この記事では陶器・磁器・セラミックの違いについてみていきます。「焼き物」として混同される陶器と磁器は、どちらもセラミックの一種。じつはこの2つのセラミックの原材料はほぼ同じなんです。ですが磁器は、よりガラスに近い性質をもっているぞ。その証拠に磁器は、わずかに光を通す。今回はそんな焼き物の違いを、高校大学と理系一筋のライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事ではセラミックの仲間である、陶器と磁器の違いについてわかりやすく解説していく。

陶器・磁器・セラミックの簡単な定義と違い

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まずは陶器・磁器・セラミックを大まかに比較します。わかりにくいセラミックの定義に触れたあと、陶器・磁器の見分け方についてもみていきましょう!

陶器と磁器はセラミックの一種

セラミック(複数形でセラミックス)とは、窯の中で無機物を焼き固めた製品、つまり窯業製品を指す総称です。ひとくちに「セラミック」と言っても、その種類は多種多様。焼き物やガラス、セメント、ファインセラミックスなど様々な用途を持ったセラミックが存在します。

そしてこの記事で紹介する陶器・磁器は、どちらもセラミックで、焼き物の一種。そんな両者は質感が大きく異なります。

陶器はざらざら

陶器は厚みのある焼き物。その素地はきめが荒く、ざらざらとした触り心地をもちます。ですが陶器の表面はたいてい、色のついた釉薬で塗りつぶされており、素地の質感がみられません。器の足回り(高台)にのみ、その素地が現れるのです。陶器の見分け方は、まとめると以下の通りになります。

陶器の見分け方
・素地が土壁のようにざらついている
・光を全く通さない
・叩くと鈍い音をだす

磁器はなめらか

一方磁器は薄く硬い焼き物です。その白くなめらかな素地は、ガラス成分を多く含むため、光をわずかに通します。さらに透明な釉薬が塗られる磁器では、素地の質感が器全体に現れるのが特徴的。その素地の白さを活かして、複雑な模様が描かれることもあります。磁器の見分け方の要点は、まとめると以下の通りです。

\次のページで「陶器と磁器の細かな違い」を解説!/

磁器の見分け方
・素地が白くなめらかである
・光をわずかに通す
・叩くと金属のような高い音をだす

陶器と磁器の細かな違い

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ここでは陶器と磁器の細かな違いについて紹介。原材料の違いを知ることで、両者の質感の違いが深く理解できます。さらに両者の性質についてもみていきましょう!

違い1.原材料

陶器と磁器の原材料はどちらも、粘土・石英・長石の混合物。ですがその混合の比率は、陶器と磁器とで異なります。粘土が主役の陶器と違って、磁器では石英・長石も多く含まれるのです。

そのため陶器を「土もの」、磁器を「石もの」と呼ぶこともあります。さらに磁器を構成する粘土は、陶器のものと違い不純物を含みません。磁器の素地が白いのはこのため。その素地には白色の粘土のみが含まれるのです。

違い2.性質

陶器の素地は多孔質です。その表面の小さな穴に水分と匂いを吸着するため、陶器ではしばしば釉薬が施されます。くわえて陶器の素地内部にも、気泡が多く存在。素地にたくわえられた空気によって、陶器は高い断熱効果を示すのです。

一方石英を多く含む磁器は、陶器よりもガラスに近い性質をもちます。その素地は硬く、気泡を含みません。そのため磁器は陶器と比べて、薄く・軽く・なめらかに仕上がるのです。

違い3.器の形

陶器と磁器それぞれの性質は、できあがる器の形に影響します。両者のもっとも大きな違いは「とって」の有無。これは陶器と磁器の断熱効果の差に由来します。磁器製のティーカップには「とって」が存在。一方陶器で作られた、茶道の茶碗には「とって」がありません。それでも陶器製の器では、断熱効果が高いため「お椀を手にもつ」ことがたやすいのです。

\次のページで「陶器と磁器の扱い方」を解説!/

陶器と磁器の扱い方

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ここでは焼き物を使うにあたって、注意したい点について解説します。電子レンジ・食洗機と焼き物の相性について詳しくみていきましょう!

陶器の扱い方

釉薬が施されていない「素焼き」の陶器は、水分をよく吸収するため注意が必要です。まず素焼きの食器は、水分を含んだ状態で電子レンジにかけてはいけません。マイクロ波によって素地の水分が膨張し、器が割れてしまうのです。

そして食洗機で素焼きの食器を洗うこともおすすめしません。なぜなら食器は、食洗機内部で高圧の水流と急激な乾燥にさらされるから。素焼きの食器は急激な水分の変化に弱いのです。

磁器の扱い方

磁器の多くは電子レンジ・食洗機の両方に対応しています。ですが「絵付け」がなされた食器では注意が必要です。金属による金彩・銀彩は、電子レンジ厳禁。レンジ内部で食器が火花を散らしてしまいます。また金彩・銀彩・上絵付けの磁器は、絵付けが剥がれてしまうため、食洗機には向きません。

「焼き物」は質感が大事

陶器と磁器は、それぞれ異なる質感をもちます。その質感は原材料に由来するもの。土・石をうまくブレンドすることで、さまざまな性質をもった「焼き物」ができあがるのです。焼き物をはじめとするセラミックの技術は、長い歴史の中で絶えず改良されてきました。そして人類はついに、窯で「自らの骨や歯」を作る術を編み出したのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!陶器・磁器・セラミックの違いや見分け方とは?電子レンジや食洗機でのポイントも理系ライターが詳しく解説

この記事では陶器・磁器・セラミックの違いについてみていきます。「焼き物」として混同される陶器と磁器は、どちらもセラミックの一種。じつはこの2つのセラミックの原材料はほぼ同じなんです。ですが磁器は、よりガラスに近い性質をもっているぞ。その証拠に磁器は、わずかに光を通す。今回はそんな焼き物の違いを、高校大学と理系一筋のライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事ではセラミックの仲間である、陶器と磁器の違いについてわかりやすく解説していく。

陶器・磁器・セラミックの簡単な定義と違い

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まずは陶器・磁器・セラミックを大まかに比較します。わかりにくいセラミックの定義に触れたあと、陶器・磁器の見分け方についてもみていきましょう!

陶器と磁器はセラミックの一種

セラミック(複数形でセラミックス)とは、窯の中で無機物を焼き固めた製品、つまり窯業製品を指す総称です。ひとくちに「セラミック」と言っても、その種類は多種多様。焼き物やガラス、セメント、ファインセラミックスなど様々な用途を持ったセラミックが存在します。

そしてこの記事で紹介する陶器・磁器は、どちらもセラミックで、焼き物の一種。そんな両者は質感が大きく異なります。

陶器はざらざら

陶器は厚みのある焼き物。その素地はきめが荒く、ざらざらとした触り心地をもちます。ですが陶器の表面はたいてい、色のついた釉薬で塗りつぶされており、素地の質感がみられません。器の足回り(高台)にのみ、その素地が現れるのです。陶器の見分け方は、まとめると以下の通りになります。

陶器の見分け方
・素地が土壁のようにざらついている
・光を全く通さない
・叩くと鈍い音をだす

磁器はなめらか

一方磁器は薄く硬い焼き物です。その白くなめらかな素地は、ガラス成分を多く含むため、光をわずかに通します。さらに透明な釉薬が塗られる磁器では、素地の質感が器全体に現れるのが特徴的。その素地の白さを活かして、複雑な模様が描かれることもあります。磁器の見分け方の要点は、まとめると以下の通りです。

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