法律関係の用語の中でも特に裁判に関するものはよく聞くよな。
その中でも「判例」と「裁判例」という言葉の違いを説明できる人は少ないでしょう。
今回は「判例」と「裁判例」の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

判例と裁判例の違い

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「判例」と「裁判例」の漢字を見比べたとき、どちらも「判断の例」という意味を持っているように見えますよね。いったい何が違うのかわからない人がほとんどでしょう。ここではまず「判例」と「裁判例」の違いについて解説していきます。

判例:最高裁判所の過去の判決

「判例」とは過去に最高裁判所が下した「判決」をまとめたものです。「判決」とは個別の事件に対して裁判所が下した判断のこと。「判例」はそれらを統合することで、より強い根拠として使用することのできる事例なのです。

裁判で「過去に最高裁判所が下した判決に、類似の例がいくつもある」と主張されれば、非常に強い根拠として認められるのも納得ですね。

裁判例:裁判所の過去の判決

「裁判例」は過去に裁判所が下した「判決」をまとめたものです。この裁判所というものは、最高裁判所から高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所までを含んでいます。しかし法律関係の実務上は、下級審(最高裁判所以外の裁判所)の「判決」をまとめたもののみを指すことが多いです。

判例と裁判例に類似する言葉

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「判例」と「裁判例」に見た目が似ている言葉、「判決」と「裁決」。「判決」については先ほど少しだけ触れましたが、この節で詳細に解説していきます。またニュースなどで見かける「裁決」という言葉についても見ていきましょう。

\次のページで「判決:裁判所が下した個別の判断」を解説!/

判決:裁判所が下した個別の判断

先述の通り、「判決」とは裁判所が下した個別の事件に対する判断のこと。裁判は最終的な「判決」を目指して行われるのです。「判決」に不服がある場合、原告は控訴や上告をすることができますがすべて認容されることはなく、正当な理由がない場合は棄却されます。

控訴とはより上級の裁判所での第二審を申し立てること、上告とは第二審の「判決」に不服がある場合に、さらに上級の裁判所での裁判を申し立てることです。

裁決:審判所が下した判断

「裁決」とは審判所という機関が行う判断です。こちらは裁判所ではなく、審判所という行政法関係の訴訟を行う機関が行います。例えば税務署が行った更生や決定などの課税処分などに不服がある納税者が、当該処分の変更を求めて不服申し立てを行うことができる機関です。

審判所にて調査および審理を行った上での判断が「裁決」。なお国税に関する「裁決」については国税不服審判所という機関が行います。

判例集(裁判例集)の事例

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「判例」または「裁判例」をまとめた資料に「判例集(裁判例集)」があります。具体的には「最高裁判所判例集」、「高等裁判所判例集」、「下級裁判所判例集」、「行政事件裁判例集」、「労働事件裁判例集」、「知的財産裁判例集」の6種類です。

これらに記載されている「判例(裁判例)」は、裁判での用いられ方によってさらに2分化されます。ここでは「判例(裁判例)」に記載される事例について見ていきましょう。

典型事例:法律の条文がそのまま適用される事例

「典型事例」とは法律解釈があまり問題にならず、法律の条文がそのまま適用されるような事例です。ほとんどの裁判官で法律解釈がほぼ一致する事例なので、「判例集(裁判例集)」にそこまで多くの記載があるわけではありません。司法試験の試験問題の中でも、定番の問題として触れられます。

限界事例:裁判官によって判断が分かれかねない事例

「限界事例」とは裁判官によって判断が分かれかねない事例のことです。あえてくだけた表現をすると「非常に微妙な事例」のこと。イレギュラーな事件があった場合、法律解釈の違いによっては「判決」が変動します。このような状況では裁判官の価値観や考え方に左右されかねません。そうならないためにも、イレギュラーな事件とその「判例(裁判例)」は積極的に「判例集(裁判例集)」に掲載されています。

「判例集(裁判例集)」は主にこの「限界事例」への対策としてまとめられていると言ってもよいでしょう。

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判例は最高裁判所の判決を、裁判例は下級審の判決をまとめたもの

ここまで「判例」と「裁判例」の違い、「判例」と「裁判例」に類似する言葉、そして「判例集(裁判例集)」で取り上げられる事例について解説してきました。それぞれ非常に深い意味を持っていることがおわかりたいただけたと思います。

人間は完璧な生き物ではありません。個々人が自分の考え方や価値観に従えば、誤った判断を行う可能性も十二分にあります。その誤りを防ぐために、過去のパターンから導き出した線引きを設ける必要があるのです。

善悪に絶対的な規準がないように、法律にも絶対的な規準はありません。「判例」や「裁判例」は、そのような法律の世界で人間なりに作り上げた基準と言えるでしょう。

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3分で簡単にわかる判例と裁判例の違い!判決との違いや判例集の事例も雑学好きライターがわかりやすく解説

法律関係の用語の中でも特に裁判に関するものはよく聞くよな。
その中でも「判例」と「裁判例」という言葉の違いを説明できる人は少ないでしょう。
今回は「判例」と「裁判例」の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

判例と裁判例の違い

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「判例」と「裁判例」の漢字を見比べたとき、どちらも「判断の例」という意味を持っているように見えますよね。いったい何が違うのかわからない人がほとんどでしょう。ここではまず「判例」と「裁判例」の違いについて解説していきます。

判例:最高裁判所の過去の判決

「判例」とは過去に最高裁判所が下した「判決」をまとめたものです。「判決」とは個別の事件に対して裁判所が下した判断のこと。「判例」はそれらを統合することで、より強い根拠として使用することのできる事例なのです。

裁判で「過去に最高裁判所が下した判決に、類似の例がいくつもある」と主張されれば、非常に強い根拠として認められるのも納得ですね。

裁判例:裁判所の過去の判決

「裁判例」は過去に裁判所が下した「判決」をまとめたものです。この裁判所というものは、最高裁判所から高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所までを含んでいます。しかし法律関係の実務上は、下級審(最高裁判所以外の裁判所)の「判決」をまとめたもののみを指すことが多いです。

判例と裁判例に類似する言葉

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「判例」と「裁判例」に見た目が似ている言葉、「判決」と「裁決」。「判決」については先ほど少しだけ触れましたが、この節で詳細に解説していきます。またニュースなどで見かける「裁決」という言葉についても見ていきましょう。

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