この記事ではBSとCSの違いについて掘り下げていきます。どちらも衛星放送とよばれるものですが、利用している人工衛星が違うようです。今回は2つの衛星放送の違いのほか、地上波放送との違いや、それぞれの視聴方法についても、雑学好きのライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。20年以上CS放送を視聴している経験を活かし、BSとCSの違いについて解説していく。

地上波放送と衛星放送の違い

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映画やアニメ、スポーツ、音楽など、さまざまな分野のテレビ番組を楽しめる衛星放送日本の衛星放送にはBS放送とCS放送の2種類があります。その違いを掘り下げる前に、まずは地上波放送と衛星放送について解説しましょう。

地上波放送とは

地上波放送(または地上放送)は、地上にある放送局から送られた電波を、同じく地上にある送信所を介して各家庭のアンテナで受信するものです。送信所から離れると電波が弱くなるため、受信可能な地域は送信所近隣に限られます。

デジタル移行前のアナログ放送では、受信障害が大きな問題になっていました。直接届く電波のほかに、山や建物などの障害物で跳ね返った電波も受信して画面が二重になる反射障害や、やはり障害物により電波が弱められ画面映りが悪くなったり受信できなくなったりする遮蔽障害が主な受信障害です。

2011年7月24日(東日本大震災で被害が甚大だった宮城・福島・岩手3県は2012年3月31日)に完全移行した地上波デジタル放送地デジ)においては、特性上反射障害はほとんど起きませんが、遮蔽障害は発生することがあります。

筆者の家の近くには小高い山があるため、地デジ移行後も遮蔽障害によるブロックノイズやフリーズにしばしば悩まされました。アンテナ位置を高くする工事により受信障害は解消しましたが、このように地上波は周囲の地形や建物などに大きく影響されるのです。

衛星放送とは

衛星放送は、赤道上空約36,000kmにある静止衛星を介して、家庭に電波を送るものです。まず地上から静止衛星に電波を送信アップリンク)し、衛星で異なる周波数に変換した後、地上に向けて再送信ダウンリンク)して、各家庭のパラボラアンテナに届けます。

静止衛星は地球の約1/3の範囲をカバーできるため、地上波よりずっと広い範囲での受信が可能です。地形や建物の影響も少ないとされていますが、地デジのアンテナと比べパラボラアンテナは角度調節が非常にシビアなため、場合によっては受信できないことも。また、大雨や雷、大雪などの荒天時にも受信障害が起きやすい傾向にあります。

もともと衛星放送は、離島や山間部といった難視聴地域の解消を目的としていました。現在は、各分野に特化した専門性の高い番組を多数提供するものとなっています。 

BS放送とCS放送の違い

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BS放送とCS放送はそれぞれ使用している人工衛星が違いますBS放送は放送衛星(Broadcasting Satellite)、CS放送は通信衛星(Communications Satellite)を使っているのです

かつて日本では、不特定多数に向けた発信を「放送」、企業や事業者など特定の受信者を対象とした発信を「通信」とし、厳格に区別していました。そのため用いる人工衛星もそれぞれ専用のものを使用していましたが、1989年に放送法が改正されたことで、通信衛星を用いた一般視聴者向けの放送ができるようになったのです。

それぞれどのような特徴があるのか、解説しましょう。

BS放送:放送衛星

BS放送が利用する放送衛星は、通信衛星の1つで、衛星放送専用に設計・製作されたものです。電波の出力が大きいことから、小型アンテナで受信することができ、直接放送衛星Direct Broadcast Satellite)とも呼ばれます。現在は東経110°にある衛星が運用されており、110°CSデジタル放送「スカパー」の衛星も同じ方角にあることから、BSとCS110°両方に対応したアンテナがあればどちらも受信可能です。

BS放送には無料チャンネルと有料チャンネルがあります。NHK-BSは衛星契約がなくとも一応視聴は可能ですが、契約を勧めるメッセージが常時表示され、契約するまで消えません。

地上波同様、2011年7月24日にデジタルに完全移行しています。

2011年に打ち上げられた人工衛星BSAT-3c/JCSAT-110Rは、BSとCS両方の機能を持っています。

CS放送:通信衛星

CS放送が利用する通信衛星は、無線通信を目的としたものです。1989年の放送法改正により通信衛星を使った放送が一般家庭でも視聴可能になりましたが、通信衛星は放送衛星に比べて電波の出力が小さく、BS放送よりも大きなアンテナが必要でした。ただし現在では小型のアンテナも登場しています。

日本で運営されているCS放送は、どちらもスカパーJSAT株式会社が提供する110°CSデジタル放送「スカパー124/128°CSデジタル放送「スカパー!プレミアムサービス」です。

CS放送の魅力は豊富なチャンネル数で、チャンネルごとに契約するほかにも、さまざまなセットやプランを選べます。通販チャンネルを除きほとんどが有料ですが、「スカパー!無料の日」と銘打たれた毎月第1日曜日は、多数のチャンネルが無料で視聴可能です。

\次のページで「衛星放送を視聴するには」を解説!/

衛星放送を視聴するには

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衛星放送を視聴するには、それぞれの放送に対応したパラボラアンテナを、晴れた日の午後2時から3時の間、太陽が見通せる場所に設置します。アンテナを向ける南南西の方角に障害物がある場合は別途工事が必要です。そのほか、BS・CSそれぞれの視聴方法について説明します。

BS/110°CSの視聴方法

BS放送と110°CS放送「スカパー!」は衛星が同じ東経110°にあるためBS/110°CSアンテナ1つでどちらの電波も受信できます。最近のテレビやレコーダーにはBS/110°CSチューナーが内蔵されているものも多く、この場合はアンテナを設置するだけで視聴が可能ですが、契約はBS・CSそれぞれに行わなくてはなりません。

また、B-CASカードはBS・CS・地上共用の赤色のものが必要です。4K8K対応のテレビやレコーダーにはB-CASカードがなく、代わりにACASチップが内蔵されています。

124/128°CS放送の視聴方法

124/128°CS放送「スカパープレミアムサービス」は専用アンテナと専用チューナーが必要です。現在は124/128°CSのみならずBS/110°CS、4K8K衛星放送にも対応しているマルチアンテナもあり、すべての衛星放送を1つのアンテナで受信することができます。

BSは放送衛星、CSは通信衛星

CSは通信衛星、BSは放送衛星を使った放送であることを説明しました。

配信が主流になった現在でも、さまざまな年齢層や趣味嗜好に合ったチャンネルや、地上波ではまず見ないような専門的なチャンネルを多く提供してくれる衛星放送は、変わらず私たちを楽しませてくれます。興味のある人は、それぞれどのようなチャンネルがあるか一度確認してみると、思わぬ出会いがあるかもしれませんね。

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簡単にわかるBSとCSの違い!見るにはどうしたらいい?地上波との違いについても工学院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事ではBSとCSの違いについて掘り下げていきます。どちらも衛星放送とよばれるものですが、利用している人工衛星が違うようです。今回は2つの衛星放送の違いのほか、地上波放送との違いや、それぞれの視聴方法についても、雑学好きのライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。20年以上CS放送を視聴している経験を活かし、BSとCSの違いについて解説していく。

地上波放送と衛星放送の違い

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映画やアニメ、スポーツ、音楽など、さまざまな分野のテレビ番組を楽しめる衛星放送日本の衛星放送にはBS放送とCS放送の2種類があります。その違いを掘り下げる前に、まずは地上波放送と衛星放送について解説しましょう。

地上波放送とは

地上波放送(または地上放送)は、地上にある放送局から送られた電波を、同じく地上にある送信所を介して各家庭のアンテナで受信するものです。送信所から離れると電波が弱くなるため、受信可能な地域は送信所近隣に限られます。

デジタル移行前のアナログ放送では、受信障害が大きな問題になっていました。直接届く電波のほかに、山や建物などの障害物で跳ね返った電波も受信して画面が二重になる反射障害や、やはり障害物により電波が弱められ画面映りが悪くなったり受信できなくなったりする遮蔽障害が主な受信障害です。

2011年7月24日(東日本大震災で被害が甚大だった宮城・福島・岩手3県は2012年3月31日)に完全移行した地上波デジタル放送地デジ)においては、特性上反射障害はほとんど起きませんが、遮蔽障害は発生することがあります。

筆者の家の近くには小高い山があるため、地デジ移行後も遮蔽障害によるブロックノイズやフリーズにしばしば悩まされました。アンテナ位置を高くする工事により受信障害は解消しましたが、このように地上波は周囲の地形や建物などに大きく影響されるのです。

衛星放送とは

衛星放送は、赤道上空約36,000kmにある静止衛星を介して、家庭に電波を送るものです。まず地上から静止衛星に電波を送信アップリンク)し、衛星で異なる周波数に変換した後、地上に向けて再送信ダウンリンク)して、各家庭のパラボラアンテナに届けます。

静止衛星は地球の約1/3の範囲をカバーできるため、地上波よりずっと広い範囲での受信が可能です。地形や建物の影響も少ないとされていますが、地デジのアンテナと比べパラボラアンテナは角度調節が非常にシビアなため、場合によっては受信できないことも。また、大雨や雷、大雪などの荒天時にも受信障害が起きやすい傾向にあります。

もともと衛星放送は、離島や山間部といった難視聴地域の解消を目的としていました。現在は、各分野に特化した専門性の高い番組を多数提供するものとなっています。 

BS放送とCS放送の違い

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BS放送とCS放送はそれぞれ使用している人工衛星が違いますBS放送は放送衛星(Broadcasting Satellite)、CS放送は通信衛星(Communications Satellite)を使っているのです

かつて日本では、不特定多数に向けた発信を「放送」、企業や事業者など特定の受信者を対象とした発信を「通信」とし、厳格に区別していました。そのため用いる人工衛星もそれぞれ専用のものを使用していましたが、1989年に放送法が改正されたことで、通信衛星を用いた一般視聴者向けの放送ができるようになったのです。

それぞれどのような特徴があるのか、解説しましょう。

BS放送:放送衛星

BS放送が利用する放送衛星は、通信衛星の1つで、衛星放送専用に設計・製作されたものです。電波の出力が大きいことから、小型アンテナで受信することができ、直接放送衛星Direct Broadcast Satellite)とも呼ばれます。現在は東経110°にある衛星が運用されており、110°CSデジタル放送「スカパー」の衛星も同じ方角にあることから、BSとCS110°両方に対応したアンテナがあればどちらも受信可能です。

BS放送には無料チャンネルと有料チャンネルがあります。NHK-BSは衛星契約がなくとも一応視聴は可能ですが、契約を勧めるメッセージが常時表示され、契約するまで消えません。

地上波同様、2011年7月24日にデジタルに完全移行しています。

2011年に打ち上げられた人工衛星BSAT-3c/JCSAT-110Rは、BSとCS両方の機能を持っています。

CS放送:通信衛星

CS放送が利用する通信衛星は、無線通信を目的としたものです。1989年の放送法改正により通信衛星を使った放送が一般家庭でも視聴可能になりましたが、通信衛星は放送衛星に比べて電波の出力が小さく、BS放送よりも大きなアンテナが必要でした。ただし現在では小型のアンテナも登場しています。

日本で運営されているCS放送は、どちらもスカパーJSAT株式会社が提供する110°CSデジタル放送「スカパー124/128°CSデジタル放送「スカパー!プレミアムサービス」です。

CS放送の魅力は豊富なチャンネル数で、チャンネルごとに契約するほかにも、さまざまなセットやプランを選べます。通販チャンネルを除きほとんどが有料ですが、「スカパー!無料の日」と銘打たれた毎月第1日曜日は、多数のチャンネルが無料で視聴可能です。

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