厄払いなどを行う役職がありました。この役職を陰陽師(おんみょうじ)と言います。平安時代に陰陽師の中で圧倒的な天才として活躍した安倍晴明という人物がいました

安倍晴明は式神という十二体の神の化身を使役していました。この十二体の式神のことを十二天将と言いますが、仏教の十二神将とは全くの別物です。

様々な要素が関係している

十二神将と干支の違いについて学んできましたが、これらの二つのキーワードには宗教・哲学・暦・方角・など様々な要素が複雑に絡み合い、お互いに影響を及ぼし合っています。それだけたくさんの要素があるということは、非常に奥が深く学べば学ぶほど新しい発見があるということです。

一見難しそうに見えるテーマではありますが、日常生活で目にするものの中にも実は関係しているものもたくさんあります。そういったものを見つけたときの驚きも学問を学ぶ楽しさのひとつでもあるといえるでしょう。

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3分で簡単にわかる十二神将と干支の違い!もとになる思想の違いや風水との関係も雑学好きライターがくわしく解説

この記事では十二神将と干支の違いについてみていきます。この二つに共通しているのはどちらも十二という数字が関係しているということです。両者の違いを理解するには宗教や哲学が鍵となるようです。特に干支は我々にもなじみ深いが、調べてみると新しい発見がたくさんあったぞ。今日はそんな十二という数字にまつわる両者の違いを、歴史や文化に関する雑学にくわしいWEBライターのザツガクマナブと一緒に解説していきます。

ライター/ザツガクマナブ

干支や風水などの文化に関する雑学にくわしい元塾講師WEBライター。趣味は城めぐり。得意ジャンルは日本史・世界史・地理・英語。

十二神将と干支の簡単な違い

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まずは十二神将と干支の簡単な違いについてみていきましょう。大きな違いとしては二つの点が挙げられます。まずは十二神将とは十二体の戦士で人の形をしているのに対し、干支とは時間を区切ったもののとらえ方であるということがひとつ。もうひとつの違いは十二神将は仏教に関するものであり、干支は古代中国の思想がもとになっているということです。

十二神将は戦士、干支は時間のとらえ方

十二神将とは仏教の世界で薬師如来というお釈迦様を守る十二体の戦士のことです。十二体がそれぞれの方角を守っていて、人間の形をしています。

それに対して干支とは暦や時間を表すためのもので、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)を合わせたもののことです。十干とは10日間を一区切りにしたもので、十二支とは12年を周期として一年ごとに区切ったもので、そこに後に動物を当てはめるようになりました。

十二神将は仏教、干支は中国思想

十二神将は薬師如来というお釈迦様を護る12体の守護神のことであり、仏教に関するものです。十二神将は木の像として日本の様々なお寺で見ることができます。最も有名なのが奈良県奈良市にある新薬師寺の十二神将像で、日本最古で最大、国宝に指定されている見事な木像です。

それに対し干支は時間のとらえ方であり、古代中国で生まれ日本へと伝えられました。この考え方は中国の陰陽五行説がもとになっています。十二支の概念は中国から世界中に広がりました。そして十二支に対応する動物は国によって微妙な違いが見られます。

十二神将についてくわしく解説

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ここでは十二神将についてくわしく掘り下げて解説していきます。十二神将とは仏教において薬師如来を守護する12体の守護神です。薬師如来の十二の大願に応じてそれぞれが昼夜の十二の時、十二の日、または十二の方角を守ります。

薬師如来とは12の大願(偉大な願い)を立てて、人々を救い悟りに導くことを誓った仏のことで、12の大願を守るのが十二神将です。そして十二神将はそれぞれ七千の眷属夜叉という部下を従えています。次の章で十二神将の構成と名前について見ていきましょう。

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