この記事では「ミナミマグロ」と「本マグロ」の違いについてみていきます。どちらも普通のスーパーでは売っていない高級魚というイメージがあるよな。「マグロ」とひと口に言っても様々な種類があって、それぞれ味にも特徴があるようです。今回はそんな2つの違いを、他のマグロとも比較しつつ、雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「ミナミマグロ」と「本マグロ」はどう違うの?

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多くの日本人が大好き、お刺身やお寿司のネタでは主役と言っても過言ではない「マグロ」。漢字では「鮪」あるいは「間黒」とも書きますね。

実はマグロにはたくさんの種類があって、大型でマグロの中のマグロと呼ばれる「本マグロ」や、通好みの味と言われる「ミナミマグロ」などもその1つです。この記事ではミナミマグロと本マグロの違いと、他のマグロの仲間についても詳しく解説していきます。

「ミナミマグロ」:南半球に生息する夏が旬のマグロ

ミナミマグロは、南半球に生息するスズキ目サバ科マグロ亜属の回遊魚で、インド洋産のものが最初に出回ったことからインドマグロ、オーストラリアからの輸入が多いことからゴウシュウマグロとも呼ばれます。マグロの中では中型の種で、成魚は最大で全長2.5m、体重200kgほどになりますよ。一般的なスーパーではあまり販売されず、寿司屋などに卸されることが多いようです。

天然と養殖がありますが、養殖ものは天然と比べるとやや劣る品質であることや価格差が投資に見合わず生産量が増えないことから、流通量はあまり多くありません。

ミナミマグロは夏が旬で、色が濃い赤身と強い甘みのある脂が特徴です。冷凍のものは通年入荷されていますが、生ミナミマグロは漁獲されるのが4〜6月頃と限られていて、この時期は近海の本マグロ漁の水揚げが悪いことが多くミナミマグロの方が身質も味も優れていることが多いそうですよ。

「本マグロ」:マグロの王様クロマグロ

本マグロとは正式な和名ではなく、スズキ目サバ科マグロ属のクロマグロのことなのです。クロマグロは北半球の熱帯・温帯海域に広く分布していて、時速90kmにも達するスピードで年間数千kmもの距離を巡る回遊魚で、希少価値の高さと黒く美しい見た目から、漁師からは「黒ダイヤ」とも呼ばれています。マグロの中でも大きい種で、天然の成魚は体長2〜3m、体重250kgから大きいものでは450kgになることもあるそうです。

旬は産卵前の冬で、キメの細かい赤身を持ち大トロの部位も多く含んでいます。味はバランスのよい酸味と旨みが特徴で、刺身や寿司はもちろん、塩焼きやねぎま鍋など火を通しても美味しいマグロの王様です。脂の多い部位には和牛のようなサシが入っているものもあります。

天然と養殖があり、近年日本では「完全養殖」が成功したこともあって、その出荷量は右肩上がりに増えているようです。

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マグロって何種類いるの?

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全世界で1年に穫れるマグロ約1万2千トンのうち、実にその2割が日本で消費されています。クロマグロとミナミマグロ以外でマグロ属に分類されるものは、以下の6つです。味や旬などの特徴もあわせて説明します。

1.メバチマグロ

目が大きいことから「目鉢」と名前が付きました。バチマグロとも呼ばれます。中型種で最大では体長2m、体重150kgになりますが、国内で流通しているサイズは30〜50kg程度のものです。旬は11月〜2月頃の寒い時期で、身の色が明るく解凍後の色持ちがよいので、宅配や大人数の宴会用として重宝されています

日本のマグロの中で漁獲量が一番多く、特に関東の人にはおなじみのマグロです。クロマグロやミナミマグロに比べてあっさりとした味わいで、刺身はもちろんですが、ソテーにしても美味しいですよ。

2.キハダマグロ

背びれや尾びれ、体全体が黄色みがかっているので「黄肌」と名前がつけられました。マグロの中では中型種で最大体長2m、体重200kgになりますが、国内で多く流通しているサイズは30〜50kg程度のものです。

主に関西で流通しているマグロで、色が薄く脂の少ないしっかりした身質が特徴ですが、旬である夏の時期に水揚げされるキハダマグロは脂が乗っていて美味しいそうですよ。缶詰の材料として使われることも多くあります。

3.ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)

胸びれが長く、長い鬢(びん:もみあげ)のように見えることから「鬢長」と呼ばれるようになったそうです。マグロの中では小型で最大でも体長120cm、体重40kg程度。

元々は缶詰の材料として多く利用されてきましたが、最近は回転寿司のネタや刺身として生食用のものが販売されるようになりました。ビンチョウマグロはロイン加工(魚を4つ割りにして皮や骨を取り除いたもの)で流通しているため安価なのだそうですよ。身は白または薄いピンク色をしていて柔らかい歯ごたえが特徴です。旬である冬になると脂が乗ってきて、「ビントロ」や「トロビンチョウ」という回転寿司で人気のネタとなります。

4.コシナガマグロ

尻びれの後方がほっそりとして長いので「腰長」と呼ばれるようになりました。体長1mほどの小型種で、主に日本海西部で漁獲されますが、産地で消費されることが多く、あまり市場に出ないため少し珍しいマグロです。冬になり脂が乗ってくると刺身にしたり、アラやカマは煮付けたりします。また身がしっかりしているので火を通しても崩れにくく、唐揚げや竜田揚げにもおすすめだそうです。

5.タイセイヨウクロマグロ

タイセイヨウクロマグロはタイセイヨウマグロと紛らわしいためニシクロマグロとも呼ばれます。マグロ属の最大種で、大きいものは全長4.5m、体重670kgにも達することがあるそうです。以前はクロマグロと同種だと思われていたのですが、胸びれの短さ、エラの棘の数の違いなどから現在は別種とされています。クロマグロと同様に珍重されていますよ。

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6.タイセイヨウマグロ

タイセイヨウクロマグロと紛らわしいためヒレクロマグロとも呼ばれます。体長90cm程度の小型種で、メキシコ湾やカリブ海からブラジル沿海に生息しているマグロです。

夏が旬で、味はメバチに似た肉質で美味しいと言われていますが、残念なことに日本では刺身など生の状態では流通していないため、その味は現地に渡らないと知ることができません。缶詰の材料としてなら国内でも口にすることができるかもしれません。

マグロの豆知識

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ちょっと得するマグロの豆知識をご紹介します。

美味しいマグロの見分け方

せっかくなら美味しいマグロが食べたいと思いますよね。スーパーなどで柵で売っているマグロのチェックポイントは以下の点です。

色が鮮やかな赤色、またはピンク色で透明感がある:マグロは鮮度が落ちると真っ黒になってしまいます。
筋が薄い:舌触りがよくなります。
筋の方向が柵に対して平行に近い:切り分けた時に食感が良くなります。
赤や黒などの斑点が出ていない:血抜きがうまくできていないことを示します。
トレーの中にドリップ(赤い汁)が出ていない:ドリップが多いと味も鮮度も落ちているということになります。

大トロが取れるマグロは3種類だけ

実はどのマグロからでも大トロが取れるわけではなく、取れるのはクロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウクロマグロだけなのです。中型種以上の大きなマグロで、なおかつ比較的冷たい海に生息していることが大トロが取れる条件。ということは、ビンチョウマグロのビントロは大トロではないのですね。

ちなみにメバチマグロからは漁場によっては中トロが取れることがあるそうです。ただ筋が多いので刺身には向きません。

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マグロの由来

マグロという名前はの由来は「船の上から見た時に背中が真っ黒だから」「切り身を置いて時間が経つと真っ黒になるから」「目が真っ黒だから」と諸説あります。ちなみに日本人は縄文時代からマグロを食べていたらしく、三内丸山遺跡(青森県)からマグロの骨が出土しているとか。当時はシカの角を加工した針で釣り上げていたそうですよ。

マグロやカジキは食物連鎖の上位にいることから、その体内に有害な化学物質が蓄積してしまいやすく、特に水銀の蓄積が問題視されているのです。厚生労働省は妊娠中の人が摂取量を注意すべき魚介類として挙げており、妊娠中の人の摂取量は1週間あたり80g程度を目安にするよう呼びかけています。

ミナミマグロと本マグロはそれぞれ美味しい!

マグロには「ミナミマグロ」と「本マグロ」だけでなく「メバチマグロ・キハダマグロ・ビンナガマグロ・コシナガマグロ・タイセイヨウクロマグロ・タイセイヨウマグロ」という8つの種類がいることがわかりました。ざっくりまとめると「ミナミマグロは夏が旬の中型種」「本マグロは冬が旬の大型種」ということになりますね。お寿司屋さんなどで食べ比べてみるのも面白いかもしれません。最後になりますが、この記事で身近な疑問を解決するお手伝いができたら幸いです。

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簡単でわかりやすい!「ミナミマグロ」と「本マグロ」の違いとは?全8種類のマグロについても雑学マニアが詳しく解説

マグロって何種類いるの?

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全世界で1年に穫れるマグロ約1万2千トンのうち、実にその2割が日本で消費されています。クロマグロとミナミマグロ以外でマグロ属に分類されるものは、以下の6つです。味や旬などの特徴もあわせて説明します。

1.メバチマグロ

目が大きいことから「目鉢」と名前が付きました。バチマグロとも呼ばれます。中型種で最大では体長2m、体重150kgになりますが、国内で流通しているサイズは30〜50kg程度のものです。旬は11月〜2月頃の寒い時期で、身の色が明るく解凍後の色持ちがよいので、宅配や大人数の宴会用として重宝されています

日本のマグロの中で漁獲量が一番多く、特に関東の人にはおなじみのマグロです。クロマグロやミナミマグロに比べてあっさりとした味わいで、刺身はもちろんですが、ソテーにしても美味しいですよ。

2.キハダマグロ

背びれや尾びれ、体全体が黄色みがかっているので「黄肌」と名前がつけられました。マグロの中では中型種で最大体長2m、体重200kgになりますが、国内で多く流通しているサイズは30〜50kg程度のものです。

主に関西で流通しているマグロで、色が薄く脂の少ないしっかりした身質が特徴ですが、旬である夏の時期に水揚げされるキハダマグロは脂が乗っていて美味しいそうですよ。缶詰の材料として使われることも多くあります。

3.ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)

胸びれが長く、長い鬢(びん:もみあげ)のように見えることから「鬢長」と呼ばれるようになったそうです。マグロの中では小型で最大でも体長120cm、体重40kg程度。

元々は缶詰の材料として多く利用されてきましたが、最近は回転寿司のネタや刺身として生食用のものが販売されるようになりました。ビンチョウマグロはロイン加工(魚を4つ割りにして皮や骨を取り除いたもの)で流通しているため安価なのだそうですよ。身は白または薄いピンク色をしていて柔らかい歯ごたえが特徴です。旬である冬になると脂が乗ってきて、「ビントロ」や「トロビンチョウ」という回転寿司で人気のネタとなります。

4.コシナガマグロ

尻びれの後方がほっそりとして長いので「腰長」と呼ばれるようになりました。体長1mほどの小型種で、主に日本海西部で漁獲されますが、産地で消費されることが多く、あまり市場に出ないため少し珍しいマグロです。冬になり脂が乗ってくると刺身にしたり、アラやカマは煮付けたりします。また身がしっかりしているので火を通しても崩れにくく、唐揚げや竜田揚げにもおすすめだそうです。

5.タイセイヨウクロマグロ

タイセイヨウクロマグロはタイセイヨウマグロと紛らわしいためニシクロマグロとも呼ばれます。マグロ属の最大種で、大きいものは全長4.5m、体重670kgにも達することがあるそうです。以前はクロマグロと同種だと思われていたのですが、胸びれの短さ、エラの棘の数の違いなどから現在は別種とされています。クロマグロと同様に珍重されていますよ。

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