
簡単でわかりやすい!愚痴と悪口の違いとは?語源や陰口との違いも現役塾講師がわかりやすく解説

ライター/空野きのこ
大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。
愚痴と悪口のおおまかな違い

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愚痴と悪口の違いをざっくり説明すると、「愚痴」が言ってもしかたないことを口にして嘆くことを意味するのに対し、「悪口」は他人のことを悪く言うことを指す言葉です。それでは理解を深めていくために、これからより詳しい説明をしていきましょう。
「愚痴」の漢字の意味
まず愚痴の漢字について見ていきましょう。「愚」の字は、訓読みにもあるように「おろか」なことを意味します。一方、「痴」の字はどうでしょうか?実は、「痴」の字も、「痴か」と送り仮名をふると、その読みは「おろか」です。「音痴」や「痴漢」といった熟語で使うことがありますが、いずれも音読みで、訓読みを知っている方はそう多くないでしょう。
このように、「愚痴」という熟語は、どちらも「おろか」という意味を持つ漢字から成り立っています。
「愚痴」の由来は仏教

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「愚痴」は仏教の言葉が由来です。仏教では人間を悩ませる根源的な三つの煩悩「貧瞋癡(とんじんち)」を、毒にたとえて「三毒」と言うのですが、そのうちの一つである「癡」(「痴」の旧字)が「愚痴」にあたります。
「愚痴」が「おろか」という意味を持つ漢字二つから成っていることは説明しましたが、仏教の正しい教えを理解しない、おろかなことを「愚痴」と言ったのです。それが、江戸時代ごろから「おろかなことを言うこと」の意味で使われるようになり、その後、今日のような「言ってもしかたないことを口にして嘆くこと」といった意味になりました。
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「悪口」の漢字はどう読む?
「悪口」という漢字の読みを聞かれたとき、あなたなら何と答えますか?多くの人は「わるくち」または「わるぐち」ではないかと思います。しかし、例えば「色々と悪口を言い立てること」を意味する四字熟語に「悪口雑言」というものがありますが、この熟語は「あっこうぞうごん」(または「あくこうぞうごん」)と読むのです。
また、仏教における十種類の悪い行い「十悪」の一つにも「悪口」がありますが、その場合は「あっく」と読みます。このように、簡単に思える「悪口」という熟語の読みには意外と知られていないものがあるのです。
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「悪口」の訓読みは「わるくち」「あっこう」「あっく」
悪口があれば「良口」もある!
「悪口」があるなら、逆に「良口」があってもいいんじゃないかと思った方はいませんか?実は、普段使われることはありませんが、「良口」(「よいくち」または「よきくち」)という言葉も存在します。
といっても、「他人のことを良くいうこと」といった悪口と正反対の意味ではなく、「口先がうまく達者なこと」といった、少しこずるいニュアンスを持った言葉です。ですので、人をほめるような時に使わないよう気をつけましょう。
「陰口」との違い
まず「陰口」について説明しましょう。「陰」という字には「人に知られない、隠れたところ」という意味があります。ですので、「陰口」の意味は「本人のいないところで言う悪口」のことです。
「文句」との違い
「文句」は、「相手に対しての苦情や言い分」というような意味でも使われる言葉ですが、もともとは「殺し文句」などの単語でも使われるように、「文章中の言葉や文言」といった意味です。
それがやがて「相手に対して言っておきたいこと、言わずにいられないこと」に対して「文句」という言葉を使うようになったことで「相手に対しての苦情や言い分」という意味が加わったのではないでしょうか。
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陰口:相手がいないところで言う悪口
文句:相手に対しての苦情や言い分
愚痴は「おろか」で、「人を悪く言う」のが悪口
仏教の道理を理解しない愚かなことを意味した言葉が、やがて言ってもしかたないことを口にして嘆く「愚痴」になったことや、他人のことを悪く言う「悪口」には、なじみの少ない意外な読み方があることなどわかっていただけたかと思います。このような知識を、ついつい混同しがちな「愚痴」や「悪口」といった言葉の理解に役立ててください。